POP UP SHOPのパジャマ姿に影響されて書いたやつです

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パジャマパーティ

『今女子高生の間で大流行!パジャマパーティーに密着してみました!』

朝から元気のいいアナウンサーの声が頭に響く。

「ひとりちゃん?パン焼けたよ!」

「あ、うん!今食べる」

黙々とパンを口に運んでいるけど頭の中は考え事でいっぱい。

パジャマパーティー...か。誘える人のいない私には縁の遠そうな言葉だな...

その時私の脳に電流が走った。

ぼとっとパンも落ちた。

そうだ...!!今の私には結束バンドの皆がいる!パジャマパーティーなんて経験したら私はもう立派な陽キャなのでは...!よし!誘うぞ!がんばれ午後の後藤ひとり!

「えっと...ひとりちゃん...?パン落としたよ?」

「あ、うん」

 

 

********

「ぁ...」

うぅ...声が出ない...スターリーに入るまではいけると思ってたけど、やっぱり自分から誘うなんて無理だ...話しかけようとしてもうめき声みたいな音しか出なくて誘えないし...

もし誘っても嫌がられちゃったらどうしよう...生きていけない...でも喜多ちゃんお泊りに来てくれたし虹夏ちゃんのお家に泊めてもらったこともあるから嫌がるなんてことないはず...!あ...でもリョウさんこういうのあんまり好きじゃないかな...前に虹夏ちゃん『リョウってやりたくない行事とかすぐに適当な用事でっち上げてすっぽかそうとするんだよねぇ...』って言ってたし断られそう...

あー!もう...これ考えるのも何回目なんだろ...

「またひとりちゃんの顔ぐちゃぐちゃになってますね...」

「ほんとだ...まあ大丈夫!あれでも私たちの声きこえてるらしいし!さて本日の議題!一週間後のライブの打ち上げどうする?」

はっ!そうか!ライブの打ち上げという口実があれば私でも誘えるかも...!ここしかない...!多分ここを逃したら次のライブまで誘えない!

 

「ぐっ...あ!あの...!私の家でお泊り会...しませんか...!」

 

「「「え...?」」」

 

あ...あっあっ......引かれた...?もうだめだ...死のう...

「「「今」」」

 

「ぼっちちゃんが!」

「ひとりちゃんが...!」

「ぼっちが...?」

 

「「「お泊り会しませんかって言った...?」」」

 

「えー!!本当に!?行っていいの?」

「まさかひとりちゃんから誘ってくれるなんて...」

「急だけどなにか理由でもあるの?」

よ、良かったぁ...拒絶されたわけじゃなかった...

「いや...その...ちょっと恥ずかしいんですけど...朝のニュースでパジャマパーティー特集みたいなのやってて...結束バンドのみんなでやったら楽しいだろうなって思って...」

「ふーん...なるほどね。じゃあ私も行こうかな」

「パジャマパーティー...!だってよ!喜多ちゃん!ぼっちちゃんも成長したねぇ...」

「..........」

「あー...喜多ちゃん...?スマホを見つめる目が怖いよ...?」

「あ!すみません!かわいいパジャマ探してました!」

「あはは!喜多ちゃんすごい気合入ってるね!」

「当たり前です!あのひとりちゃんがパジャマパーティーって言ったんですよ!?」

 

みんな喜んでくれた...良かったぁ...!

 

「それでぼっちちゃん?もう家族に泊まっていいか聞いてあるの?」

「あ...まだ何も話してません...家帰ってから聞いておきます...」

 

だって、もしみんなに断られたら家族になんて言えばいいかわからなかったし...

 

*******

 

「昨日のぼっちちゃんにはびっくりだったね!いつにも増して挙動不審だったけどまさかパジャマパーティとは...!!」

「うん」

「それで?リョウはどんなパジャマ着て行く予定なの?」

「え?いつも着てるこれだけど...?」

そう言ってリョウは胸を指差す。その胸には竜巻とその中を泳ぐサメ。

「そんなの着てったらぼっちちゃん泣いちゃうよ...」

「大丈夫。多分ぼっちはパジャマパーティができることに舞い上がって気にしない」

「たしかにそうかもだけど...まあリョウがかわいいパジャマ持ってなくても良いよ。むしろ持ってるなんて思ってなかったしね。これ、あげるよ!」

 

そう言って紙袋を手渡す。

 

「え?なにこれ?」

「まあまあ開けてみなさいな!」

ぺりぺりと丁寧に包装紙を剥いていく。

青とピンクが目立つもこもこを見えたとき、こころなしかリョウの目がちょっと見開かれたような...?

