仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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10.月光、分かれて閃いて

 仮面ライダーシャルロック ルナロジック。

 かつて刃藤法花を狂わせた力を源とした、左右非対称のその姿は、他のフォームに増して異形感を増して、ある種冒涜的なものさえ感じさせる。

 

 だが反して内面は、風のない湖面が如く、平静そのものだ。

 半身が、教え導いてくれる。

 何をすべきか、どう動けば如何な作用が動くか。

 

 対して鉄を纏ったケダモノたちのすることは不変。

 撃つ。対象を制圧し、しかるべき場に差し出す。

 唯一阿るべき命に従い、自らを刃として奮う。

 不惑の意志で蛮勇を奮う。

 それが彼ら財団Xに許された決断だ。まるでロボットのように。

 

 向かい合う対象があらためて本命に変わり、挟撃体勢を確たるものとするべく、彼らはその身を推移させる。

 その足運びからして、コンビネーションは完璧。これを単身徒手空拳で打ち崩すことは、至難だろう。

 

(だったら、手を変え品を変えるさ)

 

 そう静かに意を決したレフに向けて、もう一方の狼の引き金は絞られる。

 その直前、シャルロックの右腕の肘から先が消えた。

 銃砲の威力で吹き飛んだのか。否、中空に浮かぶ奇妙な黄金の円盤が、その腕を呑んで、数メートル先の、シューティングウルフレイダーの小銃の傍へと転移させたのだった。

 手のひらが彼の握る小銃の横を叩き、強制的に照準をずらされたその射撃は敵ではなく、駆け出さんとする味方のチーターへと撃ち込まれた。

 

「おお、こういうのね」

 肘を引けば何事もなく狼の爪を模るグローブは本体との再接合を果たし、フラットな調子でレフは嘆を発した。

 

 動揺奔る敵に対して、レフは畳み掛ける。

 繰り出すイメージとしては、ストレートの連打。

 だが実際に出力したそれは、四方八方からの爆裂拳。

 一切の無駄打ちなく敵を押し包み、画策される反撃の芽もことごとく摘んでいく。銃口の狙うを外し、連携と体幹のバランスを狂わせていく。

 

 その鬱陶しさに焦れた狼が、先走った。もはや間合いを取る意味は皆無と断じて、連射とともに突っ込んでくる。

 だが、レフは一切動じず、ただ右脚を突き出す。

 レイダーの足下に横から現れた脚が前途を遮り、躓かせる。

 

 援護に入るチーターのレイダーを左手を飛ばして留めつつ、姿勢を崩したところに回し蹴りを下から『転移』させて踏ん張りも加速も出来ない中空へと打ち上げる。

 

 そして自身はより高く伸び上がる。

 頭上に浮かばせた左の手首を掴み、入り違いにさらにその上に出した腿を踏み台に。

 

 五体を取り戻した我が身の天地を、無重力であるかのように翻す。

 反りかえる背が弦月を余人に想わせる。鋭く切り返された爪先が弧を描く。

 

〈Lycan!〉

 その過程で空のレンズを装填する。

 高く設けられた天井、足裏の間に、にレンズから放出された煌めきが集約する。溢れ出る力はそれに留まらず、シャルロックの下に降り注ぎ、黄金の『窓』を無数に生み出し、敵を囲む。

〈Strange Q.E.D!〉

 そしてレフ自身は、翻ったままにオーバヘッドキック。右の脚甲を、月のごときその宝珠へ叩き込む。

 

 さながら榴弾のごとく、球が、割れた。分かたれた。

 落下の初動は緩やかに、だが次第に速度を増して月雨が降り注ぐ。

 荒れ狂う。変幻する。

 無数に生じた『窓』を介して、ビリヤードのように、光線の檻のように、互いにぶつかり、切磋しながら獣たちの間を交錯し、激突する。打ち据える。

 

 先までの小手先で増やしたように見せかける大いに異なる手管。彼らがして見せた斉射よりも上回る物量。

 本質はあくまで精霊を無力化する技なれど、一度発動させてしまえば、異種のクリーチャーを無力化できるだけの力を秘めた、必殺の技巧。

 

 そしてレフが肩口の衣をはためかせて着地した瞬間、防御維持機構を行動限界まで削られたレイダーたちは、そのままそのベルトを爆炎とともに破砕させ、白服姿となって転がった。

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