仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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最終話

 後日、二人で一つのアトリエ兼探偵事務所にて。

 世間一般よりも少し遅めのクリスマスパーティーの片付けをしていた晶斗が入り口に出ると、探偵が得意げに、愛機に跨っていた。

 

「ちょっと外出ない?」

 ろくに手伝いもせず能天気に誘うレフに憮然とした顔も見せつつも、その裏に隠した真剣味を感じ取っては、応諾せざるを得なかった。

 

 そうしてタンデムで車道に乗り出した二人組は、海岸沿いの道へ。

 先にフォードと戦ったあたりよりそれほど遠くではない岬に寄った。

 対岸に、黒く焦げた鉄塔のようなものが並立しているのが、蜃気楼のように薄ぼんやりと見える。

 

 かつては事故現場としか報されていなかったその場所が、まさか父の墓標だとは思いも寄らなかった。

 遠目からの、墓参りである。

 

 道中で買った白い花を、晶斗はぞんざいに海中に投げ入れることで、故人に献じた。

 それを見届けてから、レフは両手を重ね合わせ、

「やっと来れたよ、おやっさん」

 と、瞑目とともに呟いた。

 ホールドコープからの追討のためか、あるいは単純に心理的な理由からか。

 レフも、初めてここに来たという。

 

 そして、故人よろ預かったらしい一枚の写真を石に挟んで供えた。

 

「さ、帰るぞ。クソ寒い中、いつまでも潮風に当たってられるか」

 そう毒づいて踵を返した晶斗を横目に眺めつつ、

「和灯さん」

 と、レフは口を開く。

 

「僕は、君のお父さんに命を貰った。君には命を拾われた。そのチャンスをくれたのが、この街の人々だった。だから、せめてその借りぐらいは返したい……当初の依頼は果たされたけど、まだ君と一緒に居て良いかな?」

 晶斗は答えず、ただ立ち止まった。はにかむレフじっと見つめた後、ふたたび動き始めた。

 

「その沈黙、オッケーってコトで良いんだよね?」

「……お前、それ以外でも俺に散々貸しあんだろが。死ぬ気で働いて死ぬ気で返せ」

「もー、素直じゃないんだぁ」

 

 からかいながらもどこか安堵し、浮ついた様子のレフもまた、二輪車へと向かう。

 そして……被った。

 お互いにハンドルを握ろうとして、行き当たる。

 そして、車体を挟んで見合った。

 

「いやいや、行きも僕だったでしょ?」

「そりゃ行き先知らなかったからだろうが。いつまでもヒトの運転に任せられるか」

「そこは相棒を信じてよ。て言うか君だって扱い粗いじゃない」

「んなことあるか」

 

 押し合いへし合い、やいのやいのと言い合っていた二人だったが、レフがおもむろに

「最初はグッ、じゃーんけんっ! ぽ!」

 と、おもむろにジャンケンを仕掛けた。

 咄嗟に晶斗が作ったのは、握り拳。それを見越したレフの手はパー。

 

「やったー」

 諸手を掲げて喜ぶレフに、瞳孔全開で自分の拳を凝視する晶斗。

 思うところは多分にあるが、不意を突かれたのも不覚をとったのも自身だと素直に認める。

 渋々ながら後部座席に移る晶斗に、曰くありげな極上の笑みを、レフは向ける。

 勝ったことがそんなに嬉しいか。そう勘繰った彼に、

 

「それじゃあ、帰ろうか。僕らの家に……晶斗!」

 

 自身の名を呼ばれた晶斗は、今度こそ、完全に不意を突かれた。

 丸くした目を瞬かせた後、彼は肩を窄めた。その口端に、わずかながらの笑みを上らせて。

 

「なにいきなり呼び捨てにしてんだよ」

「んー、ジャンケンに勝ったからかなぁ」

「意味分からん」

 

 そうして彼らは、その場を後にした。

 

 〜〜〜

 

 そして海岸沿いを二人一組で駆け抜けていく。

 だが、その行手が、数人の男たちとバリケードによって封鎖されている。

 似たような年頃の顔ぶれたちで、彼らの胴回りには、共通の規格のベルトが備わっている。

 

 レンズを固定された器具の左には三本の枝分かれした排気筒。右へと伸びるのは、黒いグリップ。そのグリップを彼らは、握りしめて捻る。

 

〈Pixie Acceleration〉

 平坦な音声と共に、筒より噴き出した黒い霧が彼らを包む。

〈Enter the labyrinth. Pixie:Masquerade〉

 その霧を払って現れたのは、蝶の仮面で顔面をk、首元を白いマフラーで覆う、鋼の怪人。

 

 瞬く間に左右に展開して、レフたちを取り囲む。

 誰が差し向けた刺客なのか。火を見るより明らかだった。

 

「ったく、決別からそう日も経ってないのにコレか。墓参りも満足に出来やしねぇ」

「まぁ、人避けをするだけの理性はあるのはらしいと言えばらしいけどね」

 

 降車しながらメットを外し、晶斗は二つのドライバーを手に。

 

「ん」

 その内の片割れ、ドイルドライバーを、隣に並ぶレフに差し出す。

「え? いや、これは君の……」

「馴染まない道具をぶっつけ本番で使うのは俺の主義に反するんだよ。ファングロジック(あんなもん)は、よほどじゃないと使わん……シャルロックは、お前なんだよ」

 そう強く言い切った晶斗に、レフはほろ苦く笑い返す。

「しょうがないな」と勿体つけたように受け取り、そして互いの腹へバックルを添える。

 

「変身!」

〈シルフ!〉

〈Kamen Rider Shalllock Cyclone logic〉

 すなわちレフは、手を切り回しながらシャルロックへ。

 

「変身」

〈サラマンダー!〉

〈What is your stance as a Kamen Rider? Strike while the Metal in Heat〉

 指を畳み、拳を握り固める晶斗はワットへ。

 

 その熱風に当てられてか。

 彼らの去った場所。岩に挟まれていた写真が浮き上がり二人の仮面ライダーたちの頭上を、気づかぬ間に去っていく。

 

 やや古く褪せたその写真には、三人の男が写っている。

 一人は、屈託なく歯を見せる和灯千里。

 一人は、帽子をかぶって澄ました笑みを浮かべる男。そして彼と対になるように並ぶ、本を手にした青年。

 

 そしてレフは誓いと共に告げる。

 彼らにではなく、その背後に、始まったこの戦いの果てにいる、偉大な敵に。その咎人に。

 過去を噛みしめ、乗り越え、前へと指を突きつけて。

 

 和灯千里が彼らより引用し、そして彼らもまた、その師より受け継いできた、あの言霊を。

 

「――さぁ!」

 

 

 

 最終話:お前の罪を数えろ

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