※いずれも実在する現役のVtuberである、「ナズ=シアさん」「遊部めあさん」「舞坂ねあるさん」「夜目乃カモーネさん」の4人が登場するファン小説です。
※最近、個人的に配信を追っているこの4人を、同じ作品の中で勢ぞろいさせてみたかったというだけの動機で書いた作品です。他意はありません(しいて言えば、彼女たちの一ファンとして紹介みたいなことが出来たらいいなの気持ち)。
※配信の時の喋り口調などを意識しつつ、出来るだけ本人たちの会話を忠実に再現するよう執筆したつもりではありますが、ところどころ想像で補っている個所や、話を成立させるためのご都合主義が含まれている可能性があります。(生)温かい目で見ていただけると幸いです。
※4人とも非常に魅力的なVtuberさんです。この小説がきっかけで彼女たちを知った方々は、是非現実の彼女たちが手掛ける配信に遊びに行ってみてくださいね。
「あー、疲れたぁ…。僕もう喉からからだよぉ…」
ここは国内某所、とある街角のどこにでもあるような喫茶店。いかにも疲労困憊といった風に机に突っ伏す親友・遊部めあの様子を見つめながら、ナズ=シアは苦笑いを浮かべていた。
お互いの関係を「唯一無二の一番の親友」と公言する2人は、ともに現役Vtuberとして活動する者同士である。ナズは法人格を持たないインフルエンサー集団である「TaiMグループ」、めあは企業運営の事務所である「Live Duo」とそれぞれ普段の所属は異なるものの、同世代であることに加えて現在はともにVtuberとしての活動に専念していることなど共通項が多く、また人間的にもウマが合うこともあって配信の内外を問わず、交流が続く仲だ。
この日も、配信外での活動としてしばらくぶりに2人きりで会い、遊びに出かけていた2人。ちょうど休憩と小腹満たしを兼ねて、この店にやってきたところだった。普段はインドア派でほとんど外に出ないことに加え、この日は4月末にもかかわらず早くも気温は25度に達する夏日。めあにとっては確かに少々堪えたかもしれない。
「カラオケ行ってからのゲーセン、しかも気づいたらめちゃくちゃ長居しちゃってたけんねぇ。流石にうちもちょっと疲れたわ。めあちゃん何にするー?」
生まれ故郷である九州の方言も交えてそう応じながら、手元にメニュー表を手繰り寄せる。ページを開くと、「喫茶店のメニュー」と聞けば誰もがイメージするようなドリンクの数々が、写真付きで目に飛び込んできた。
「あー、じゃあ僕コーラフロートでいいや。ナズちゃん頼んどいてよ」
自他ともに認めるれっきとした女性であるが、一人称は「僕」を使ういわゆる「僕っ娘」であるめあはそう答えると、若干恨めしそうにつぶやいた。
「あーあ、喫煙席が空いてたらよかったのになぁ。吸いたい…」
その言葉に、ナズはまた苦笑した。喫煙者であることを公言しているめあに対し、アルコールも飲まなければタバコも吸わない主義のナズ。あいにく、今日のこの店はなかなかの盛況ぶりで、喫煙席が空く見込みはしばらくなさそうだ。もちろん、2人が通されたのも禁煙席である。自分は合わせることはできるから喫煙席でもなんとかなるけれど、普段吸う人が吸えないのはそれなりにしんどいだろう、と彼女は内心つぶやいたのだった。
「それにしてもナズちゃん、最近めっちゃ歌上達してない?正直、僕さっき聴いた時びっくりしたもん」
コーラフロートを一度、音を立てて大きく吸い込んだ後、ふとめあがそう問いかけてきた。
「え、そう?」
「いや、久しぶりに一緒にカラオケ行ったからっていうのもあるかもしれないけどさ、なんか全体的に発声がうまくなってるなぁって思って」
「え、本当にー?いやぁ、めあたんにそう言われると嬉しいねぇ。ありがとうめあたん、えへえへ」