いや、やっぱわかんないわ。普段から表情が乏しすぎる。

「あー...良いの?これ。私返せるお金ないけど」

「良いんだよ、そんなこと!プレゼントってことで!」

「そっか...うん。ありがとう。ねえ虹夏。これ今着てきてもいい?」

「もちろん!」

「じゃあ着替えてくる」

バタンと勢いよくドアが閉められる。

そんなに嬉しかったのかな?今日のリョウなんか素直で新鮮かも。

そんなことを考えているとまた勢いよくドアが開く。

「早っ!」

「ねえ...これ私にはかわいすぎない...?」

珍しくもじもじしてる。確かにリョウはあんまりこういうかわいい系の服着ないよね。そのくせしっかり似合ってるのは腹立つけど...

「似合ってるじゃん!かわいー!」

「ちょっとやめてよ...むずがゆくなる。でもそっか。似合ってるんだ。ふーん...」

ありゃ?また出てっちゃった。どうしたんだろ?ちょっとついてくか。

「店長。見て、これ虹夏から貰った」

ふふんとドヤ顔を決めるリョウ。本当にリョウは...

「な!リョウお前ズルいぞ!虹夏!私には何かないのか!」

はぁ...

「ないよ...今度ぼっちちゃんの家でお泊り会することになったのにリョウがまともなパジャマ持ってないからあげただけ」

「む、むう...なら仕方ないか...じゃあ虹夏のパジャマ姿見せてくれたら手打ちにしてやるよ...」

「え!?なんで!」

「なんでってそりゃ...お前もぼっちちゃん家泊まりに行くんだろ?私だって虹夏のパジャマ見たいんだよ」

...お姉ちゃんはもうダメかもしれない。

「ひどい...虹夏は私のパジャマは見ておいて自分のは見せてくれないんだ...」

この二人、こういう時にしか結託しないんだよな...

「リョウが着ても良いかって言ったんじゃん!」

きらきらとした目が見上げてくる...目で訴えかけるな!

「はいはい。わかりましたよ...着てくれば良いんでしょ...!」

 

はぁ...着たは良いもののこの扉の前であの二人が待っていると思うとすごい恥ずかしいな...

そろぉっとドアを開ける。

「えっと...ど...どうかな...?」

無言でスッとスマホを構える二人。

続いてパシャシャシャ!とシャッター音が連続する。

「ちょっと!やめてよ!特にリョウ!足ばっか撮るな!」

「出してるほうが悪い」

「じゃあリョウも撮らせてもらうからね」

この日は結局写真撮影会になっちゃったけど私もリョウの写真を増やせたからまあいっか。

 

*******

ピンポーン

「あ!はーい!今出ます!」

やっと届いた!結局あの後家に帰ってからも2,3時間くらいどれにしようか迷っちゃったのよね。全部ひとりちゃんが悪いのよ!遊ぶ約束なんていつも私のほうから取り付けてたのに、急にお泊り会をしたいなんて言い出すんだもの!

 

「ありがとうございました!」

さーて!早速着ちゃお!

 

うん...!我ながら似合ってる!さて、この写真もイソスタにあげて

 

......いや。やっぱりやめた。せっかくお泊り会のために選んだ服だもの!終わった後にアップしても遅くはないし。

*******

「よし!これにしよう!」

注文っと。いやあ...すごい悩んだな...

自分でパジャマパーティーしたいって言っておきながらよく考えたら人に見せられるようなパジャマ持ってないんだもん。どんなパジャマにするか迷ったけどパーティーっていうくらいだしハロウィンパーティーとかと同じ感じかな?

 

 

今日はお泊まり会当日。

皆はお昼すぎくらいから来てくれてたくさん遊んだ。

例えば

ツイスター

『ぼっちちゃん!!それ絶対届かないから!諦めなって!』

『きゃー!!ひとりちゃんの腕が...!曲がるはずのない方向に!メ..!メキャメキャって音もする...私これ以上見てられません...』

『阿鼻叫喚...』

 

人生ゲーム

『なんでひとりちゃんはそんなに波乱万丈な人生を送ってるの...?』

『ぷふっ...宝くじ当たった後お金全部なくすとか初めて見た...』

『無職がなんかいってら...』

『可哀そうでしょ?養って』

『はい!私が養います!』

『これそういうゲームじゃないでしょ!』

 

あとはリョウさんが持ってきたス〇ブラ

『あれ?あれ??』

『山田ァ!初心者が二人もいるのに即死コンボ決めるのは大人げないぞ!』

『私は相手によって手加減したりしない』

『ダセェ...』

 

ほかにも映画見たりとかご飯食べたりしてほんっとうに楽しかった...!

「今日はめっちゃ遊んだね!」

「ですね!」

虹夏ちゃんの言うとおりだ。前回遊びに来てもらったときはライブTのデザインを決めるという大事な仕事を済ませないまま遊んでたから若干後ろ髪を引かれる思いだったけど、今日は遊ぶために来てるから余計なことは考えずに遊べた。

「さて、私はそろそろお風呂入ってくる」

「あ、どうぞ」

「ちょっと待ってリョウ!どうせならみんなで同時にパジャマ見せ合いたくない?というわけでお風呂から上がったらここの隣の部屋で待機しておいて!」

「了解」

 

それから約一時間後

 

「私あがりましたよー!」

「はーい!みんな!ぼっちちゃんの部屋にあつまれー!」

「うい」

え!?もうそんな時間?

