グレーテルは毎日毎日同じことの繰り返しで生きている感じがしない兄のヘンゼルをあの手この手を駆使して励ます、とってもハートフルなコントだよ!きゃひひっ!僕が考えたとってもおもしろい台本だから、みんな見てねっ!


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■■【笑う犬】より「ヘンゼル&グレーテル」

 

 白ずくめの深遠、純白の牢獄。

 糸くずのほつれひとつ無く、純白以外の何者も存在しない領域。

 

 右を見ようと純白。

 左を見ようと純白。

 上下もまた同じ。

 何もかもがあまりにも代わり映えせず、本当に左右に視線を動かせているかすら曖昧。

 

 次元の壁を越えるシュレーディンガーの猫箱を覗き「そもそも何も入っていない」かのように、有り得べからざる可能性に収束した確率だけを見せられているよう。

 

 シュレーディンガーの覗き窓。

 純白以外の何者も存在しない領域に、マリオネットじみた動きで入り込む少年が一人。

 

 

「生きてるってなんだろう」

 

 

 その姿はガリヴァー旅行記に登場するリリパットのように小さい。

 だが実際に小さいわけではない。覗き窓からの遠近によって、そう見えるだけなのだ。

 

 

「生きてるってなあに?」

 

 

 また一人、スプリングに乗って跳ねるかのような奇怪な動きで覗き窓の視界に入り込んだ。

 こちらはバストアップになるほど大きい。やはり、遠近によるものだ。

 

 

「生きてるってなんだろう?」

 

「生きてるってなあに?」

 

 

 二人は台本に操られ、自由意志の利かぬ身体から、心からの声が漏れる。

 その名を、ヘンゼルとグレーテルと言う。

 

 両者は遠近法を活かすかの如く覗き窓から離れ、あるいは近づく。

 そういう台本だからだ。

 覗き窓に映らぬ位置に、糸無き意図を操る邪悪存在がいるに違いない。

 

 乙女の如く華奢で可愛らしいヘンゼルの顔が覗き窓のすぐ傍に。

 その肩に乗る小人じみた距離感になるまで、覗き窓から離れたグレーテル。

 

 兄は酷く疲れた顔をしていて、妹は兄の横面を殴るかのように素振りを繰り返す。

 しかしそれは遠近法によるもので、グレーテルは実際にヘンゼルをボコボコに殴りつけているわけではない。

 

 

「はぁぁぁぁああああ……」

 

 

 ヘンゼルは深いため息をついた。

 

 

「どうしたのお兄様? 豚みたいな溜息をついて」

 

「豚!? 僕そんな溜息ついてないよ!?」

 

(ガヤ・ギャハハハハ!)

 

「だっていま、言ったじゃない」

 

 

 グレーテルはヘンゼルの声色を真似て、こう言った。

 

 

「はぁぁぁぁあああああっちっち あっちっち。

 ゆかが あついよ。たてないよ。

 あづいあづいあづいかまどあかないでられないあづあづいあづいたすけてぱぱたすけでられないだしてだしてからだあづいよあづいよあづいあ」

 

「絶対言ってないよそんなこと!?」

 

「あら? 昨日言ったじゃない」

 

「だってアレはグレーテルが!」

 

「お兄様、煩い」

 

「あ、え……っご、ごめんね……っ」

 

(ガヤ・アッヒャッヒャッヒャッヒャッ!)

 

 

 兄妹の力関係は明白。

 馬鹿で愚かで鈍間な兄に、しっかり者の妹。

 グレーテルは軽やかな動きで兄の耳元に近づき、囁く。遠近法によるもので、実際には耳元にはいない。

 

 だが確かに、羽根の無い妖精のような軽やかさで、囁いたのだ。

 

 

「くすくすっ。大丈夫。お兄様が悩んでいるなら、聞くわ」

 

「あ、ありがとう、グレーテル」

 

「かまわんよ。私達、たった二人の兄妹じゃない」

 

「あのそれ違……いや、もう別にいいや。何もかもが。

 それじゃあちょっと、僕の愚痴を聞いておくれよ、グレーテル」

 

「くすくすくすっ」

 