めあにこうやって褒められた時に、おどけた調子でわざといわゆる「キモオタ」っぽい口調で応じるのは、ナズ流の照れ隠しである。ただ、普段の話声とは全くと言っていいほど印象が変わるので、何も知らない人はその美麗なルックスにはおよそ似つかわしくない声質に、思わず何事かと振り向くかもしれない。
ところで歌唱力という部分に関して触れるならば、配信者としてのめあにとってはその実力は非常に重要な要素の1つである。元々は、同じ芸術系でも美術畑の出身であり、お絵かき配信の方が頻度も高く有名なのだが、歌に関してもそれに並ぶもう1つの自己表現手段と言えるだろう。話し声同様、どことなく幼さも感じさせつつも透明感のある歌声は、歌枠においても歌ってみたにおいてもファンからは非常に高い評価を勝ち得ている。
一方のナズは、元々歌唱力の高さを売りとして前面に押し出しているタイプではない。しかし、もっと歌が上手くなりたいという一心で始めた歌枠では、回数を重ねるごとにその明るく元気な歌声は大きく成長を遂げ、今ではやはり重要な配信コンテンツの1つにまでなった感がある。また、ロック好きが高じてシャウト、いわゆるデスボイスも使いこなしているのは、親友であるめあにもない大きな武器と言えるかもしれない。
こうして見ると、ナズとめあの間には相違点も少なからずある。「バーチャル猫ブリーダー」を自称するめあは、性格的に若干気まぐれな部分があったりするなど、自身も猫っぽい一面を持っている。一方、「ゴーヤが好きな晴れ女ニートVtuber」が名乗り口上のナズは、切れ長で涼し気な目元などビジュアル面こそ猫系と言われるものの、性格は明るく天真爛漫で(めあ曰く)甘えたがりなところもあったりするなど、むしろ犬系女子と呼ばれる部類に入る。なので、性格的には真反対だったりするのだけど、それが逆に同族嫌悪に陥ったりせず仲良くやれている秘訣でもあるのかもしれない。
「まぁ、でも確かに今は腹式呼吸がうまくなった気するからねぇ。前はなかなかそういうのうまく出来なかったし。そういう意味では上達してんのかもしんないねー。あんまり自分では自覚ないんだけどさ」
「やっぱこういうのって数こなすの大事なんだよ。そういえば、ナズちゃん今歌枠って365分の何回目だっけ?」
めあが尋ねる。ナズの歌枠はシリーズものになっており、タイトルは「365日後に歌がうまくなっている予定のナズ=シア」。読んで字のごとく、1年と同じ365回の歌枠配信を継続していくことで、歌唱力が上達していく様子をリスナーである「ナズっ子」と共有しようという趣旨の試みだ。もちろん、合間合間で休みを取ったり、他の配信をしたりもするので365日ぶっ続けで歌枠をやり続ける、という意味ではない。実際には、幕切れまでに1年以上の期間を要するロングランプロジェクトである。
「今41回目、次が42回目だね。そういや後もうちょいで50回か」
「逆にまだ42回でそれ⁉これ、全部やり切ったらどんなんなってんだろうね。普通に楽しみではあるよ、正直ちょっと伸びしろありすぎて怖いけど」
めあは、元々大きな目をさらに大きく見開いた。「〇〇ではある」というのは、彼女が配信でもよく使う口癖である。元々は誰かがそういう言い方をしているのが移ったのが発端らしいが、誰がきっかけなのかは最早あいまいになっている。
「いやー、歌のうまいVさんなんてたくさんいるからなぁ。まだまだこれからでしょ」
そう答えたナズに対し、ふと急にめあが前のめりで食いついてきた。
「じゃあさ、365回目が終わったら記念にオリ曲とか出そうよ。僕とナズちゃんのデュエットでさ。絶対楽しそうじゃん」
「え、オリ曲⁉」
