機動戦士ガンダムEXVS InSert Credit(旧:掌のレバーと指先のボタンで、広がる世界。)   作:kaneda_02

4 / 44
●エクストリームバーサス
 全国のゲームセンターにて稼働中の大人気アクションゲーム。
 機動戦士ガンダムシリーズに搭乗するモビルスーツを操作し繰り広げる2on2の対人戦が魅力。
 大型アップデートや新作発売を続けて、十年以上続いてるすんごいタイトル。
 ソーシャルゲームや家庭ゲーム機が普及・充実する昨今、その煽りを受けるゲームセンター業界において、根強い人気を誇る人気タイトルです。
 執筆開始時(2023年4月)では、シリーズ6作目に当たるクロスブーストが稼働中。

●制作のノリ
 本作は、執筆開始時(2023年4月)にアーケードにて稼働中の「機動戦士ガンダムエクストリームバーサス2 クロスブースト」をモデルに一部機体に「これがついてたら面白くなるんじゃないの?」と作者の妄想を追加されたものとなります。広い懐で受け入れてくれたら嬉しいです。


.1-4 迂闊な着地と迂闊な前進

 格闘ボタンをホールドしていた中指を離すと、モニターの中のダブルオーダイバーエースが赤く発光した。

 TRANS-AM。

 機体内の粒子を完全開放することにより、ダイバーエースの機動力が飛躍的に向上した。

 サバーニャに一太刀を加えるために、修の駆るストライクフリーダムが敵陣に飛び込んでいく。それに続くため、叶は一出撃一回限りのTRANS-AMを切った。

 参戦機体が二百機を超えるエクストリームバーサスでは、多くの機体に種々様々な武装が用意されている。アニメや漫画、小説等原作が元になり実装された武装が多く、中にはMETAL BUILDとのタイアップで実装された武装もあった。

 ダイバーエースの格闘CSに割り当てられたTRANS-AMは、中でも珍しい一出撃に一回限りの武装だった。多くの武装には弾数が設定されており、殆どがリロード式である中、明確に使用回数に限りがある武装は、そのどれもが強力である。

 ダイバーエースのTRANS-AMは、発動から二十秒弱自身の機動力を大幅に向上させる。ブーストゲージの総量や単純な機動力が目に見えて上昇し、発動中は間違いなくコスト帯最上位の機動力を獲得できる使い切り時限換装武装だ。

 虎の子とも言えるTRANS-AMを切り、叶はストライクフリーダムに追従する。

 作戦は、試合開始直前に修と決めていた。

『騎士ガンダムが生時の時はサバーニャをとりに行く。騎士ガンダムが強化に入ったら、俺が壁になるから叶は下がって体力を温存して欲しい。後は臨機応変で』

 修の作戦に、叶はエクストリームバーサスの勝利条件を思い出す。

 一、敵味方にそれぞれ割り振られた総コスト六千を〇にすること。

 二、タイムアップ時は、獲得スコアが多い陣営が勝利となること。

 機体には、それぞれコストが割り振られている。

 コストは四種類あり、上から三千、二千五百、二千、千五百となる。

 叶の駆るダイバーエースと対面の騎士ガンダムは、コストが二千五百。修の駆るストライクフリーダムと対面のサバーニャは、コスト三千である。

 機体の耐久力が〇になると撃墜扱いとなり、陣営に割り振られた総コストからその機体に設定された機体コストを支払う形で再出撃となる。対面の機体を撃破し、先に相手のコストを〇にした方が勝者となる。

 ルール自体はシンプルだが、実際は少々複雑だ。

 再出撃時、復帰する機体のコストが再出撃後の陣営の総コストよりも少ない場合、残総コスト量に応じて体力が少ない状態で復帰となる。

 例えば、三千コストのストライクフリーダムが撃墜後、二千五百コストのダイバーエースが撃墜されると、その時点で総コストは残り五百となり、ダイバーエースは五百コスト分の体力だけ持ち再出撃となる。二千五百コスト分の五百、五分の一の状態でだ。

 そのため、エクストリームバーサスでは、撃破順――落ち順が重要視されていた。

 オーソドックスな落ち順は、三千コストが先に落ち、二千五百以下の低コストが後に落ちるもの。セオリー通りに行くのであれば、修の駆るストライクフリーダムが先落ち、叶の駆るダイバーエースが後落ちが望ましい。コストが高い機体程、性能が高く設定されているためである。強い機体がより多くの体力を使用できたほうが、試合を有利に作りやすいからだ。

