吾郎センセーは転生者   作:アステカのキャスター

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 日刊一位ってマジかと思って二度見した。次で一章は終わりかなぁ。感想返せなくてすみません。書いてると間に合わなかった。最後にアンケートがありますので投票お願い致します。


☆☆☆☆話

 

 

「名前?」

「はい、アイが決めたらしいので先生も来て欲しいとの事で」

「分かった。行こう」

 

 

 先輩に少し休業しろと言われたのだが、一応はここに来ている。足には罅、全身には擦り傷がまだあれど、診察だけならまあこの状態でも出来るし、産まれた以上はそう遠くない内に星野アイは退院するだろう。片手の松葉杖を突きながら普通に星野アイの病室まで歩き始める。

 

 

「大丈夫なんですか足とか色々」

「あの子が退院したら俺は暫く有給取る」

「ホントありがとうございます。先生」

「いい。ここまできたら最後まで面倒は見たいしな」

 

 

 怪我はあれど、最後まで面倒見るのが担当医の勤めだ。個人的にも最後までちゃんと見ていたいというのも本音だったしな。

 

 

「あっ、来た来た。センセ、名前決まったんだよ!」

「それで、名前は?」

「ふっふっふ、じゃーん!」

 

 

 クリップボードをひっくり返されると、そこには愛久愛海(あくあまりん)瑠美衣(るびい)という名前が書かれていた。うん、まあとりあえず言うべき事は一つだった。

 

 

「斉藤さん。入院もう少し伸ばせませんか?少し頭を見てもらった方が」

「あー、検討するべきなのかもなぁ」

「ちょっとぉ!?何がダメなの!?」

「色々だよ」

 

 

 いや、いやいやいや。

 名前のルビーはまだいい。ギリ許せる範囲の名前だと思う。けどアクアマリンはヤバいだろ。星野アクアマリン、何処かの芸名かよ。

 

 

「百歩譲ってルビーならまだしも、アクアマリンって絶対学校で虐められる名前だよ。フルネームで将来子供が悶え死ぬぞ」

「ぶー、いいじゃん宝石の名前で可愛いんだし」

「だったら尚更変えてやれよ。アクアマリンじゃない奴」

「えー、ガーネットとかエメラルドとか」

「宝石から離れろよ」

 

 

 そこまで行くと名前が外国人になるぞ。絶対虐められるし、俺が子供なら母親を恨むまである。ネーミングセンスというよりキラキラネームにしたいという願望丸出しだ。

 

 

「じゃあ何かセンセが名前提案してよ」

「俺?ええぇ、うーん……キラキラで統一するなら」

 

 

 (ライト)大躍(ダイヤ)真珠(シンジュ)、うーん完全に当て字過ぎるし、好きじゃねえな。さっきよりマシだと思うけど。星野アイの子供、将来はイケメンでスター性の子供となると考えるなら、少し大人に名前でも恥じないと思うが、意味はしっかりしてるものかこれだと思う名前……あっ。

 

 

「俺が提案するならこれかな」

 

 

 メモ帳に書いた名前は──(すばる)

 斉藤夫妻が素直に感嘆の声を漏らしている。これに関しては多分ピッタリかもしれない。

 

 

「おお……」

「星の名前だからな。青く美しく輝く星が集まって出来た星で、青色の瞳、金色に近い髪色、この子に名付けるなら俺はコレかな」

「うーん、それ聞くとめっちゃ悩むじゃん」

「まあアクアマリンじゃなくて、アクアに短縮すれば良いだろ。無理に当て字で漢字にしなくてもカタカナで表記する人もいるし」

 

 

 まあ女の子でも男の子でも取れる名前にしても悪くはないだろうし、アクアというならそれはそれで悪くはない。天真爛漫なこの子の遺伝子を継いでいるなら性格は母親似の可能性が高い。そう思えばルビーというのは悪くはないのかもしれない。アクアマリンは流石に論外だが。

 

 

「時間はあるんだし、悩んで決めておきな。……しかしまあ、可愛い双子だな」

「そりゃあ私の子だもん」

「この子みたいに間違った道を進まないようにな」

「センセ、ちょっとお話しようか?」

「遠慮しとく。俺満身創痍だぞ」

 

 

 足に罅、全身擦り傷、今戦ったら確実に負けるわ。しかしまあ16歳で二児の母か。本当に大変そうだけどな。アイドルと子育て、両立しなければいけないし。まあそこら辺は斉藤夫妻がどうにかしてくれるのだろうけど。

 

 青い瞳がこちらを見つめると、軽く笑った。

 

 

「ぱぱ」

「………はっ?」

「ぱぱ」

「………この子供凄すぎねぇ?」

 

 

 もう言葉話したんですけど。

 えっ、乳歯も生えてない子供が話せる言葉なのか?

