仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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10.双月双士

 新たなる戦士が乱入したことにより、戦況は数の上では互角に戻る。

 そして一対の狼はそれぞれ、異なる戦士たちにきっかり分かれて対峙する。

 

 まるで、月の引力に惹かれるように。

 いや、そうではない。晶斗の鋼の意志と焔の強さが、自らの役割を定め、線引きするように彼女と彼らは分けたのだろう、とレフは思った。

 

 その晶斗は、ゆるやかに変わり果てた姉代わりへと歩を進める。

 その道程は容易ならず。飛び交う刃は身内である彼を容赦なく襲う。

 背を叩く。胸を刻む。二の腕を削る。

 

 だがそのダメージの一切を、彼は避けもせず受け続ける。

 どれほど激しく火花が散ろうとも、前進を止めはしない。

 

 ある程度まで間合いが縮まった瞬間、彼は瞬発的に動いた。

 気が付けば、鋼の闘士は人狼の剣士の懐中。広げた右掌を、黄金のメイルへと叩きつける。

 転瞬、その接触面が火を噴いた。

 彼の内より(サラマンダー)の力が、刃藤の分身体を端まで吹き飛ばす。

 一切の手抜きもない。どれほど慕う相手であっても。否、だからこそ。

 

 しかし壁に叩きつけられても萎えることのない戦意と狂気をもって、すぐに立ち直った彼女は、神速の剣裁きで斬撃を飛ばす。

 

 燕のように自在に舞うそれらは、さらなる鋭さを増して彼の八方から迫った。

 だが先んじて背を襲わんとしたその斬撃は、どこからともなく顕れた鉄の蜥蜴が防いだ。その衝撃を受け流した後、武器庫のように開きとなったその中から、晶斗は奇形の鉄器を抜き出した。

 

 建材のような、あるいは顔面のシンボルをそのまま立体化させたかのような、銀色の塊。

〈バーリツール〉

 その名を起動音の代わりとする。それを両手で握りしめて、二つに割るや、一気に振り下ろすと、二振りの鉄棒となった。

〈ステッキモード〉

 聖火(トーチ)のようにその先端が炎を灯す。

 そして自在にリーチを調節しながら、ワットは両腕をダイナミックに動かした。自らに向かう妖月たちを撃ち落とす。

 狙い澄ましてそれをしているわけではあるまい。ただ直感でアタリをつけて、そのうえで振りの早さとリーチと面積でその雑さを補いながら、むしろライカンへ逆撃を加えていく。

 

 ――このセンス。この順応性。この適正。

 (何より刃藤刑事のように支配もしないしされない精神力……フェアリーとの見事な融和)

 

 初陣ゆえ本人も知覚していないことなのだろうが、彼は得難い資質の持ち主だ。人と精霊を繋ぐテンプレートとなり得るほどの。

 

(……『あの人』への義理立てのために彼と接触したが……君に賭けてみたくなったよ、和灯晶斗)

 

 その新たなる決意が、シャルロックの意識と体勢を前傾にさせる。身体を軽やかにさせる。

 暖められた空気に乗って、壁を奔って踏み台とし、ステンドグラスと偽りの月光を背に、高らかに舞い上がる。

 

 そしてもうひとりの刃藤法花の斬光がレフを追った。

 晶斗に向けられたものと何ら劣るところのない鋭利さと高速でシャルロックに迫る。

 

 ワットとは異なり、正面からその直撃を喰らって平気でいられる強度は、このスーツにはない。

 迎撃するための武装は彼に委ねた。

 ダメージも蓄積している。

 

 だが、パターンはすでに読めている。

 どれほど斬撃を増やし、その太刀筋が玄妙を極めようとも。

 その生来の生真面目さゆえに、

 

(結局のところ、すべての攻撃は間を置かず、一度に僕に集中するっ!)

 ゴールが見えているのなら、あとはタイミングを読むだけだ。

 

 レフの読み通り、八方からほぼ同時に、刃はシャルロックを包囲し、一気呵成に攻め立てた。

 その間際、創り出した風に乗ってもう一段、高みへと飛び上がった。

 

 足下で交錯する月光。それを見送り、我が身を捻り屋根裏を蹴って加速。

 

 

〈Sylph! Extreme Q.E.D!〉

 

 目論見を外した彼女に生じた、一分の動揺。

 それを見越して、レンズを嵌めたレフは旋風を蹴って送り出す。

 

「この程度ッ!」

 彼女の曲刀がシャルロックの風の砲撃を正中に捉えた。

 だがその切っ先に捉えられる間際に、風は二つに割れる。彼女を素通りして壁や床にバウンドして、その正体や所在を定かならぬものとした。

 

 人智を超越した己の秘技が、他人に模倣できるわけもない――彼女の戦術眼の枠組みから、わずかに突出したその過信を突く。

 ――これが、最後の奇手。起死回生の手。

 

 そして、左の足下から伸び上がった初撃が彼女を大きく揺さぶり、逆から迫った必殺の二撃目が、そのモノクルに叩きつけられ、重く苦しげなとともに彼女を弾き飛ばしたのだった。

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