仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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11.戦端

 仮面ライダーシャルロック サイクロンロジック。

 そう名乗りをあげたレフは、ゆったりとサラマンダー・フェアリーへと歩み寄った。

 倒すというよりかは、猛獣を宥めすかすように、静かな足運びで。

 操る工藤は、すでに眼中になく。

 

「……やれぇ!」

 それを屈辱に感じたか。忘我の状態から復活した工藤が、自らの操る怪物に鋭く命じる。

 殺意に突き動かされたトカゲが、その豪腕を熱風と共に振るう。

 

 だがすでに、そこにシャルロック姿はない。

 しかし遠のいたわけでもない。

 

「こっちこっち」

 仮面の若者は、その異形の背で片腕で逆立ちしている。

 煽るような調子で声をかけたそれを振り落とさんと、地面を転げ回る。

 

 レフはむしろその勢いを利用して身を捻ると、腹の下に潜り込んで蹴り上げた。浮上する。吹き飛んでいる。天井に激突し、電灯ごと落下する。

 

「すげ……」

 楓が茫然自失で呟かなければ、晶斗がその賞賛を口にしていただろう。

(これが、レンズの力、か)

 

 サラマンダーをいなすシャルロックのファイトスタイルは、蹴り技を主体としたしなやかな動作で、あえて言うならカポエラに近い。だが、踊りを混ぜることで監視を欺いたという歴史のあるその格闘技とは異なり、翻弄こそすれ遊びはない。

 

 否、このような技や流派が歴史上に存在するだろうか。

 床を行くように壁を伝う人間など、見たことがない。

 ワイヤーも無しに高く長く宙を舞う人間など、聞いたことがない。

 その過程で方向を切り替えて、連続蹴りを浴びせる人間など知るべくもない。

 

 これが、シャルロック。

 これが、

「仮面、ライダー……?」

 

 それこそ妖精か、あるいはカートゥーンでフック船長を挑発するピーターパンのように、敵を疲弊させるためにその身を、力を、躍らせる。

 

「ああああぁっ!! ウゼェッ! そんなチンケな風で、このオレを縛るなぁぁぁあああ!」

 

 それが奏功し、工藤が吼える。その怒情に感応し、サラマンダーはがむしゃらな特攻を繰り出した。

 今までにない、直線的な動き。読み易く、隙だらけで、そしてレフがおそらく待っていた瞬間。

 

 レフはベルトの右横にくくられていた、空のレンズを取り出すと、空いていたスタンバイサイドへと装填する。両サイドに揃ったレンズが、回転を始めて渦を巻く。もそして、レンズを収めていたのとは逆サイドに取り付けられていたスイッチを、掌で押し込んだ。

 

〈Sylph! Extreme Q.E.D!〉

 

 本人同様、男女いずれともつかない音程のガイダンスボイスとともに、マスクの塞がれた右側で、真紅の眼光が閃く。

 腰を落として突き出した右の足先に翠風が球のように固まる。

 

 それを爪先で小突いて適当な高さまで浮き上がらせると、左の脛を叩きつけ、敵目掛けて送り出す。

 蛇行しながら尾を引くようにして飛んだそれは、軌道上で二つに分かれ、片方がサラマンダーのモノクルを、もう一方が胴を穿ち抜いた。

 

 くの字に折れ曲がったのも束の間のこと。

 押し当てられたエネルギーによってトカゲの体内で誘爆が起こり、自らの火に焼かれて怪物は爆散した。

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