冬木の街の人形師   作:ペンギン3

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8月がいつの間にか死んでいた。
何を言っているのかわからないと思うが本当のことなです、信じてください!
……などと、意味不明な供述を云々。

それはさて置いて、書いていたら何か文章が勝手に増えたので中として投下。
大丈夫です、下の方も8割がた書き終えてますから(多分、3日以内には投稿できると思います)。


番外編 夏の避暑地へ行きましょう 中

 夏の葉舞散る石段に、私達は足音を立てる。

 彼女、早苗に手を引かれながら、急ぎ足で。

 タッタッタと小刻みにリズムを刻んで、風を全身に受けながら。

 段々下へと向かっていく。

 

「ちょっと早苗、急ぎすぎよ!」

 

 思わず、私は声を上げる。

 ハタハタと揺らめく巫女服、その隙間が非常に不味いことになっているから。

 具体的には、服の隙間から私の肌が見え隠れしていて。

 だから服を抑えながら、私は抗議するのだ。

 

「善は急げなんですよっ、アリスさん」

 

「そういう問題じゃないわ!」

 

「聞こえません、聞こえませんからっ」

 

 この娘、人の話を全く聞く気がないみたいだ。

 テンションが上がり過ぎて、恐らくはテンパってもいて。

 私の声は、早苗の右から左へと流れていく。

 お陰で私の今の状況が、よく見えていないようだ。

 ……必死に、右手で胸の辺りを抑えている私の姿には。

 

「転けても知らないわよ」

 

「その時はその時、一緒に転げてください!」

 

 もう、無茶苦茶である。

 神社を出る前は好きにしろと思ったが、この有様はあんまりであると言えよう。

 恐らく、私の顔は赤い。

 そして挙動不審でもある。

 それは、はためく服がそれを強いさせているから。

 ……今の私は、見ようによっては痴女丸出しなのだ。

 

「変態じゃない、変態じゃないのよ、私は」

 

 小声で、暗示するように呟く。

 私がどう見えるのか、想像するだけでアレなのだけれど。

 それも全部、この素敵な巫女服がいけないのだ。

 私が恥ずかしい目にあうのも、早苗が暴走しているのも、全部ぜんぶこれのせい。

 早苗が着ると綺麗でも、私が着ると振り回される。

 ――私用にこの服を改造できたら。

 そう思わずにはいられない。

 

「さぁ、こっちですっ」

 

 走って、羞恥で、赤くなった私を、早苗は引っ張り続ける。

 石段を降りきって道に出て、でも直ぐに脇道へと逸れていく。

 そこは彼処へと繋がっている道。

 流麗で、輝いている鏡の様な彼処へと。

 

「……もぅ」

 

 少し、不満と諦めと赤い吐息をのせて、私は小さく呟く。

 私はそれに為すがまま、唯々引かれていくのみ。

 でも、それで良いかと思い始めている自分もいて。

 早苗のパワーに辟易しつつも、私は受け入れ始めている。

 久々に会った早苗だったけれど、今はすっかり何時も居たかのような感覚が芽生えているのだ。

 

「仕方、ないわね」

 

 そう、だから仕方なく。

 ギュッと、早苗の手を握る。

 離れないように、転けてしまわないように。

 

「本当にお転婆なんだから」

 

「アリスさん、ありがとうございますっ」

 

 息を切らしながら、元気な声を出す。

 溌剌として、だけれども清涼な声。

 それは、聞いてるこちらにも、元気さを分けてくれるようで。

 嬉しく思っていると、早苗も私の手を握り返してきた。

 元より繋いでいた力よりもずっとずっと強く、痛いくらいに。

 だけれども、痛いだなんて口にしようとは思わなかった。

 

 ただ、私は早苗の手を握り返すだけ。

 何だか、不思議と悪い気分では無かった。

 きっと、それはこんなおバカで恥ずかしい状況でも、私は楽しんでしまっているから。

 これもそれも……。

 

「全部あなたのせいなのよ」

 

「ふぇ?」

 

 風に乗るように疾駆している私達。

 そんな状況に似合わない、早苗の困惑した声。

 それに、私は笑みを漏らして。

 

「行くわよ」

 

 今度は、私が早苗を追い抜いて、引っ張る形で走り出す。

 正直、はしゃいでいると、自覚している。

 けれど、こういうのも、たまには良いと思ってしまったから。

 

「付いていらっしゃい、早苗」

 

 振り向いてそう告げた私に、早苗は驚いたような表情を浮かべる。

 そしてポツリと、こんな言葉を漏らしたのだ。

 

「アリスさん……えっちです」

 

 早苗の視線。

 そこには風に揺られている、私の巫女服。

 ポッカリと空いた胸の隙間から、胸を覆う色の付いたものが見え隠れしている。

 

 ……無言で早苗を叩いたのは、言うまでもない事であった。

 

 

 

「ア、リスさんに、ぶたれ、ました……」

 

「殴る方も悪いけれど、殴られる方にも理由がある時があるのよ」

 

「大人、の詭弁です、よぉ」

 

「どこがよ」

 