「今日も純白の牢獄でフェアリーゴットマザー様がチャート構想。

 昨日も純白の牢獄でフェアリーゴットマザー様がチャート構想。

 明日もきっと、純白の牢獄でチャート構想。

 多分、これから、ずっと、純白の牢獄でチャート構想……

 これじゃ、毎日毎日焼き直しだよ! 生きてる気がしないよ!」

 

 

 肩が不自然に跳ね、魔獣化の兆候を見せるヘンゼル。

 ロストエンパイアにおいて、ソウルとは時間経過で目減りするものであり、感情の起伏、絶望によって加速する。

 そしてソウル無きものはソウルに飢えた亡者を通り越し、魔獣になってしまうのだ。

 

 

「そんなことないわお兄様!」

 

 

 そんな兄の肩の跳ね上がりに合わせるかのように、グレーテルはツーステップジャンプを繰り返して兄の真横へ駆け寄った。遠近法によりどんどん身体が大きくなる。

 

 ……満面の笑みだ。不気味なほど。

 

 

「お兄様♪お兄様は疲れてるのよ」

 

「僕、疲れてるのかな……?」

 

「疲れてるのよ」

 

「うん」

 

(ガヤ・くすくすくすっ)

 

「だから、グレーテルが、お兄様のネガティブなソウルをいっぱい出してあげる!」

 

「え、あ、うん……唾いっぱい飛ばしてくるね」

 

(ガヤ・きゃっひひひひひ!)

 

「イーカラーイーカラー」

 

 

 困惑顔のヘンゼルは、突如胡散臭い片言となったグレーテルに導かれるまま、両手を挙げて無防備になる。グレーテルは台本に導かれるまま叫んだ。

 

 

「今日も今日とてバットエンドですか!?」

 

「もうウンザリだ!」

 

「うふふ。ねぇ、お兄様、目、瞑って?」

 

 

 ヘンゼルとグレーテルの顔が近い。よくない構図だ。

 だが兄は妹に促されるまま目を瞑った。

 

 グレーテルはヘンゼルの上着を脱がし、上半身裸にする。華奢で、薄い胸板。未成熟な少女のように、儚く、甘い雰囲気。

 その穢れ知らぬ先端部を隠すものはなにもない。

 

 

「グ、グレーテル……あの、なに、してるの?

 こ、こんなのダメだよぉ」

 

「イーカラ~♪ イーカラ~♪

 グレーテル ヲ シンジテ~♪」

 

 

 グレーテルは覗き窓の視界外からラバーカップを引っ張り出した。

 そして、嬉々とした様子でヘンゼルの右胸にラバーカップを突き刺す!

 

 

「グ、グレーテル!

 コレなに!? なんなのこれ!?」

 

「ツカレタ~♪ ツカレタ~♪

 オニイサマ♪ ツカレ、たぁ!」

 

 

 グレーテルは覗き窓の外からラバーカップをもうひとつ引っ張り出し、ヘンゼルの左胸にラバーカップを突き刺した。

 胸部外周から鳩乳を絞るような、得も知れぬ痺れがヘンゼルを襲った。

 

 

「グレーテル!

 何してるのって聞いてるんだけど!?」

 

「くすくすくす。お兄様。もう目を開けていいわ」

 

「……ええっ!?

 なな、なんだよコレ!?」

 

 

 半球状のラバーカップ二つがあたかも人ならざる存在のおっぱいのように。

 ラバーカップから伸びる棒状部位がクッソ長い胸部先端じみている。

 

 

「こんなことされたら、ち、ち、チキビ(精一杯の抽象表現)が長くなっちゃうよ!」

 

「くすくすくすっ!お兄様っ♪」

 

 

 妖艶に嗤いながら、グレーテルはヘンゼルの背後に回り込んだ。

 そして、背後からラバーカップの棒状部位の根本を掴む。

 

 

「ほぉら! バン! バン!」

 

「うひゃおう!」

 

(ガヤ・アヒャッヒャッヒャッ!ソウルの矢だ!みんな逃げろー!)

(キャー!)(ヤダー!)

 

 

 ガヤの声の通り、ラバーカップの棒状部位先端から『ソウルの矢』が打ち出された。

 

 ヘンゼルとグレーテルは森に捨てられ、魔女の家に入り込んだ……その顛末から、魔術を学んだ可能性を見出し、後付けでこじつけ、二次創作された設定であろう。

 フェアリーゴッドマザーの手によって。

 

 

「くすくすくすっ!お兄様のソウルの矢、ちっちゃくてカワイイわねェ?」

 

「しょ、しょうがないじゃないか。

 そんなこと言わないでぇ……」

 

「そおら! バン! バン!」

 

「うひゃおう!」

 

(ガヤ・キャッキャッ!)

