仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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9.ガラスの記憶

 霧と闇が、頭の中を覆っている。

 その中で閃く断片が、記憶だ。

 濃い記憶、強い記憶、苦い記憶。

 

 それらが踏み砕かれたガラスのように、魂の内側でで閃いては接続と切断をくり返す。

 

 あの人が、くれたものだ。

 記憶も、言葉も、知識も、技術も。

 そして命も。

 

 そしてそれが、自らの腕の中で失われていく冷たさも。痛みも。

 

「おやっさん!?」

 意識の浮上とともに起き上がったレフの額が、晶斗の額と激突する。

「この痛みは、なんか違うヤツ……っ!」

 互いに悶絶しながら、半覚醒のレフは我ながら不明瞭な嘆きを漏らした。

 

「なんなんだよ、クソッ……」

 若干情けなく声を裏返らせつつ、晶斗は毒づいた。

「なんなんだはこっちのセリフッ、あんな妙に接近してる方が悪いっての」

「人の苦労をよそに、お前が寝こけてやがるから、ケリの一発でも入れてやろうとしたんだよ」

「寝こけて――眠っていたのか。僕が」

「他に何があるんだよ」

 

 

 だが邪険に思っているだろう依頼人をあえて起こすとなれば、理由は一つしかない。

 

「できたのっ?」

「あぁ、一応な」

 晶斗が死角より取り出したのは、半身を取り戻したドイルドライバーだった。

 

「さっすが」

 飛びついたレフは、あらためてまじまじと凝視する。

 だが、その姿形は、自分の知るそれとはわずかに異なっている。

 錆びた、というよりかは寂びた色味となっているし、左サイドにはL字状の導管が取り付けられていたはずだが、代替パーツは直角ではなく歪曲していて、Jの形のようだった。

 

「なんか、ちょっと違うね」

「贅沢言うな。無から設計図書き起こしたんだぞ。それ以上に動力部には不安が残るが、試運転の余裕さえない」

 

 そうは愚痴をこぼすものの、懐中より時計を取り出して確認してみれば、想定されていた時刻より早くには仕上がっていた。

 

「もう少しギリギリかと思ってた」

「あぁ、薄気味悪いぐらい、原料の在庫が揃ってたからな。パーツもうちのもので大体が流用可能なものだった……まさかお前、それがハナから目当てで俺に当てをつけたのか?」

「……それこそ、まさかだよ」

 

 肩をすくめて立ち上がろうとすると、自らの上体からはらりと毛布はこぼれ滑り落ちた。

 自覚はなかったが、纏われていたらしい。

 

「あれ、これって」

「さっさと行くぞ。早く仕上がったつっても、遊んでるヒマはねぇ」

 

 早口でそう言うや、晶斗もまた膝を伸ばして立ち上がり、背を向けた。

 ちいさな探偵は簡単な推理のもとに、目を細めた。ようやく、どうして彼があそこまで接近をしていたのか、把握した。

 

「――やっぱり、似ているよ。君たちは」

 だからこそ、あぁいう記憶(ユメ)を見たのだ、と。

 

 思わずこぼれた独語。そのうちに帯びた繊細な感情の響きをそっと自らに留め、毛布の縁を指先でなぞり上げた後、レフは彼の後を追従したのだった。

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