 そうして、私達は全力で熱く熱した道を駆けてゆき。

 開けた場所、目的地……要するに湖に到着していた。

 早苗は息を切らして私を睨んでくるけれど、それ以上に私がジト目を向ければ、スっと顔を背ける。

 後ろめたさはあるようで、だけれど納得もしてないようだ。

 さて、どうしたものかと悩んでいた時。

 早苗は息を整えるためか、大きく深呼吸をした。

 大きく吸って、吐いて。

 数度繰り返して、そして私へと顔を向ける。

 その顔は、何かを思いついたように輝いていた。

 こういう時の早苗は、大抵何かしら変なことを思いついていることが多い。

 そこはかとなく、不安だ……。

 

「では、こうしましょう」

 

 ポンと手を合わせて、早苗は笑う。

 ワクワクと、そんな擬音をそこら中に撒き散らしながら。

 さっきまでの不機嫌を、ケロッと忘れてしまったように。

 さらりと、早苗はこんな提案をしてきたのだ。

 

「私はアリスさんに叩かれました。

 すごくすごくショックでした。

 だから……」

 

「だから?」

 

 胡乱げに聞き返すと、早苗はニコリと笑って、こう続けた。

 

「アリスさんは、私の頭をよしよしと撫でる義務が発生しました。

 傷ついた私を、労わるように撫でてください!」

 

 半ば欲望丸出しで、早苗は頭をにゅっと突き出してくる。

 さあ、撫でてと言わんばかりに。

 ……再び無言で、私はその頭をコツンと小突く。

 意識してではなく、殆ど本能的に。

 

「っひゃ!?」

 

 いきなりの衝撃に、早苗は驚いた声を出していた。

 それが少々の愉悦となって、私を満たす。

 

「うぅ、アリスさんがイケズです」

 

 目端にほんのりと涙を滲ませた早苗が、顔を上げてそんなことを言ってきた。

 それに私は溜飲が下がるのと共に、どこからか罪悪感も湧いてくる。

 イジワル、と早苗の目が訴えてきてるからか、早苗の目尻にあるもののせいか。

 だから、気がつけば……。

 

「……手を出したのは悪かったわ」

 

 早苗の頭を撫でていた。

 さらさらとした感触が、実に心地よい。

 走ったあとで、赤くなっている早苗のうなじも、不思議な魅力を持っていた。

 意外と病みつきになりそうな、撫で具合である。

 

「可愛いわね、早苗」

 

「……アリスさんはずるいです。

 まるでDV夫の妻の気分です」

 

 うなじだけでなく、顔まで赤く染めて、早苗は私を見上げる。

 上目遣いで、ウルウルと目を潤ませながら。

 

「口の減らない子ね」

 

「なら、どうしますか?」

 

 ちょっと余裕が出てきたのか、早苗は軽口じみた事まで口にして。

 お陰で、私にも余裕が戻ってくる。

 

「このまま、頭を撫で続けるわ」

 

「アリスさん、大好きですっ」

 

「安い好意だことで」

 

「ちょろいのはアリスさん専用です」

 

 すぐに調子に乗る早苗を、私は唯ひたすらに無心で撫で続ける。

 ナデナデ、ナデナデと、そんな音まで聞こえてきそうなほどに。

 

「気持ち、良いです」

 

「私もよ」

 

 そう言って、また私達は見つめ合う。

 けれど、今度はどちらも笑顔であった。

 

 

 

 波が押し寄せては引いてゆく。

 それは海も湖も変わらぬ光景。

 だけれど、この湖に至っては一等輝いて見える景色。

 私達は、何気なしにその漣を眺めている。

 その音は、あれだけ急降下を繰り返していた私達の心を、どこか落ち着けさせてくれる。

 気持ちが平坦になるわけではない。

 段々と穏やかに整えられていくのだ。

 

「それで、早苗」

 

 私は、連れ出した本人である早苗に、視線を戻す。

 当の本人は、どこか恥ずかしげに頬を掻いていた。

 

「落ち着いた?」

 

 訊ねると、彼女は一つ頷く。

 彼女なりに、自分が暴走していたことを認識したのだろう。

 どこか気恥ずかしげな彼女に、微笑ましさが湧いてくるのを感じる。

 可愛い、と素直に思えるから。

 

「ここは、綺麗ね」

 

「ずっと変わらない、大好きな場所ですから」

 

 綺麗な目をして、早苗は湖を見ていた。

 彼女の目に、キラキラと輝く湖の光景が反射している。

 陽が湖に、湖が早苗に、煌きをもたらしているのだ。

 

 それが、とても綺麗で神秘的に感じる。

 優しい世界が、この場に満ちているのだから。

 

「どうして、ここに来たの?」

 

 私は、分かっていることを早苗に訊ねる。

 それは、早苗の口から言葉が聞きたかったから。

 ちょっと意地悪か、とも思いつつも訊いてしまったのだ。

 すると案の定、早苗は頬を染めて答えづらそうに、だけれどもキチンと答えてくれた。

 

