仮面ライダーシャルロック   作:大島海峡

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特別編:ハイパーバトルノベル 仮面ライダーシャルロック 〜フェアリーライダー大紹介!〜

「行くよ、晶斗」

〈シルフ!〉

「言われるまでもねぇ」

〈サラマンダー!〉

「変身!」

「変身」

 

 花風荒ぶる春の燦都。

 街の東西を繋ぐ大橋の中心に在って、怪異と対峙したレフと晶斗はそれぞれのレンズやベルトを身につけて変身した。

 すなわちレフは、仮面ライダーシャルロックへ。晶斗は仮面ライダーワットへ。

 

 フォードとの戦いより大体三ヶ月。その後も幾度となく戦い、バックルにレンズを装填する捌きも、相手への牽制も兼ねた、己の意気を高めるポーズも慣れたものであった。

 

 対するは全身が眩さに満ちた、硬質のボディ。だがシルエットは哺乳類のものに近い。のっぺりとした顔には右側に、意味があるようにも見えないモノクルが貼り付いているのみである。

 宝石を司る人工精霊、カーバンクルである。

 

 手の甲を向け、五彩の宝石のついた指を立てて見せる動作は、かつて戦ったスプリガンを想い起こさせる。

 その精霊に、二人は挟み込むように攻勢をかけた。

 

 手数は言うに及ばず、スピードも緩慢。反撃も、直撃を喰らわなければさほど脅威足り得ない。

 しかしながら問題は、その頑丈さだった。

 物理的な防御性能もさることながら、薄く皮膜のように、輪郭に沿うようにして張られたバリアが、武器、弾の悉くを跳ね除ける。

 

「ったく、厄介なフェアリー使いやがって」

 ワットがシャフトを片手に毒づいた。その反動で痺れた持ち手を代わる代わる休ませながら。

「クソ犬がいれば搦手から攻められるんだがな」

「…………そうだね」

 やや長い沈黙の後、レフは相槌を打った。

「仕方ねぇ、無いなら無いなりに戦うだけだ。おいレフ、羽よこせ」

「羽!? あ、あぁシルフね……」

「それで牽制してやるから、お前は例の成金野郎で最大出力(マキシマム)叩き込め」

「成金野郎!?」

 

 ……ただしまぁ、言わんとしていることはなんとか飲み込める。

 レフは自身のバックルのレンズを隣の晶斗へと投げて換装させる。彼がサイクロンスタンスにチェンジしていく傍らで、レフはライカンならざる、黄金のレンズを手に取った。

 

〈スプリガン!〉

 

 それをドライバーに付け替える。

 現れた宝石や硬貨、貴金属類の幻影が、シャルロックの半身にとりつき装飾となり護りとなり衣と化す。

 

 赤いビロード調の外套に、宝石を嵌めた右手。

 東西いずれにも無い紋様が刷られた紙幣が通常フォームのページにあたるパーツに代わり、インゴットのごとき、ゴツゴツとしながらもどこか折目正しさを感じさせる、バランス良い金仮面(マスク)

 

〈Joker invited you "Shall we open the lock out of the money?"〉

〈Kamen Rider Shalllock Money logic〉

 

 

 それこそが、ドイルドライバー内のあらゆる仮面ライダー、そして怪人たちのアーカイブより導き出された、新たなる姿、そして(あざな)である。

 

 そして両ライダーは示し合わしも無しに、その役割を分ける。

 すなわち、スペックの比重を機動力に傾注させたワットはそれを以てカーバンクルフェアリーの八方を駆け巡り、牽制と陽動。

 生じたその隙を突いて、シャルロックは宿したフェアリー自体が以前そうしたように、指に生じさせた宝玉を、癇癪玉よろしく敵へと投げつける。

 着弾と同時に炸裂するそれらでは、ダメージらしいダメージこそ与えられないものの、目潰しと共に、多少上体を揺らがすことには成功した。

 