突飛な提案に、今度はナズが目を見開く番である。歌枠こそ数多くやってはいても、自分が歌唱する楽曲をリリースするという意味での音楽活動は、そこまで本格的にやっているわけではない。自身が発信するオリジナル曲は0、既存曲をカバーする「歌ってみた」もまだ1回しか経験がないのだ。今まで全く経験のないオリジナル曲、それもデュエットでという提案は、まさしく青天の霹靂だった。
「うーん、どうしよっかなぁ…。正直考えたことなかったんだよねぇ」
ナズは頭を掻いた。実際のところ、これまでもこうした提案がなかったわけではないのだが、今まで結果的にオリジナル楽曲をやってこなかったのは、「ナズ=シアのオリジナル曲」というものの価値に、自分自身が確固たる自信を持てていないせいもあったのだ。著名なアーティストが出した楽曲のカバーであれば、プロモーションするにあたってその元のアーティストのブランド力も利用できるけれども、YouTubeのチャンネル登録者がまだ2000人には満たない程度の自分が出すオリジナル曲となると、そういった芸当は出来ない。
それでもオリジナル曲を出そうと思えるだけの自信がまだ持てなくて、そうした提案については声をかけてくれたこと自体には感謝しつつも、遠回しにやんわりと断ってきたのが今までの彼女だった。とはいえ、今回提案してきたのは他でもない唯一無二の親友である。流石に今回ばかりは無碍にもできない。どう返事したものか。
「まぁ、365回目はまだまだ当分先の話だからなぁ。その時期が近づいてきたら、その時にまた考えよっか」
現時点ではイエスともノーとも言わず、とりあえずネガティブな空気は出さないようにしながらナズが応じたその時。ふと、ナズの背後の方で「カラン」という大きな音が響いた。エントランスのドアが開いた音だ。新しい来客だろうか、今日は確かにかなりの盛況らしい。
「あれっ?」
ふと、眼前のめあが何かに気づいた様子で目を見開いた。
「ん?どした?」
ナズが首をかしげると、めあはエントランスの方を指さしながら小声でつぶやく。
「ねぇナズちゃん、あそこ。今入ってきたのってもしかして…」
その言葉に、思わずナズがめあの指さした方向に振り返ると。その視線の先に、ちょうど今来店したと思われる人物の姿が目に入った。「あっ」という言葉が思わず口をつく。傍目にも目立ち、やけに注目をひくその姿は、ナズにとってはむしろ良く見慣れたものだった。
鮮やかなピンク色のロングヘアに、ゲームのコントローラのボタンをイメージしたロゴの刺繍を施した黒のベースボールキャップ。ガーリーな印象の白いブラウスとピンク色のスカートの上に、丈の長い薄いブルーの上着を羽織るその姿は、どこからどう見てもナズにとってのもう1人の重要な友人のそれだ。まさか、こんなところで出会うことになるとは思わなかったが。
一旦は順番待ちの表に名前を書き終えたその女性が、ふとこちらの視線に気づいて顔をこちらに向ける。彼女が目を見開き、こちらを驚きながら指さしつつ声を上げるまでに、ほとんど時間はかからなかった。
「あれっ、ナズちゃんにめあちゃん!?嘘!?」
「わぁ、ねあるーん!久しぶりーっ!!」
舞坂ねあるは「ギャルゲーマーVtuber」を名乗る、ナズとめあにとっては同世代の同業者の1人である。いわゆる企業Vであるめあとは逆に、Vtuberとしてはナズと同じ個人勢ということになるが、特定の事務所やグループに所属していないという意味ではナズともめあとも異なる立場だ。めあと同様、かつてはナズとコラボ配信をしたこともあり、ねあるから見たナズはめあとの共通の友人という立ち位置である。
実際、この3人のリスナーはそれぞれのファンを兼任していることが珍しくなく、ファン層も重複する部分が多い。3人とも同時に推しているなんてリスナーもざらだ。本人たちもお互いの配信にはよく遊びに行っており、顔なじみの間柄だった。