「ここに来れば落ち着くかなって、そう思ったんです。

 この湖は、綺麗な鏡ですから」

 

 それから早苗は、アリスさんごめんなさい、と小さく言葉の後に付け足した。

 こういうところが、この娘の可愛げであり、良いところでもあるのだろう。

 だから私は、彼女の頭を撫でる。

 私も、ちょっとクセになってるのは否めないけれど。

 早苗も、嫌がってはいないのだから。

 

「なら、綺麗な鏡に映ったのは、さぞ慌てていた兎の姿かしら」

 

「アリスさんって、結構意地悪ですよね」

 

「意地悪な私はダメかしら?」

 

「……ちょっとだけなら」

 

 小さな声で、恥ずかしげに早苗は言う。

 弱っているところを、ツンツンとつついている様な感覚。

 本当は頭を撫でているだけなのだけれど。

 

「早苗は優しいわね」

 

「こんなところで優しいって言われても、微妙ですよ」

 

 私がからかう様にして言うと、早苗は拗ねたような声を上げる。

 でも、ちょっとずつ調子は戻ってきているようで、声に張りが戻ってきている。

 ポカポカと、私の胸を叩いてくる早苗。

 ……叩かれた後に、服と胸の隙間に寂しい風が吹いてゆく。

 

「ごめんなさい、早苗。

 意地悪が過ぎたわね」

 

「はいっ、これでお互い様です!」

 

 だけれど、早苗は無事に完全復活を果たせた様で。

 この程度の事、大したことではないと思わせてくれる。

 これで解決と、ようやく心を落ち着けることが出来たのだから。

 

「それで……」

 

 私は辺りを見回す。

 次に周りに広がっている、この湖を。

 

「これから、何しましょうか?」

 

 最後に早苗を見て、問いかける私。

 一つ出来ることは思いついたのだけれど、それをするには早苗の許可を求めなきゃいけないものであるから。

 だから、最初に早苗の意見を聞く。

 彼女に腹案があるのなら、それに便乗するつもりで。

 

「そうですねぇ」

 

 早苗は、頬に指を当てて考え始めた。

 特に、何も考えてなかったようだけれど、そこから必死に何かを捻り出そうとしているように。

 微笑ましくて、思わずじっと眺めてしまう。

 

「うーんと、えっと、ですね、アリスさん」

 

 かめかみに人差し指を押し当てて、だけれど何か光明が見えてきたようで。

 少しずつだけれど、言葉を零していく早苗。

 

「あぁっ、そうです!」

 

 そして、ポンと手を叩いて、早苗は笑顔を覚える。

 ついに何かを思いついた様である。

 

「何?」

 

「水遊びです!

 何故最初に私は気づかなかったのでしょうか!」

 

「水着じゃないからでしょう」

 

 早苗が良案を思いついたとばかりに叫んだけれど、私は冷静に返答する。

 それに、あ、そうでした、と照れ笑いを浮かべている早苗。

 けれど、悪い案ではないと、私は思っていた。

 そもそも、私も同じことを考えていたのだから。

 

「このままするのなら、服が水浸しになってしまうけれど、良いの?」

 

 問いかけ、私の賛成を言葉に載せた。

 それに早苗は、キョトンとして、そしてニコリと笑う。

 やった、と小さな言葉と共に。

 

「良いです、持ち主の私が許可しますから!」

 

 キラキラした目で、早苗は私と湖を交互に見ていた。

 嬉しいという感情が爆発している表情で。

 今にも駆け出しそうに。

 

「そう、なら」

 

 私も、はしゃいでしまおう。

 早苗がどうという話ではない。

 折角の場なのだから、私が触れて遊びたいのだ。

 この湖と、そして早苗と。

 

「行きましょう、早苗」

 

「はいっ」

 

 手と手を繋いで、私達は湖へと勢いよく向かう。

 走りはせずに小走りで。

 今回は、互いに転けないように気を使って。

 

 トテトテと、湖が近くになると小走りになって。

 私達は湖に自分達の顔が映る距離まで近づいて。

 意味もなく、その中を覗き込む。

 

 そこには、太陽の光で煌めいている水面の中に映る私の姿。

 まるで、御伽噺の鏡のようだと思ってしまう。

 

 ――鏡よ鏡、鏡さん、世界で一番美しいのはだぁれ?

 

 思わず、そんな狂言が口から飛び出そうになる。

 だけれど、それが口から出ることはなかった。

 何故なら、その前に……。

 

「っきゃ!?」

 

 顔に、水が直撃する。

 雫を垂らしつつ周りを見ると、そこには笑顔の早苗の姿。

 何時の間にか水辺に立ってて、楽しげに笑っていたのだ。

 

 ……自然と、口角が釣り上がる。

 心の中で、やり返せと誰かが囁いている。

 それは無邪気な心か、それとも奔放な遊び心か。

 まぁ、どちらにしても、今は私がやることは決まっている。

 

「やったわねっ!」

 

 両手で水を掬い、それを早苗に向かっていっぱいの力で浴びせに掛かる。

 やられたらやり返すのが、私の信条なのだ。

 

