仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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2.帰って来た男

 ……まず先に断っておく。

 これは、あくまで僕自身が見聞きしたこと、和灯千里……おやっさんが遺したボイスログやレポートを拾い上げて繋ぎ合わせることで見えてきた、事件の推移とあらましだ。

 だから主観的な部分も含んでいるけど、現状もっとも真実に近いと思う。

 それでも、当事者たちが、如何に思考を働かせ、その行動に至ったのかは知る由もない。

 当時の僕には、推し量ることが出来なかった。

 

 ……そう、初めの(ジャバウォック)には、感情なんてなかった。

 

 〜〜〜

 

 その孤島は、過疎化によって無人になったものを、ホールドコープが買い上げたものだった。

 島と本土を往来する社用の定期便のみが移動手段であり、男もその日、例に倣って船を使って島へと上陸した。

 

 載せていたマシンで木々を抜け、小高い丘を上ると、崖と荒波を背にしたその施設は屹立している。

 その存在感の強い白亜の塔は、本島から望めば天文台など、何かしらの観測所だと思われていただろう。

 そこが未知の思考性粒子とそれにまつわる技術の研究機関……あるいは、隔離施設とさえ知らなければ。

 

 慣れた調子で、彼以外はほぼ使う人間などいないであろう駐輪場に二輪を停めた。

 メットを脱いで帽子をかぶり、施設に入った。

 途中、検問で立往生を喰らったが、守衛は当然の仕事をしたと言ってよい。

 男の姿はきっちりとしたスーツ姿などではなく、研究職のようなインテリジェンスも風体や所作からは感じられず、ハット帽を頭にかぶったカジュアルなファッションセンスは、どう考えても出歯亀の新聞記者といった感じの、素性定かならぬ様相だったからだ。

 

 やがて彼が提示したIDカードで会社関係者であると知ると、なお半信半疑という感じで不承不承に通過を許された。

 

 施設内へ入ると、外観から想像する以上の、広いスペースを取っていると感じた。

 あるいはそれは、最上部まで通じた吹き抜けを中心に据えたエントランスホールに差し込む光が、そう錯視させたのかもしれない。

 

「よっ」

 男は、和灯千里は、無作為に、無造作に、入るなり手を挙げて挨拶した。

 

 何事かと、怪訝そうな従業員たちの視線が、その場に相応からざる男に集まる。

 だが一瞬後、不審は歓待へと変わった。

 

「主任!?」

「久しぶりじゃないですかぁ!」

「そんなカッコだから一瞬誰かと」

「主任はよせって。元だ、元。お前らも元気そーね」

「いやいや、マトモに帰れもしませんってば!」

 

 役職、身分の上下に関わらず、寄り集まった人々は和気藹々と彼との再会を喜んでいるようだった。

 

 その人集りが、外部からおのずと割れた。

 緊張と気まずさから退く者たちの間を、もう一人の男がすり抜ける。

 

 作業着の上から白衣を着た、千里と同じ年頃と背丈の男。

 雰囲気は真逆で、こちらは人の上に立つべき品と格が備わっている。

 

 これが、霧街郁弥だった。

 

 二人の存在感、あるいは人としての強さのようなものは、種こそ違えど双子のように拮抗している。

 その二人が、相対した。

 

「よぉ、相変わらず仏頂面しちゃってまぁ」

 第一声と等しく、軽い調子で手を挙げる千里に、その評通りの険しい表情で、

「お前の方は、相変わらず人気者のようだな」

 と受け応える。

 

 先とは打って変わって、無人のように周囲が静まり返った中、両者は視線をぶつけ合う。

 しかしやがて、どちらともなく表情を綻ばせて破顔、

「久しぶりだな、おい!」

「お前こそ!」

 屈託なく笑い合って、互いの二の腕を叩き、あるいは掌を重ね合わせて握った。

 それを皮切りに、場は再び湧き立ったのだった。

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