ブルーアーカイブRTA キャラ個別√ 作:パプテマス・シロコ先生
ここはD.Uシラトリ区にある、とある店の前。出入りを邪魔しない程度の離れた位置に2人の女子生徒がいた。
「ほ、ほんとに行くのか?」
「もーアズサちゃん、ここまで来て怖気付いたらダメだよ!」
アズサとヒフミ。トリニティ総合学園の補習授業部に所属する2人だが、その中でも
「や、やはり日を改めて……」
「ダメでーす」
「う、うう」
……親友とはいっても、なんだかやたら物理的距離が近いし、さっきからイチャイチャしている気がするが。背景に百合の花が咲き乱れているが、親友である。たぶん、きっと。
戦闘時の心強い強固な姿勢はどこへやら。腰が引けているアズサの背中を押して、ヒフミはとある店の中にアズサを押し込む。
その店の名前は【Blue Rose】
最近できた花屋である。
「いらっしゃいませー!」
店先には色とりどりの花があった。主に入り口付近に置いていたのは鉢植えであり、中に入ると切り花が花瓶に入れられて飾ってある。他所から取り寄せたものもあれば、店の裏で栽培されているものもある。奥に目をやれば園芸用の土、肥料、薬などが陳列されている。
「ん、君は……」
「お久しぶりです」
カウンターに座っていた女性……錠前サオリは、ヒフミの姿を見て驚く。何を隠そう、2人が対面するのはクーデター時に銃を向け合って以来である。互いに先生を通じて事情を聞いてはいるものの、複雑な心境である。
とは言っても、複雑なのはサオリだけで、ヒフミは一般通過女子特有の胆力で特に気にしていないのだが。
「先生に場所を聞きました。今日は会わせたい人がいます」
「君が会わせたい人となれば……そうか、来たのか」
「……サオリ」
そして、ヒフミ以上にサオリと因縁があるとすれば、もう1人。ヒフミと共に来たアズサである。
「トリニティで出るものほど、良い茶ではないが」
「構わない。あれは私には上品過ぎる」
カウンターの裏手、応接のために設置されたテーブルとソファに腰掛けた2人は対面する。ヒフミは席を外して、店内をちょこまか動いて働いていたヒヨリと談笑している。
「ミサキは?」
「居るよ、ここに」
ここに居ない3人のうち1人を挙げれば、エプロンを身につけたミサキが裏手から顔を出す。接客に向かない自覚のあるミサキは主に裏方仕事を請け負っていた。
「今日の分の剪定終わったから、並べとくよ店長」
「ああ、頼む」
店長はサオリである。これについては元々スクワッドを率いていたリーダーなこともあり、満場一致で決まったことだ。地上に詳しいトモルを推薦していた当人は慌てたが、元々順応性の高いサオリである。すでに花屋が板についている。
見渡せば、若者ウケしそうな小洒落た内装と水と土で汚れていない清潔感。アツコが育てたであろう鉢植えに、ヒヨリが作ったドライフラワーの栞などの小物、他にもアクセサリーなど。アリウス自治区で過ごした場所とは大きく異なる雰囲気を改めて感じる。
「良い店だ」
「ありがとう。店内のデザインはほとんどアツコがやったんだ」
素直に褒めれば、サオリがまるで自分のことのように喜ぶ。サオリからメンバーに対する矢印が重い。こういう反応するからサオリは泥棒猫だの勘違いされるのだろうが、アズサも似たようなものなので誰も突っ込まない。唯一言及できそうなミサキは早々に離れてしまった。
「こうしてゆっくり話せるのは初めてかもしれないな」
「……ああ」
「先生には感謝してもしきれない。こうして私達に最高の形で更生の機会を与えてくれたのだから」
色んなことがあった。その上で、先生はアリウススクワッド達を「更生の余地あり」として訴えて、こうして花屋に押し込むことに成功した。アツコの生涯の夢を叶えるという、最高の形で。
実際、
その肝心のホモ野郎についても、何処で伝手を得たのか、謎の専用BGMと権力を持った人物がバックについたことで、金銭面の問題も幾分か解決した。一体何者なんだ……
「前に進み始めたんだな、君達も」
「ああ。出遅れてしまったが……じきに追いつくさ」
アズサとサオリは互いに穏やかな表情で対面する。視線を逸らせば、ヒヨリとヒフミは意外にも意気投合したのか、仕事中のミサキに絡んでいる光景が見えた。ミサキもうざったそうにしながらも、満更でもなさそうだ。こんな日々が来るとは思いもしなかった。
彼女らは世界が虚しいことを知っている。同時にそれだけでないことも知っている。これからは抗うことをやめないだろう。大切なものを守り、より良い日々にするために。
「そうだ、アツコとトモルは何処へ?」
「ああ、それなら……」
「聞いてくださいよ!」
アズサの問いにサオリが答えようとすると、いつのまにか寄ってきていたのはソファの背に豊満な胸部装甲を乗り上げさせたヒヨリが不満そうに口を出した。
「デートですよデート!!」
「デートくらいで大袈裟な…」
「ミサキお姉ちゃんは何も分かっていません! うわあああん! あいつら交尾するんだ!!」
「こっ……!? 下品な言い方やめてよ!」
「ヒフミ、コービとはなんだ?」
「えっ……えっと、仲良くすることカナ……」
「そうか、それは私達でもできるのか?」
「えっ?????」
「ふっ……」