 さらにそこに、両脚を揃えた晶斗が飛んだ。だが、その正面からの飛び蹴りは、緩慢に、だが力強くも正確に位置を捉えて伸びてきた、カーバンクルの片腕に足首を掴み取られた。

 

 しかし、そこまでは読み通りだった。でなければ、真っ向から挑みかかるものか。

 

〈Request〉

〈Sylph twister Order〉

 

 晶斗は引き鉄に指をかけると同時に我が身を捻る。敵の拘束を振り切り、工業用ドリルのように、関節部より噴出する旋風に包まれた我が身を以て、その防壁を削っていき、ついにガラスの砕けるような破壊音と共に、バリアを穿ち抜いた。

 

「今だ」

 膝立ちで着地すると同時に、晶斗は低く声に出した。

 

〈Money! Extra Q.E.D!〉

 操作、音声とともに風船よろしく、紅玉の輝きが右の掌に集まる。

 やがてカットされた大ルビーのような形となったそれを載せたまま、シャルロックは飛び上がった。

 

 そして裂帛の気合いとともに、防壁を失ったカーバンクルへと、水球のごとく叩きつけた。

 万遍のない衝撃波が、怪人を襲う。

 点の攻めには強固なダイヤモンドも、面による圧迫には弱い。ましてや、それが同質の由来ともなれば。

 

 先とは打って変わって、雪のような儚い閃きを放ちながら、フェアリーは砕けて粒子に戻る。

 そして、スプリガンの対局に据えられたエンプティレンズに巻き上げられていくのだった。

 

 ~~~

 

 依頼は果たした。自分たちの拠点に戻った。

 ……もっとも、依頼人であった店員の上役、宝石商の店主が、実のところフェアリーの悪用によって不当に宝石を増産していた黒幕であったという顛末で、実入りはゼロという、色々と空しい事件ではあったが。

 

「いやー、こういうフェアリーがらみの依頼も増えて来た気がするねぇ」

「俺としちゃ、本業に戻りてぇ」

 

 大きく伸びをしながら所感を呟くレフに、色気のない愚痴をこぼす晶斗。

 戦闘と同様、こうしたやりとりも慣れた調子だ。

 

 ――だが、この時は少し毛色が違った。

 にこにことしたまま、しかしどこか不自然な気配を忍ばせて、レフは晶斗の前に回り込んだ。

 

「……で。色々と経験値も積んで来たあたりで、僕らもうちょっと話し合うべきだと思うんだ。ディスカッション的な? ここで、色々とお互いの不満点を解消していこうよ」

「……話すって、何を? そりゃ、お前には色々言いたいことぐらいはあるが、今更だろ」

 

 さっさと身を休めたい晶斗は、そのレフをすり抜けてカウンターの席へと腰掛けた。

 その彼の前に、両手でドンとボードを置くレフ。その両手の間に貼られたのは、一枚の写真。

 

「これ、なーんだ?」

 

 そこに写っているのは、黄金の毛並みを持つ狼の上体、すなわちライカンフェアリーのエネルギー体であった。

 

「なにって……クソ犬がどうかしたのか?」

「うん、僕が文句言いたいとこはまさにソレだね!?」

 

 本気で不思議そうに目を瞬かせる晶斗に、レフはついに堪え切れず指弾した。

 

「あのさぁ、いくらなんでもフェアリーの呼び方に愛が無さすぎない!? 君に悪意がないことはまぁ知ってるけど、ちゃんと呼んでくれないかなぁ!?」

「なんだよ、んなことかよ」

「そんなことじゃないよっ、なんでカタクナに言わないかなー? そういう歩み寄り、大事だと思うんだけど。ほら、みんなも『そうだそうだ』と言ってるよ」

 

 そう申し立てるレフの周囲には、いつの間にか展開させていた現在所有中ののフェアリーたちが跋扈している。

 ……なぜだろうか。心なしか普段よりもその可動域は極端に少なく、まるで小道具をワイヤーで無理やり動かしているような感があるのは。

 

「俺もう今年で二十五だぞ? ファンシーな妖精さんの名前なんざ、天下の往来で恥ずかしくて呼べるか」

 

 そうにべもなく手を振ってみせた晶斗に、ますますレフは膨れて見せる。

 脇目でそれを盗み見る晶斗は、内心でため息を吐いた。

 こうなったら、頑として譲らない。そういう表情だった。

 