「いやー、びっくりしたわー。まさかここでねあるんと会うなんて」
「ねあるもびっくりしたよぉ。たまたまお店に入ったらナズちゃんたちがいたなんて思わなかったもん」
順番待ちを取り消して、ナズとめあの厚意により2人との相席(幸い、今回の席は4人掛けなので相席する余裕は十分にある)となったねあるは、そう言いながら笑った。
事実上の専業Vである2人とは違って、ねあるは社会人として仕事をしながら配信活動を続ける兼業Vだ。この日はたまたま仕事が早く終わったので、帰宅して今夜の配信に備える前に出先で一息つこうと、この店にやってきた。そこで、先に客として居合わせていた2人に偶然にも出会ったというわけである。まさか、たまたま選んだこの店に先に友達が、それも自分とは全く無関係に来ているとは、夢にも思わなかっただろう。
「こんな偶然ってあるんだねぇ。配信ではよくコメント欄で会ってるけど、リアルでこうやって会うなんて珍しいもんね」
めあが同調するようにつぶやく。
「でも、こうやって実際にめあちゃんとも顔合わせてお話しできるの、凄い嬉しいな。混ぜてくれてありがとうねっ」
ねあるはニコニコしながらそう答えた。明るくフレンドリーな性格という意味ではナズとも共通する一方、ねあるはかなり重度の天然ボケでもあり、それが原因で配信をするたびに何かしらしでかす(と言っても、「可愛らしいドジ」に収まる範疇のことであるのがほとんどだが)のがお決まりとなっている。
それは看板であるゲーム実況配信においても顕著で、緻密に戦略を立てるよりはひたすらその場のノリでゴリ押すのが特徴。初心者でさえ知っているような攻略上の基礎知識すらぶっ飛ばして我流で突き進みがちなので、リスナーからの辛辣なツッコミは日常茶飯事だ。ただし根は今時珍しいほどいたって素直で裏表がなく、そうした指摘にも苦笑いしつつ「ごめーん」と明るく受け流せるのは、彼女の人柄のなせる業だろう。同業者にもリスナーにも非常に優しいので、そうした側面も含めて周囲からは愛されるキャラである。
「まぁでも、せっかく会ったからには色々話聞きたいよね。どうなの、最近は」
ナズがねあるに尋ねる。
「色々大変だよ。最近、会社に新しい人が入ってきたからさ、ねあるが教育係として色々教えてるんだよね」
「えっ、ねあるんが教育係やってんの?大丈夫、ちゃんと教えられてる?」
半分は冗談めかして茶化しつつ、半分は本気で心配した様子でナズが尋ねる。
「教育係なのにポンやらかして、配信の時みたいにアワアワしてたりして」
含み笑いを漏らしながらめあも同調する。それに対して、ねあるは苦笑いを浮かべた。
「そんなことない、そんなことない!ねあるはちゃんとしっかり仕事は教えてるから」
「えー、本当かなぁ?」
「もう、オフなのにナズちゃんもめあちゃんも配信の時のねあらーみたいになってるーっ!」
自分のリスナーを指すファンネームである「ねあらー」を引き合いに出しつつ(ちなみに、めあのリスナーは「にゃんず」の名前で呼ばれる)、いかにも「><」の顔文字が似合いそうな表情で反論するねあるを尻目に、ナズとめあは揃って内心「可愛い…」とつぶやいたのだった。
「ちなみに、その仕事教えてる人って同世代?」
「ううん、年上。でもね、すっごく優しい人だから一緒に仕事しやすいし、教えやすい」
めあの質問に、ねあるが首を振る。
「年上かぁ…。年上の部下を持つって大変なんだろうなぁ。僕、ニートだから分かんないけど」
「まぁ、相手がいい人なら確かにやりやすいと思うけどねー。合わない人と当たると本当大変よ」
