店を飛び出した楓だったが、その矢先に店のすぐ手前で若い男と行き当たった。
「あっ、ごめんなさい!」
せめてその十分の一でも晶斗に見せれば話がこじれなかったであろう殊勝さで、反射的に楓は謝った。
男はまだ若い、少年とは到底言えないまでも、青年と呼んで差し支えない年頃だった。
だが目元は暗澹たる陰気に染まっており、ジロリと煩わせしげに楓を見下ろした後、素早く身を切り返していった。
首から下げたカメラらしい機材が、その転身の間際にちらりと覗いた。
「……なんだよ、薄気味悪ぃヤツ」
詫びて損したと嘆く楓は、しばし歩き、そして悩む。
壊れたスマホについて、母親にどう言い訳をしようかと。
まさか一度修理に出したは良いものの、化け物トカゲの吐いた炎熱でやられました、など誰が信じるか。すかさず「つまらないウソをつくな」と叱責が返ってくるのが関の山だ。
ならばいっそ晶斗の元へ引き返し、上辺だけ謝って踏み倒すか、とも考えが過ぎるも、
「……流石にそれはダメだな、うん。アキト泣いちゃうかもしれないし」
と、最終ラインで良心が働いて、思い止まる。
「あれっ、楓クンじゃない」
と、声がかかったのはその時だった。
バイクにまたがるその若い男は、
近所に住む大学生だというが、同時に良くない連中とつるんでいる、という風聞もあった。
なるほど確かに、服やバイクの趣味などはアウトローな匂いのする、子どもの目にもいかついものだと分かるが、それでも自分にはよくしてくれているし、受け答えもフレンドリーだ。偶然ゲームセンターで会った時には、自分のメダルを分けてくれたこともあった。
「こんなところでどうした?」
そうした経緯もあってか、問われた楓は携帯が壊れたという事実だけを抽出して、彼に伝えた。
「あー、こりゃ災難だったなぁ」
深く追及することなく、陽介は同情を示してくれた。
そして膝を叩いて、
「よっしゃ、じゃあ兄ちゃんがなんとかしてやるっ」
と申し出た。
「え、でもどうやって」
「オレのバイト先ケータイショップでさぁ、ちょっと掛け合ってやるよ。あぁ、金のことなんて気にすんなって。この程度だったら、タダで直せる」
「ほんとっ!?」
一瞬顔を綻ばせた楓ではあったが、わずかな逡巡がそれを曇らせた。
いくら無料とは言え、一度は晶斗へ依頼しておいて、それを他人の手に委ねることには理屈では表せない後ろめたさがあった。
「で、でもさ、なんかそれって」
「ついてきて、くれるよね」
重量級のバイクに乗った青年は、少年を上から覗き込んで彼の言葉を遮った。
それを真正面から断れる子どもは、まずいないだろう。
考えのまとまらないまま、圧をかけられた楓は頷くよりほかなかった。
燦都暑の刑事、