持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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皆様の感想や高評価がいつも執筆の励みになっております。
やはりモチベーションが上がりますね。

あとリンバスとアークナイツのコラボ楽しみです。



それでは、どうぞ






第35話

遊真が指輪型の黒トリガーを起動し、修がくすんだ緑色と鮮明な赤を基調としたドレスをスーツに仕立て直したようなEGOを身に纏ったと同時に周囲からトリオン兵が殺到し始める。

どうやら短時間でこれらを操る敵勢力に脅威として認識されたらしく、ラービット以外にも多数のトリオン兵が押し寄せているのが向かってくる音から推察出来た。

 

「"不毛なる期待"」

 

迫る白い機械兵達を前に修は木の根が巻き付いた腕を地面に伸ばす。

瞬間、腕の根は生きているかのように伸びて地面へ突き刺さり、更にはコンクリートの道路を這うように増殖し始めた。

地面に足をついて移動していたトリオン兵達まで到達すれば感知と同時にその場に縫い留めるように成長し絡め取って拘束し、なんなら脆いタイプはそのまま締め壊されている。

 

「空閑、ぶち抜け」

「『射』印(ボルト) 四重(クアドラ)強』印(ブースト)!いけっ!」

 

全体的に性能が高いラービットや頑丈なモールモッドも動けなくなった所に遊真が射出した弾が突き刺さりそのまま機能を停止する。

 

「お、一体生き残った。個体差があるのかコイツら」

 

しかしその内の一体、先程討伐したラービットの色違いのようなデザインをしたものは拘束された腕を液状化させたかと思うとスルリと拘束を抜け出し弾を叩き落とす。

そのまま獣のように威嚇の動作をしようとした亜種ラービットだったが、そんなもん知らんと言わんばかりに飛び出した遊真によって頭部を殴り砕かれそのまま沈黙したのだった。

 

「まぁもう一発ぶち込めば済む話だな」

「油断はするなよ。あの白いラービットが基本とするなら色を変更している物は何かしら特異な性質を有している可能性がある。拘束した筈の腕で弾を防いだのもそれだろう」

「おう、勿論だ。レプリカ、このラービットの解析も頼んだ」

『承知した。同時進行でボーダー内部の開発部の方にもデータを送り解析を進めてもらっている。あと10分程度もあれば基礎的な機能は解析し終わるだろう』

「了解、じゃあ狩りの続きだ、『弾』印(バウンド)

 

ニヤリと笑った遊真の足元に印が現れ、それを踏めば射出されたような勢いで体が飛ばされる。

 

「『強』印(ブースト)二重(ダブル)!せーのッ!!」

 

弾丸と化した遊真は空中で姿勢を調整しそのまま強化された腕力で標的となったトリオン兵を粉砕、それを足場に更に後方から迫っていたモールモッドを真正面から足をへし折ってはコアをぶち抜いていった。

 

「っとと、ラービットか、オサム」

「"色褪せぬ呪い"」

 

無双ゲーの主人公の如く目の前に並ぶトリオン兵を薙ぎ倒し続けていた遊真の元に新たなラービットが迫る。

デザイン元の兎のように跳び上がり、両腕をハンマーのようにして敵目掛けて叩きつけるがその一撃は遊真に当たるどころかかする事も無く、ひらりと避けた遊真が相棒の名前を呼んだと同時に地面を這っていた茨から突き出された鋭い棘がラービットの心臓部を貫いた。

 

「レプリカ、敵の数はどうなっている」

『ボーダーで観測出来た範囲では約1000体、オサムとユーマによって倒された分を除けば約950体程度の反応が検知出来た。現在も恐らく改造ラッドの開いたゲートによって次々と投入されているのか反応が増え続けている』

「中々の数だな」

 

コアを破壊し既に機能を停止したトリオン兵達を地面の茨で運搬、邪魔にならないよう一箇所に纏めながらレプリカからの報告を聞き作戦を立てる。

周辺のトリオン兵達はこぞってこちらを……厳密には強力なトリオン反応が出ているであろう黒トリガーを纏う遊真を狙って進軍しており、少し離れた場所ではボーダー本部へと向かうトリオン兵達を隊員達が迎え撃っているらしい。

 

