最高のバンドを目指す彼女には最近ある悩みがあって…?
タグにも記してありますが、本作は小説版のバンドリを元にした二次創作となっております。そのため、ゲーム版とキャラクターの性格が違う点がありますのであらかじめご了承ください。
久しぶりの執筆で、至らぬ点等があるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。
「お、お邪魔しました。」
「お邪魔したっす。」
「わ、悪くはなかったわ。」
「それじゃ、おやすみ。」
学生寮の一部屋から四人の女子高生が帰っていく。メンバーの一人が忍者屋敷を見てみたいと言って以来、部屋の主、牛込りみの家は彼女たちのバンド、Poppin’Party恒例の打ち上げ場所になった。
「終わってもうたなぁ……」
大成功に終わったライブ。その余韻にもう少し浸っていたいところだが明日は学校。お風呂を済ませて歯を磨き、
「………」
床に……
「あかん…また目が冴えてしもうた…」
付いたが寝付けなかった。
(なんでや…最近減ってきたと思うたのに……ホームシックやろか?…ちゃうな。
こんな時間に外出はできないし、周りの迷惑を考えるとテレビも点けれない。牛込りみの長ーい夜がまた始まるのであった。
そして翌日、両目の下に立派なクマさんをこしらえ、授業中から欠伸を連発する彼女をバンドのメンバーが心配しないわけがない。蔵練習は早々に打ち切られ、事情を聞く会になってしまった。
「り、りみりん大丈夫?なんか今日、ずっと眠たそうにしてたけど…」
「のーぷろぶれむや…ししょお…」
「いやプロブレムしかないっての…」
未だにぽやーんとしているりみに有咲のツッコミが飛ぶ。が、効果はいまひとつのようだ。
「もしかして、昨日のライブで無理してたとか…?」
「そっ、そないなこと絶対あらへん!うちめっちゃエンジョイしてたで獅子メタル殿!」
「それならいいんだけど…」
より分け心配そうな沙綾に眠気が吹っ飛んだ様子。いくらニンジャで寝不足でも流石に空気位は読むのだ。
そんな中、唐突に話を切り出したのは───
「りみりんセンパイはさみしいんじゃないっすか?」
「…なんやて?」
蔵連中ずっと大人しかったたえだった。
「や、寂しいて…うちもともとタンバから参ったのだぞ。一人暮らしぞ?最初からロンリーウルフぞ?」
「けれど、今はちがうっす。かすみんセンパイも、有咲センパイも、沙綾センパイもいるっす。
だから、寂しくてもおかしくないと思うっす。」
「たえちゃんもだよ。5人揃ってPOPPIN'PARTYなんだから。」
「自分もいいんすか!恐縮っす沙綾センパイ。」
そんなやり取りをしている二人対して、りみはというと……
「ウチ…サミシカッタ…?」
頭の中で言葉がぐーるぐるしていた。こういうのは意外と本人の自覚がなかったりするのかもしれない。
「っていうか、りみはスマホとかもってないの?ないなら買ってもらえばいいのに。」
「サミシイ…ウチガ…」
「こら、戻って来い!」
「…はっ。ベンケー殿。イカガした。」
「あのさ、あんたスマホとかないの?使ってんのみたことないけど。」
「す、すまほとな…」
「いや何その顔。」
剣呑な表情になるりみに再び突っ込む有咲。スマホと聞いて身構える女子高生なんて、おそらく日本でも彼女くらいだろう。
「ひとたびすまほを使用すればイゾンショウなる不治の病を患うと…」
「不治の病って……あのねりみ。依存性ってのはスマホが止められなくて学校や仕事にいかなくなるとか、そうなってからいうの。
あと別に不治の病じゃないし。」
「な、なるほど…
はっ!なればあの時のベンケー殿も師匠へのイゾンショウを…」
「いっ、今あたしのことは関係ないでしょっ!?」
ニンジャの(無自覚な)不意討ち炸裂。ただ、真っ赤になって机を叩く有咲を前に
…とはいえそう言われても仕方あるまい。この蔵の主は一時期香澄とのバンド活動にかかりきりで、退学勧告にすら生返事だったのだから…
「と!に!か!く!あんたがスマホ持ってくれるとなにかとこっちも助かるのっ!