ナズはうなずいた。今でこそVtuberとして活動してはいるが、彼女もデビューを果たす前は自身が「社畜の国」と呼ぶ地元で、家電関係の接客の仕事についていた。そこでの仕事があまりにも精神的にも肉体的にも辛すぎて、最終的には仕事をやめ、地元からも飛び出したからこそ今のナズがある(そこで身に付いたPC周りの知識が、結果的に今の配信者としての活動に大いに役立っているのは、若干皮肉めいたものを感じないでもないが)。
少なくとも、Vtuberとして多くのリスナーに囲まれ、熱狂的なファンも少なからず獲得している今、ナズにとっては今ねあるがいる世界は戻りたいと思うような場所ではないだろう。そこで頑張っている友人に対しては、心からリスペクトを送るにしても。
「優しい人なら良かったじゃん。仲良くやれるならいいんじゃない?」
「どうする、そのうち一緒にご飯とか行っちゃうような間柄になったらさ?ワンチャンさらにそこから関係が発展するとか…」
ニヤニヤしながら問いかけるナズに対して、ねあるは苦笑しながら首を横に振った。
「えー、それはないかなぁ。ご飯行くとかはいいけど、職場恋愛はあんまりやりたくないからさぁ。もし別れちゃったときにお互い気まずいじゃん」
こういう点に関しては、ねある自身のスタンスは結構シビアである。返す刀で、今度は彼女がナズに対して反撃する番だ。
「ナズちゃんこそ最近その辺はどうなの?配信とかで忙しいだろうけど」
「いやぁ、ないない。うちの男運の悪さはねあるんもよく知ってるじゃん」
ナズはかぶりを振った。過去に、恋愛経験自体はそれなりにあるナズではあるが、パートナーとなった相手はいずれもどこかしら難があり、長続きする関係とはならなかった。最初に恋愛関係になった相手と、共依存関係に陥った反動で色々な相手をとっかえひっかえした、というのもあって、恋愛事に関してはあまりいい思い出がないのが正直なところである。それよりも、こうやって同性の友人と遊んでいる方が今はよっぽど楽しいのだ。
「ナズちゃんはあれじゃん、いつか石油王見つけて結婚申し込むんでしょ。配信でもよく言ってるやつ」
めあが横から口をはさむ。「いつかは石油王と結婚する」というのは、彼女の言う通りナズが配信で定期的に口にするセリフでもある―本人も冗談めかしているし、本気にしているナズっ子もほとんどいないだろうが。
「そうそう。あー、英語とアラビア語勉強しないとなぁ。今度サウジアラビアまで石油でも掘りに行くかぁ」
そうナズがおどけたその時。たまたま外に顔を向けたタイミングで、ガラス窓の外側で驚いた表情を浮かべながら、こちらを見つめつつ立ち尽くす人物の姿が見えた。一呼吸おいて、目の前の人物の姿が脳内のデータベースにヒットする。白と緑のリボンをつけ、鳥の頭を模したようなデザインの、茶色ベースのカラーリングのベレー帽。薄めの髪色に合わせ、ベージュ系の落ち着いた色合いでまとめられた上着に、濃い茶色のスカート。そして、背中から左右に大きく広がる、やけに存在感抜群の鳥の羽。
思わず、ナズの口から「クスッ」という笑いが漏れた。リスナーからは「壊れた洗濯機」とも評されるその独特の笑い声は、止めようと思うほどに止まらずにどんどん大きくなる。親友と一緒に喫茶店で一休みしていたはずが、偶然別の友達と落ち合い、そして今さらにまた別の友達が目の前に。これだけ偶然が重なることって、世の中で一体どれだけあるんだろうか。
「カモーネちゃんwwwwそんなところでなんて顔してるのあなたwwww」
「カモられ系Vtuber」を名乗る
特筆すべきは何と言ってもその歌唱力。かつては声楽をかじっていたことなどもあり、オペラの歌曲すら歌いこなすそのシンフォニックな歌声は、めあともまた別のベクトルにおいて極めてハイレベルなものである。初めて彼女を見たのが歌枠というリスナーは、一瞬でその歌声の魅力にとりつかれることだろう。
