ゴロー先生が冷静だったら…
って考えて思いついた短編

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不審者見かけても追いかけちゃいけません


ゴロー先生生存√

「あんたが星野アイの担当医?」

真夜中での帰宅中、宮崎県中山間地域の産婦人科医 雨宮五郎は道中にそう話しかけられた。

いきなり話しかけられた内容は関係者以外知りえない情報で警戒心を上昇させた。

「いや、違うよ。少なくとも私の患者にはいないね」

とっさについた嘘。それがゴローの気を落ち着かせ、相手を冷静に見る事が出来た。

黒のパーカーでフードを被り、前髪が目元を隠している男性。歳は中学高学年か高校生くらい、身長はゴローより若干低く、肩幅は狭い。

第一印象は引きこもりのオタクだった。

「うちの病院に入院してる患者の関係者の方かな?名前を聞いてもいい?」

病院もそうだが不特定多数が利用する施設には色々な人間が来る。通常の利用者の他に駄弁り目的で高齢者が集まったり、アイの様な訳ありだったり、ヤクザだったり、看護師、ナースが性癖の不審者だったり、本当に色々だ。

だからそんな人たちの相手をする医師というのはコミュ力が高い。様々な人物像の中から相手がどんな性格なのか、その時の心理状態等なんとなく察しがついた。

目の前の男が星野アイに対し並々ならぬ執着がある様子が知れたし、声色から危うい心理状態なのも気が付いた。

「よければ調べられるけど面会時間は過ぎてるから明日また来てくれるかな」

不審者相手にはいろいろマニュアルがあるが、まずは110番、は目の前にいるので出来ない。次点で相手を興奮させないこと。いかにも普段通りですといった様子で丁寧な対応を心掛けるのが大事だ。

本来一対一は避けなければいけない場面だが、ゴローの奴隷(ファン)としての嗅覚がその場に留まらせた。

男は黙ったままだった。

ゴローは警戒しつつも相手の出方を待っていたが、彼は背を向けると森の中に走り去っていった。

 

ゴローは男を追いかけなかった。単純に夜の森の中が危険というのもあるし、男が凶器を持っていた場合普段から運動をしていないのに太刀打ちできるわけもない。

来た道を踵返し病院に戻る。夜勤の職員も残っているし、警備員もいるので安全のはずだ。

今は何よりも星野アイの子供を自分が取り上げるという思いがある。

今まさに連絡が来るかもしれない状況で危険を冒すことをよしとしなかった。

病院についたゴローはアイの事情を鑑みまずは後見人である斉藤壱護へ連絡することにした。

そしてその判断が本来殺される運命だったゴローを生かしたのだった。

 

 

 

アイの出産が無事終わった後、ゴローと斉藤壱護は病院内の廊下で顔を合わせていた。

「先生、今回は本当に有り難うございました。アイの為に色々と便宜を図っていただき、御礼は必ず致します」

「私は自分の仕事をしただけです。星野さんが一番頑張ったので彼女をほめてあげてください」

実際双子の出産と言うのは通常の妊娠よりも大変だ。出産時の負担はもとより、妊娠中の母体の健康管理が難しいのだ。

結局彼女の希望通り帝王切開は行はず、普通分娩で出産した。予想通り赤ちゃんは小顔だったわけだ。

何度も検査し確認したとはいえやはり実際に産む場合にリスクはある。そして運は彼女に味方をした。

もちろんもしもの場合はすぐさま対応できる準備は怠っていない。

「話は変わりますが、電話で話したことについて心当たりは?」

「…ありません。この病院を利用していることは俺とアイしか知りません」

当然ゴローの見た人物に心当たりもない。

「厄介ファン、いやストーカーか。どこで嗅ぎつけてきたのやら」

頭の痛い話だった。苺プロ内でも当然出産は秘密で斎藤壱護は妻にも話していない。ゴローもアイに関わる人間は極力アイドルに興味がない、知らない職員から選んでいた。

「となると、後はアイの知り合いくらいですか」

「アイにも絶対に漏らさないよう言ってます。まさか誰かに言ってるなんて思いたくありませんが」

少し自信なさげな斎藤さんの話を聞きながらゴローはふと考えた。

アイは嘘つきだ。

自信家で身勝手で欲張りでずるくて強い。

そして嘘つきなんだ。

普段見せているカラッとした性格の裏に暗い感情や弱さがあるのは担当医としてずっとそばで見てきて分かっていた。

出産というものは大仕事だ。ストレス、不安、そういったものは当然彼女も感じている。

そんな時誰と一番話したいだろうか。

 

『社長の俺にどうして相談しなかった』

『相手の男は誰なんだ……』

『それは……』

『えへへ内緒!』

 

「……相手の男」

「え、先生なんて?」

「星野さんの相手、双子の父親は今どこにいるんでしょう」

言って、沈黙が下りた。

ずっと付き添ってくれていた社長相手にも話せない、隠している人物。

「……先生は、アイが俺に嘘をついていると言いたいのですか?」

「可能性の話です。出産を間近に控えた星野さんが連絡する人がいた場合、かなり相手が絞られます」

施設育ち、天涯孤独、アイドルグループ内の友好関係。担当医として長くアイと話したが終ぞ子供の父親の話は出ることは無かった。その父親だけ人物像は見えない。

「……まあ、今はまだ出産を終えたばかりです。落ち着いてからそれとなく今回の話をした方が良いかもしれません」

「そう、ですね。心に留めておきます」

 

話を切り上げ部屋の中に入ると、アイが疲弊した様子を見せつつも双子の赤子を胸に抱いてベッドで体を休めていた。

星野アイのファンであるゴローはその光景に聖母マリアを見た。

尊い以外の言葉がでず、思わず涙が流れそうなのを堪えて歩み寄った。

「星野さん、後数日検査と経過を見て退院かな。お疲れさまでした」

「せんせもおつかれさま。いやあ、まさか出産がこんなに大変だとは、人生最大の闘いだったね」

そう言いながらも彼女の顔は笑顔だった。

産後の経過も特に問題は見受けられないし、順調にいけば無事退院する。そうすればアイとの繋がりもなくなりただのアイドルとファンに戻る。

今回は推しのアイドルの担当医になるという驚天動地の大事件だった。

僕は一生このことを忘れないだろう。

「そういえばどっちが先に生まれたんだろう?」

「男の子の方だよ、兄と妹って事になるね」

「ふーん、そうなんだ、んふふ」

双子に顔を寄せてスリスリするのかわいい。

「ん?」

なんだか女の子の赤ちゃんがじっとこちらを見ている。

まだ生まれたばかりだし普通は離れている人を認識しづらいはずなのだが、まあ気のせいか。

「そういえばもう名前は決めてるのか?」

折角自分が担当した推しの子だし興味があった。

「お、聞いちゃう?聞いちゃう?ずっと考えてたんだ、私の家族、私の宝物!」

「女の子の名前は、星野 瑠美衣!」

ん?

「男の子の名前は、星野 愛久愛海!」

んんん??

「これが私の家族の名前だよ!」

めちゃくちゃキラキラネームじゃないか!?スゲー名前つけたな!!

推しのアイドル、また一つ彼女のことを知る事が出来た。

彼女の名前の付け方は壊滅的だった。

 




読み専なのでこれが限界
だれかゴロー先生生存書いてくれー

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