 ~~~

 

「――さてそれじゃあ、シャイな晶斗クン(25)のために、おさらいも兼ねて僕らの使うライダーシステムやフェアリーについて解説していきます」

 

 所変わって、白い地下。『鋼の本棚』。

 どこから仕入れたものやら、教育実習生が如き、リクルートスーツ姿のレフが、晶斗の眼前に在る。

 黒髪を結い上げて眼鏡を閃かせて、理智的な所作をしてみせるがどこか楽しげだ。

 

 何故女装(コスプレ)なのか。いや、そもそもこいつの性別は結局どちらだったのか。

 問うだけ野暮だし、今この時はこの場所のシステムは奴に制圧されている。

 これはこのまま黙って好きなようにさせておく方が早かろう。

 

「さて、もちろん最初はコレ」

 何がもちろんなのかはさておき、モニターに映し出されたのは、翠風帯びる羽の小人だ。

 

「はい、じゃあまずこのコから行ってみよう。名前、言ってみなさい」

「羽だろ」

「雑っ! 僕のメインなのにザックリし過ぎじゃない!? て言うか今日の戦いでも最初何のこと言ってんのか分かんなかったんですけど!? 戦闘にも支障出るからちゃんと呼んでほしいんですけど!」

 

 そう怒鳴りつけつつも、咳払いして改める。

 

 ――御存知の通り、シルフ。

 風に乗り、風を操り、機動戦に特化した精霊だ。

 そして、僕が最初に会ったほかのフェアリーであり、それを宿していたのが仮面ライダーシャルロックだ。

 

 表向きはフェアリーの暴走対策、しかし実際はフェアリーとの対話、同調を目的として、おやっさんこと和灯千里が開発したライダーシステム一号機。それがドイルドライバーであり、仮面ライダーシャルロックだ。

 都市伝説的仮面ライダー『ダブル』さんをモデルとしていて、フェアリーレンズを読み取ることで独自に構築されたネットワークやアーカイブを介して様々なライダーたちの力を再現することができる。

 元はレイスレンズで変身する、スカルロジックがメインフォームだったんだけど、僕はサイクロンロジックの方が相性が良いらしい。

 

「そして記念すべき初戦闘で、仲間になったのがコイツだ。これは、晶斗も良く知ってるよねぇ」

 絡むような口ぶりで映し出されたのは、焔まとうトカゲのヴィジョン。

 自らの頭上に出てきたそれを仰ぎ見ながら、

「あぁ、当たり前だろ」

 晶斗は、鷹揚に頷いた。

 

「ヒトカ」

「そう! サラマンダーだねッ!」

 訊いておきながらそれ以上言うなと言わんばかりに声を発した。

 

 ――サラマンダー。

 単純な火力。でもだからこそ強く、そして扱いが難しい。

 僕のシャルロックでも持て余すほどに。

 でも、君が仮面ライダーワットを開発して受け皿になってくれた。

 

「元は親父の発案ってのも、安直すぎる名前も好きじゃないがな」

「君がそれを言うのか……?」

「まぁ、おかげで変身システムのためのスペックやプログラムがもうある程度出来上がっていたんだがな。あの時は、嫌な予感がして何かに急かされていたから……結局、間に合いはしなかったが」

「……僕は、そのおかげで救われたよ。きっと、刃藤刑事も、そしてライカンもね」

 

 屈託なく微笑みかけるレフに、面白くなさげに晶斗は鼻を慣らし、顔を背けた。

 レフは、金色の月光を帯びた狼の幻影を、その彼の前に回り込ませる。

 