一方で、リスナーに選ばせた素材を使ってオリジナルカクテルを作る(そして大抵の場合、組み合わせのバグにより特級呪物が生み出される)、「カモーネカクテル(通称カモテル)」なる配信を定期的に開いたりするなど、Vtuberらしい芸人気質も持ち合わせていたりする。どんなVtuberであってもそうかもしれないが、一言では語りつくせないような魅力をたくさん備えている配信者であることは事実だ。
それにしても、偶然というのは重なるものである。カモーネもまたナズとは過去にコラボをやった間柄で、ナズが毎週金曜午後5時から行う定期雑談「コメントノック」にもリスナーとしてよく顔を出す1人だ。また、めあとねあるもコラボなどで直接絡んだことはないまでも、カモーネのことは同業者として存在は認知している。ナズ=シアという共通の友人を持つ3人が、まさかここで一堂に会することになるなんて。
「いやー、びっくりしましたカモー!まさか、こんなところでナズちゃんたちと会うなんて!」
なんやかんやでこの日2人目の相席者となったカモーネの言葉に、ナズとめあは思わず笑いをかみ殺した。この流れは、さっきねあるが合流した時にもやった奴だ。
「たまたまこっちの方に用事があって、お店の前を通りかかったらなんだか見たことある顔がいるなぁってなったんですカモ。それで、中を見てみたらまさかのナズちゃんだったなんて!」
「あ、じゃあねあるも同じ感じだぁ。ねあるもねー、さっきたまたまこのお店に来たらナズちゃんとめあちゃんが先に来てたのに気付いて、相席させてもらってるんですよ」
ねあるが明るい調子で応じる。その態度自体はいたって友好的だが、活動での絡みがまだお互い限定的なこともあり、カモーネに対しては敬語口調である。
「お互いに元々全然そういうつもりじゃなかったのに、なんやかんやこうやって一緒になってるのめっちゃおもろいんだけど」
ナズが笑う。
「いいじゃんいいじゃん、友達に囲まれて。ナズちゃん、色んな子と仲良しだもんね」
ねあるがナズに水を向ける。実際この3人に限らず、ナズの交友関係はグループの内外や男女を問わず非常に幅広い。割と誰とでもすぐに打ち解けることができるのは、生まれ持った天真爛漫さや友人を大事にする姿勢の賜物だろう。
その中でも、今目の前にいるこの3人はナズにとっては、非常に重要な存在であることは間違いなかった。唯一無二の親友と公言するめあはもちろん、ねあるやカモーネも彼女から見れば気の置けない友人であることに変わりはないし、仮に今日遊んでいた相手がめあではなくこの2人のどちらかだったとしても、きっと心から楽しめただろう。
「そういう意味では僕、正直ナズちゃんがちょっと羨ましいんだよね」
ふと、めあが口を開く。他の3人の視線がそちらに一斉に向いた。
「え?そうなの?」
ナズの問いかけに、めあはうなずいた。
「だって僕、最近あんまりVtuber同士の横のつながりって多くないからさ。その分、リスナーとは日頃から凄く交流してるけど」
Live Duoという事務所所属であることも関係してか、めあの配信は基本的にほとんどがソロというスタイルである。同じ事務所所属のライバー同士であっても、配信という形で絡むことは基本的にはないのだ。もちろん、運営とは日頃から連絡を取りつつ自分のペースで配信ができるから、それはそれで大きなメリットではあるのだが、同業者同士のつながりが増えていかないのは、それはそれで寂しいものがある。そんな彼女からすれば、ナズの交友関係の広がりは確かに羨ましく映るのかもしれない。
「うーん…。だったら、今から交友関係広げていったらいいんじゃないですカモ?」
