機動戦士ガンダムEXVS InSert Credit(旧:掌のレバーと指先のボタンで、広がる世界。) 作:kaneda_02
全国のゲームセンターにて稼働中の大人気アクションゲーム。
機動戦士ガンダムシリーズに搭乗するモビルスーツを操作し繰り広げる2on2の対人戦が魅力。
大型アップデートや新作発売を続けて、十年以上続いてるすんごいタイトル。
ソーシャルゲームや家庭ゲーム機が普及・充実する昨今、その煽りを受けるゲームセンター業界において、根強い人気を誇る人気タイトルです。
執筆開始時(2023年4月)では、シリーズ6作目に当たるクロスブーストが稼働中。
●制作のノリ
本作は、執筆開始時(2023年4月)にアーケードにて稼働中の「機動戦士ガンダムエクストリームバーサス2 クロスブースト」をモデルに一部機体に「これがついてたら面白くなるんじゃないの?」と作者の妄想を追加されたものとなります。広い懐で受け入れてくれたら嬉しいです。
学生服の第一ボタンを開けると、春の爽やかな風が胸元に飛び込んできた。
下ろしたての学生服は、着慣れた中学までの制服に比べ、ひどく窮屈だった。信号待ちの集団の中で、
「二人はこの後どうするの? 何も予定がないなら、入学祝いにウチに来なさいってパパとママが言ってるんだけど……」
スマホから顔を上げた
「俺達はこの後ちょっと野暮用があるから遠慮しておく。……それに、こないだ卒業祝いだってケーキご馳走してもらったばかりだし」
修と優花の間を歩く
「ウチのパパったら、ついさっき校門で別れたばかりなのに、もう二人の新しい制服姿が見たいんだよ」
「ことあるごとにケーキをご馳走してくれるから、こちらとしてはありがたいんだけどね。気にするなとは言ってくれるけど、申し訳ないよ」
呆れた様子の優花に、修は苦笑で返した。
「パパもママも絶対に気にしてないよ。二人共、叶と修のおじさんとおばさんとは保育園来の友達なんだし、そんな友達の息子だから、多分叶と修を自分達の息子みたいなものだと思ってるに違いないし」
優花は、スマホの画面をスワイプし始めた。どうやらおじさんと連絡を取っているようだ。
「いつもお気遣いありがとうございます、って付け加えておいてくれる?」
手元に集中して足元が覚束ない優花の腕を叶が引いた。優花に合わせて歩くスピードを落とした叶を尻目に、修は商店街の中にあるコンビニエンスストアの入口を開ける。空調の効いた店内が、修とその後に続く二人を迎え入れた。
「ところで野暮用って何?」
スマホを学生鞄にしまった優花が、陳列棚の前でドリンクを選んでいる二人に問いかけた。修は麦茶を、叶は炭酸飲料を手にレジへ向かう。
「野暮用は野暮用」
レジで店員に千円札を渡しながら、叶が応える。
「そうやってはぐらかして……。何かイカガワシイことでもするの?」
お釣りを入れた財布を学生鞄にしまい、店員から麦茶を受け取る。
「男の子には男の子の事情があるんだよ」
入ってきた時とは異なるドアから三人は外に出た。コンビニエンスストアは、商店街と一本隣の通りに面しているため、入口が二つあった。
「わかった! またゲームセンターに行くんでしょ!」
買ったばかりの飲み物を口に含める修と叶の背後を見て、優花はそう言った。
喉を通る液体の冷たさを感じながら、修は唇からペットボトルを離した。口内に残っている麦茶を飲み込み、ペットボトルのキャップを締めた。
顔を見合わせた修と叶は、思わずといった具合でニヤリと口角を上げた。
「「当たり」」
百円は丁度作ったばかりだった。
そのゲームセンターは、中央に吹き抜けを設けた構造だった。一階にはクレーンゲームやプリクラ、二階にはメダルゲームがあり、対戦ゲーム等のアーケードゲームは地下一階に設置されている。各階を結ぶエスカレーターが、吹き抜け部分に設置されていた。