3人寄れば姦しいと言うが、5人も寄ればこうもなろう。会話の内容はともかく、サオリは穏やかな気持ちになって微笑んだ。会話の内容はともかく。
「良いですかミサキお姉ちゃん、アツコ義姉ちゃんの独走は止められません。1番になれないのは死ぬほど痛くて苦しいですが……唯一の手段はトモルお兄ちゃんをハーレム思考に誘導することです!」
「私は三番目でも良いんだけど」
「ヒフミ、コービとは一体何をすれば良いんだ?」
「えっと……ナニかな……!?」
「お前ら……まだ開店中だぞ」
会話の内容はともかく。
◆
発端は、とある人物と再会した時のことだった。
『さて、曇り空の少年。君に頼みがある。
この植物園ペア入場チケットが死のうとしている。
悲鳴もあげず、静かに、ゆっくりと、期限が切れようとしているのだ。曇り空の少年。
期限が切れれば、この艶やかに輝くチケットの価値が消えてしまう。
このチケットを譲ってくれた人物の好意も、支払われた金銭も、彩る未来の思い出も……全て消えてしまうのだ、曇り空の少年。
思い出の喪失は何事にも耐え難い。力を貸してくれないか、曇り空の少年。
なに、簡単なことだ。君が、君の姫を連れて行くんだ』
『それでいい、曇り空の少年。
さあ……アドバイスを、贈ろうか』
そんなことがあり、謎の専用BGM持ちの後押しがあったトモルがアツコを連れて植物園に来るのは必然であった。トモルとアツコは植物園の中を歩いていた。アツコが当然の権利のように手をとってきたのを拒むこともない。
植物園はトリニティの区内にある。こういった華やかなものについては、トリニティは他の地区に並び立つものがないほど優れている。ましてや謎の専用BGM持ちの人物が勧めた場所が優れていないはずがなかった。
「綺麗だね」
「ああ」
ここで「君も綺麗だよ」の一言でも言えるような奴であればこのままアツコが無理やりホモ君をカップル専用宿泊施設に押し込んで無事子宝に恵まれるようなものだが、このホモ野郎はヘタレの極みである。そんなんだから別世界線でサオリに「
「幸せだね、トモル」
「………」
「トモル?」
アツコがトモルの顔を覗き込めば、トモルは複雑な表情をしていた。アツコ達が幸せになるのはトモルにとって最も望むことであるが、自分もそこに含まれていることに当人が困惑していた。
「まだ時折思うんだ。俺はここにいて良い人間じゃないと」
「どうして?」
「だって、俺はお前達を裏切っ…タァ!?!?」
裏切ったの「うらぎ」あたりでパチーン!と引っ叩かれる。残念ながら当然である。犯人のアツコは可愛らしく頬をぷくーっと膨れさせていた。
「それはもう手打ちにしたはず」
「手打ちって……だがアレは」
あの時間のゴタゴタが収まって、あの店を開くことが決まった後。トモルは改めてスクワッドの皆に断罪を求めた。スクワッドの皆はそれを了承し、それぞれの刑を言い渡したのだが。
サオリは日課の訓練に付き合う刑(本人曰く「あの事件で蜂の巣にしてやったのでそれで十分」)
ミサキは3日に1度、デザートを貢ぐ刑(ミサキは地上に出て甘味にハマっていた。スイーツ(笑))
ヒヨリは日課に膝枕を導入の刑(攻守交代アリ。時折耳掃除を導入すること)
アツコは寝床を一緒にする刑(これを聞いたヒヨリが「その手がありました!?」と驚天動地した)
裏切りの断罪にしてはあまりにも、その、アレだった。トモルは納得していない。それを聞いたアツコはまだ頬を膨らませながらも、言葉を続けた。
「私、夢が一つ叶ったの」
「ああ。……ん、ひとつ?」
トモルは首を傾げる。夢の一つが「花屋を開くこと」なのは昔から聞いていたことなので知っている。だが、他にも夢があるというのは心当たりがなかった。しばらく会わないうちに得た夢なのか、それとも内に秘めていたのか。
「もう一つはね、トモルがいないと叶わないの」
「俺が……アツコの夢を手伝えるのか」
「うん、協力してくれる?」
「ああ。俺にできることは
紛れもなく本心だった。アツコの夢を叶えたのは、言ってしまえば先生である。トモルは罪人であり、そんな身では惚れた女の夢を叶えることが出来なかった。
だが、トモルにしかできないことがある。アツコの夢を叶えることができる。それはトモルにとって生きる意味にもなれることだった。おっっも
だからこその返答。だがそれはトモルにとって人生が決まる言葉のひとつだった。具体的に言えば、人生の墓場まっしぐらの。
「ん? 今
「え?」
「言ったよね、トモル?」
「あ、圧が強くないか。どうしたんだアツコ」
「言ったよね???」
「アッ、ハイ」
返答を聞いたアツコは満足そうに頷いて、上機嫌にスキップして前に出る。着ていた勝負服、サマードレスをひらりと翻してトモルへ振り向いた。
「じゃあ……絶対叶えてね」
「私、世界で一番好きな人の、お嫁さんになりたいの」
微笑んだ麦わら帽子の少女の姿はまるで絵画の1シーンのようで、世界で一番美しく見えた。
●今日のホモ君
さっさと抱け。
●アツコ
かわいい。押しが強い。
ブレーキ? そこになければないですね。
●先生
後日談のMVP
サオリがヘルメットを被る前に、スクワッド共々お花屋さんに押し込むことに成功した。その際、ヴァルキューレと一悶着あったのだとか。