「あはは、アリスさん冷たいです!」

 

「一発で終わるわけではないわよっ」

 

「望むところです!」

 

 水を掬い、掛けて掛けられて。

 無邪気な子供のように、浴びせ合いっこをする。

 今は、沢山のしがらみを忘れ去って、子供のように戯れ合う。

 それが、今はすごく楽しく感じる。

 

「むむ、私の方が水を沢山掛けられてますっ」

 

「もっと頭を使うべきね。

 それから早苗、足を取られやすい場所にいるから不利なのよ」

 

「き、気付きませんでした!?」

 

 こんな些細なことでも、本気になっている自分がいる。

 それでけ熱中しているということ。

 今の私は、目先の事しか見えていない。

 純粋に、童心へと回帰しているのだ。

 

「ほら、動かないと沢山かかるわよ」

 

「むぅ、負けません!」

 

 ぱしゃぱしゃと、水が跳ねる音がする。

 必死になって、早苗と水を掛け合う。

 楽しく、だけれどヤケになっている感覚。

 一進一退、相手が参ったと言うまで私達は続けるであろう。

 

 そうして、互いに引かずに服がすっかりびしょびしょになってきた頃。

 均衡が、崩れ始める。

 それは、早苗が、とった行動にあって。

 

「えいっ」

 

 彼女は、なんと水面を思いっきり蹴り上げたのだ。

 その拍子に、自らもひっくり返って全身水浸しになっていたのだけれど。

 私にも、しっかりと大量の水が掛かってしまって。

 

「ひうっ!?」

 

 脇から、つぅっと水が中に直接入り込んでくる。

 そのせいで、普段は出さないような情けない悲鳴を出してしまう。

 冷たく、擽ったくて――背中がゾクリとする。

 慣れていない背中を冷たく撫でられる感覚に、困惑してるのだと思う。

 こそばゆいような、気持ち悪いのに心地良いような、不思議な感覚。

 

「あはは、転けちゃいました」

 

 だけれど、自身も水浸しになっている早苗がそんな私の困惑を知る由もなく。

 頭を掻きながら、私を無垢な目で見上げていた。

 だから、私も動揺を悟られ無いように、平然とした顔で早苗に手を差し出す。

 

「はしゃぎすぎね」

 

「それを言うなら、元からこんなことはしませんよ」

 

「ご尤もね」

 

 早苗の言葉に、思わず微笑んでしまう。

 私も、やればこれだけ元気になれると、おかしな実感を得ていたから。

 悪くない、と自分でも思ってしまう。

 

「見て、早苗のせいで私は濡れ鼠よ」

 

「私も一緒でお揃いですね」

 

「服も一緒ね」

 

「何だかお得な気分です」

 

「何がよ」

 

 互いに顔を見合わせて、また笑い合う。

 それがこの場では正しく、そして心のままであると感じたから。

 

「ふふ、全く、楽しいわね早苗」

 

「えぇ、私もすごく楽しいです」

 

 笑顔満開、ずっとその調子で私達はこの場にいる。

 懐かしみと、それでいて素朴な昔を思い出してしまうかのような感覚。

 ここには、それがあるから。

 

 ……でも、である。

 楽しみだって、何時までも続けていられる訳ではない。

 日が、傾きつつあるのだ。

 そして何より、私達は水浸しの服を纏っている。

 夏場とはいえ、風邪を引かないなんてことはない。

 故に、そろそろ戻らなくてはならないのだ。

 

「早苗」

 

 だから、私は呼びかける。

 帰る時間なのよ、と。

 戻る時間なのよ、と。

 

「寒くなる前に帰りましょう」

 

「えっ」

 

 驚いたように早苗は声を漏らして、空を見上げる。

 日はまだまだ元気で、傾きつつも燦々と輝いている。

 多分、今は五時頃だろうか。

 まだ帰るには早い、そう思うかもしれない。

 けど、問題はそこではないのだから。

 

「帰ってすることもあるでしょう?

 私も手伝うから、そろそろね」

 

 すること、それは神社のこと。

 二柱の面倒を見たり、ご飯を用意したり、お風呂を沸かしたり。

 要するに、日頃の家事が待ち受けているのだ、

 

「そうですか、もうそんな時間なんですね……」

 

 空を見上げながら、早苗はしみじみと言う。

 納得を示しながら、だけれど寂寥を感じさせる声で。

 

「時間の流れは楽しいほど、速いものよ」

 

「相対性理論ですね」

 

「……その辺りには、あまり明るくないわ」

 

「ありゃりゃ」

 

 早苗が良く分からないことを口にするが、軽く受け流して彼女の手を掴む。

 ここに来るときは暖かかった手は、どこか冷たくなっていて。

 潮時なのは間違ってなかったと、そう理解する。

 

「まずはお風呂に入りたいわね」

 

「はい、そうですね。

 帰ったら直ぐにお風呂を沸かします」

 

「えぇ、ありがとう」

 

