仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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2.紅蓮一閃

 異なる形態への、変身。

 その熱の余波が、敵を怯ませる。

 その瞬間の空白を、レフは突いた。

 

 飛び上がる高さは、サイクロンより低く。詰められる距離も短い。

 繰り出すパンチは、重く熱い。迎撃に繰り出された刀を押し返し、敵を圧迫する程度には。

 

(とは言え、反動きっついなぁ)

 一応自身の発熱に耐えうる強化グローブ越しであるはずにも関わらず、返ってくるのは鈍痛を伴う衝撃、痺れ。

 

 単純な相性というのもあるのだろうが。

 相手の熟達の防禦を超えて有効打を与えることができるが、敵を破る前にこの身体が自壊を起こしそうだ。

 

(だったら)

 シャルロックの左手が、虚空に伸びる。

 正確には、その先で停められた愛機『マシンドロンパー』へと。

 

 その側面部、エンジン回りに格納されていたデバイスが、シャルロックの中身の意気に応じて射出された。

 ボンベ、あるいは火炎放射器にも似た、引き金(トリガー)のついた把手とノズル、そしてレンズを挿入し固定するためのフレームとカバーを付属させた、円筒。

 それはひとりでに飛翔するとともにレフの手に吸い寄せられ、その手に収まる。

 

 『ハードボイルドライバー』。

 そう名付けられたデバイスを手に、引き金に指を掛ける。

 火球がその射口から吐き出され、怪人へと浴びせかけられる。

 

「……うん! 思った通りだ」

 持て余していた炎のエネルギーを、程よくこのドライバーが吸い上げてくれる。

 シャルロック本体との噛み合わせが不安定でも、こちらは収まりが良い。

 

 連射とともに接近。場の主導権を巻き返しつつ、火焔纏う右脚で連続蹴りを叩き込む。

 だが敵も、すぐさまその射撃に視力を追いつかせる。五、六度の被弾を喰らった後、その刃でもって弾くようになり、逆にその返す太刀を袈裟懸けにシャルロックに叩き込んだ。

 

(とはいえ……やはり長引かせると都合が悪いな)

 痛みと理性とを切り分けて判断しつつ、レフは転がる。

 誘いだった。

 追い討ちを仕掛けてくるところを、仰向けに臥したまま、飛ばした斬撃もろともに迎え撃った。

 

 自らの安泰を確保して立ち上がりつつ、ベルトのソケットにエンプティレンズをセットする。

 

〈Salamander! Grenade Q.E.D!〉

 

 炎がとぐろを巻く。砲丸の形を成して一度固まったそれを、足の甲ではなく後ろ蹴に回した足底でもって叩く。

 尾を描いて直線的に、投槍のごとく伸び上がったそれは、その軌道を焦がしながら精霊の怪物へと向かう。

 

 対するそれは大上段の構え。唐竹割りに、偃月の曲刀を振り下ろす。

 その接触を機とし、起点として、大爆発が起こった。

 

 熱波が視界を焼く。

 やがてその発破が終わったことを、肌を通して感じ取った。

 マスク越しの視力がじわじわと戻っていくと、すでにその先からは、件の狼剣士の姿はかき消えていた。

 

「……やった、のか?」

 顔を袖口で拭いつつ、晶斗が確認の声をあげる。

 腰に手を遣りつつ、項垂れ気味にレフは息をこぼした。

「そーゆーの、だいたいやれてないんだよねぇ」

「つまり?」

「逃げられた。いや、やるね。まさか、寸毫の間で爆炎を切り裂いてそこから脱出するとは、相当の修羅場をくぐってると見た」

「……取り逃がしといて、偉そうなクチ叩いてんじゃねぇよッ」

 

 晶斗に後頭部をはたかれる。

 当然ながら、痛みはない。むしろ、無遠慮にフェアリー由来の未知の合金を叩いたのだから、本人の方が反動(ダメージ)が大きかっただろう。

 だがその無思慮さが、不思議と好ましかった。

 

 ――刃藤刑事が、異常極るその現場へパトカーに乗りつけてきたのは、それから程なくしてのことだった。

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