(ヤダー!)

(かけられちゃう~)

 

 グレーテルはラバーカップを上下左右し、何度もソウルの矢を放つ。

 ヘンゼルのマジックポイントを使って……

 その威力は未熟。

 魔女の家に入り込んだからと言って、魔術師の素養があるわけではないのだ。

 

 覗き窓に瞬間、三匹の色違いの妖精が映る。

 だが誰にも当たらない。全弾回避されている。

 たとえ当たったとしても無意味であっただろう。

 あまりの魔力の低さに、ソウルの矢が貧弱すぎる。

 

 すぐにヘンゼルのマジックポイントが尽き、ソウルの矢が出なくなる。

 

 

「くすくす。お兄様、もうタマ切れ?」

 

「も、もう(ソウルの矢)出ないよう……」

 

「くすくすくすっ!」

 

 

 グレーテルは踊るようにヘンゼルの前面へ回り込んだ。

 そして、たいそう卑猥な手付きでラバーカップ棒状部位の先端を弄る。

 

 

「どうコレ?ほいっ♪」

 

「や、やめてよう」

 

(ガヤ・きゃひひひひっ!)

 

「気持ち良い?お兄様?」

 

「い、痛気持ち良い……かも……?」

 

「ショージキ♪ショージキ♪

 テンゴク♪テンゴク♪」

 

 

 ヘンゼルはラバーカップ越しに胸部へと与えられる、形容しがたい正体不明な感情に身をゆだねかけた、次の瞬間!

 

 

「このっ……変態!」

 

 

 グレーテルが腰の入ったビンタで二つのラバーカップ棒状部位を叩く!

 ヘンゼルはバキューム吸引の歪みに合わせて顔を歪ませた。

 グレーテルはラバーカップ棒状部位の回りを指先でくるくるし、たまに弾く。

 

 

「ほら!妹にラバーカップくりくりされて気持ちが良いって言ってみなさいよ!」

 

「ああっああああぁぁぁああああ!」グレーテルは左右のラバーカップを同時に引き抜いた。きゅぽん!「いってぇェェェエエエッ! 何すんだこの野郎ォォォオオオオ!」

 

「きゃー☆」

 

(ガヤ・アッヒャッヒャッヒャッヒャッ!)

 

 

 気弱なヘンゼルが、らしくなく激怒した。そういう台本だからだ。

 

 

「怒らないでお兄様! 生きてるじゃない!」

 

「あーっ! そうだったァー!」

 

 

 それまでのあらゆる流れを断ち切り、台本のセリフを口にする二人。

 

 二人は再びマリオネットに操られる人形じみて、奇怪な躍りを踊った。

 

 

「生きてるって何だろう?」

「生きてるってなあに?」

「生きてるって何だろう?」

「生きてるってなあに?」

 

 

 生きているのに、人ならざる神話生物に半ば操り人形の如く動かされる二人は、心の底から台本通りに歌った。

 

 

 躍りながらグレーテルは覗き窓に近づき、ヘンゼルは覗き窓から離れる。

 ガリヴァー旅行記に小人のように小さくなったヘンゼルの左右に、ラバーカップの半球状のゴム部位を構えるグレーテル。

 

 

「……」

「……」

 

 

 ヘンゼルは立ったまま両手足を広げ、大の字の姿勢になる。

 覗き窓からは、あたかもラバーカップの半球状のゴム部位に押し潰されぬよう支えているかのよう。

 

 だがそれは、遠近法によるもので、実際には触れていない。

 

 ……触れていない?

 ヘンゼルはあんなにも必死に、踏ん張っているのに?

 

 めくるめく嗤いの予感。

 

 触れていない? 遠近法による誤魔化し?

 まさかだろう?

 そんなありきたりで下品な結末じゃ面白くないよっ!

 ヘンゼルには抱腹絶倒ギャグのために壮絶な最期を迎えてくたばって貰わないとねっ♪

 

 

「えいっ!」

 

「ぎゃああああぁぁぁあああああああァァァ!」

 

(きゃひひひっひひっひひひーひひひひっゲホッゲホッ!