修は、エスカレーターの手摺部分に肘をかけ、手に持った縦長のシートを見た。種々様々なデコレーションが施されたシートには、ポーズを決める自分と叶、優花の三人が映っている。
「優花、アイコン早速変えたみたいだぜ」
叶が、こちらにスマホの画面を向けてきた。そこに表示された画面には、優花のSNSのアイコンが表示されていた。優花を中央にカメラに向けてピースを作る三人が、そこにはいた。
クラスメイト間で使用するクローズドなSNSではなく、オープンなSNSはクラスメイトにIDを教えていないと以前優花が言っていた。幼馴染だけにアカウントIDを教えているとのことだった。
「こないだも卒業祝いだってプリクラ撮ったばっかりなのにね。親子だから似てるんでしょ」
思わず苦笑を漏らしながら、修は学生鞄にプリクラをしまった。折り目がつかないように、入学案内のしおりの中に慎重にしまった。
二人の目的地を知った優花は、プリクラを撮りたいという理由で先んじてゲームセンターに足を向けた。修と叶を引っ張る形でプリクラの筐体に入った優花は、テキパキと百円玉を何枚か挿入口に流し込み、撮影の準備を終えた。率先してポーズを取る優花を真似ながら、三人は撮影を進めた。撮影された画像にデコレーションを加える際は、三人で額をくっつけ合いながら、編集用のペンを忙しなく動かした。
優花は、満足そうにシートを学生鞄にしまった。ゲームセンターに残る二人に遅くならないようにと言い残し帰宅の途についた。
お互いの両親が旧知の仲であったため、三人は物心つく前から一緒だった。アルバムを捲れば、ページのどこかに三人が一緒に映り込んだ写真があったし、記憶を辿れば、思い出の随所に三人一緒だった光景が思い浮かぶ。
今日撮ったプリクラも、その思い出の一ページとなるのだろう。
エスカレーターを降りた二人は、整然と並べられたアーケードゲームの筐体の脇を通り、目的のゲームへ向かう。地下一階の一コーナーを占有する形で、ズラリと合計十六台の筐体が並んでいた。
エスカレーター直下に背中を預け合う形で片面四台、そこから通路一つ分のスペースがあり、店内の壁面に沿う形で八台。壁面に沿った八台の中間に、サテライトと呼ばれる巨大なモニターが一台鎮座していた。
筐体には、一本のレバーに四つのボタン、アーケード筐体独特の操作デバイスと家庭用ゲーム機に慣れ親しんだプレイヤー向けのPADが設けられている。煌々と輝くモニターはデモプレイを再生し、プレイヤーが座っている筐体からは、ボタンの打鍵音とそれに伴ったサウンドが聞こえていた。
『機動戦士ガンダムEXTREMEVS』
モニターにゲームタイトルが表示される。
「wiki読んできたか?」
叶が、エスカレーターの直下に設置された筐体に座りながら修に尋ねた。
「もちろん。武装の特徴にダウン値にダメージにと何訊かれても答えられるよ」
修は、自信満々にそう答えた。学生鞄を筐体の下に置き、学生服を脱ぐ。筐体の前に設置された椅子は横長であるため、腰を下ろしてもスペースが余っていた。余ったスペースに、皺にならないよう気を付けながら学生服を置いた。
「なら良かった。自分の使ってる機体なのに、俺の方が詳しいってのも変な話だろ」
鞄から財布を、財布から百円玉を一枚取り出す。取り出した百円をクレジット挿入口に投入する。すると、クレジットの投入を受け付けた筐体から、大きく起動音が鳴った。デモプレイの再生が止まり、モニターには再びゲームタイトルが表示された。
「かくいう叶は? こないだみたいに指が悴んでってのは無しね」
百円を入れ終えた叶が、不敵に笑った。
「もう春だぜ? バッチリ動くさ」
「だね」
二人は、スタートボタンを押した。