仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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14.たとえそれが偽りでも

 後日、アトリエ・ワット兼双見探偵事務所。

「そう言えば、あのオークションの件、どーなったのさ」

 また客の気配の遠のいたその仕事場で、暇を持て余したレフは、頬を両手で支えながらカウンター越しに晶斗に尋ねた。

 

「どーもこーもねーよ。オークション自体が詐欺、意中の品も紛いモンだってなってあのオッサン、さっさと日和りやがってブチブチ文句は垂れるわ依頼料はゴネて値切り出すわで最悪だ」

「凄かったよねー、安全になってからの掌返しと塩対応っぷり」

 

 実際に凶事に巻き込まれかけたところを救ったのだから、むしろ追加の手当てがあって然るべきなのだがそれもなく、雀の涙ほどの支払いも借金の返済と日々の生活費に当てられた。

 

 金を稼ぐとは、労働とは、なんという不毛さか。働いてみてあらためてそう思わざるをえないレフであった。

 

「まぁ、ヤマさんも怖い目見て多少は懲りたと思いたいね」

 口ではいかにも吝嗇ぶったことを言っても、晶斗がこの仕事に付き添った理由はそこにあったのだろう。

 

 事前に時計が偽物だと気付いたらうえで山村操亮を守るために。

 そして反省と自制を促すために。

 

(ほんとに、不器用なヤツ)

 密かに苦笑するレフがふと彼を改めて見ると、その腕時計が覚えのあるデザインだったことに気づく。

 

「あれ、それって……」

「あぁ、例の腕時計。戦闘のドサクサに持って帰ってきた」

「うえぇ、良いの? 警察とかに渡さなくて」

「良いんだよ。カネ出したの俺なんだし、警察に届け出てもいろいろ訊かれて面倒くせぇことになるだろ」

 

 晶斗は眉ひとつ動かさず、筋が通っているんだかいないんだかという言い分を並べ立てる。

 

「でもそれ、偽物なんでしょ?」

 と尋ねるレフにも、やはり彼は動じた様子は見せなかった。

「道具に、罪は無ぇ」

 いつぞや聞いた口上を、再び宣う。

「今んとこ問題なく動いてるし、材質自体もしっかりしてる。そのうちにボロが出てダメになっても、俺がオーバーオールすれば良いだけの話だ……要するに、大事なのは偽物だと知った上での付き合い方だろ」

「……かもね」

「人の時計のこと気にする前に、お前はその胡散臭さをどうにかしろよ?」

「胡散臭さって、どーやったら消せるのさ?」

 

 自身の腕を嗅いでみても、特に異臭らしいものは感知できない。

 その言動はズレたものだったらしく、晶斗の呆れとそれに伴うため息を招いた。

 

「ほら」

 と、レフの手前に、晶斗がカウンターの裏から引き出した紙片の山が、輪ゴムにまとめて突き出される。

 

「何これ?」

 と表面を覗き込めば、そこには適度にスペース開けた双見怜風の四字と、自身がデザインした探偵事務所のロゴがデザインされている。

 

「名刺っつーか、ショップカードだよ……オモチャの札作った次いでに余った紙で作ったんだ。それさえありゃあ、多少の客寄せにはなんだろ」

 

 そっぽを向いて言う晶斗に、レフはクスリと笑った。

 それが漏れ聞こえてきたらしく、ますます職人は内に身体を向けていく。

 

「追加手当てありがとね! じゃ、さっそくご近所さんに置いてくるからっ」

 またケチのつかない内にそうまくしたて、レフは立ち上がってアトリエを出た。

 

 だがすぐに街に踊り出すことなく、閉じた扉の前で、立ち止まる。

 

「ニセモノと知った上での付き合い方……か」

 ほろ苦く笑うレフは、己の名前に目を落とす。

 そして自らの過去と、それにまつわる人々に、想いを馳せる。

 そのうえで、あの霧街も。

 追いついてきた真実の足音に、恐怖と宿命を感じざるを得ない。

 

 ――それでも、と。

 胸に与えられた紙片を押し当てる。

 

 その名を抱く喜びと温もりは、決して偽りなんかじゃないはずだ。




Next

クリスマスも間近となり、より一層の輝きを放ち始める冬の燦都。
浮かれつつも忙しない空気の中、晶斗に一人の男に呼び出される。

男の名は、霧街郁弥。
今は大企業の代表となった彼から告げられたのは、父と、そしてフェアリーにまつわるあまりに多くの『事実』。

釈然としない想いを抱く晶斗と、そしてレフの背後に、二人の追跡者が迫る。

「お前の罪を、数えろ」
そして復讐の髑髏は、『悪魔』に断罪を告げる。

第4話「カウンティング・クライム・ダブル」
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