 その際、順番以外にも落ちるタイミングを調整する必要がある。

 先述のように、再出撃時に機体コスト分のコストが残っていなければ、後落ち側は、体力が少ない状態で復帰となる。そして、再出撃した機体が再度撃墜された際は、必然的に総コストが〇になり、敗北が確定する。

 そのため、多くの状況で後落ち側が狙われやすい。

 ――修が十分に動けるよう俺は体力調整をする必要がある。

 高コスト(三千コストをエクストリームバーサス界隈では、高コストと呼称するようだ。一方で、二千五百コスト以下は低コストと呼ばれている)が先に落ちれば、低コストはいつ落ちても良いわけではない。

 高コストが十分に活躍できるように、余裕を持って立ち回れるように、低コストは体力を残す必要がある。

 ――だから、修に続く形でサバーニャに圧をかけつつ、俺は食らわないように……慎重に。

 ストライクフリーダムと並んで射撃を送る。

 それは、ストライクフリーダムと同様にターゲティングされ、射撃を送り返されることを意味している。

 リスキーな立ち回りだ。

 だが、ダイバーエースには、大幅に機動力を向上させるTRANS-AMがあり、今はそれを使っている状態だ。いくらか融通は効くだろう。

 叶は、修の背中を追った。

 始めから敗色は濃厚であったが、諦めることは自分に許さなかった。隣でプレイしている修が諦めない限り、自分が諦めるわけにはいかないのだ。

 

 

 

 そこは間違いなく敵陣だった。

 攻撃の貧弱な生時の騎士ガンダムを遠ざけこそすれ、それでも飛んでくる射撃があり、目の前のサバーニャからは当然のように迎撃の射撃が飛んでくる。ストライクフリーダムは、ゲームを通してみてもかなり機動力が高い機体であり、その分多くの機体より自由にステージを移動することができた。しかし、火線の厚さに修の駆るストライクフリーダムは、思うようにサバーニャとの距離を詰めることができずにいた。

 元来、エクストリームバーサスに於けるストライクフリーダムは、高い機動力を活かし、相手の攻撃を避け続けることに長けた機体だ。避け続けることが得意であることと相手に詰めることが得意であることは、時として同義ではないのだと、修は試合が始まってから数十秒で感じ始めていた。

 ――こんなに歯痒いなんて!

 エクストリームバーサスを始めてまだ間もない修にとって、ここまで階級が高い対面は初めてだった。

 今までは、何となく勝てたし、何となく負けたという試合が殆どだった。中には悔しさの余り奥歯を噛み締めた試合もあったが、それでも試合のどこかに満足のいくようなプレイができた部分があった。

 しかし、この試合は違う。

 いくら射撃を送っても当たらない。

 前に詰めても詰めても距離が詰まらない。

 それは、一重に相手の上手さが、そして自身の拙いプレイが原因だ。

 ここまで自身のスキルを突き詰められたのは初めてだった。

 今もそうだ。

 ブーストを回復するために後方への一回転と落下を兼ねた移動技――後格闘を入力し、軽やかに実行したストライクフリーダムの着地を、対面のサバーニャは的確に狙撃してみせたのだ。

 サバーニャの狙撃、射撃CSは、コマンド一つですぐに出せるものではなく、射撃ボタンを数秒ホールドし、専用のゲージを溜めてからでないと出すことができない。対面は、修のストライクフリーダムの後格闘を読み、事前に射撃CSを用意していたのだ。

 距離を詰めるためのブースト、そのための布石としてのブースト回復。

 それ等の行動が、全て手に取るように読まれている錯覚にとらわれかける。

 射撃CSに撃ち抜かれ吹き飛んだストライクフリーダムを立たせる。

 減りつつある体力と着々と経過しつつある時間。

 二つの数字に数瞬目をやり、悪化しつつある現状を覆そうとターゲットを見据えた時、修はあることに気が付いた。

 騎士ガンダムが前に出ている。

 先程まで、慎ましく細やかな射撃を送るだけに努めていた騎士ガンダムが、今、こちらのストライクフリーダムとダイバーエースと対角のサバーニャの中央に躍り出た。

 悪寒が、急速に修の背筋を駆け上がる。

 画面越しに伝わってくるプレッシャーが、修の喉に手をかけた。

「ッッッ来る!」

 隣の叶に叫ぶと同時。

 騎士ガンダムの全身から、光が全方向に迸る。

 

