貞操逆転世界の野球で『二刀流』に俺はなる!〜ガチムチ爆乳亜人メスvs一般転生ヒトオス〜   作:鎌原 や裕

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第十四話 突き付けられる現実①

 

 中等部キャプテンである虎王さんに連れられ、俺と茶子は野球部の練習グラウンドに向かった。

 

 息を呑むって、まさにこういうことを言うんだろう。

 

 僅かなズレすらなく整列した数多い2年生、3年生の姿。

 微動だにせず、ただの一言も声を発さず手を後ろに組み待つその姿は誇張抜きに軍隊のようだ。

 その光景は、まさしく息を呑んでしまうほどの異様さを放っていた。

 

 その2年生、3年生と向かい合うように並んでいるのが新1年生か。

 先輩方の醸し出す圧に、洗練されたその姿勢にたじろいでしまってオロオロと1年生同士で見つめ合っていた。

 

 これが、東楼大陸一と呼ばれる聖ローゼンクロイツの野球部……男の俺が来ても、先輩は誰一人として動かない。口も動かさない。

 それをうんうんと笑って眺めた虎王さんは手を三度叩き、

 

「楽にしてええで〜」

『はいッッ‼︎』

 

 列に僅かなズレがないのと同じように、彼女等の声も寸分違わず同じタイミングで放たれた。

 数百に届くだろう先輩達の返事は、銅羅のように地面を揺らし身体の芯にまで響く。

 思わず、ビクリと肩が震え声が漏れ出した。

 

「後輩には先輩らしくまず一発かましたらんとなぁ! どや1年、ビビったやろ! これぞ日々の賜物《たまもの》、ウチの鬼監督が徹底的に絞ってくれるおかげでほぼ軍隊や。日々の姿勢、取り組み、美しい所作は美しい習慣、身体に繋がるらしいで。そのうち嫌でも染み込むから、覚悟しいや〜1年!」

『は、はいっ!』

「あと、自分ら1年の自己紹介はいらん。先輩に名前覚えて欲しかったら実力で覚えさせぇ……というか、人数多すぎていっぺんに覚えられへんからおいおい覚えさせてぇ! ひとまず、ウチは中等部キャプテンの虎王孫春やから! 気軽にハル先輩でもハルキャップでも好きに呼びぃ! 困ったらウチんとこ来ればどないかしたる! 一番デカいから見つけやすいやろ! ええな!」

『はいッッ!』

 

 ニコニコと朗らかに曲がった口角を維持したまま良い返事を返す一年を満足気に見た後、そのまま2年生、3年生の方へ目をやると眉根にシワを寄せて語気を強める。

 

「コラ! 楽にせぇ言うてもそんな露骨に喋るな! 後輩の前でザワザワと恥ずかしい!」

「で、でもハルさん! 男の子がウチに来るなんて聞いてません! 流石の私達も動揺を隠すことなんて出来ないですよ! さっきまでは現実に脳が追いついてこなくて反応出来なかっただけなんです!」

「じゃかあしぃわアホ! なにが流石の私達や! これ見よがしにざわつきよってからに! せっかくカッコよくて洗練された先輩カッコいいって思ってもらってたのにどないすんねん! 所詮同じ女かとか思われとるわ今!」

「キャップ! ラビ的には早くどういうことなのか説明が欲しいです〜!」

「──ああ、説明は私がしよう」

 

 俺達と一緒に来ていた監督が、先輩達の前に出ながらそう呟いた。

 監督の言葉を聞いた途端、先輩達は一瞬でざわつくのをやめてすぐに傾聴の態勢にはいる。

 

 瞬時の切り替えに思わず狼狽するが、監督は気にもせずそのまま言葉を紡ぐ。

 

「彼は、私が直接スカウトに行った“選手”だ」

『ッ⁉︎』

 

 号令があればピクリとも動じなかった先輩達も、流石に男の俺が選手として呼ばれていることに驚きを隠せないのか僅かに動揺の色が見て取れた。

 

「男の子は君一人だけだし、自己紹介でもしてもらおうかな」

 

 監督の言葉に少し遅れて「は、はい!」と返事をして、1年生達が並ぶ前に立つと、まるで自分が1年の代表のようで変な緊張感に襲われる。

 

「(この人達……)」

 

 先輩達の視線が俺に集中する。

 クラスメイトの視線なんか比にならないほど、眼に力を感じた。

 

 ──君が、選手(わたしたち)と同じ?

 

 ただそれだけの、純粋な興味だと俺でも分かるのに。

 自分よりも大きく逞しい身体と、自分よりも長く野球に身を置いてきた先達の迫力に、俺は緊張で足がフワフワしてきた。

 

「……スゥ〜ハァ〜……よし。はじめまして! 今日からここ、聖ローゼンクロイツ学院中等野球部に身を置かせていただく王谷勝平です! 出身リトルは平川リトル! ポジションは投手(ピッチャー)! 男ですが、世界最高の野球選手になるためここに来ました! よろしくお願いします!」

『……』

 

 返ってきたのは、まばらな拍手。

 それは1年も同じで、全員がその顔に動揺と「どう扱えばいいか分からない」という感情が見て取れた。

 

 男とは、国の法律のもと保護しなくてはならない存在。

 その男が野球をしているばかりか、東楼大陸一の強豪へ来て、マネージャーではなく選手として身を置く。

 女の自分達が、選手としてやってきた自分が俺に対してどう扱えばいいか分からない。

 

 これは、リトルに入団した時にも同じことが起きた。

 あの時はみんなが子供だったからすぐに慣れたってのもあったけど、一番大きかったのは──

 

「静かに。ああ、お前達の動揺は当然のことだろう。自分達のテリトリーに、突然か弱いはずの男が迷い込んで来たのだ。どうすればいいか迷うのも頷ける。なら簡単だ。彼の実力をその眼にすれば、認めるまで行かなくとも受け入れる事は出来るだろう」

 

 監督のサングラス越しの目が、俺の目と交差する。

 その目には「見せつけろ」と書かれている気がした。

 

 右拳を握り、俺は強く頷いた。

 そう、これなんだ。俺が、リトルのみんなに認められたのは。

 “リトルの中で俺が一番強い”と認めさせたから、俺は女児の中に男児一人混ざってもやっていけた。

 

 だから、ここでも。

 俺の力を認めさせてやる。

 

「王谷くんのポジションは投手。だがチャンスは一打席。その一打席で、君の素質をここにいる全員に見せてみなさい」

「はい! 頑張ります!」

「よし、良い返事だ。なら……ハル。準備を」

「よしきた。ほな、ウチと勝負やで一年男子! 三振せんように気をつけなアカンなぁ!」

 

 さ、3年のキャプテンが相手……? 

 チュートリアルからラスボスと戦わされるようなものなんですが⁉︎

 

 

──◇◆◇◆◇◆◇◆──

 

 

「……ホンマにええねんな? タマちゃん」

「監督、だ。構わない。“本気”でやって」

「良かった。色に狂って目ん玉腐ったんかと思ってました。“ソレ”をやれば、彼変わるん?」

「ハルがどれだけ追い込むかによる」

「……嫌われ役はウチかい。覚悟せぇよ監督。この仕打ち、虎王孫春は忘れへんで」

「……肝に銘じておく」

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