吾郎センセーは転生者   作:アステカのキャスター

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 此処から時間が一気に進みます。次からルートに入れる為、書きたい事はとりあえず書いておかなきゃなと頑張った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆話

 

 

 

 あの事件から八年が経った。

 アイは四年前にアイドルを引退した。今は女優として引っ張りだこ。映画でも数々の賞を受賞しては知らない人はいないくらいの大女優となっているらしい。

 

 カミキヒカルという男からの被害は全て壱護さんの手腕により未然に防がれている。苺プロダクションは新たな部署を作りアイの送迎中の護衛などを徹底したりしているらしく、情報漏洩も出さず、人脈からの情報収集も抜かりなく行なっているらしい。

 

 アレから八年も経ち弱小企業だった苺プロダクションも大手並みの大きさとなった。『B小町』のメンバーの高峯、ニノ、渡辺に関しても苺プロダクションに所属したまま、それぞれの道を進みグラビアや番組の司会など様々な所でテレビに出ている。

 

 まあ、最も驚いたのがスバルだ。

 何とドラマの主役としてデビューを果たした。その結果役者としての道を進み始めた。五反田監督の指導と、()()()()()()()()()()()()、八歳になるとその才能を発揮し見事新人賞を受賞したらしい。

 

 ルビーもその影響もあるのか、エキストラとしてだがテレビでちょくちょく見かける。献身的な子供を演じるその姿に、ネットでは『こんな子供がウチに欲しい!』などと偶にバズっているのを見る。

 

 スバルに関しては、カミキヒカルが所属していた場所で危険だと分かっていながら、何とかアイを説得して所属したらしい。

 

 苺プロダクションは子役部門がなく、演技指導出来る人間がいない為、演技を磨く事とその内側でカミキヒカルについての情報を探る為にスバルは一度苺プロダクションを抜けて劇団ララライに所属したのだ。

 

 だが、スバルが十歳になれば状況は一転した。

 カミキヒカルは神木プロダクションの代表取締役になっていたのだ。

 

 強いて言えば、状況はいい方に転がっていた。

 何故なら下手に行方をくらませられるよりはまだ特定しやすいからだ。大手となった苺プロダクションは神木プロダクションに所属する人間の警戒を当てている。そのおかげもあって、あの事件からアイに対しての行動は鳴りを潜めているらしい。

 

 まあ、壱護さんも激務という激務で過労死しかねないかミヤコさんは心配らしいが。

 

 

 そして、そのミヤコさんなのだが……

 

 

「はい、仕事は終わり」

「なっ、あと少しで終わりますから」

仕事中毒(ワーカーホリック)かアンタ。ストレスはお腹の子に悪いんで、少しは自重しなさいな。それ以上やるならノーパソ取り上げますよ」

 

 

 何と、妊娠して宮崎(コッチ)に居る。担当医は俺。

 色々と警戒もあり気苦労もあり、忙しさもありで子供を作る機会なんて考えてなかったし、結婚すれば日常的に美少年と絡むことができるという理由から結婚していたのだが。

 

 まあ、時間が想いを変えるという言葉もある。

 ちゃんと夫婦としての愛の結晶が今はお腹に宿っている。

 

 

「しかしまあ、歳月は人を変えるというか何というか」

「やっぱりおかしいですか?結婚してから時間が経って好きになるなんて」

「いや全然?少し特殊かもしれないけど、おかしいとは思いませんよ。愛に年齢は関係ないっていうし」

 

 

 まあ仕事としてのパートナーとしてしか意識してなかったのかもしれないが、成長していくにつれて子供を産めなくなっていく。時間とは残酷だ。だからこそというべきか。壱護さんはミヤコさんを大切にしているし、漸くその想いが形になるのだ。

 

 おかしい話ではない。

 時間は残酷だが、共にあった時間は尊いものなのだ。

 

 

「それにあの人、わざわざ此処を選んだ理由は知ってます?」

「えっ?先生が信頼出来るからじゃ」

「幾らなんでも近場の病院で産んだ方が安く済むでしょ。入院しなくても家に居ればいい訳だし」

 

 

 入院費を考えたら相当だ。

 三十七週以降、陣痛が来てから病院に入院するのが普通だ。その方が安く済む。アイと同じ二十週で此方に入院している。四十週くらいがピークだとするなら単純計算で五ヶ月、入院費はかなり高い。

 

 

「アイを狙うあの男に関してまだ警戒してる訳だ。弱みを見せたら貴女を人質に利用されるかもしれない。だから巻き込ませない為に遠いこっちに預けたんですよ」

 

 

 わざわざ此方に電話したくらいだ。

 電話越しで懇願され、俺はミヤコさんの担当医となった。危険から遠ざけるためにわざわざ此方で入院させた事はどうやら寝耳に水のようだ。

 

