ただの独り語りなので、お暇な時間潰しにお読みください。
両親は、特筆すべき事の無い普通の人だった。
漫画のように愛を語り合うこともなく、ドラマのように喧嘩ばかりな訳でもなく…
お互いを愛し、子供であった俺を可愛がり、当たり前を体現したかのような普通の家庭だった。
だから……
友達が出来なかった事も。
恋愛の経験がない事も。
両親に心配な顔ばかりさせてしまったことも。
全てが俺の責任だったのだろう。
学校に行けば、友達が出来ると思っていた。
出会いがあれば、恋人が出来ると思っていた。
大人に成れば、結婚をして家庭を持てると思っていた。
笑い合い、バカみたいに騒ぐ同級生の輪を見ながら友達が居ない俺自身が憎かった。
自分の彼氏の愚痴を友人に話していたのに、当人の前では借りてきた猫のように赤面する。そんな奴らを遠目に、誰にも恋愛出来ない俺自身が憎かった。
学年を経て年を取る度に、何一つ他人との関係を築けない俺自身が憎かった。
だからそれは偶然で、只のセリフで、当たり前の演出だった筈なのに、俺にとっては魔法のような言葉だった。
「貴方を愛しています。」
それを聞いた時から、星野アイは俺の恋人だった。
俺だけの物で、俺の唯一で、俺の全てだった。
ライブには必ず通った。
イベントには必ず参加した。
会える機会は、一回だって逃さなかった。
だけど、俺の恋愛は初めから叶わないものだった。
星野アイの言葉は
何時だってファンに向けたものだった。
星野アイの気持ちは
何時だってファンに向けたものだった。
星野アイの笑顔は
何時だってファンに向けたものだった。
そこには恋人に……
星野アイの唯一に向けたものなんて、1個だって無かったのだから。
それでも良かったんだ。
星野アイがアイドルでいてくれるのなら。
アイドルでいてくれる限り、可能性の目はなくならない。
俺の夢は覚めない。
なのにアイツは言った……
「星野アイには愛している人がいる。」
「星野アイには愛し合って出来た子供がいる。」
星野アイが幸せに成る?
ふざけるな、お前を幸せにするのは俺だ。
星野アイが結婚する?
ふざけるな、お前と結婚するのは俺だ。
星野アイに子供がいる?
ふざけるな、どうして俺との子供じゃない。
直視させられた現実が、只ひたすらに虚しかった。
夢を取り上げられた事が、どうしようもなく哀しかった。
掛けた時間とお金の全てが、狂おしい程に憎かった。
だから、殺した。
それを教えたアイツを。
アイの出産を手助けする医者を。
俺から全てを奪った星野アイを。
両親を不幸にした俺を。
殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺した。
復讐の先にあるものは……
憎しみでもなく、虚しさでもなく、只の虚無だと知った。
辞世の句など、思い付きもしなかった。
その先があった事は、どうしようもなく地獄だった。
「誰か」は俺を罵った。
推しを殺すファンなんて死んでしまえ。
「誰か」は俺を嘲笑った。
黒幕のための噛ませ犬以下。
「誰か」は俺に見向きもしなかった。
主人公頑張れ!!
それがただの漫画の評価であることが、どうしようもなく苦しかった。
誰かを不幸にすることはこんなにも簡単なのに……
誰かの特別に成ることは、どうしてこんなにも難しいのか。
誰かを苦しめることはこんなにも簡単なのに……
誰かを幸せにすることは、どうしてこんなにも難しいのか。
誰かを憎むことはこんなにも簡単なのに……
誰かを笑顔にすることは、どうしてこんなにも難しいのか。
どうすれば友達はできたんだ。
どうすれば恋人はできたんだ。
どうすれば家族はできたんだ。
今でも俺には分からない。
他人との付き合い方も
誰かを好きに成る方法も
家族を持つやり方も
何一つだって分からない。
誰か教えてくれ
「恋人への愛と、推しへの愛の違いは何なんだ……」