貞操逆転世界の野球で『二刀流』に俺はなる!〜ガチムチ爆乳亜人メスvs一般転生ヒトオス〜 作:鎌原 や裕
第一話〜世界の二刀流SHOHEI〜
世に言う転生というものは本当に実在していたと、僅か数十分も前の自分に言えばどんな顔をするだろうか。
こんなにも現実離れしたことが連続で起きては脳ミソもたまったもんじゃないとパンクし、そんなことを呑気に考えていた。
「おい、聞いておるか?」
「あ……すいません。SHOHEIが裸踊りの所までは聞いてました」
「何も聞いておらんではないか。なんじゃそのパワーワード」
愕然とした顔で固まるおじさん──いや、神様。
とは言っても、『JAPAN』と刺繍されたユニフォームを着て応援用のメガホンを片手にしているからか、その威厳をこれっぽっちも感じない。
「まったく。なら、もう一度言おう。お主は運悪く事故で死んだ。これに関して何かあるか?」
「ありません」
今度は、落ち着いて神様の言葉に耳を傾ける。
俺の死因は、車両側の過失による事故死。享年20歳。
車と衝突した時から自分の事故現場を上空から俯瞰して見ていたから、自分が死んだということは受け止めている。
死んでから不自然に落ち着いている俺は、自分の死という物を「そういうもの」として受け入れていた。
そしてこのまま、地獄なり来世なりに行くため消えていくんだなと呆然としていた時、気づけばこの神様が座る六畳一間のこじんまりとした部屋に座っていたんだ。
「あ〜、まぁ、なんじゃ。さっきも言うたが、この部屋にはテレビがないじゃろ。じゃが儂はこれでも神。下界を自在に覗ける神の眼でWBCを見とったんじゃ、お主のテレビで」
「はぁ、知らぬ間に一緒に観戦してた仲なんですよね?」
「そうじゃ! あの決勝ラウンド、最終回! 3ボール2ストライク、フルカウントからの変化球で空振り三振! 日本優勝! 共に声を出し、歓喜に震えた仲! そんなお主がどうじゃ、少し目を離せば事故って死んどるではないか! これはさしもの儂とて心が痛む。同じ戦いを見た物同士、お主をどうにか助けたろうと思うての」
腕を組み、眦にわずかな涙を溜める神様に若干の困惑。
神様からすれば一緒に観戦してたかもしれないけど、俺からすれば誰かもわからないおじさんが一方的に親切を押し付けてくる状況だ。
正直なにがなんだか、という状況だったが与えられる親切は貰っておくべきだ。
それに、転生なんて自分の意志を持って行えることでもない。
転移とかならまだしも、俺はすでに不幸によって死んで元いた世界の居場所を失っている身だしな。
「そこで、俺を転生させよう……って話でしたよね」
「お、なんじゃあ。やっぱりちゃんと聞いておるではないか。そう、お主を儂が管理する世界に転生させたい……が、ただ転生するだけじゃつまらんじゃろう? ほれ、お主らの世界にあるチート持って転生ってやつじゃ」
うむ。男の子みんなが好きなやつだな、チート転生。
自分の死をさくっと受け入れた俺でも、チートを持って転生しないか?って言われた時は頭がボンっと爆発しちゃったよ、歓喜で。
「だがチートっちゅうてもタダで渡せる物でもない。やはり特別な力、大いなる力には大いなる義務がともなう。お主の運命に、相応の使命が下される」
「……まさか、能力を授かる代わりに魔王を倒して世界を救えとか?」
「いやいや、魔王て。そんなんおるわけなかろう漫画じゃあるまいし。むしろ魔王を倒すよりも難関じゃぞ、お主に能力を渡す代わりに託される使命──それは、世界のSHOHEIになってほしい……ということじゃ」
「へ?」
し、SHOHEI? 何でチート転生の使命がSHOHEI? 最高球速165km/h、打球速度194km/hの193cm95kgの怪物に成長しろってことか……?
「詳しく言うとな、儂の世界にも野球というスポーツはあるのじゃ。今まではこっちの野球も十分楽しめていたのじゃが、ついつい魔が刺してお主の世界のWBCを見たら……もう、ズルいっ‼︎ なんじゃ二刀流って! プロの世界なのに打者と投手で超一流とか凄すぎる! 世界中から期待されてその期待に応えるカリスマ、WBCの最後とか映画じゃん! SHOHEIがいるそっちの世界マジでズルい! 儂の世界にもSHOHEI欲しい!……となったわけでな。ちょうど縁の出来たお主が死んでしもうたし、お主を儂の世界のSHOHEIにしちゃおうと思った訳じゃよ」
──ええ⁉︎ 完っ全に私情じゃん⁉︎ てっきり良くわからない友情で転生させてもらえる棚ボタだと思ってたら、メチャクチャ私情混じりの理由で転生させられるんだ俺!
いやでも逆に良かったかも! 若干の私欲混じりで転生させてもらう方が変に気後れせずにすみそう! 善意100%で転生させてもらうの少し怖かったし!
転生させてくれる理由が俗っぽくはあったけど、まぁ男ならSHOHEIになれって言われて悪い気はしない。
というかなれるもんならなりたい。SHOHEIになりたいって願望なんて男なら誰しもが抱く物だし。
おまけにチート持ってSHOHEIになるんだぞ? ただでさえチートのSHOHEIさんがさらに強くなる?
ナニソレ野球壊れちゃう……宇宙ベースボール編開幕しちゃうな、コレ。
「分かりました。なりましょう……SHOHEI」
出来うる限り最高のキメ顔で、俺は言った。
「おお! いやはや、儂の世界にSHOHEI実装か。胸熱じゃなマジで。あ、ちなみに儂の世界は男女の貞操観念が逆転している貞操観念逆転異世界じゃ。男では少し住みづらさを感じるじゃろうが、まぁそのうち慣れるじゃろう」
男女逆転……あぁ〜なるほど理解。
だから俺のいた世界の野球を見て興奮してたのか。
少々言葉は悪いが、女性野球はパワーやスピードの点でどうしても見劣りしてしまう。
その中であのWBCを見てしまえば、自分の世界の野球にテコ入れをしたくなる気持ちも理解出来る。
「はい。住めば都、死んでる身からすればまた人生を歩めるだけありがたいです」
「うむ。では……短い間じゃったが、儂の世界を頼むぞ! 二刀流フィーバーで界隈を盛り上げてくれ! わりとマジで!」
「はい! 任せてください! WBCのような最高の展開を作り出してみせますよ!」
こうして、俺は新たな世界へ旅立った。
ついぞ、男女逆転“異世界”という言葉を深く考えるともなく……。