 私と早苗、温かさを感じる為に手を繋ぎ合って、歩いて帰り道を歩いて行く。

 そこで、今日はずっと早苗と手を繋いでいたことに気が付く。

 最初は慌てんぼうの早苗に振り回される形で手を取って。

 次は仲直りに、一緒に歩いていくために手を繋いで。

 そして今、触れ合って温かみを分け合っている。

 それが不快でないのは、私も早苗のことが嫌いじゃないからだ。

 だから、心地よさを感じる手を、私はギュッと強く握る。

 

「アリスさん?」

 

「今日の晩御飯はどうしましょうか」

 

「え、えーと、確か鰯があったような」

 

「骨を取るのが億劫ね」

 

「あ、でも美味しいんですよ!」

 

 何か不審そうに感じたのか、早苗がまじまじと私の顔を見てきたので、話題を振って意識を逸らさせる。

 考えていることがバレたのならば、とても恥ずかしいどころの騒ぎではないのだから。

 だから、早苗が話題転換に見事に釣られてくれて、非常に助かっていると言えるだろう。

 

「鰯の焼き方なんて知らないのだけれど」

 

「えっと、鰯は油が多いので、換気扇をガンガン回して焼かないと、家中煙だらけになります!」

 

「……それはまた面倒ね」

 

「でも、美味しいんです!」

 

 鰯が好きなのか、何故かプッシュしてくる早苗。

 別にいいのだけれど。

 そんなことを考えていたら、唐突に隣から可愛らしい声が聞こえた。

 

「――っくしゅん」

 

「やっぱり、お風呂が最優先ね」

 

 早苗がクシャミを催したのだ。

 そんなに濡れているから、と私は早苗を見て……。

 ……そして今、恐ろしいことに気が付いてしまったのだ。

 

「透け、てる?」

 

 早苗の服、それが透けて、下着が丸見えになっていた。

 理解などしたくはないが、紛れもなく本当のこと。

 早苗も私の言葉に反応して自身の服を見て、あぁ、と声を漏らした。

 

「水遊びしてましたからね、仕方ないですよ。

 それに……」

 

 どこか嬉しげに、早苗は私の服を見て、そして視線を上げて顔を見ながら言ったのだ。

 

「これも、アリスさんと私、お揃いなんですよ」

 

 いたずらっぽく、左指を唇に当てながらそんなことを言う早苗。

 ギョッとしてみてみると、確かに私の下着までもが透けていて。

 頭を抱えそうになるが、生憎と片方は早苗と手を繋いで塞がっている。

 なので、こめかみを押さえるだけで、今は耐える事としたのだ。

 

「いっぱい遊びましたね、アリスさん」

 

「そう、だけれど」

 

 今はそこが問題ではない。

 確かに、早苗と後先考えず楽しく時間は過ごせた。

 それは何よりの事実である。

 だけれども今、私はとんでもない事に気が付いてしまったから。

 

「ねぇ、早苗」

 

「何でしょう、アリスさん。

 あ、もしかして、また恥ずかしくなってきたり?」

 

「当たらずとも遠からずね」

 

「アリスさんって純情ですね」

 

 機嫌よさげに早苗は言う。

 私が早苗に下着を見られて、恥ずかしがっていると思っているのか。

 

 別にそれは問題ではない。

 あの時は、早苗が変なことを言うから騒いでいただけなのだから。

 今、問題であるというのは……。

 

「ここ、誰か道を通らないのかしら」

 

「……あ」

 

 今、私達が歩んでいるのは、守矢神社までの簡単な道。

 人通りは非常に少なく、目立たない場所ではある。

 けれど、確実にそれが保証されているというわけではないのだ。

 

「どうするの?」

 

 呆れを滲ませて、私は早苗に問う。

 答えは、無言。

 そう、無言で早苗は足を早め始めたのだ。

 こんな姿、誰かに見せられる状態ではないから。

 ……早苗に引かれて、私の歩も早まっていく。

 その中で思ったこと、それは呆れと共に訪れた安堵。

 

 ――早苗にも、きちんと羞恥心はあるのね。

 

 そんな、我ながら失礼なことを、帰り道では考えていたのであった。

 

 

 

 

 

「神奈子様ー、諏訪子様もご飯ですよーっ」

 

 それから、私達はお風呂に入ってから夕飯を一緒に作った。

 お風呂は私と早苗、二人揃って冷たくなっていた為に一緒に入浴。

 上がってからは早苗にパジャマを貸してもらい、台所へ。

 本当に鰯の煙は凄くて、私も早苗もコホコホと咳き込んでしまって。

 私は慣れていなかったから、台所ではお手伝いに甘んじる事となっていた。

 けど、早苗の手際は極めて良かった為、私は大して必要ではなかったと言える。

 早苗は、一緒に料理できて嬉しいですと言ってくれたのが、唯一の救いであったが。

 

「ん、ご苦労、早苗」

 

「おー、今日は鰯かぁ。

 早苗、何時も悪いねぇ」

 

「いえいえ、それは言わないお約束です」

 

 料理は居間へと運び込まれて、二柱を呼べば八坂の神はゆったり歩いて、洩矢の神はトテトテと小走りで現れた。

 そうして卓に皆で座って、皆で手を合わせる。

 