ふと、カモーネが発したセリフに今度は全員の視線がそちらに向いた。
「今から…?」
「そうそう。せっかくここで、こうやってみんなで集まってるんだし、こういう機会を生かさない手はないんじゃない?めあさんとも仲良く出来たらいいなぁ」
カモーネは、こうやってめあさんやねあるさんとも会えて嬉しいですカモよ、と彼女は笑って付け加えた。基本的にいつもにこやかな配信中と何ら変わらないその笑顔に、思わず他の3人も相好を崩す。
「そうだ!じゃあさ、せっかくこうやってみんなで集まったんだし、もっとお互い仲良くなれるように今度コラボ配信やろうよ!予定合わせてさ」
ねあるが勢い込んで手を挙げる。
「あれ、ねあるんって確かTwitterでコラボ停止中とか書いてなかった?」
「それとこれとは別でしょー!ねあるも基本的にはソロだけど、カモーネさんの意見には賛成だもん。ねあるもせっかくだから、めあちゃんやカモーネさんともっと仲良くしたいよ」
ナズの問いかけに、ねあるは首を振った。
「みんな、今まではお互いにそんなに絡んでこなかったかもしれないけど、ナズちゃんとはそれぞれ個別にコラボやったことある同士でしょ?それが4人全員配信でドーン!って勢ぞろいしたら、リスナーのみんなもきっと喜ぶんじゃない?みんなお互いにファン層被ってる人たちだろうしさ」
ねあるの言葉に、他の3人はお互いの顔を見合せた。そう言われてみれば、確かに面白いアイデアではあるのかもしれない。この4人が一堂に会するというのは、リスナーから見ればありそうでなかった組み合わせだ。それを現実のものとして見せてあげられたとしたら。また、コラボを一緒にやったことによってナズを介した友人としてではなく、それぞれがお互いにより交流を深められたとしたら。
「確かにそう言われてみれば、4人コラボは面白そうですカモね」
カモーネがにやりと笑う。
「やるんだったら運営さんに相談しないとだけどね、僕は」
それぞれで枠を建てるならNoとは言われないかもだけど、とめあが応じる。ナズは、2人の言葉を聞きながら思案していた。それぞれ個別に仲のいいこの3人とのコラボ配信自体は面白いアイデアだが、一番大事なのは4人で集まって具体的に何をするかだ。この4人でのコラボとなれば、出来ることの選択肢はおのずと限られてくるだろう。それぞれのリスナーを楽しませるために、このメンバーで出来る企画とは、果たしてどんなものなのか。
「コラボやるんだったらさ、うちらが一体何するかをちゃんと決めた方がいいと思うんだよね。めあちゃんも、運営さんに持ってく前にある程度中身が固まってた方が相談しやすいでしょ」
彼女の言葉に、他の3人がうなずく。この眼前の3人とそれぞれコラボ配信をやってきた、その経験はこの場で彼女に自然とリーダーシップをとらせるには、十分すぎるものだった。
「それじゃあ、せっかく集まってるんだしさ。ミーティングやろうよ、今から」
しばらくぶりの執筆作品です。このところ、小説の執筆は全くやらずにVtuberの応援やユニットを組んでの音楽活動(ちなみに、どっちも自分にとっては関連性のある活動だったりします)をやっていたのですが、久しぶりに音楽以外でのファン活動をしたくなったので、オフを利用してこんな作品を書いてみました。
出来るだけ忠実に再現しようと試みてはいますが、きっと彼女たちの魅力は実際にYouTubeで見ることができる配信の方が、遥かに伝わると思います。この4人のコラボ配信が、本当に現実のものになるのかは神のみぞ知るところではありますが、あらすじの但し書きにも書いた通り、4人ともそれぞれ好きになれる要素がたくさんある配信者なので、是非一度彼女たちの配信をのぞいてみてくださいね!