『既にラービットについての情報共有は全隊員に済んでいる。基本的にその対処にはA級が当たるようだが……既に何人かは被害に遭っているらしい』

「ふーむ、やっぱりアイツ厄介なんだな」

「さっさと周辺のトリオン兵を間引いて援護に向かった方が良さそうだ。幸い向こう側から敵が来てくれている、殲滅速度を上げるぞ」

「あいよ」

 

そうして次の敵を排除すべく歩き出そうとした修だったが、不意に感じ取った気配に足を止め、とある方向に顔を向ける。

 

「んお?どうかしたかオサム?」

「どうやら罰鳥達も動き始めたらしい……と?」

 

再び歩き始めようとしたその時、上空にゲートが開きそこから見覚えのある飛行物体が出でくるのが見えた。

 

「イルガーだな、しかも5体」

「……本部に直接特攻を仕掛ける気か?」

「成る程、自爆機能か。あの量だったら多分ボーダーの一部削れて無くなるぞ」

「なら何機か墜とすか」

 

そう簡単に述べた後、修は横向きに手を伸ばして何かを掴むように握り締める。

手の内から伸びるくすんだ緑色の茨はやがて一本の槍の形を成し、一つの独立した武装となって生成された。

 

「集え」

 

しかしそこで終わる事は無く、その言葉に呼応するように周囲の地面に這うように広がっていた茨が蠢き、生成された槍へと纏わりつきながら自ら圧縮するように締めていく。

十秒も経てば地面を覆っていた茨は無くなり、代わりに手の内の槍は先程よりも数倍は長くそしておどろおどろしい呪いの気配を漂わせていた。

 

「おぉ、オゾマシイですな」

「元になったのが呪いのかかった林檎だからな。それが長年放置されて更に怨念を積もらせたらこうもなるだろう」

 

遊真もその槍から放たれる気配に本能的に警戒はしているが、完璧に制御されているのか無差別に牙を剥く様子は無い。

修と遊真の身の丈を足してもなお足りないであろう長さの槍を何でもないかのように操る修は槍を持つ手を後ろに引き、空いたもう片方の手を空を飛ぶイルガー達に向かって伸ばし狙いを定めたかと思えば、

 

「すぅ………シィッ!!!」

 

亜音速に到達するかという速度で投擲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、デカブツが飛んでんな」

『自爆機能付きの爆撃機だ。何体か墜としてくれ』

「はいよ忍田さん……ん?」

 

ボーダー本部の屋上にて、待機していた太刀川は迫って来るイルガー達を呑気に眺めていた。

指示を受け、撃墜しようと腰に差した弧月に手をかけようとしたその時、突如として真ん中にいた1体が横から何かに貫かれたように破壊、更にはその破壊痕の中心に突き刺さった槍のような何かが一際強く暗い輝きを放つと即座に破壊されたイルガーの内部がくすんだ緑色の植物によって侵食、すぐ近くにいたもう1体に向かって伸びた茨が心臓部に突き刺さり機能を停止させ爆破機能が作動する前に墜落させた。

 

「はっははは!やっぱアイツヤッベェなおい!」

『慶、2体いけるな?』

「あいあい、俺も負けてらんねぇ、なッ」

 

心当たりしかない異常な光景を前に笑みを深くした太刀川が屋上から跳ぶ。

トリオン体の身体能力を生かし宙を舞い、更にダメ押しと言わんばかりに足元に展開したグラスホッパーを踏んで向かってくる爆撃機達へと突撃。

数瞬後には3体の内2体の胴体に一筋の線が走りそのまま何も出来ずに墜落、最後の1体もボーダー本部に備え付けられた兵器の掃射により飛行能力を絶たれて2体の後を追った。

その光景を尻目に地面に着地した太刀川は通信越しの己の師に問いかける。

 

「んじゃ、俺も自由に暴れろ、っつうことで良いのか?忍田さん」

『ああ、出来うる限りの新型トリオン兵の排除を頼む。データなら全オペレーターにも共有済みだ』

「了解。国近、聞いてたな?」

『はーい、近場の新型トリオン兵の位置情報を表示するねー』




『白雪姫の林檎』の攻撃によって死んだ職員及びオフィサーは内側から顔面目掛けて鋭くなった茨が貫通した死体になるので、絶命させた存在を栄養分として成長するという性質を持ってる……という設定です。
まぁそもそも本体の身体も自身を食べて呪いで死んだ動物や虫の死骸を栄養にして成長した茨で構成されてますからね、これぐらいは余裕でしょう。
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