「頂きます」

 

 早苗が静かにそう言うのに倣って、二柱もそれに続く。

 そして私も、ワンテンポ遅れて、頂きますと告げたのだ。

 遠坂邸では、凛は頂きますとは言えとは強要してこなかったから、何だか新鮮な感覚である。

 

「むぅ、鰯は脂が乗ってて美味しいけど、骨が多いのが難点だよね。

 アリスなんて」

 

「わざわざ骨を避けるか、軟弱な奴め」

 

 食べ始めて、私達が骨と格闘している間、八坂の神はそこに骨など存在せぬと言わんばかりに、そのまま骨ごと噛み砕いている。

 ……ワイルドすぎる。

 

「私は野蛮人じゃないからね。

 バリバリゴリゴリなんて音立てちゃ、下品じゃないか」

 

「お前はそもそも、品位がどうこうを言えるほど品行方正なタチでもあるまい」

 

「こういうのはね、心持ちの問題なのさ。

 そんなことも分からないから、あんたは野蛮人だって言ってるんだよ」

 

 食事は実に和やかに、えぇ、実に和やかに進んでいる。

 特に早苗は、何時もの事ですと言わんばかりに骨をバラして、鰯や煮付けに箸を進めていた。

 だけれど、真実として二柱とも怒っているようにも見えないし、本当に何時ものことなのだろうけれど。

 ……それにしても、やはりとても不思議な気分である。

 こうして、神様達と一緒に食卓を囲んでいることが。

 

「どうしましたか、アリスさん?」

 

「私は滅多に出来ない経験をしてると思ってね」

 

 ガミガミと言い争っている二柱を見て思ったのは、どこにでもありそうな素朴な食卓だということ。

 別に何かが違ったり、特別だったりする訳ではない。

 ちょっと騒がしいだけの、優しいモノがそこにはあって。

 

「自慢とかしちゃったり?」

 

 何時の間にか、八坂の神と言い争いをしていた洩矢の神が、茶々を入れに来ていた。

 おちゃらけつつも、ちょっと意味深に笑っている。

 

「まぁ、機会があれば、ですね」

 

 実際、神様と一緒にご飯を食べたなんて言っても、小馬鹿にされるだけだろうから。

 凛でさえ、悪いものを食べたかと心配してきそうな予感がする。

 それは、それだけ現代に残っている神秘が数少なく、そして神秘たる側でも、現実と幻想の区切りが入ってしまっているから。

 もう、神様という概念そのものが御伽噺なのだ。

 

「ま、そうさね。

 もし機会があれば、可愛い神様がいたって言ったら良いよ」

 

「自分で可愛いなどと」

 

「何さ、早苗くらいしか言ってくれる人は居ないんだから、別に自己申告したって良いじゃないか」

 

「バカにつける薬はないとは、こういうことか」

 

 洩矢の神がおちゃらけている中に、ほんの僅かにしんみりとした感触を混ぜる。

 が即座に、八坂の神にひっくり返されてしまっていた。

 そのせいで、直ぐに何かが混ざりかけた雰囲気が霧散する。

 

 二柱は、お互いにガミガミと言い争いに入る。

 でも、これがきっと、この二人なりのコミュニケーションなのだろう。

 彼女達なりの、折り合いのつけ方。

 八坂の神がここに住むようになってからの、洩矢の神が受け入れるための術だったのかもしれない。

 今では、それが自然と定着しているだけなのかもしれないけれど。

 

「仲がいいわね、ここの人達は」

 

「ずっと腐れ縁だって言って、御二方共に認め合ってはいるんですけどね。

 まぁ、簡単に言えば何時もの通りといえばいいのでしょうか。

 喧嘩するほどなんとやら、ですね」

 

 ぼそりと呟いた私の言葉を、早苗が苦笑いをしながら注釈を付ける。

 恐らくは、私の想像通りのところは多々あると思う。

 けれど、わざわざそれを聞こうとも思わない。

 想像する程度が、ちょうどいいのだ。

 

「そういえば早苗」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 その代わりに、ちょっと気になる質問を思いついた。

 それも、結構意地の悪いやつを。

 

「あなた、八坂の神と洩矢の神、どっちの方が好きなの?」

 

 ――その瞬間、その場の空気が凍った。

 

 早まったか。

 そうも思ったけれど、気になっている事柄ではあったのだ。

 だから、へ、と固まっている早苗に、もう一度聞くことにする。

 

「八坂の神と洩矢の神、どっちが……」

 

「言わなくていいです、ちゃんと聞こえてますっ」

 

 途中で、言葉を遮られる。

 どこか焦ったように声を出した早苗。

 チラリチラリと、二柱の方に視線を向けている。

 やはり、反応が気になるのはそこであろう。

 どちらかを選ぶと角が経つのは、目に見えて明らかだから。

 私もチラリと、二柱の方へと視線を投げる。

 そこには……、

 

「まぁ、早苗は小さい頃から私が面倒見てたし?」

 