 ――そのライカン。

 むしろ僕らの味方になってからは、その変幻自在の妙技に君だって何度も助けられてきただろう。

 シャルロック、ワット、両方ともそれなりに相性はあるものの、それでも力を十分に引き出せているとは言い難い。どこかに、上手く使いこなせてくれる人がいれば良いんだけど。

 

「あのクソ犬は月射照真にくれてやったがな」

「ラーイーカーンー!」

 

 ――僕を仇と狙っていた、おやっさんの弟子、月射照真。

 復讐のため彼が使っていたのが、フォトンファウンドライバー。仮面ライダーフォードだ。

 

 かつておやっさんが使っていたフェアリーの残存データを補助ユニットとして流用し、限界までレンズの力を引き出すけど、未調整のあのベルトはフェアリーだけじゃなくて人体にさえ悪影響を及ぼす……半ば、フェアリーと融合状態になってしまえるほどにね。

 他にも、フェアリーを人体から引き剥がすなど、ドライバー自体も厄介な性質が備わっていた。

 明らかに、僕に対象を絞った恐るべきライダーだった。

 

 ――ま、それもブッ壊れたしあいつはもうライダーにはなれねぇよ。

 ――それはどうだろうね……他にもスプリガンやメジエドとかリヴァイアサンとか、色んなフェアリーをこちらにつけたけど、その辺りはファングロジック無しだと動作が安定しないし、万が一の切り札、だね。

 

「ちょっとちょっと!」

 そんな講釈を論じるレフと晶斗の間に、抗議の声が挟まった。

「さっきから誰か忘れちゃいませんかっての!」

 声の圧に反し、デスクの上に三人分のコーヒーカップとドーナッツを丁寧に置くのは、霧街八雲だった。サイケデリックな図柄のエプロンを前に掛けた彼は得意げに、自身の顔に向けて親指を立てる。

 

「だって、やっくん厳密にはフェアリー使ってないじゃない」

 レフの反論に、敵首魁の倅という自意識が抜け落ちているかのような調子で、

「いやでもそこはさぁ、オレらまがりなりにも仲間じゃない。紹介ぐらいしてくれても良くね?」

 などと抜かす。

 

 ……何故、この男がこの事務所に転がり込んで来たのか。何故やっくんと呼ばれているのか。

 それには複雑でも何でもない、浅い経緯があるのだが、語るだに心労が募るので省く。

 

「フェアリーの働きをプログラムしたナノマシンを封じた疑似レンズ。その一つのアルケニーと、専用のドライバーであるミステールドライバーで変身するのが、仮面ライダーモウラだ……これで良い?」

「短ッ。他にもいろいろあるでしょーが。モウラのシステムすげーんだぜ? 街中のカメラやネットワークにアクセスが可能で、情報収集が可能なんだ。スパイみてーだろ?」

「いや、おめぇがそんなの使ってた記憶ねぇよ」

「ん? あぁそうか、なんかゴチャゴチャしててめんどーだったから、その辺の機能全部オフにしてたわ」

「……お前と話してるとマジで頭痛くなってくるな」

「――オヤジとおんなじコト言うなよ」

 

「……で、その霧街郁弥が同じくミステールドライバーと、ヴァンパイア擬似レンズで変身するのが、仮面ライダーモーリアだ」

 ドーナッツ齧りながら、レフは言った。

 

 ――やっくんの自慢が正しいのなら。モウラは先遣や斥候の役割を果たし、そこで得た情報頼りに、モーリアが敵を殲滅する、というのがコンセプトだったんだろう。

 実際、様々な擬似レンズを使い分けることで、戦術パターンを多彩に切り替えるモーリアには、無駄な機能がない。

 そして、ヴァンパイアには周囲のフェアリーの動きを抑制する作用がある。彼と対峙すれば、もちろん僕らのライダーシステムの力は低下する。

 現状において、まず最強と言えるライダーだ。

 

