貞操逆転世界の野球で『二刀流』に俺はなる!〜ガチムチ爆乳亜人メスvs一般転生ヒトオス〜 作:鎌原 や裕
SHOHEI題材は書籍化とかダメだろうし趣味で好きに書こう〜と思っていたので優しい目で見てね!
※週2〜3話投稿目安
ファウルゾーンに並んでいた先輩達の元へキャプテンと戻ると、先輩達が熱のこもった声で俺に話しかけてくれた。
「初球で持っていかれると思ってたから、想像以上に粘ってビックリした! 本当に男の子⁉︎」
「良い球投げるじゃん! ナイスピッチ! 最初はキャプテンが怪我でもさせるんじゃないかとハラハラしてたけど、男の子でここに来ちゃうだけあって只者じゃないね!」
「いや〜惜しかったなぁ! ハルさんがカットして打てる球待つってよっぽど良い動かし方してるんだね! 今度はアタシとやろうよ!」
「男とは思えない速球だった! 『
投げている時から感じていた通り、みんなからの反応はすこぶる良かった。
掛けられる言葉は温かいものばかりで、とてもありがたい。
男ってだけでハードルは多少下がってただろうし、勝負したのがキャプテンというのも皆の印象を良くした要因だろう。
しかし、勝負の内容が内容。
ゲーム気分の自分が現実を突き付けられ、先輩方に返す返事がぎこちなくならないようにするので必死だ。
……野球を本気で、か。
ここに居る人達、みんなそうなんだよな。
この人達も打席に立てば、キャプテンのようなプレッシャーを放つのだろうか。
喉を鳴らし、唾を飲み込む。
俺は、ただ凄まれただけ。
試合でも何でもない、ただの一打席限定の遊びみたいなもんだ。
もし、試合の中でプレッシャーをかけられたなら……どうなるんだろう。
漫画で良くある、地区予選の決勝とか。
負ければ終わりの、大会で。
その大会の打席に、マウンドに立つ人達の気迫ってどれほどのものなんだろう。
さっきのキャプテンが霞むほど、逃げたくなるほどのものなのだろうか。
身震いひとつして、頭を左右に軽く振る。
なぁ〜に、チートでSHOHEIになる未来完全に見えました余裕余裕ってなってた所に、ちょっと現実知っちゃっただけじゃん。
落ち着け、何もキャプテンは俺の全てを駄目だと言っていたわけじゃない。
球自体は良いって言ってた。ようは、選手としての姿勢の問題。
漫画で良く言う、ここぞと言う時に勝つんだと奮起するアレだろ、アレ。
アレが出来るようになりゃ良いんだ。
「(……俺に、出来んのか?)」
額に一筋の冷や汗が浮かぶ。
いいや……いいや!
キャプテンは知らない。
俺にはチートがあるということを。この世の誰よりも恵まれた、
心だけ、心だけだ。
チートで盛ることが出来ない、唯一自分で育てなくてはならない所。
逆にこれだけどうにかしちまえば、俺は強い。この自信だけは揺るがしちゃいけない。
勘違いするな、俺。
努力を怠ったんじゃないんだ。
俺は俺なりの努力をしてきた。俺がそれを否定してどうなる。
努力しただけ結果に出るんだ、何を怖がる。
本気でやってる? 人生かけてる?
はいはい、かけてなかったです。無意識下でゲーム感覚だったことは間違いないですよ。
だから、今日から。
今日から俺も、本気だ。
本気で、野球をやろう。
彼女達の本気に、自分の本気で対抗出来るくらいに。
これから多くの経験をしよう。
余裕を捨てろ。
タイムリミットを思い出せ。
残り、7年と少し。
俺が描いた未来図で言えば、到達していた。
20歳で、SHOHEIに。
プロの試合を見たって未来図が変わることはなかった。
ただ、今日それが少しだけ曇っただけ。
でも閉ざされた訳じゃない。
絶望的なんかじゃない。この世界に生まれた時だって、レオナさんのガチムチ体型見て勝利確定BGMを掻き消されたんだ。
ポジティブに捉えろ、俺。
逆に12歳(今年13歳)の今日この経験を出来たことはデカい。
遅かれ早かれ経験することだったことなんだろうけど、入学初日の今日知れたなら全然取り返せる。
甘いと言われたなら、足りないと言われたなら、やればいい。
もう4歳だった小さな身体じゃない。
足りないなら何千回も、何千球だって投げられる。
今日から、“野球選手”になろう。
──◇◆◇◆◇◆ ──
王谷と共にファウルゾーンに整列していた部員達の元へ戻った虎王は、戻ったその足のまま二人の一打席勝負を見守っていた監督──白神の元へ向かった。
「……これで良かったんですか?」
虎王は獣耳を裏をコリコリとかいて、苦笑を浮かべながら問う。
「うん、これで良い」
「やった本人が言うんもアレやけど……あんなやってホンマに良かったん? あっこまで野球を意識せずここまで来たのもどうかと思うけど、ここまで入念に刷り込む必要あったんですか? 慢心を正すどころか萎縮してもーたりとか」
「慢心? いやいや、あの子は慢心なんてしてないよ」