「お前は赤ん坊の早苗に、顔芸を披露していただけであろう。

 私は抱き上げ、あやしたこともあるのだぞ」

 

「そんなの私にだってあるさ。

 神奈子はプライドの塊だから、露骨に変なことは出来なかったけど?」

 

「諏訪子、お前は威厳を彼方に放り投げたであろう」

 

「何さ、凝り固まった石のような奴よりか、よっぽどマシだと思うけど」

 

 何か、新たな戦いが始まっていた。

 互いに、どちらが早苗の世話をしていたのかを競い合っている。

 恐らくは、こちらの声は届いてないくらいに。

 だから、この期に早苗をせっつく。

 

「今のうちに教えて頂戴。

 大丈夫よ、二柱にバラしたりなんてしないわ」

 

 そう言うと、早苗は困ったような顔を浮かべていた。

 あぁ、そういうこと。

 なので、この時点で、大体答えは分かってしまった。

 けど、是非とも早苗の口からその答えを聞きたいから、さぁ、と促す。

 

「大丈夫よ、誰も早苗を責めたりしないわ。

 それに、きっとあなたの答えは、どこまでもあなたらしいものでしょうから」

 

「……アリスさん、やっぱり今日は意地悪です」

 

「意地悪な私はダメ?」

 

「それも、もう言いました」

 

「そうだったわね」

 

 雲に巻くように、早苗の言葉をやんわりと躱す。

 早苗も、そろそろ口が軽くなっている。

 もうそこまで出かかっているのだ。

 だからもう一歩、何かが必要で……。

 

「教えて欲しいわ、早苗」

 

 囁くように、早苗の耳元で私はそう告げた。

 早苗はビクッとして、背を伸ばしていたが、次に諦めたように溜息を吐いた。

 ようやく、話す気になったようだ。

 

「私は、どちらの神様も好きです」

 

「知ってたわ」

 

 予測は、簡単に出来ていた。

 だから、本当に早苗の言葉で聞いてみたかった。

 単にそれだけの理由に過ぎないのだ。

 

「ほら、意地悪です」

 

「好きな子イジメだと思っておきなさい」

 

 拗ねたように早苗はそう言うが、それにクスクスと笑いながら私は答える。

 えぇ、可愛げのある子だから、からかいたくもなるのだ。

 

「もぅ、ひどいです」

 

 早苗はふくれっ面で、私が笑っているのを見ている。

 見ていた、けれど……。

 また、早苗が閃いたような表情を見せた。

 そういう時は、やはり早苗は笑顔になる。

 

「そうです! アリスさん」

 

 そして思いついたことを口にしようと、早苗は私に笑顔を振りまきながら見つめてくる。

 目を逸らそうにも、早苗の目はロックオンしたものを離さない特性でもあるのか、彼女の目を真っ直ぐと見てしまう。

 そんな中で、早苗はこんなことを口にしたのだ。

 

「私、アリスさんのことも大好きですよ!」

 

「………………は?」

 

 いきなりの奇襲攻撃で、絶句してしまう。

 この場で、急にそんなことを言われて戸惑ってしまって。

 意地悪とか言ってたのにどうして、と思ってしまったのだ。

 けど、早苗は私の心境など関係なく、こう続けた。

 

「アリスさんが好きな子イジメって言ったんですよ。

 なら、私もアリスさんが好きですから、まさに両想いですね!」

 

 不意打ちも良いところだ。

 純粋に、早苗は自身の好意をぶつけることで、私に仕返しをしているのだから。

 

「……意地悪ね」

 

「意地悪な私は嫌いですか?」

 

 意趣返し、さっきと同じ質問をぶつけられる。

 けど、答えはそんなの、決まっていることだから。

 

「嫌いなわけないわ」

 

「なら好きですか?」

 

「さぁ、どうでしょうね」

 

 答えたら負けの気がしたから。

 そっと口を閉ざすことにした。

 その様子に、早苗の溜飲は大いに下がったのか、やたらとニコニコしていた。

 

 ……そして、そんな私達を見つめる、二対の目。

 あ、と声が出そうになる。

 決して、忘れていた訳ではないのだけれど。

 でも、ついこっちに夢中になりすぎた感はあった。

 視線の先、そこにはどこかジト目をした、二柱の姿があったのだった。

 

「えっと、こういうの。

 寝取られたって言えばいいのかな?