 

「愛されてますねぇ。不器用で過保護かもしれないけど」

 

 

 ミヤコさんの顔が赤くなっている。

 いやあ、甘酸っぱい。自然と口角が上がりニヤニヤとしてしまう視線を受けて、ミヤコさんの咳で誤魔化された。

 

 

「先生はどうなんですか?結婚とか全然聞かないし」

「俺はまあ……ほら、もうアラフォーだし」

「愛に年齢は関係ないんですよね?」

「あっ、一本取られた」

 

 

 ただし、歳の差を考えなければ有罪ではある。

 例えばアラフォーの俺が十六歳に手を出せば年下趣味というレッテルを貼られて社会的に抹殺されかねない。特に毒を吐くあの看護師にドン引きされたあとにゲラゲラと笑われかねない。

 

 

「というか先生、その顔でアラフォーはないですよ。肌綺麗だし皺もないし白髪もない、なんなら禿げてもいない」

「余計なお世話だ」

 

 

 それ完全にブーメラン。

 ミヤコさんも全然変わらないし、それにアラフォーがみんなそうだと思うなよ。いやまあ最近先輩が禿げ始めて悲惨な想いしてるらしいが、俺にそんな症状はない。というか、体力は確かに落ちているが()()()()()()()()()()()()()

 

 アイツが言っていた事が少し本当なのかもしれないな。

 

 

「で、どうなんですか?結婚願望とか」

「俺はいいかな……それに」

 

 

 結婚願望が無いわけじゃないが、今は考えてない。

 

 

「手間のかかる居候モドキがいるので」

 

 

 そいつのせいで意外と忙しいし。

 それに医者だから恋に時間をかけられない、勉強し続けて救う事を一番に考えているから。

 

 ……あれ、今更気付いたんだけど、俺ももしかして仕事中毒(ワーカーホリック)に片足突っ込んでる?

 

 

 ★★★★★

 

 

 俺が住んでる場所は祖父母の家だった。

 祖父母が老衰死、この世を去っている今は俺しかいないし、年季も結構入っていたから少しリフォームをしている。

 

 祖父母が遺した多くない遺産から少しだけ使わせてもらった。祖父母が死んでも、親父は葬式に来なかったし、行方知らずのままだから俺に相続される形になった。

 

 

「ただいま」

 

 

 自宅に帰ると明かりがついていた。

 炬燵に入りながら蜜柑の皮を剥いている幼女がいた。

 

 

「おかえり、先生」

 

 

 その笑みがどこか子供らしくなくて不気味に思える。半居候しているこの子供は最初であった時は縁側に鴉を引き連れて座っていた。身元も不明、誰の子なのかも分からず、名前すら教えてくれない不気味な幼女だが、帰る場所を聞くと変にはぐらかされる為、家出が終わるまで家に置いている。

 

 

「……今日は居るのか?」

「うん。そのつもり」

 

 

 ただ、この子は神様と関わりがあるらしい。

 俺が転生してる事を普通に指摘された。まあ半分信じてないし、この子も転生者という事で納得した。

 

 俺はこの子を神無(かんな)と呼んでる。

 名前を頑なに教えてくれなかったから、神無月から取った名前で呼んでる。まあ、神は存在しないから神無という嘘をついたら引き連れてた鴉に襲われた。いつか焼き鳥にしてやる。

 

 

「お腹空いた、今日は何作るの?」

「みかん剥いといて図々しいなお前。カレーの予定だが、お前は甘口?」

「うん」

 

 

 身体は小さく、あの時のルビー達と同じくらい。捜索依頼もないのが本当不可解だった。そんな不可解な幼女は炬燵の中で丸くなってる。

 

 

「少しは手伝え神無(かんな)

「嫌だー、炬燵から出たくないもん」

「スイッチ切ってやろうか?働かざるもの食うべからず、激辛が嫌ならお前も手伝え」

「……はーい」

 

 

 神様と関わりがあるがまだ子供。

 激辛と苦いものが嫌いらしいのでノソノソと炬燵から出ては俺が渡した玉葱の皮を剥き始めた。

 

 

「結婚する気ないの、あたしが居るからじゃないでしょ?」

「聞いてたのか?」

「あたしが聞いたわけじゃないけどね」

 

 

 そういえば窓の外に鴉いたな。

 いや、まさか鴉から聞いたわけじゃないだろうけど鴉遣いだから否定できない自分がいる。

 

 

「愛を導くくせに、愛を得ようとしないのって貴方の前世が影響してるの?」

「……お前にも分からない事があるんだな」

「神様だって全知全能じゃないもん」

 

 