「……その力に、対抗できる手段があるとするならば、それは」

 と、自らの胸の前に手を据えて、真剣な表情でレフは言った。

 

「この僕、ジャバウォックフェアリーを使った、ファングロジックだけだ」

 

 ――仮面ライダーシャルロック ファングロジック。

 これは例外的に……いや、そもそもそれが本来正当なわけだけど……晶斗がドイルドライバーを使って変身するシャルロックだ。

 そして今、僕らの間で最も高い戦闘力を持っている。

 さらに、他のレンズとの併用も可能だから、モーリアの抑制能力にもある程度は耐性がある。

 

「で、まさか晶斗、ジャバウォック()のことは、まさか変なアダナで呼んでないよねー? モノクロ野郎とか、パンダヘビとか」

「くっだらねぇ」

 今までの言動を鑑みるに、本人にとっては笑いごとで済む話ではないのだが、当の晶斗は一言下にそう切り捨てた。

 そしてコーヒーカップ片手に、真正面から、

 

「レフは、レフだろ」

 何ら恥じることもなく、言ってのけた。

 

 目を見開いたのは、レフの方だった。

 伊達メガネを外して畳み、俯きながら、

「……晶斗って、変なところで直球で来るよね」

 ほんのりと耳を赤くして、拗ねたように悔しげに、唇を尖らせて、そしてそんな自身の表情を読ませないように背を向けた。

「そういうの、ズルいと思いまーす」

「は? なんのこったよ?」

「……オレ、今何見せられてんの?」

「とにかくっ」

 

 無理矢理に誤魔化すように向き直るや、両の掌を机上に叩きつける。

 

「これからの戦いはもっと熾烈になっていく。ファングロジック以外にも、有効な手があるか試行錯誤を繰り返さなくちゃならない。そのためにも、フェアリーとの相性を把握すること、各自の連携は必須なんだ! なんかヘンテコなアダナでそれを引っ掻き回すようなことはしない! 分かった!?」

 その勢い、言っていることの正しさに呑まれるかたちで、「おぉ」と晶斗は生返事。

 

 そんな折に、アラームが『鋼の本棚』内に鳴り響く。

 白い部屋が、急を告げるランプの点滅によって赤く染まる。

 

「っと、言ったそばからこれか……今度は三人で行くよ!」

 

 レフの一声に、残る二人はそれぞれに意気をあげるのだった。

 

 〜〜〜

 

 襲撃者たちは、警戒の網に掛かる。

 フェアリーたちを犯罪に悪用する燦都の咎人たち。それ諸共に自分たちを葬り去ろうとするホールドコーポレーション。そしてレンズの技術、ひいてはジャバウォックの奪取を目論む財団X。

 考えられる三者のうち、明確にレフを狙ってアトリエ襲撃を画策するとすれば、三つ目の勢力だろう。

 

 果たして、表通りに出ると、逃げ惑う人々の後ろに彼らはいた。

 白い詰襟の男たち。三又の槍を携えた石像じみた怪物を伴っている。そして自身は服の上から白い本のような物体を我が身にねじ込むと、首から見開いた本を提げたような、雪男、あるいは白鳥のような姿へと変化した。

 いずれも、フェアリー由来とも思えない怪物たちである。

 

「財団か。また別の時間軸ってのから化け物どもパクってきやがったな」

「まぁこっちとしてもちょうど良い。ハイ、晶斗」

 

 そう言って差し出して来たのはドイルドライバーと先に確保したカーバンクルのレンズである。ルビーのような艶のある紅のフレームの中に、宝石をJ字に並べ、その背後に魔法陣を浮き上がらせたフェアリー。

 

〈カーバンクル!〉

 その二つを晶斗にセットし、そして自身の核たるジャバウォックレンズをスタンバイサイドに突っ込もうとする。

 