 

 

「まま」

「はーいママですよー!」

「いや待て俺はパパじゃねえ。だから斉藤さん嘘だろお前、みたいな視線向けるのやめてくれません?俺が会う前から腹大きかったろ」

「ぱぱ」

「違う」

 

 

 この子供からかってね?

 いやそんな馬鹿な、0歳が大人を揶揄うなんて出来たらそれこそ生まれながらの天才か俺と同じ転生者か。まあ自分も非現実過ぎるから他人でそんな現象が起こるなんて思ってはいないけど。

 

 

「せんせ」

「君もかブルータス」

 

 

 赤ん坊の概念に裏切られた。

 早えよ。早熟と言っても限度があるだろ。えっ、ギフテッドチャイルドなの?天才なの?ちょっとあり得ないけど俺と同じ転生者疑惑が浮上してきたんだけど。

 

 

「せんせ、せんせ」

「覚えた最初の言葉がせんせってこれ喜べばいいんですかね?」

「センセ、抱きあげてあげたら?」

 

 

 優しく抱き抱えるとルビーちゃんは俺の頬をペチペチと叩き始めた。痛くないけど、楽しんでいるようには思えない。()()()()()()()()()()()、赤ん坊なのに違和感を感じた。怖がっているというより、嬉しがっているようにも思える。なのに顔は涙を溢す寸前だ。

 

 

「せんせ」

「はいはい、せんせだよ」

「せんせ、せん…せ、ふぇえええ」

「ああ泣いちゃった!?おー、よしよし、お母さんの所に行こうねー」

 

 

 良かった。普通に泣いた。

 0歳の赤ん坊が言葉を喋るなんてあり得ねえという常識から麻痺していたが、知った言葉を繰り返して言っていただけのようだ。いやそれでも凄いと思うけど。

 

 

「とりあえず元気な子達で安心したよ」

「将来はきっと美女美男だよ」

「そうかもな」

「およ、センセが素直だ」

「どういう意味だコラ」

 

 

 俺は世界で一番素直なお医者さんだぞ。

 

 

 ★★★★★

 

 

 起きた時、私は天国の中にいた。

 というか、今も天国の中にいると思えるくらいに幸せを感じていた。

 

 私、天童寺さりなは転生した。

 しかも私が一番推していた星野アイの子に。いやー、現実は小説より奇なりとはよく言ったね。絶対処女受胎に決まってるだろうけど、まさかこんな事が起こるなんて私も驚きを隠さなかった。

 

 それ以上に驚いたのは、この病室。

 何処かで見覚えがあると思ったけど、私が入院してた病院だ。部屋は違うけど間違いなかった。

 

 せんせが居る。

 もしかしたら会えるかもしれない。

 

 でも私はまだ赤ちゃんで、言葉を喋れば不気味に思われる。それが怖くて言えなくて、ママであるアイの隣で眠っていた。

 

 名前が決まって、斉藤さんという人が誰かを呼びに行ってる。チラッと見えた名前にはルビーという名前があった。

 

 少しアレだけど、推しから名前を貰えるなんて……!もう心は幸福の絶頂にいたその時だった。病室に入ってきた見覚えのある一人の大人が。

 

 

「(あ……)」

 

 

 あの頃から何も変わらない、せんせの姿だった。

 

 アイの担当医として私を取り上げたのはせんせらしい。色々な事を喋りたい、伝えたい事もたくさんある。けど、話せない。話せば気味悪がられるし、信じてもらえないと思う。せんせは医者だから転生なんて事を受け入れてくれないかもしれない。

 

 

「しかしまあ、可愛い双子だな」

 

 

 ああ、変わってない。本当に何も変わってない。

 思い出は色褪せなくて、ちゃんと覚えている。大好きなせんせのままだった。

 

 声を出した。

 せんせ、って言葉を口にした。産まれて間もない赤ちゃんだから、それ以上は言えない。まだ言えない。抱き抱えられると頰を触った。あったかくて、笑う仕草も変わらない。

 

 夢、じゃないんだ。本当に……

 

 

「せんせ」

「はいはい、せんせだよ」

 

 