 アリス、お前は泥棒猫かい?」

 

「違います、そして寝取ってもいません」

 

 洩矢の神が、サラリと妙なことを口に出す。

 笑顔で、だけれど威圧感を出しながら。

 洩矢の神は凛と同じで、笑顔になればなるほど怖くなっていくタイプのようだ。

 

「…………………………」

 

 一方、八坂の神は、口を閉ざして黙ってしまっていた。

 顔を伺うと、悩ましげな表情が浮かんでいて。

 目が合うと、じぃっとこちらが覗き込まれる。

 怒ってはいないようだけれど、何かを深く考え始めてしまっているようで。

 

「私は、この場にいる皆さんが大好きだってことですよ」

 

 不穏な空気を感じ取ったのか、早苗がフォローを入れるように言葉を発した。

 それのお陰か、場の空気が目に見えて弛緩する。

 

「すっかりと早苗はアリスに懐いちゃったね」

 

 洩矢の神が、ちょっぴりと僻んだようにそう言う。

 けれど、それは柔らかさもあって、喜んでいるようにも聞こえるものであった。

 

「アリスさんは、何だかお姉さんみたいで、とっても親しみやすかったからですね」

 

 早苗が、気恥かしそうに私の事を言葉にする。

 混じりっけのない、純粋さを持って。

 ……成程、これは中々に面映ゆいモノがある。

 早苗のこれは、親愛の、とかつく好意であろうから。

 

「早苗は可愛げがあるからね。

 ついつい可愛がっちゃうのよ」

 

 早苗の猪突に私が振り回されているのは、大いにあるのだけれど。

 けど、早苗は嬉しそうに笑っているから、余計なことは言わない。

 唯々、私も一緒に笑顔を浮かべるだけであった。

 

「……そろそろ、ご馳走様ですね」

 

 ちょっと気恥ずかしげに、早苗が卓を見回す。

 気が付けば、話をしている間に皆が殆ど完食してしまっていた。

 無論、私のお椀も皿も空であった。

 何分騒がしかったけれど、それはそれで時間を速める効果を持っているようだ。

 

「では、私はお皿を洗うので、これにて失礼します」

 

 ご馳走様、皆でそう手を合わせて言ったあとに、早苗は手早く皿を集めていく。

 私もそれを手伝おうとしたのだけれど……。

 

「アリス、お前に……話がある」

 

「私に?」

 

 八坂の神が、そう告げてきたのだ。

 真剣な表情で、私をまっすぐに見て。

 だから、私も八坂の神を見つめ返して。

 

「何でしょうか?」

 

「ここでは話しづらい。

 付いてきてもらいたい」

 

 そう言って、八坂の神は私に背を向けて歩き出した。

 話を聞かないところは、こちらの答えを求めていない傍若無人さは、流石は神様といったところであろうか。

 

「付いてってあげて、アリス」

 

 いきなりで固まっていた私に、洩矢の神が声を掛けた。

 振り向くと、そこには私を見上げている洩矢の神の姿があった。

 

「はい、行ってきます」

 

 洩矢の神も真剣な目をしていたので、本当に大切な話をするのだと理解する。

 一体何の話なのか、考え込んでしまいそうになる。

 

「行く前に、一つだけ忠告」

 

 私が八坂の神を追おうとしたその時。

 洩矢の神が、私の背中に声を投げる。

 振り向くと、どこか柔らかで、早苗にするような表情をしている洩矢の神が、そこには立っていたのだ。

 

「アリス、神奈子の奴に何を言われようが、ただ自分が思うままに従えばいい。

 あいつの言葉なんか何の効力もないし、あんたは好きにできる権利を持ってるんだからね。

 それでも何かを決めようとするなら、そうさね」

 

 そこで言葉を区切って、洩矢の神は時間だけ思考する。

 たった三秒にも満たない、僅かな時間を。

 そうして、彼女が口にした言葉は、自然と胸に落ち着くものであった。

 

「アリスにとって重いもの。

 未練とか、誰かの顔とか。

 そういうのを思い浮かべたら良いさ」

 

「……はい」

 

 洩矢の神の言葉に、頷く。

 彼女の言葉から、八坂の神が私に何か重いことを、私に伝えようとしているように思えたから。

 まだ、その意味は分かっていないのだけれど。

 でも、洩矢の神は好きにして良いと言っている。

 まずは八坂の神の話を聞いてからだけれど、それは何よりの頼りになると思えた。

 

「ありがとうございます」

 

「良いよ、いってらっしゃい」

 

 適当に手を振る洩矢の神に頭を下げて、私は八坂の神を追う。

 一体何を言われるのか、それに思いを馳せながら。




早苗さんとアリスのお風呂シーンは、皆さんの想像の中でどうぞ。
だって自分が書いても、何だかうまく書ける気がしませんもん!(必死の言い訳)
けど、一応は流れだけは考えてました。
なので、想像するのだけならば簡単ですよ!
今から、単語や適当な文章を羅列していくので、それで組み立てていってください。


お風呂(檜風呂でも、何でもイメージに合うものならば可)。
アリスと早苗の肌色。
背中の流しあいっこをする二人の姿。
早苗の胸は大きいわね、アリスさんのは形が良いですよ! などと乳繰り合う(意味深)二人。
背中合わせに風呂に入り互いの鼓動を感じ合う二人……。
暖かいのはお風呂? それとも早苗? と自問自答するアリス。
気持ちいいですぅ(意味深)、と風呂に浸かりながら呟く早苗。


さぁ、ここまで来たら大体想像できますね!
後は、ご自分の想像力で補完するのです!(投げっぱなしジャーマン)


追記:ペンギンのユーザーページに飛んで、ペンギンのおもちゃ箱とかいう小説を選択すると、アリスと早苗のお風呂シーンが見れますよ!

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