仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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9.月狼、再臨

 図らずも、二対三の構図が出来上がっている。

 受け持つのはシャルロックが大物(スプリガン)一体、ワットは残る二機を。

 

(本当に、歪な育て方をしてくれたものだ)

 その猛攻を避けながら、巨体の奥にいる真の敵を睨む。

 

 スプリガンは元々、近くの人間が快楽中枢を刺激される際に発せられる微量の生体パルス……要するに欲望をエネルギーとして摂取し、レンズ外での長時間活動を可能としている。

 

 だが、それを知ってのことか、あるいは単純に自身の武器を強化したいという単純な考えからか、あのスプリガンは欲望を人体ごと食わせている。

 

 エネルギーの過剰摂取だ。

 その結果があの異様な肥大化。ともすれば暴走、暴発の恐れさえある。

 

 ユーザー自体への攻撃はスプリガンの肉厚に阻まれて難しいというのもあるが、その膨れ上がったエネルギーを放出しなければ、『彼』は元には戻らない。

 

(仕方ない、スプリガンを救うためには、このダイエットに付き合うしかない、か)

 

 しかしそのためには自身に追走してきた異物が問題だ。

 似非ライダーたちが、その遊びのない自動小銃でもって、ワットに十字砲火を浴びせかける。

 

 腕を交差させ、がっつりと守りに徹した重装甲はその攻勢にも揺らぐことはないが、それでも傍目で見る限りには痛ましい。間断なく響く金属音が耳に辛い。

 しかもこの鉄獣のコンビの連携は相当なもので、一方が弾倉を切らせば余力を残したもう一方がその間のカバーに入る。

 

「しゃらくせぇッ」

 

 晶斗の怒号一発。その背に鉄トカゲがふたたび出現し、その内部に格納されていた多機能近接兵装たる『バーリツール』を抜き取った。

 

〈ウィップモード〉

 鋼の鞭に変形したそれが熱くなって色づき、紅蓮の蛇と化してしなり、銃弾を迎撃していく。これが第一の防壁。

 

〈スティックモード〉

 それを潜り抜けた弾丸群の距離が縮まると、分離させた武器から火の弾を撃ち返して相殺する。これが第二。

 

〈シャフトモード〉

 その煙火を突き破ってなお迫るそれを防ぐのは、長棒に再結合したツール。それを自らの突き出してスクリューのように旋回して作り出した障壁。

 

 その三重の防御体制によって弾幕を凌ぎ切ったワットだったが、敵はフォーメーションを組み、牽制のための銃撃を惜しみなく加えながらも横をすり抜けていく。

 そしてチーターの鉄人……音声から推察して仮称するところの、ラッシングチーターレイダーが突出した。

 

(やっぱり、あくまで狙いはこっちか!)

 

 疾駆する。モチーフに恥じない、捉え難き速度でもって。さながらテールランプのように、残像がオレンジの帯となって四方を駆け巡って撹乱する。

 それに対抗すべく、シャルロックも舞う。

 札の間を跳ね、浮き上がり、そして壁を蹴って飛ぶ。

 サイクロンロジックの敏捷性とレフ自身の反射神経をもってすれば、応戦できないことはない。

 だが前面にはスプリガンがいる。

 ただでさえその存在自体が可動できるスペースを狭めている。

 そして前後に上下と挟まれているという状況は、一瞬の油断が形勢の一極化に帰結する。

 

「っ」

 中空にてスプリガンの舌を避け損なった。足首を掠め、バランスを喪ったレフはそのままレイダーたちの射撃によって撃墜される。

 

 仰向けに倒れ伏し、強かに背を打ちつけたところで、首をチーターの膝が上から押さえつけて圧迫する。

「対象を確保」

 そのバイザー越しに伝わってくるものは、何もない。ただホールドアップと言わんばかりに、冷たく銃口が向けられる。

 

 だが、彼女の腕に出しっ放しだったライカン・フェアリーが食らいついた。次いで、ワットがレイダーの脇腹を蹴り飛ばす。

 腰のドライバーを抜くとトリガーを左右に弾く。狙いもろくに定めない乱射でもって、スプリガンとレイダーの追撃を妨げる。

 

「……つか、よくよく考えたら、なんで俺がお前のケツ拭かせられてんだよ」

 と口汚く毒づきながらも、レフが体勢を立て直すまでのフォローを荒削りながらも危うげなく、晶斗はこなす。

 せめて、手を差し伸べて助け起こす程度の歩み寄りぐらいは欲しかったが。

 

「やっぱあの連中ブチのめさないとどうにも収まりがつかないんでな。お前は自分の荷物を片付けろ」

 と宣いつつ、シャフトを道化じみた巨躯へと振り向ける。

 それを受けて、ライカンを伴ったシャルロックも転身。あらためてレイダー二体と対峙する。

 

「……じゃあ、狼には狼といこうか」

 その内の『シューティングウルフレイダー』を見据え、ライカンの頭を撫でながら告げる。

 

 その手に取ったはその人狼のレンズ。

〈ライカン!〉

 それをシルフを抜き取り、スタンバイサイドに新たなレンズを換装する。

 

 ドイルドライバーがレンズを読み取ると同時に、傍らのフェアリーの姿も変える。すなわち、頭部と前肢のみを残した霊体へと。

 

 バックル脇のボタンを押すと同時にレンズがアクティブサイドへと押し出される形で移行する。

 右の顔から肩にかけてを保護する翠の装いは解け、代わりに狼霊はシャルロックの半身に食らいついて、新たな装飾と化す。

 

〈Joker invited you "Shall we open the lock with lunatic?"〉

 すなわち、狼の面と本の装丁が輪切りにされて交互に積み上がって形成された、狂気じみた異形の黄金仮面。

 

〈Kamen Rider Shalllock Luna logic〉

 新たなる力の象徴を得たレフは、自らに迫る厄災を祓うがごとく、その右腕を、大きく虚空に振り抜いたのだった。

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