 私は気付けば涙を流してた。

 感情がコントロール出来ない。嬉しいのに怖いって思っているとせんせに思われ、ママの腕に預けられる。違う、違うよせんせ。私まだ伝えたい事がたくさんあるの。

 

 私、生まれ変わってまた逢えたんだよって、今は言えなくてそれがもどかしくて辛いけど。

 

 それでも幸せだった。

 嬉しくて悲しくて感情がごちゃごちゃで私はママの胸の中で泣き続けていた。

 

 

 ★★★★★

 

 

 起きた時には地獄にいた。

 いや、天国とも思えるかもしれないけど、俺にとっては地獄と同義だった。

 

 俺、宮水涼介は転生した。

 あの日、崖から転落して殺そうとした医師に助けられて、それでも死んで起きたら赤ん坊だった。これなんて二周目?と呟きたくなった。

 

 まさか、俺が殺そうとしていたアイの子に転生するなんて皮肉もいい所だった。

 

 アイは完璧なアイドルだからこそ、俺は産まれた自分の存在が許せないとさえ思った。死にたいとさえ思った。だが赤ん坊、舌を噛むにも歯は無いし、この身体じゃ何も出来ない。

 

 俺はアイの子に転生したが、正直な話罪悪感しかなかった。愛してるという狂気から医師を殺そうとしたのもそうだが、アイの幸せを取り上げようとしていた俺の前世の記憶がいっそ断罪しろと言わんばかりに焼き付いていた。吐きそうになった。

 

 しかも、あの先生は満身創痍ながら俺を取り上げた。色々と言いたかったが赤ん坊、死ぬのは構わないけど声を出して人体実験の為とか言われたらそれはなんか嫌だった。

 

 俺の魂が本来産まれるべき純粋な赤ん坊の命を奪った。そう考えると自分が気持ち悪くて、アイの側にいる事さえ烏滸がましく感じた。一周まわって俺はアイの幸せに入りたくなかった。

 

 怖いのだ。俺のせいで彼女の幸せが壊れる事が嫌だった。全てが嫌だった、前世の自分も今世の自分も、アイから幸せを奪おうとした自分がアイに守られていくのが嫌だった。

 

 死にたい、でも死ねない。

 地獄だった。この罪悪感が、前世の罪が俺を苦しめる。これが罰という事なのだろうか。

 

 

『だから生きろ。生きて俺に殴られろ』

 

 

 その言葉通りなら俺は殴られる為に転生したのか。本当、イカれた医者だよあの人は。

 

 先生は言った。

 アイはきっと幸せになれると。子供がいるから幸せになれるというのなら、俺は彼女を幸せに出来ると思えない。

 

 だってこの気持ちは醜いものだから。

 

 俺は先生が苦手だ。

 あの日殺そうとしたどうしようもない俺を救おうとした先生が憎いよ。俺が狂気のままでいられたなら幸せを感じられていたはずなのに。

 

 ああクソ……先生が正しいよ。

 

 正しいから苦しい。

 記憶なんて要らないと願ってさえいても忘れられない。本当に憎いのに憎めない。先生は正しいから、間違っているのは俺だから。アイの側にいる幸せも前世の罪の苦しさもどちらも感じて感情はぐちゃぐちゃだった。

 

 産まれた意味があるのなら、転生した意味があるのならそれはきっとアイの幸せの為に居るんじゃなくて、アイを悲しませてもアイの幸せを守る事なのかもしれない。

 

 俺は多分、アイを幸せに出来ない。

 幸せを壊す事しか出来ない。それでいい訳じゃないけど、俺の在り方はそれで構わないとさえ思っている。

 

 

「(俺は……やらなきゃいけない)」

 

 

 いつか俺はアイの為に姿を消す。

 俺をけしかけたあの声の男。きっと俺と同じようにアイに対して何かしてくるのは予想できる。確かめなきゃいけない。ソイツは誰で、アイをどうして狙うのか、事によっては命を奪う事も考えている。それが俺が産まれてきた意味だ。

 

 まあ実行するにはまだ先になるんだろうけど……

 

 

「ぱぱ」

「違う」

 

 

 それはそうと、転生した理由が殴られる為なら先生にも僅かに原因がある。軽い意趣返しとして少しだけ揶揄った。先生が死ななかった事に後悔はしてないけど、約束のせいで地獄みたいな状況になっているならある意味先生のせいでもあった。

 

 ぱぱ、の言葉に焦る先生を見てほんの少し溜飲が下がった気がした。

 

 





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この作品の星野(兄)の名前は?

  • 原作通りアクア
  • センセが提案したスバル
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