 

 

 修から事前に、騎士ガンダムが次元強化機体であることは聞いていた。

 自分が使っている機体のことくらいは知っておけといった意味で攻略wikiに目を通すことを勧めたが、それ以上に知識を得ていた修に、叶は驚いた反面自然と納得をしていた。

 幼少期からの幼馴染だ。ゲーム自体を勧めたのは自分だが、今回も自分以上にのめり込むかもしれない。そういった予感があった。

 その修が、危機感を孕んだ呼びかけをこちらに投げかけてきた。

 騎士ガンダム。

 参戦自体は知っていた。

 しかし機体の詳細までは知らない。

 全くの未知の存在が、力を解き放った。

 サイド七の人工太陽の光を受けるその装甲は、銀色の鎧から、青色の鎧へと変化している。右手には炎を纏った剣が握られ、対の手には緑の盾が構えられている。

 騎士ガンダム改めフルアーマー騎士ガンダムが、自身から解き放った眩い閃光を引き裂き突進してきた。

 フルアーマー騎士ガンダムは、勢いそのままに炎の剣を左に構えた。試合開始直後に行った立ち回りの中で放った衝撃波と同様の構えだ。

 肌に伝わってくる修の緊張感と未知の存在に指先が強張る。

 生時の時に見たメイン射撃は、お世辞にも強いとは言えない性能だった。弾速は遅く、発生も遅い。おまけに誘導も弱かったため、ダイバーエースの機動力を持ってすれば、態々回避に専念する必要がない位取るに足らない物だった。

 未知の時限強化機体が放つ攻撃が、その威力の矛先を求めている。

 

 

 

 ブーストゲージの息継ぎのため、ダイバーエースはどこかで着地をする必要があった。敵機を追い込まんとブーストを酷使した代償だった。安全な着地を通すための択をダイバーエースはいくつか持っている。しかし、無知から生じる油断と緊張が、叶の判断を鈍らせた。

 フルアーマー騎士ガンダムが、構えた炎の剣を振り抜いた。

 直後、炎を纏った衝撃波が、剣先から放たれる。

 放たれた斬撃は、着地硬直中のダイバーエースに向けて飛来した。

 目を見張る程の弾速で、だ。

 その弾速は、今までオーソドックスなビームと実弾の応酬ばかりをこなしてきた叶にとって、未だかつて経験をしたことがないものだった。

 通常の弾であれば回避行動やガードが間に合っていたであろう距離が、ダイバーエースとフルアーマー騎士ガンダムの間には横たわっていた。が、高弾速の衝撃波は、瞬く間に二機の間を詰め、着地硬直中のダイバーエースに直撃した。

 ダイバーエースの体力が減少する。

 追撃を入れんと二射目を構えるフルアーマー騎士ガンダムを尻目に、慌てて回避行動を入力した叶は、ダイバーエースが指示を受け入れずその場に縫い合わされたように動かないことに気が付いた。

 機体表面をメラメラとした炎が立ち上っている。

 独特のエフェクトをまとい操作命令を受け付けないダイバーエースは、炎上スタンと呼ばれる状態に陥っていた。

 エクストリームバーサスは、他の格ゲー同様、ほぼ全ての武装にくらい判定が設定されている。アニメ等の原作のように相手の攻撃をくらいながら動く、または反撃することは、スーパーアーマー等の特殊な状態や武装を除き行えないよう設定がされている。

 例えば、ポヒュラーなメイン射撃であるビームライフルを被弾すると、機体がよろけるように設定されている。よろけている間、機体は極一部の行動を除く全行動を受け付けなくなり、よろけが解除されるまで対面の攻撃に無防備に晒されることを余儀なくされる。

 今、ダイバーエースの行動を縛っている炎上スタンは、いくつか種類があるくらい判定の一つだ。通常のよろけよりも復帰までの時間が長いことが特徴である。

 ――なるほど、確かに強化されている。

 生時の貧弱なメイン射撃を露程も感じさせない強力な射撃。

 放たれた二射目とさらなる三射目に対し、ダイバーエースは無抵抗に直撃を受けざるを得なかった。

 全くの無知の攻撃を体感するにあたり、支払った代償は大きい。

 叶の駆るダイバーエースは、低コストとして体力を残さなければならない。低コストが被弾をしてしまえば、高コストは満足にゲームメイクができない。

 体力が減少しく様を認めながら、叶はその基本的な事実を再認識していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。