機動戦士ガンダムEXVS InSert Credit(旧:掌のレバーと指先のボタンで、広がる世界。)   作:kaneda_02

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●エクストリームバーサス
 全国のゲームセンターにて稼働中の大人気アクションゲーム。
 機動戦士ガンダムシリーズに搭乗するモビルスーツを操作し繰り広げる2on2の対人戦が魅力。
 大型アップデートや新作発売を続けて、十年以上続いてるすんごいタイトル。
 ソーシャルゲームや家庭ゲーム機が普及・充実する昨今、その煽りを受けるゲームセンター業界において、根強い人気を誇る人気タイトルです。
 執筆開始時(2023年4月)では、シリーズ6作目に当たるクロスブーストが稼働中。

●制作のノリ
 本作は、執筆開始時(2023年4月)にアーケードにて稼働中の「機動戦士ガンダムエクストリームバーサス2 クロスブースト」をモデルに一部機体に「これがついてたら面白くなるんじゃないの?」と作者の妄想を追加されたものとなります。広い懐で受け入れてくれたら嬉しいです。


.1-2 マッチング

 スタートボタンを押すとゲームがスタートした。

 ゲームアカウントの登録は行っていないため、選択できるゲームモードは限られていたが、それで現状問題はなかった。好きなモビルスーツを好きなように動かせることが嬉しかったからだ。

 戦火の中に立ち上がるガンダムの姿を修はハッキリと覚えている。

 母が台所で夕食を作る音。傾き始めた太陽。手に持っていた音のなる玩具。物心ついて間もない頃の記憶。

 誰の影響で観始めたのかはわからない。もしかしたら偶然テレビに映っていたのかもしれない。きっかけはわからないが、鋼の巨人が立ち上がり、動き、宙を飛ぶ姿に幼少期の自分が心奪われたのは確かだ。

 それからというもの、毎週日曜の放送を欠かさず観続けた。保育園で叶や優花にガンダムのカッコよさを動きを真似しながら語ったのを今でも覚えている。修に影響された二人と一緒にガンダムを観たこともあった。

 そんなガンダムをこのゲームでは動かせる。

 アニメに描かれるような複雑な機器ではなく、一本のレバーと四つのボタンだけで劇中に描かれた様々な技を繰り出すことができる。それが堪らなく楽しかった。

 叶には感謝をしている。

 何故なら、修にこのゲームの存在を教え、誘ってきたのが叶だったからだ。

 中学の卒業式を控えたある日の下校時間。エクストリームバーサスに向き合った時の衝撃は、今でも覚えている。

「機体はいつもの?」

「あぁ、俺はダブルオーダイバーエースで行く」

「じゃあ、俺はストライクフリーダムで行くよ」

 機体選択と覚醒選択、ステージ選択を終えた。

 マッチングが始まる。

 

 

 

 エクストリームバーサスは、2on2の対人戦格闘ゲームだ。

 一昔前は店内に設置された筐体間のみでマッチングしていたが、現在はオンライン上で対戦相手を見つけ、マッチングを行うオンラインゲーム方式が基本採用されている。マッチングが完了すると、互いの陣営――選択機体と覚醒、相手の実力を示す階級を確認するマッチング画面が表示される。マッチング画面で数秒経過すると、画面が切り替わり、四人のプレイヤーが選択したステージの中からランダムに選ばれたステージが表示され、そこに選択された機体が発進する。ステージの対角に睨み合うようにお互いの陣営の機体が着地し、試合開始のアナウンスを待つ。痺れるような緊張を僅かに味わった後、開始アナウンスが告げられると試合が始まる仕組みだ。

 修は、手元に目線を落とす。

 コントロールパネル左部には、一本のレバー。他方には上段三つ、下段に一つボタンが配されている。

 レバーは、機体の操作と右部のボタンと組み合わせたコマンド入力を担っている。前に倒せば前進、後に倒せば後退。同様に左右への入力があり、レバーを倒さずにニュートラルの状態で繰り出す攻撃もある。

 一方のボタンは、それぞれ役割が設けられている。

 上段のボタンは、左から射撃、格闘、ブーストボタンとなっており、下段のボタンはターゲット切り替えを担う。下段のボタンは、機体の状態に左右されないシステム面への入力であるのに対し、上段のボタンは機体の操作に直接的に関与する物だ。

