仮面ライダーシャルロック ルナロジック。
かつて刃藤法花を狂わせた力を源とした、左右非対称のその姿は、他のフォームに増して異形感を増して、ある種冒涜的なものさえ感じさせる。
だが反して内面は、風のない湖面が如く、平静そのものだ。
半身が、教え導いてくれる。
何をすべきか、どう動けば如何な作用が動くか。
対して鉄を纏ったケダモノたちのすることは不変。
撃つ。対象を制圧し、しかるべき場に差し出す。
唯一阿るべき命に従い、自らを刃として奮う。
不惑の意志で蛮勇を奮う。
それが彼ら財団Xに許された決断だ。まるでロボットのように。
向かい合う対象があらためて本命に変わり、挟撃体勢を確たるものとするべく、彼らはその身を推移させる。
その足運びからして、コンビネーションは完璧。これを単身徒手空拳で打ち崩すことは、至難だろう。
(だったら、手を変え品を変えるさ)
そう静かに意を決したレフに向けて、もう一方の狼の引き金は絞られる。
その直前、シャルロックの右腕の肘から先が消えた。
銃砲の威力で吹き飛んだのか。否、中空に浮かぶ奇妙な黄金の円盤が、その腕を呑んで、数メートル先の、シューティングウルフレイダーの小銃の傍へと転移させたのだった。
手のひらが彼の握る小銃の横を叩き、強制的に照準をずらされたその射撃は敵ではなく、駆け出さんとする味方のチーターへと撃ち込まれた。
「おお、こういうのね」
肘を引けば何事もなく狼の爪を模るグローブは本体との再接合を果たし、フラットな調子でレフは嘆を発した。
動揺奔る敵に対して、レフは畳み掛ける。
繰り出すイメージとしては、ストレートの連打。
だが実際に出力したそれは、四方八方からの爆裂拳。
一切の無駄打ちなく敵を押し包み、画策される反撃の芽もことごとく摘んでいく。銃口の狙うを外し、連携と体幹のバランスを狂わせていく。
その鬱陶しさに焦れた狼が、先走った。もはや間合いを取る意味は皆無と断じて、連射とともに突っ込んでくる。
だが、レフは一切動じず、ただ右脚を突き出す。
レイダーの足下に横から現れた脚が前途を遮り、躓かせる。
援護に入るチーターのレイダーを左手を飛ばして留めつつ、姿勢を崩したところに回し蹴りを下から『転移』させて踏ん張りも加速も出来ない中空へと打ち上げる。
そして自身はより高く伸び上がる。
頭上に浮かばせた左の手首を掴み、入り違いにさらにその上に出した腿を踏み台に。
五体を取り戻した我が身の天地を、無重力であるかのように翻す。
反りかえる背が弦月を余人に想わせる。鋭く切り返された爪先が弧を描く。
〈Lycan!〉
その過程で空のレンズを装填する。
高く設けられた天井、足裏の間に、にレンズから放出された煌めきが集約する。溢れ出る力はそれに留まらず、シャルロックの下に降り注ぎ、黄金の『窓』を無数に生み出し、敵を囲む。
〈Strange Q.E.D!〉
そしてレフ自身は、翻ったままにオーバヘッドキック。右の脚甲を、月のごときその宝珠へ叩き込む。
さながら榴弾のごとく、球が、割れた。分かたれた。
落下の初動は緩やかに、だが次第に速度を増して月雨が降り注ぐ。
荒れ狂う。変幻する。
無数に生じた『窓』を介して、ビリヤードのように、光線の檻のように、互いにぶつかり、切磋しながら獣たちの間を交錯し、激突する。打ち据える。
先までの小手先で増やしたように見せかける大いに異なる手管。彼らがして見せた斉射よりも上回る物量。
本質はあくまで精霊を無力化する技なれど、一度発動させてしまえば、異種のクリーチャーを無力化できるだけの力を秘めた、必殺の技巧。
そしてレフが肩口の衣をはためかせて着地した瞬間、防御維持機構を行動限界まで削られたレイダーたちは、そのままそのベルトを爆炎とともに破砕させ、白服姿となって転がった。