「おい」

「いろんな可能性試さなきゃ、トライアンドエラー! さぁ……変身! ガクッとな」

 抵抗も虚しく、自分をベルトに送り込むなり、レフは倒れ伏すようにして晶斗にもたれかかった。

 その抜け殻を、八雲が預かり、回収していく。

 

「仕方ねぇな……変身」

 気のない声とポーズと共に、ベルトを操作する。

 

〈Kamen Rider Shalllock Fang logic〉

 

 いつも通りのファングロジックの音声。だが、その様子はいつもと異なる。

〈Jewel Fang!〉

 通常のフォームになったのも一瞬のこと。そんな音声と共に、シャルロックの横合いに魔法陣が浮かび上がり、その右半身を変化させる。

 白黒の外套は、黒一色のファンタジックなものになり、腰にまで伸びる。

 モノクルは眼鏡というよりも、宝石を飾るような銀色のものへと変化した。

 そして手の先にには、晶斗の嗜好らしからぬ指輪が嵌められていた。

 

「なーんだ、これ」

 そう成った晶斗自身が、呆然と呟いた。

『どうやらカーバンクルの宝石(ジュエル)の特性が、ドイルドライバー内のアーカイブにある、別の先輩(ライダー)のデータに紐付いたみたいだね』

「……だーかーらー、そういう妙なこと引き起こすようなモンを、ぶっつけ本番使うなっつーの!」

 

 他人事のように解釈を垂れるレフへの怒りに任せて、前より迫り来たる石像の怪物を蹴り飛ばす。

 個々の意思などないように迫るそれが、囲みながら槍を突き出してくるのを、シャルロックは軽快な跳躍でかわす。空中で身を捻って横に倒し、回りながら体勢を変えつつ、手の内に転送したハードボイルドライバーの引き金を絞る。

 円錐形の火の弾丸が射出され、不規則な軌道を描きながら、後続の怪人たちを撃ち抜いていく。

 

「さぁ……ワークタイムだ」

 投げやり気味にそう呟くと、歩きながら正確に、怒涛の如く押し寄せる攻め手を射撃でもって退けていく。

 

 それを避け、回り込んで死角より不意打ちをかけて来た雪男達に対しては、

〈コネクト・プリーズ〉

 という耳慣れない音声と、浮かび上がった魔法陣より伸び上がった、手形の柄のついた剣を握りとって背面で受ける。

 

 そして返す刀で反撃。刃を旋回させながら斬り立てていく。

 その玄妙な手並みはまさに、

 

 ――魔法

 

 と呼んで差し支えないだろう。

 

『もっと色々と試したいところだけど……』

「あぁ、いつベイカー共の茶々が入るかも分からん。さっさと片付けるぞ」

 

 レフと晶斗の思惑は一致し、それが手の動きに表れる。

 すなわち、シャフトモードでバーリツールを展開して、その魔法剣を銃剣よろしく先端に組み込む。

 

〈オーバーオール〉

 さながら大薙刀のようになったそれにハードボイルドライバーを掛け合わせる。

 

〈ジュエル・スラッシュストライク・サイコー!〉

 

 晶斗はそれを大きく横に一閃。

 その刃より飛んだのは、焔を沸き立つ魔法陣。

 ともすれば仮面に見えるその紋様は、さながら戦輪のように旋回しながら、複数の敵を巻き込み、刈り取っていきながら爆発した。

 

 心無い石兵達は、声も立てず石塊に戻って転がり、焼け焦げたページを撒き散らしながら、白服連中は昏倒した。

 

『どう、ぶっつけ本番もたまには悪くないでしょ?』

「……まぁな」

『さぁ、頑張ったカー君に、お褒めの言葉を、どうぞ!』

 

 内なるレフの声に促され、他意なく晶斗は頷き、そして声を発した。

 

 

「やるじゃねーか……ペテン師!」

 

 〜〜〜

 

 その後日のことである。

 依頼帰りに歓楽街を通って帰路に着いていたレフと晶斗に、「あのーぅ」と声を伸ばして近寄って来た青年がいた。

 

