仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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4.精霊とは

「……数年前、とある企業の研究機関が粒子を生み出すことに成功した」

 とレフが語り出したのは、戻ってきた『アトリエ・ワット』でのことである。

 

「それは有機物との結合、電子機器や自然エネルギーへの干渉を可能とし、また一定の空間におけるエントロピーを増大させて既存の物理法則さえも超越することさえも可能とし」

「待った、待った」

 掌をかざして、晶斗は制止をかけた。

 

「俺は感覚派なんだよ。長々と講釈を聴くつもりはねぇぞ」

 それでも耳を傾けれおそらく理解できなくもないのだろうが、この怪人に辛抱強く付き合う気にはなれない。

 

「……そ。じゃまぁざっくり感覚的に言うとだ。『何でも出来る超便利な存在』。それを可視化、物質化させたものが『人工精霊』だ。人というものは当時の技術や常識で推し量れないモノを、精霊や魔物の仕業と考えたから、便宜上そう名付けられた。そしてそれを封じ込め、コントロールを可能にしたのが」

 レフはそこで件の円形の容器を自身のズボンから取り出した。

「この『フェアリーレンズ』だ」

 あらためて観察すれば、そのフレームは精巧で堅牢な作りとなっている。

 今は先に呼び出した『シルフ』とやらが収まっているからか、そのレンズ部分には、『C』の字状に妖精が身体を折り曲げているシンボルマークが表示されている。

 だがそれは、見方によれば檻のようにも見える。

 

「……本当は、窮屈な想いをさせたくはないんだけどね。でも、レンズで安定させないと、彼らは生きられない」

 そう淋しげに視線を落としたレフに、晶斗は訝しげに眉根を寄せた。

「淋しいって、今の説明(ハナシ)だとただの粒子だろ」

「……やれやれ、情緒がないねぇ。君」

 しょうがなさげにレフは肩をすくめたが、どこか欺瞞めいたリアクションだった。

 

「何でも良いけど、せめてお茶ぐらい出してくんない?」

 と、そこで生意気な口ぶりで要求してきたのは、山村楓だった。

「お前な、妖精だとか出てきてリアクションがそれかよ」

 と流石に呆れつつも、晶斗は冷蔵庫のミネラルウォーターをミニボトルごと彼のカウンター席の前に無造作に置いた。

 

「もー、古いなァ。妖精程度じゃ驚かない程度には、世の中はフシギで溢れてるんだよ」

 冷めてるんだか夢見がちなんだか分からない物言いとともに、嘯きつつ、

「オレさ、もっとすごいモンこないだ見ちゃったもんね」

 そう、続けた。

 

「すごいモン?」

 どうやら過日に目撃したというその体験が、異常な現象への拒絶感を緩和、あるいは麻痺させたのだろう。

「そっ、遠足で風都(ふうと)てとこに行ったんだけど、なんとその時撮っちゃったんだよねー、噂のかめ」

 言いさして、取り出したスマホを見て、顔を渋くさせた。

 

「どした、少年?」

「……う、動かない」

 

 二人して少年の端末を覗き見れば、たしかにサイドボタンを連打してもディスプレイは暗転したままだ。

 

「あー、さっきのトカゲ野郎の熱でやられちまったかな?」

「そもそも、フェアリーの影響を一般の電子機器はモロに受けやすい。内部データが破損してないと良いけど」

 と言うと、名には似つかわしくないほどに楓の顔は青ざめ、呻いた。

「しゃーない、診るだけ診てやるよ。ほら、貸せ」

 と手を差し出した晶斗だったが、対して楓は、拒絶の姿勢を見せた。

 

「良いよ、どーせこれもカネとるんだろ?」

「……そーいやお前、一回目の修理費払ってなかったな」

「壊れたのに払えるわけないだろっ! どーせ手を抜いてテキトーな修理したからカンタンにまた壊れたんだ!」

「んだと!? 言っちゃならんことを言ったな!」

 

 割と本気の怒喝を浴びて、わっと少年は逃げ出した。

 その去り際に、ベェっと舌を出すことだけは、きっちり忘れずに。

 

「だァーッもう! 信じられねぇクソガキだな!」

 そう罵声飛ばしつつも、彼は取り立てに追うことはなかった。

 どっかりと腰を落とした晶斗をよそに、

 

「しかし、何故あのフェアリーは彼を少年を襲ったのだろうか」

 とレフは思案顔。

「知るかよ、バケモンの考えなんて」

 とにべもなく晶斗は吐き捨てた。

 

「……さっきも言ったけど」

 少し間を作った後、レフは返した。

「フェアリーたちがボディを維持するためには、レンズが必要だ。そしてレンズのユーザーの指示で彼らは動く」

「つまり、誰か思惑のあるヤツの仕業ってわけか」

「理解が早くて助かるね」

 

 本気でそう思っているか判断に迷うような調子で、レフは言って青年へと向き直った。

 

「そう、きっとあの場には、別の人間(だれか)がいた」

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