 神と関わりがあっても全ては知ってるわけではない。もしも知っているなら俺の前世さえ知っているかもしれないと思っていたが、それはないらしい。

 

 

「貴方はあの双子より()()()()()()()

 

 

 小さなその指は俺に向けられた。

 

 

 

「名もない神様、それが貴方」

 

 

 

 確信を持って告げられた言葉にため息をついた。

 

 

「くだらね」

「でも、少しだけ信じてるんでしょ?貴方はこの世界で特別だって事に」

 

 

 まあ、そこは否定できなかった。

 四宮、秀知院学院が存在してる事がわかった時、此処は漫画の世界である事を悟っていた。けど、それだけだ。俺が原作に介入するために生まれ変わったとか考えてもいない。介入する理由も労力も湧かない。此処は現実で二次元じゃない。その区別くらいは理解しているつもりだ。

 

 

「……俺が神様なら取りこぼさなかった。だから俺は神様じゃない、それだけだ」

「肉体は老化を止めようとしてるのに?」

「仮に神だとするなら俺が望めば老化もするだろ。別に若く生きようとか全然考えてない」

 

 

 仮の話、俺がこの世界を作った作者と同じ世界にいたなら『外』から来た俺は役割を持たない神様って事になるのかもしれない。だから特別なのか、肉体の老化スピードが遅い。アラフォー超えても二十代後半くらいの若さだ。

 

 まあ、俺は神様ではないし、人間として生きたいのだ。神様になった所で、俺の人生が満たされるかはまた別だしな。

 

 

「無欲ね」

「生憎と、人なもんでな」

 

 

 別にそれだけ。

 老いるのが遅いだけで俺は人としては結構欲張りなつもりだ。

 

 

「……まあ、そうだな。俺の前世は良くも悪くも独りだった」

 

 

 前世の俺は家族愛なんてものがなかった。

 親は散々だったし、酒を飲み散らかす父と他の男を探す母。本当に最悪ではあった。暴力なんて日常茶飯事で、母は止めてもくれない。虐待が発覚してからは施設に送られて、惨めな思いをしたくなかったから必死で勉強し、特待生になって医大で授業料免除で様々な事を学んだ。

 

 

「俺は一人で生きる事に必死で周りが見えてなかったからな」

 

 

 金が入れば生きていける。

 親の顔がチラついて離れない呪いのようだった。それを振り切るために、勉強し続けた。上に上がるために人を観察し続けた。何を求めているのかを知れば、自分の在り方を変えて嘘を吐き続けた。

 

 利口な生き方をしたと思っている。それをよくないと思っている人間を実力で黙らせた。自分の正しさを示すように、自分は間違ってないって思うために。

 

 

「その先には何も無かった。充実してても愛は無かった」

 

 

 生きる事だけは充実してた。

 ただ、友達なんてものは殆どいなくて手にした自由は虚しかった。空虚で、何もなくて、本当に自分の空っぽさを嘆いた。

 

 愛が欲しかったわけじゃない。けれど、どうしてその生き方をしてしまったのか後悔した。誰かに寄り添えるようにできたなら、手に入れたものは空っぽな自分を満たしていたのか。それは今でも分からない。

 

 

「ただ、俺は愛が分からないんだ」

 

 

 愛が分からない。

 親が与える愛を知らない俺は愛が分からない。

 

 

「俺は愛を手に入れられるように導けても愛を知らない。親から貰うはずだったものが前世でも今世でもないまま育て上げられたからな」

 

 

 家族に憧れた事はあった。

 だから愛を手にする方法は知っていた。寄り添って、支え合って生きる事が愛を手にする事が出来るって思っている。

 

 だからなのか、アイについ入れ込んでしまうのは。

 自分と同じ道を進ませたくなかった。親の愛がない人間がどれだけ辛いかなんて、俺は痛いほど理解してる。その在り方を続ければ、嘘を吐き続けたあの子の周りに人が居なくなると思っていたから。

 

 

「だから、全力で生きて他人を思いやる。それが俺の愛だって俺が信じたいのさ」

 

 

 俺はさりなちゃんを思いやっていた。

 俺もあの子も、欠けていた人間だったから。俺はあの子に不器用だけど愛を与えようとした。あの子がせめて苦しくないように、辛い時に寄り添えるように、支えていた。

 

 だから、あの子が死んだ時は俺は泣き続けた。

 空っぽな自分でもその思いを自覚すれば、苦しくて涙は止まらなかった。失う辛さが今の俺を作った。

 

 だから、それが愛だと信じたい。

 俺があの子に与えられた愛を無駄にしたくないから。

 

 

「まあ……俺は愛を得ようと努力しないのはそれ以上に俺がやってきた事の意味を残したいからってのもあるかな」

 