 総数二百を優に超える収録機体が持つ多種多様な武装が、上段のボタンから入力されるコマンドに設けられている。

 射撃ボタンを押せばメイン射撃が、格闘ボタンを押せば格闘が、ブーストボタンを押せば機体は軽やかに上昇を開始する。

 四角形に制限された広大なマップを前後左右、縦横無尽に動くに当たり、ブーストボタンを短時間に二度入力することで、機体はブーストダッシュを行う。ダッシュの名を違わない高速の移動でステージを駆け回り、ポジショニングを行うことが可能だ。ブーストボタンを押し続けることで機体は上昇を続けるが、それだけでは機体は前に進まない上に、単純なレバー入力では高速移動が行えないため、試合を通して最も入力されるコマンドといっても差し支えがない。

 また、エクストリームバーサスでは、ボタンを二つ以上押すことで出力されるコマンドがある。

 射撃と格闘の同時押しで出力されるサブ射撃。射撃とブーストの同時押しで出力される特殊射撃。格闘とブーストの同時押しで出力される特殊格闘。

 メイン射撃、格闘、サブ射撃、特殊射撃、特殊格闘。

 これ等の五つのコマンドを基本に操作を行っていく。

 レバー入力とボタン入力を同時に行うことで出力されるコマンドもある。

 代表的なものとして、格闘があった。

 レバーを前に倒しながら格闘入力で前格闘。後に倒せば後格闘。左右で横格闘。ニュートラルでN(eutral)格闘。

 一本のレバーと四つのボタンの組み合わせが、エクストリームバーサスを複雑ながらも奥深いゲームとして彩っている。

 レバーの感触とボタンの質感を確かめながら視線を上げると、修の座る筐体は、マッチング画面を表示していた。

 修と叶が選択したストライクフリーダムとダブルオーダイバーエースが画面左側、マッチングした対戦相手の機体や階級等が右側に表示される。

「これって……」

 修は、驚きの余り目を見開いた。

「……強いな」

 それは隣に座る叶も同様だった。

 相手の機体は、ガンダムサバーニャと騎士ガンダム。情報収集のために機体の強さを表す機体ランクを度々見るが、そこではどちらの評価も中堅以上だった。

 両機共癖のある機体であると、ゲームの攻略情報をまとめたwikiには記載があった。

 サバーニャは、格闘カウンター以外の一切の格闘を排した徹底的な射撃機体。射撃ボタンホールドでチャージできるチャージショットが放つ高弾速のビームを主軸とし、中距離以遠で相手を制圧する能力に長けた機体だ。

 一方の騎士ガンダムは、コスト帯屈指の時限強化とオンリーワンの武装群でテンポメイクする機体だ。武装パワーと自衛力に乏しい貧弱な生時(エクストリームバーサス界隈では、時限強化機体の非強化時を生時と呼ぶそうだ)を耐え忍び、時限強化のリロードが完了次第、それを発動。限られた時間の強化で、相手との距離を詰め、強力な武装で相手にダメージを与える機体。

 どちらもオーソドックスな機体とは異なり、専用の対策が求められる機体だった。

 が、二人を圧倒したのは、対戦相手の機体ではなく、別の要素だった。

 それは階級だった。

 対戦回数と対戦成績で上昇する、言わばゲーム自体のやりこみを示す一種のパラメーターである。

 ゲームの戦績を保存するカードを所持していない二人は、当然階級を持っていない。しかし、そんな二人でも相手の階級が高い物であるということはわかった。

 手強い相手であるということが、わかった。

「でも、やれるだけをやろう」

 それは強がりだった。

 だが、同時に期待でもあった。

 ただ好きなガンダムを動かして、それで満足するのであれば、きっとこの感情を抱くことはなかった。筐体の操作デバイスに触れて好きなガンダムを動かし、勝敗に一喜一憂する。それを繰り返していく中で、修の中にもっと強くなりたいと思う気持ちが芽生えていた。

 それが、情報を調べるために暇を見つけては攻略wikiを見る生活に現れていた。

 その成果を見せる時だ。

「頼むよ、叶」

「付き合うぜ」

 叶のその一言に、思わず口角が上がる。

 画面が切り替わる。

 ――その直前、修は視界の奥の筐体に目が留まった。修が座る位置からは、対面の筐体と筐体に隠されたサテライト左側の筐体を除き、壁面に設置された右側四台の筐体が見えている。その四台の内、二台に高身長の男と恰幅のいい男が座っていた。男達の座る筐体には、ガンダムサバーニャと騎士ガンダム、そしてストライクフリーダムとダブルオーダイバーエースが表示されていた。

 その意味を深く考える前に、試合開始のアナウンスが告げられた。

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