「……これが、僕が知り、その感覚で知覚した限りの経緯と顛末だ」
そう締め括った語り部、レフから晶斗は身を剥がした。
始めこそ厳しい表情で、そして話しの節々にも虫でも誤飲してしまったかのような苦々しい表情を浮かべていた彼だったが、感情が喉元を過ぎて、眉間の皺を解いた。
「……聞いてみりゃ、なんのことはねぇ。バカが先走って動いて、お前の命と引き換えに周りを不幸にしたってだけだ」
「……そんなこと……」
だが、と背を向けて晶斗は続けた。
「怪物に洗脳されて死にました、ってより納得のいく答えではあったがな」
「……どうだろうね」
身体を横たえたまま、レフは長い睫毛を伏せた。
「君が聞いたという霧街郁弥の認識。そして月射照真の指摘は、的外れってわけじゃない。僕と出会わなければ、間違いなく君のお父さんは死なずに済んだ。狂わせた、と言われても否定はできない……僕のせいだ。君には、僕を憎むだけの理由がある」
「アホか」
晶斗はそんなレフの理を一言下に切り捨てた。
「今の話、お前のどこに間違いがあった? バカバカしい。だってお前は」
「『道具に、罪はない』から?」
反射的な速度で、晶斗はレフを再び顧みた。
浮かべた
「冗談だよ」
と苦笑して答える。
「……そんなつもりで、言った気はねぇ」
目を伏せ逸らし、口の中で呟いた晶斗に
「だろうね。だって君は、本当に……」
レフは目を細めて四肢をベッドに投げ出した。
そして天井を見上げて、
「やっと、肩の荷が下りた気がする」
と吐息とともに独語する。
「この一年とちょっと。必死に逃げて、君に説明できるだけの材料をかき集めてきた。けどようやく、あの日のおやっさんの依頼を果たすことが出来た気がする。……和灯さん、ありがとう」
「礼を言う相手が、違ぇだろうが」
「……いや、合ってると思う。本来感情のない人工精霊だから、感情の機微とか理由は、上手く説明できないけどね……いや、八雲の言うとおり、僕が変わったせいなのかもしれないけど」
そう答えたきり、ジャバウォックなる怪物、そうとは見えない無垢な若者は、目を閉じて仰臥し、何事も発さなくなったし、晶斗もまた、それ以上は何も訊き出そうとはせず、蒸し返しもしなかった。
〜〜〜
そして夜が明けた。
ベッドはレフに譲り渡し、自らは『鋼の本棚』に籠って眠っていた晶斗が、アトリエに上がると、レフの姿が消えていた。
机には彼らを仮面ライダーたらしめる二基のドライバーが放置されたまま、あの若者の気配だけが消えている。
まるで今まで精霊のイタズラにでも遭っていたように。
あるいは、それまでの日々が、夢幻であったかのように。
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最終話「二人と、一人の、仮面ライダー」