 チャイナ服を想わせるやたらと丈の長い白シャツと、ダボッと余裕を持たせたズボン。

 左右非対称に髪をきっちりまとめているくせに、どことなく人の好さとだらしなさのある面立ちの若者だった。

 

「この近くに、オークションハウスってありません?」

「……あ?」

「あぁ、それならもう半年ぐらい前に潰れましたよ。なんか、色々ありまして」

 

 ほぼ本能的に喧嘩腰になる晶斗より、レフの方が社会的な対応を示した。

 訊いた若者は目を白黒させて、

「マジか!?」

 と念押ししてきた。

「マジで」

「マジだ」

 と答える二人に、

「参ったな……やっと手掛かりつかめたと思ったのに」

 などと独りごちる。

 そして、おもむろにレフの手首に目をやるや、

 

「ちょっと失礼」

 などと、断る間もなく掴み取った。

 だが、当惑するレフをよそに、不思議そうに眉根を寄せて、

「あれ……おかしいな。読めないなんて」

 などと呟く。

 

「おい、何してんだ」

 そして今度は割って入った晶斗の手を掴み取った。

 若者の袖口の下で、何かが明滅を白く繰り返している。

 それは、腕輪だった。

 ファションとして用いるには、少し物々しい、SFチックな大振りなもの。

 中央には、黄色く色づいた宝珠と、それに吸い寄せられるようなテイストの金細工がほどこされている。

 

 青年の眉間に寄ったシワが、その輝きの強弱に同調するかのように小刻みに動く。

 そして、

「――なるほどね」

 と、独り合点とともに、二人の仮面ライダーの顔を見遣った。

 

「なんなんだお前、気色悪い」

 晶斗は激しく手を振りほどく。

 いささか悪態が過ぎるとは思うが、ここ最近の燦都は、諸勢力入り乱れる混沌のるつぼだ。彼の警戒は、妥当なものと言えた。

 

 そしてそれを見抜いたのか、それとも生来の気質か。

 少しも機嫌を損ねることなくにこやかに、

 

「腕輪の超能力者……なんつって」

 などと、冗談にしても笑えないことを口走った。

 

「いや、必要なことは結局わかんなかったけど、君らと会えてマジで良かったよ!」

 それじゃ、と困惑する二人をよそに、青年は大手を振りつつ駆け去っていく。

 晶斗がその後を追わんとしたが、折れた角の先には、誰の姿もなく、そして逃げ場の余地なく行き止まりだった。

 

 

 そしてその当惑の様子を、ホテルの屋上から見下ろすのは、先の青年だった。

「お互い、頑張ろうな……シャルロック、そしてワット」

 相手には決して届かない別辞とともに袖をまくりあげると、現れた腕輪を自身の腹の前に添わせた。

 

 

 

 

 

〈オルタリングドライバー・オン〉




疲れた(第一声)
というわけで、色々ノイズが入りつつも、仮面ライダーシャルロック、完結です。
年々悪化していく体調も相まって、まーた伸びに伸びた連載期間でした。

とはいえ、元々あらすじはきっかり固めていたので、特に何のアクシデントもなく、粛々と終えられました。

例外としては他ならぬこの番外編。
最後は特になんにも考えずポンと出しましたが、設定とか本当になんにも考えてません。
何の考えも無しにウィザードオマージュのフォームを出しちゃったので、なんかそれっぽいライダー出せば、ジェネリックオーズもフォーゼも作中作外でもうやったことだしちょうど良くない? 程度の安直さで出てきたヤツです。

よって次回作の伏線というわけではないので悪しからず。

そろそろ放置してる一次創作をなんとかしたいので、しばらくはそっち優先になりつつ、二次創作は四月馬鹿のネタ出しぐらいですかね。

何はともあれ、ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
ご感想、ご要望とございましたら、お気兼ねなくお伝えくださいませ。

ではでは!
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