 

 愛を得ようとしないのは、俺の手でまだ救える人がいるから。あの子が認めてくれた俺の優しさを使って、誰かを救えればきっとその時は、いつか笑って死ねると思っているから。

 

 だから愛より仕事を優先している。本当、しょうもない理由だ。

 

 

「つまらないし、可哀想な人」

「うるせえ自称神様。わざわざ話してやったのに」

「じゃあ貴方にとって、愛って何?」

「繋ぐもの」

 

 

 それが俺の答えだった。

 

 

「恋愛、友愛、家族愛だけじゃない。憎しみ愛、殺し愛だってある。人間が居るから愛は生まれ、愛は人によって色も形も変える。星の数より愛の形は存在する」

 

 

 愛に苦しみ、愛を尊み、愛を育む。

 数え上げればキリのない程に愛の在り方はある。それはまるで糸のように繋がれて、中々途切れさせてくれない。

 

 

「人と人を繋ぐ想い、それが愛だと俺は信じてる」

 

 

 人だから持つ、誰かを想い、想い合う力。

 愛とはそうであってほしいと言う願望だけどな。

 

 神無(かんな)の剥き終えた玉ねぎを切り終えると鍋に具材を入れてルーを投入した。あと二十分もすれば完成するだろう。

 

 

「案外、ロマンチストなんだね」

「お前はどうなんだ神無(かんな)

 

 

 俺が思っている愛は俺がそうであってほしいという願望でしかない。

 

 

「お前にとって愛って何だ?」

  

 

 神様にとって愛は何なのか。

 薄く笑っては、ただ一言を告げた。

 

 

「──さあ?」

 

 

 目の前の神様は答えてくれなかった。

 

 





 吾郎センセ
 アラフォーに突入し、ミヤコさんの担当医となった男。謎の鴉の少女を半居候させている。この時点でロリコン疑惑が発生しているが、恋愛感情なんてものはクソほどないし、同僚にもバレていないので気にしていないし、アッチも意味のわからない魂を持ったセンセの観察の為に近づいているに過ぎない。

 某幼女いわく名前のない神様。本の外の世界から巻き込まれた異分子。全知全能ではないし、老化が少し遅いだけだと思っているが、神様の約束は時に力を発揮する事を彼はまだ知らない。


 神無(かんな)
 某幼女、自称神様。十月に出会ったので神無月から取って神無と吾郎は呼んでいる。魂の在り方がおかしい存在を見つけ、意味が分からないので近づいて半居候状態。よく鴉を使って観察している。このあと作ったカレーが吾郎の皿と間違え、辛さに悶え苦しむ羽目になる。


 斉藤ミヤコ
 結婚して妊娠した妊婦。名付け親は先生に任せるつもりでいるらしく、壱護も納得している。アイが生きている為、壱護が苺プロダクションから離れずにそのまま社長として働き、その手腕からカミキヒカルに対しての警戒を続けている。八年経ち、時間から愛が芽生え、仕事は忙しいが落ち着いてきた頃に「子供が欲しい」とミヤコから告げた所、壱護も覚悟を決めた。


 星野アイ
 アイドルを引退し、今は女優として活動している。B小町メンバーもそれぞれの道を進んでいるが、苺プロダクションに所属して友達として相談に乗ってくれてるらしい。最近の悩みは忙しくてセンセの所に遊びに行けない事。いつか三人で遊びに行きたいと思っている。


 星野スバル
 苺プロダクションを一度抜けて劇団ララライに所属している。ワークショップがララライが有名になってからはやってないので、一度苺プロダクションを抜ける必要があった。

 カミキヒカルがいた場所であるのと、子供部門がないので演技の頭打ちだった為、カミキヒカルの情報を更に知るためにアイを説得し、劇団ララライに所属しては磨いてきたトレース能力で才覚を伸ばしていき、最近はドラマで主演になっている。

 それに関しては流石に本人の予想の斜め上を行ったが、家計の支えになるならいっかと思っている。あかねと出会うのが早くなるかも。


 星野ルビー
 芸能界デビューしてるスバルが羨ましくて、子役部門が作られるとドラマのエキストラから出ている子役を喰い、ドラマで健気な娘役として出演したりしてる。今の内にと歌の練習を続けている。最近の悩みはせんせが足りない事。早く会いたいと思っている。


 斉藤壱護
 過労死寸前。闇堕ちもなく、離れる事はなくなった。苺プロダクションが大きくなった分大変になった。大体星野家のせいである。でも、充実しているこの時が嫌いではないらしい。最近の悩みは結婚した時よりミヤコのことを意識している事。



 良かったら感想、評価お願いします。モチベがめっちゃ上がります。最初はルビーから行かせていただきます!!
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