異なる形態への、変身。
その熱の余波が、敵を怯ませる。
その瞬間の空白を、レフは突いた。
飛び上がる高さは、サイクロンより低く。詰められる距離も短い。
繰り出すパンチは、重く熱い。迎撃に繰り出された刀を押し返し、敵を圧迫する程度には。
(とは言え、反動きっついなぁ)
一応自身の発熱に耐えうる強化グローブ越しであるはずにも関わらず、返ってくるのは鈍痛を伴う衝撃、痺れ。
単純な相性というのもあるのだろうが。
相手の熟達の防禦を超えて有効打を与えることができるが、敵を破る前にこの身体が自壊を起こしそうだ。
(だったら)
シャルロックの左手が、虚空に伸びる。
正確には、その先で停められた愛機『マシンドロンパー』へと。
その側面部、エンジン回りに格納されていたデバイスが、シャルロックの中身の意気に応じて射出された。
ボンベ、あるいは火炎放射器にも似た、
それはひとりでに飛翔するとともにレフの手に吸い寄せられ、その手に収まる。
『ハードボイルドライバー』。
そう名付けられたデバイスを手に、引き金に指を掛ける。
火球がその射口から吐き出され、怪人へと浴びせかけられる。
「……うん! 思った通りだ」
持て余していた炎のエネルギーを、程よくこのドライバーが吸い上げてくれる。
シャルロック本体との噛み合わせが不安定でも、こちらは収まりが良い。
連射とともに接近。場の主導権を巻き返しつつ、火焔纏う右脚で連続蹴りを叩き込む。
だが敵も、すぐさまその射撃に視力を追いつかせる。五、六度の被弾を喰らった後、その刃でもって弾くようになり、逆にその返す太刀を袈裟懸けにシャルロックに叩き込んだ。
(とはいえ……やはり長引かせると都合が悪いな)
痛みと理性とを切り分けて判断しつつ、レフは転がる。
誘いだった。
追い討ちを仕掛けてくるところを、仰向けに臥したまま、飛ばした斬撃もろともに迎え撃った。
自らの安泰を確保して立ち上がりつつ、ベルトのソケットにエンプティレンズをセットする。
〈Salamander! Grenade Q.E.D!〉
炎がとぐろを巻く。砲丸の形を成して一度固まったそれを、足の甲ではなく後ろ蹴に回した足底でもって叩く。
尾を描いて直線的に、投槍のごとく伸び上がったそれは、その軌道を焦がしながら精霊の怪物へと向かう。
対するそれは大上段の構え。唐竹割りに、偃月の曲刀を振り下ろす。
その接触を機とし、起点として、大爆発が起こった。
熱波が視界を焼く。
やがてその発破が終わったことを、肌を通して感じ取った。
マスク越しの視力がじわじわと戻っていくと、すでにその先からは、件の狼剣士の姿はかき消えていた。
「……やった、のか?」
顔を袖口で拭いつつ、晶斗が確認の声をあげる。
腰に手を遣りつつ、項垂れ気味にレフは息をこぼした。
「そーゆーの、だいたいやれてないんだよねぇ」
「つまり?」
「逃げられた。いや、やるね。まさか、寸毫の間で爆炎を切り裂いてそこから脱出するとは、相当の修羅場をくぐってると見た」
「……取り逃がしといて、偉そうなクチ叩いてんじゃねぇよッ」
晶斗に後頭部をはたかれる。
当然ながら、痛みはない。むしろ、無遠慮にフェアリー由来の未知の合金を叩いたのだから、本人の方が
だがその無思慮さが、不思議と好ましかった。
――刃藤刑事が、異常極るその現場へパトカーに乗りつけてきたのは、それから程なくしてのことだった。