 ひーっひゃはははああはあはあはあはは!)

 

 

 ヘンゼルはラバーカップに押し潰されて死んだ。

 ゴムとゴムの外周から、棒状部位が尋常ならざる圧力を変形して内側へ凹んだのだ。

 

 常識が非常識に、非常識が常識になる。

 某童話のワンダーランド性。

 二次創作を我が物顔で操るフェアリーゴッドマザーにとって、距離の問題など些細なことである。

 

 

「オニイチャァァァアアアアン!」

 

 

 台本に操られたグレーテルは片言じみた絶叫。

 しかし、満面の笑みであった。

 満面の笑みを卑屈に歪ませて覗き窓に向きなおり、問いかける。

 

 

「これで私だけは助けてくれるんですね?」

 

(ガヤ・こういうのも面白いでしょ?)

 

「え?えへへ?最高です天才です面白いですフェアリーゴッドマザー様。だ、たから私だけは助けて」

 

 

 すっ、と覗き窓に小さな指先が映った。

 その指先に釣られてグレーテルが背後に振り返る。

 いつの間にやら、指差す先には非常口標識のある小さな扉が!

 

 

(ガヤ・その棒っきれの先っちょを上にして「聖火ランナー」、って言いながら走っていけば出られるよ)

 

「聖火ランナー!」

 

 

 グレーテルは走った。

 ラバーカップを一つ投げ捨て、残ったラバーカップのゴム部位を天に向け、ほとんど未成熟な体が引き出せる限界を越えて走った。

 全力疾走であった。

 

 

(馬鹿で愚かで鈍間なお兄様……

 あんたさえいなければ…。

 お母さんは私を愛してくれたんだからっ!

 でも私は無知で馬鹿なお兄様とは違う!

 私は選ばれたんだ!

 お兄様を殺せば自由なんだ!

 やっと私の人生が始まるんだ!

 あはぁッ!ははははあはぁぁッ!!)

 

 

 グレーテルは全力疾走している。

 だが遠近法が正常に働いていないのか、身体が小さくならない!

 非常口にいつまでたっても辿り着けない!

 グレーテルはいつまでもいつまでも走り続けました。

 

 めくるめく嗤いの予感……

 

 グレーテルの頭上に『2t』と書かれたカネダライが浮かび、静かに狙いを定めています。

 

 

(ああ、あぁぁあっ……なんでぇ?

 ありえないっ…ありえないっ……。

 あぁぁぁぁああっぁぁぁッッッ!!

 何で、私がこんな目に……

 お兄様……全部、お前のせいだ……

 私があんなに弄ってあげたのに喘ぎ声ひとつ漏らさないから!

 そんなに魅力無いわけぇええ?おかしいじゃない!

 私は一体、何の為に女の子として産まれたのッ…!?

 お前のせいだぞぉぉぉぉぉぉおおおッッ!!

 このホモ野郎ぉぉぉぉぉッッ!!)ぶちっ。

 

(きゃひひっ! ゲホッゲホォオ!

 ひーっひひひいひいひいひいひひひ)

 

 グレーテルは『2t』と書かれたカネダライに潰された。

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 人間って不思議ー。

 どうして平気で殺したり殺されたりするんだろ

 

 でも、しょうがないんだよね

 

 二人が裕福な家に生まれていれば、

 愛情を受けて育てられていれば、

 もっと幸せな結末を迎えられたのに

 

 でもね、そうはならなかったの。

 ならなかったんだよ

 だからね、

 

 このお話はここでお終いなんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……おおっ!? いまのセンテンス、ちょーセンス良くない?

 ボクってあったま良い! 今の台詞は本番でも使おう(めもめも)

 よーし! いんすぴれーしょん湧いてきたぞ! 

 

 にしても、やっぱりバッドエンドって需要あるじゃん!

 日本人はみんなコレ見て嗤ってるんでしょ?

 ボクとセンスが合うな~ボクも日本に移住しようかな~

 

 さてさて、つぎはどうしよっかなぁ~

 うーん、ぜんぶ面白くって悩ましいなあ……。

 どれか一つに決めなくちゃいけないだなんて、創作者の辛いトコだよねっ

 

 

 

 ……そーだっ!全部混ぜ混ぜしちゃえっ♪

 

 

 


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