「う...ま、まだ心の準備が...」

「ぼっちちゃんの心の準備はおわらないでしょ!開けるよ!」

扉のあく音によるストレスに耐えられなかった私はとっさにフードを被ってしまった。

ガラッと扉が開く。

 

「「おぉ...!」」

「きゃー!ひとりちゃんかわいい!!写真撮るわね!」

部屋に入るやいなや喜多ちゃんが飛び込んでくる。

「え!?あ、はい!へへへ...私よりもずっとかわいい喜多ちゃんに言われちゃうと...その、なんだか照れちゃいますね...」

 

「ぴゃっ..........」

あれ?どんどん喜多ちゃんの顔が赤く染まっていってる。

「「うわぁ...」」

え!?「うわぁ...」ってなに?私そんなに変なこと言っちゃったかな...

「まあ喜多ちゃんがかわいいのは事実かだけどさ...」

「それにしたって今のやりとりは甘すぎるけどね」

「先輩たちまで...あひゅう...」

「あ!喜多ちゃんが倒れた!」

「だ、大丈夫ですか...?」

「う、うん」

 

ようやく騒ぎも一段落したので皆の服をじっくり観察してみた。

 

虹夏ちゃんは頭にいつものでっかいリボンでピンクのカーディガンの中には黒のTシャツをのぞかせている。脚を大きく露出しているので色合いも相まって大人な感じ。

 

リョウさんはいつも着ているどちらかといえばかっこいい系の服とは打って変わって水色をメインとしたもこもこしたパジャマでギャップがあるけどとても似合ってる。

 

喜多ちゃんはミント?みたいな色の水玉のワンピースにオレンジと薄いベージュのもこもこを羽織ってる。あ、違う。水玉じゃなくてこれハートだった。

 

本当にみんなおしゃれだなあ...

...あれ?私の服そもそもおしゃれがどうこうという土俵にも立ててない気がする...やっぱり子供っぽかったかな...あの時の番組ちゃんと見ておくべきだった...

 

 

「おーい、ぼっちちゃーん!ぶつぶつ言ってないで帰ってきて!ぼっちちゃんの怪獣だってかわいいよ!おしゃれにする必要なんてないから!」

「えへ...ほんとですか?」

「そうだよ。ぼっちの服だっていいじゃん。まあ私のにはかなわないけど。」

「ちょっとリョウ...?ほんと空気読めないなあ...」

「あ、でも確かにリョウさんのパジャマいつもと雰囲気ぜんぜん違いますよね」

「虹夏がくれた」

ふふんと胸を張るリョウさん。もしかしてこの人パジャマ自慢するためだけに...さすがにそんなわけないか。

「ほんとにごめんね...リョウってばこのパジャマすごい気にいったみたいで...もうずうっと着てるの!さすがにあのまま外に出ようとしたときは止めたけどね」

「でもびっくりですよ!リョウ先輩クール系だけじゃなくてかわいい系まで似合うなんて...新たな知見を得られました!伊地知先輩には一級リョウ先輩コーディネーターの資格をあげちゃいます!」

「いらんわ!そんなこと言ったらリョウが...」

「じゃあ虹夏、私の明日の服選んでおいて」

「ほら言わんこっちゃない!」

 

ああ。楽しい...たのしいな。

でもまだお泊り会らしいこと、できてないような気がする。映画を見るのもゲームするのもお泊り会らしいと言えばらしいんだけど...

うーん...何か本当にお泊り会らしいこと...

 

あ...!!

 

「あ!あのみなさん!まくら投げ、しませんか?」

 

これだ!よく漫画とかでみるやつ!

 

「いいわね!まくら投げなんてするの修学旅行ぶりかも!」

「私もそうかも!」

無言でスッとまくらを構えるリョウさん。

 

まさか...

 

そのままスローイングしたまくらは虹夏ちゃんの後頭部にクリーンヒットした。

「ぐおっ!?こ、こんの山田ァ...!くらえ!」

虹夏ちゃんの投げたまくらがぼふっと勢いよくリョウさんの顔に吸い込まれる。

「がふ...」

あ、尻餅ついた。

「いくわよ!ひとりちゃん!」

わあ、きれいな投球フォーム。

最期に目に映った喜多ちゃんの笑顔と視界を埋め尽くす白だった。

 

まあ最期というのは冗談として

「やりましたね...喜多ちゃん!」

 

その夜はぼふっ、ぼふっ、ぼふっ、と気の抜けた音と近所迷惑にならないように抑えられた私たちの笑い声があふれていた。本当にたのしかったな。

 

 

 

 

もちろん次の日の私は筋肉痛で腕すらあげられなかったけど。


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