練習の打ち合わせとか決めやすくなるし、急に休まないといけなくなった時も連絡できるし。それに───」
「さ、左様か……」
勢いでまくし立ててもどこか煮え切らず、「左様か」しか言わないりみに、有咲のボルテージも次第に下がっていった。
そんな状況を再び動かしたのはまたしてもたえだった。
「…もしかしてりみりんセンパイ、ホントはスマホほしいんじゃないっすか?」
「な、なにゆえそないなことを…」
「そこまではわかんないっす。勘っすから。」
証拠不十分っすね…とこぼすたえに、モクヒする!と乗っかるりみ。そして間髪入れずに三度ツッコむ有咲。たえの勘もだが、有咲の切れ味も絶好調である。
「あ、あの…!」
「師匠?ヤブからスティックにナニヨーだ?」
「えっとあの、り、りみりんがスマホ持ってないのって…家族のため…とか?」
それを聞いたりみは口数少ないながらも狼狽え、目が泳ぎ、そして───
「流石は師匠。ケーガンであるな。」
観念したように目を瞑り、ぽつりぽつりと事情を話し始めた。
日本一のバンドに入るために、東京へ行きたいと両親を説得した事。今使っているベースに生活費半年分を使い込んでしまったこと。そのせいで一日数十円で生活している事───
「このことがバレたら、きっとうちの親は仕送り増やすやろ?その上にすまほの使用料まで請求したないんや…」
「そ、それはすごく立派だと思うけど…
で、でもね!皆心配してんじゃないかなって思ったの!
りみりんいつも家族とそんなに話してないでしょ?だから……!」
公衆電話を前に早口でまくし立て、そそくさと電話を切る。そんな慌ただしい家族の時間を、香澄は忘れられなかった。
「だ、だから……と、とりあえずスマホが欲しいってご両親に相談だけでも……って思ったんだけど……負担になりたくないんだよね…」
「せやな。」
勢いのまま始まった香澄の説得は、勢いのまま蹴躓き、勢いのままずっこけて終わる……
「け、けど!りみりん寂しいんでしょっ!?」
「!」
───事はなかった。
「私、りみりんに寂しいままでいてほしくない!学校や蔵連以外でもお話したいっ!
こんなの私のワガママだし…家族の負担になりたくない気持ちもわかるけど…
スマホが欲しいのが本音なら…もしその気持ちが遠慮より大きいなら!ご両親と話だけでもして欲しいのっ!!」
いつの間にか、香澄の手にはランダムスターが握られていた。まだまだ荒削りで、失敗もして、それでも
表情こそ必死そのもの。されどその佇まいはライブで演奏している彼女と何ら変わりなかった。
「せやけど…そうしたいのやけど…今月もう30円しか残ってないんや…九分ぽっちで相談なんてでけへん……」
「え、えぇ…」
ライブモードが終わってしまったのか、ギターを持ったまま気の抜けた声を出してしまう香澄。
けれど、彼女の
「……まったくしょうがないわねぇ……りみはいつもお家の電話に掛けてるの?」
「否。母上のすまほなり。」
「それなら……」
有咲がりみに何かを手渡した。
「ひゃっ、100円!?
ベンケー殿!これはっ!?」
「公衆電話代。ホントはウチの電話からかけるのが早いんだろうけど、分からない番号からかかってきたらご両親もびっくりしちゃうでしょ?
これでスマホのこと、相談してきなさい。」
「ベンケー殿……」
「それなら自分からも払うっす。自分もりみセンパイとスマホで話したいっす。」
「うさぎ殿……」
「それなら私も……はい。これで300円。
これでスマホのことだけじゃなくて家族と沢山話して来て。」
「獅子メタル殿……」
「じゃ、じゃああたしも……あれ?100円…100円…ない。」
「うっそでしょ……」
「えっ、うそ!?1円とか5円はあるんだけど10円も50円もない…!?
え、えっと…!りみりん!これ使って!」
小銭がなくて余程テンパったのだろう。香澄が勢いよく差し出した紙には野口英世が描かれていた。
「いや公衆電話じゃお札も使えないでしょうに……」
「あっ……!」
「師匠……」
「そっちも拝むな!縁起でもない!」
結局、香澄の分は沙綾が立て替えたのだった。
そして翌日の放課後、公衆電話越しでの交渉(と、沢山の思い出話)はつつがなく終了。近々実家の方でスマホを契約することになったりみは、うきうき模様で帰路についた。
そこからはいつも通り。夕食を済ませ、入浴も済ませ、宿題…は所々わかんないので明日ベンケー殿に聞くことにして、
「……」
床に………
(今寂しいのはどうしようもないやんっ!ないやんっ!ないやん!ないやん…)
夜更け故に心の中で叫んでみた。セルフでエコーも付けてみた。
……余計に空しいだけだった。