貞操逆転世界の野球で『二刀流』に俺はなる!〜ガチムチ爆乳亜人メスvs一般転生ヒトオス〜 作:鎌原 や裕
つつがなく……つつがなくと言うと少し違うが、まぁ、とりあえず無事に学生生活初日を乗り切ることが出来た。
駝空と話していると俺が女に対して高圧的じゃないタイプと分かったのか、クラス中の生徒が俺の席に殺到した。モテ期到来、前世含めた我が世の春一番。
デヘデヘと鼻の下を伸ばしていたら、茶子がおもむろに立ち上がり俺の前へ立つと、
「はじめまして。勝ちゃんの、“幼馴染”の、熊掌茶子です。よろしく……ね?」
クラスで一番大柄な茶子、しかも獣人の中でも一際パワーのある熊人なのもあってか、俺の席に集っていた女生徒達はそそくさと自分達のグループに戻って行ってしまったのだ。
その後も何人か話しかけてきてくれるが、どうも朝のようにノリノリな感じではなく何事もないまま放課後だ。
昼休みに廊下から俺を見にくる奴等もいたけど、茶子ガードが鉄壁で俺に話しかけてくる人はいなかった。
う〜む、確かにあの人数に囲まれれば人間の俺じゃどうにも出来ないから助けてくれてありがたかったけど、どうせならもう少しハーレム気分を味わいたかったなぁ。
本家SHOHEIは「遊びたい、飲みたい、色々やりたい。そんなので優勝出来るわけがない」と言っていたが、学校の中でくらい貞操逆転世界転生主人公な立場として甘い蜜啜りたいと言いますか……。
ただそんなこと言ったら茶子にふざけるなと言われるのがオチだろう。
どうにかして美少女亜人と仲良くなれんものか。
「何をうんうん唸ってるか分からないけど、そろそろ着くよ」
「んあ? おお、了解」
考え込んでいたら、中等部用のグラウンドのネットがもうすぐそこに見えていた。
学生の放課後と言えばやはりコレ……部活の時間だーっ!
前世では帰宅部だったので、ちょっと楽しみとか思ってたり。
強豪校の練習とか怖そうだけど、少し憧れたりしてたんだよな。
本当なら先に寮に行って荷物を置いたりするらしいけど、俺は男だからかまずは監督室に来てくれと言われている。
「監督室は、グラウンド横の選手寮の中……て、あの建物が選手寮? デカくね? マンションの間違いだろ。グラウンド横って言いながら100m以上離れてるし」
「部員何人だと思ってるの。聖ロゼだよ?」
「ああ、まぁ、そうか。でも敷地内にマンションは……流石だなぁ」
大陸一と評される最高学府の凄まじさに息を漏らしつつ、俺は歩を進めた。
──◇◆◇◆◇◆◇◆──
選手寮の一階、その一番奥。
同じ扉が並ぶ中ひとつだけ色も大きさも違うドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。
『やぁ、来たね。鍵は開いているから、入ってきなさい』
と言われたので遠慮なく中へ入った。
「これは……」
亜人用にほんの少し高くなっただけの天井に、シーリングライト。
木製のテーブルと向かい合わせのソファ、作業用のデスク。
壁には1ヶ月の予定が書かれたホワイトボード、本棚にはファイリングされた書類が様々……キッチンにカップ麺の残骸が多数。
大陸一と呼ばれる強豪校でも、なんか、こういう感じなんだ。
質素というか、これ以上のものは必要ないと言わんばかり。
校門の前の道に150m使うわりに、こういうとこは必要以上に広くしたりしないんだと思わない訳じゃないけど、当の監督本人は何も気にせずソファーでコーヒー飲んでるし、別にいいか。
「やぁ、無事で何より。何事もなくここまで来れたかな?」
「はい。幼馴染のボディーガードが優秀なもので」
「当然」
「確かに、彼女は実に頼りになりそうだね」
無表情ではあるが少しだけ眉が上がり、胸を張っている。これは茶子流のドヤ顔だ。
犬の獣人みたいに尻尾が長ければ左右に揺れるくらいにはドヤってるな。
12年も一緒にいると感情の機微くらい簡単に察することが出来る。
「さて、先にこっち来てもらったのには訳があってね。と言うのも、男子が寮生活なんて前代未聞だから」
ああ、男女逆転定番の問題だな。
特にお風呂だ、お風呂!
女しかいない学校に男一人、お風呂に入る時にハプニングでヒロインと鉢合わせるっていう確定イベント。
親の顔よりその展開見た。
普通なら男がビンタの一発でもされるところ、男女が逆転しているから俺は何も悪びれる必要がない。
凄く転生っぽい。是非とも回収したい、そのイベント。
「ので、特別に扉を対亜人用の強固なものに交換した。鍵も変わるから、渡しておこうと思ってね」
はいこれ、と渡された鍵を受け取る。
あれ、お風呂の問題は? 寮だから共同じゃないの? この時間は男、この時間は女、で間違えて女の時間に入っちゃうっていうスケベな展開は?
「あの、お風呂とかトイレは?」
「ん? ああ、王谷く〜ん。私が渡したパンフレットに全く目を通してないね? ウチの寮は各部屋にお風呂もトイレも付いてるから気にしなくて良いんだよ」
なん……だと……?
「それに誰かが悪さしないよう廊下に監視カメラも付いてるし、無断で君の部屋に侵入しないよう男性保護官が王谷くんの部屋がある階を常に見張ってるから、安心して良いよ」
ひぃん、なんでそんな鉄壁の構えにするんだよ! ちょっとくらい悪いことされても良いんだよこっちは!
監督として正しい対応をしてくれているのに理不尽な非難をしていると、監督室にインターホンの音が鳴った。
「ああ、準備出来たのかな。開いてるよッ!」
監督が声をかけるとドアが開き、そこからぬうっと巨大な影が姿を表す。
黒の縞模様が付いた
「失礼します。中等部3年、2年、準備出来ました」
「(デカい……っ)」
茶子ですら頭一つ分小さい……てなると、190cmは超えてる? 本当に中学生か?
糸目の亜人は俺達の存在に気づいたのか、気軽に手をあげて話しかけてきた。
「お! 自分ら、噂の新一年やろ? へぇ〜、話には聞いたったけどホンマに男でウチに来たんやな〜。ええ度胸しとるやん。そっちが現役プロの熊掌レオナ選手の娘さん? う〜わエエ身体。こりゃ期待大やな! ウチは
初対面の俺達が緊張しないように、という彼女なりの気遣いなのは良くわかる。
でも、なんだ? 軽快な口調で隠すように薄らと開けられた、緑の瞳から。
そこはかとない“怖さ”を感じるのは……。