僅かに口角を上げて微笑む白神のサングラスには、意外な好投で部員に囲まれる王谷の姿が映る。
しかしそれも一瞬。王谷の姿を映した後、その黒い鏡面には監督の言葉に疑問符を浮かべ首を傾げる虎王の姿があった。
「慢心とは驕り高ぶり、自分の実力をそれ以上と見誤ること。あの子を見つけて4年は経つが、私はあの子が驕っていると感じたことは一度もない」
堂々と放たれる言葉に困惑の色を強くする虎王だが、白神の言葉には続きがあるのだとすぐに察し、喉元まで出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
「私が感じるに、あの子は俯瞰して先を見ている。だからこそ無自覚に目先の勝負を割り切り、自分が乗り越えるべきハードル、そのラインを見定めている。“到達すべき目的地、ゴール”すら見えているかのように」
組んでいた右腕を解き、そのまま人差し指で顎をなぞる。
「この東楼大陸随一の野球強豪校、聖ローゼンクロイツすら、自分が育つファクターのたかだかひとつだとする強大なナニカが、彼の中にはある」
口角を歪ませる白神の言葉に、虎王は眉根を寄せて表情を固くする。
「……確かにええ球投げます。同学年であれば間違いなくトップ層に食い込んでくると思います。でも、監督は、なんや、その、言い辛いんやけど」
「入れ込んでいる。ああ、教育者として恥ずべきだ。私はあの子一人に目を奪われている。贔屓にすると言っても過言ではない」
すまない、と続く言葉に虎王はチームのキャプテンとして確かな怒気を放った。
贔屓にする、ということではなく、虎王孫春という一選手に悟らせてしまったことに対してだ。
「私以外に悟らせんでくださいよ」
「いいや、ハルだから悟らせた。知ってほしい。あの子には明確に自分以上だと判断出来る実力者が必要だから。勝ち負けすら過程に過ぎず、気にもしない。自己の研鑽と、未来の到達地点にしか興味がないと言わんばかり。最初から勝ち負けを度外視しているのなら、それは慢心とすら呼ばないだろう」
白神はゆっくりと一歩二歩と進み、再び王谷をその目に捉える。
「僅か12歳……というより、8歳という少年の頃からあの精神性。酷くチグハグだ。時には大人のように割り切り、冷静なようで、時には年相応にはしゃぎ、テンションに任せて失敗をする。頭が良いのは素晴らしい特性だが、今ばかりはそれが邪魔だ」
白神が強く握る拳から、その強靭な膂力から生み出される圧力に骨が軋む音が虎王の耳に聞こえてくる。
「惜しい……! あれほどの才器。私ですら凡人へと成り下がり、恐怖すら覚える成長速度。深淵の如く底を見せない才覚。決して“あんなもの”じゃないッ」
わなわなと白神の肩が震え、それに呼応するように白神の身体ほどもある巨大な翼も開こうとする。
それを見て慌てた虎王は急いで白神の羽を押さえ宥める。
「……ふぅ〜、ハル。人は、目が眩むほどの才能を前にすると、正気でいられなくなる。酷く惜しいと、さらなる“上”を垣間見たくなってしまうんだ。私は……私は、あの子に力を欲してほしい。これだけじゃ足りないと、もっともっと欲しいと、際限なく、見境なく、若さの衝動のままその成長を続けてほしいんだ」
頭痛を抑えるように頭に手を当てる白神を、眉根を寄せて見つめる虎王は訝しげにその顔を覗き込んだ。
「だから私は、あの子に“全て”を用意する。野球の研鑽しか知らないあの子に、楽しさを、苦しみを、辛さを、痛みを、挫折を、悩みを、勝ちを、負けを、壁を……酸いも甘いも、あの子の思い描く到達地点にはなかったであろう概念を、私が植え付ける」
覗き込んだ顔に張り付いた歪んだ笑みと、熱でもあるのかと赤く上気した頬。
「そうすれば、彼は自分の描いた未来よりもさらに上の未来へ辿り着けるはずだ。なによりも選手としてさらに円熟する。あの才器が野球の全てを知って熟し切った未来……私は、“ソレ”が見たい」
ヒクヒクと頬を痙攣させる虎王すら視界に入らなくなったのか、白神は頭から手を離してサングラスを取ると、銀色の長いまつ毛があらわになり陽光を弾く。
「夢を見てしまったんだ。男で、同学年を圧倒するあの子の姿に。男だから野球は出来ない? 中学からはついていけない? 何を馬鹿な。前例がないから、現実的じゃないから、だから不可能と断ずるには早すぎる……あの子を諦めるなんて、無理だッ」
白濁に濁った瞳は、王谷を縛り付けて離さない。
神が与えたもう才覚に身を壊されたかつての神童は、神が生み出した才器に魅了された。
破格の才能を身に宿した天才ゆえに、王谷の内に眠る才能に気づいてしまった。
太陽すら霞ませる、強烈に輝くその強大な力に。
才能は時に自分だけでなく、それ以外の心も眩ませる。
太陽に目を焼かれたかのように白濁と濁る瞳に映る王谷。
黙々と見つめるその姿は、まるで神を崇める一人の信徒のようで。
虎王は、刺激することなくソッとその場を離れた。