113.全国模試開始
全国模試当日。
「ちゅっ……んン、はむ……ぢゅる……れろれろ……はぁ……」
朝出勤前に四葉に呼ばれて、また非常階段でキスをしていた。
「ちゅっ……四葉、徹夜で寝不足なんだろう?僕は早めに出なきゃだからこの時間だけど、もう少し家でゆっくりしてた方が良かったんじゃないか?」
「ん……ちゅっ……なんで徹夜ってわかるんです?」
話しかけるもキスを止めようとしない四葉。
まったくどんだけ嵌まってしまったんだ。
「ちゅっ……四葉の目の下の隈。すごいことになってるよ」
「ふぇ!?」
目の下の隈を指摘してあげたらようやくキスを止めてくれた。
「そ、そんなにひどいですか?」
「ああ。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。帰ってメイクでもしてきたら?」
「えへへ、そうします!ふふふ…」
「どうした?」
メイクをするようにアドバイスをしただけなのだが、なぜか嬉しそうに四葉は笑っている。
「私のこと可愛いって言ってくれるの先生くらいですから。それがとても嬉しくって」
そう言った四葉はニコッと笑顔を見せた。
「みんな思ってるけど言わないだけだよ。と、時間ヤバイからこの辺で。ちゅっ。遅刻するなよ?」
「ん……はい!いってらっしゃい、先生!」
時計で確認すると本当に危ない時間だったので、最後に軽く四葉の唇にキスをしてからそのまま階段を降りて学校に向かった。
学校に着いた僕は準備をしながらもため息が出てしまった。
「どうされたんですか?朝からそんな大きなため息なんて」
それを心配そうに芹菜さんが聞いてきた。
「ああ。すみません。最近休みの日は運動をするようになったので、その疲れが出たのかもしれませんね」
まあ、本当は四葉の行動にどうするか悩んでいるんだけどね。さすがにこれは他人に相談出来ないな。
「へぇ~、運動始められたんですね」
「ええ。学生までは運動してたんですけど、こっちに来てからはからっきしで。そのせいか、ことりや飛鳥に呆れられてまして」
「えーっと、飛鳥さんって言うと、結愛さんのお姉さんですよね?」
飛鳥の名前が出た後、人差し指を顎に当てながら芹菜さんは考えながら答えた。まあ、旅行で一回会っただけだから覚えてる方がましか。
「ええ、そうです。この間の旅行で体力がすっかり無くなってるのがバレちゃって。向こうではそんなところ見せたこと無かったですし」
「そうだったんですね。一応私も健康のためにヨガはやってますが、本格的な運動はこの間のスキーくらいでしょうか」
ふふふ、と笑いながら芹菜さんは話している。
そこに朝礼が始まる合図が入ったのでお話はここまでのようだ。さて、全国模試。どうなることやら。
最初の監督クラスは三年一組だったのでその教室に向かった。
「よーし、そろそろ始めるから机の中の物も鞄に仕舞うように」
時間になったので模試の準備の声をかけた。どの生徒も最後の足掻きでパラパラとノートなどを見ている。
「はいはい、仕舞った仕舞った。て、上杉。お前は大丈夫か?顔色最悪だぞ?」
「ははは…何言ってるんですか先生。問題ありませんよ…」
返す言葉にも元気がない。本当に大丈夫か?
「まあ良い。各自仕舞ったね。じゃあ問題用紙を配るけど、合図があるまで裏返しのままでいるように」
一列ずつ問題用紙を配っていく。配り終わり、各生徒は合図があるのを今かと待っている。
キーンコーンカンコーン…
「それじゃあ、全国統一模試始めます」
ガサッ…
その合図で一斉に問題用紙を裏返した。
見た感じみんな最初は順調そうにペンがすすんでいるようだ。
チラッと上杉を見るも、顔色は悪いもののペンを走らせることは止めずにどんどんと解いていってるようだ。
顔色の悪さは寝不足によるものか…
最初の教科は国語。確か、五つ子で国語が得意なのは四葉だっけか。
そこで朝のキスが頭を過ったので、ブンブンと頭を振った。
何考えてんだ。集中集中。
そして、さすがに誰も寝ることがなくこの時間は終わった。
そして昼休み。
今日は珍しく芹菜さんが数学準備室にお昼で来ていた。
他には誰もいないので、ソファーに二人並んで座っている。
「やっぱり全国模試ともなるとみんな凄い集中力ですね」
「ええ。これを普段の試験にも使ってほしいものですよ」
僕の言葉に二人で笑ってしまった。
「それにしても、珍しいですね。お弁当作って来られたんですね」
「ええ。今日は目覚めが良かったので。それに、お弁当を作ればこうやってここに来れますから」
ニコッと笑みを浮かべながら芹菜さんは話した。
「それに、こういう事もできますし」
そう言うと芹菜さんは自分の弁当箱から一つのおかずを箸で摘まむと、それを僕の口元に持ってきた。
「はい、あーん…」
「あむっ……んー、美味しいですね!」
「ふふふ、良かったお口に合ったようで。この煮物は昨日の晩御飯の残りでもあるんですけど、自分でも上手く作れたと思ってたんです」
「相変わらずの料理上手ですね。では、お返しにこの玉子焼を」
「あーん……うん、美味しいです。今日はどちらが?」
「今日は結愛ですね。最近はことりの勉強の為に自分から率先して作ってるんですよ。結愛曰く、その玉子焼は吉浦家の味だそうですよ」
「これが和彦さんの実家の味なんですね。ふむふむ…」
うちの実家の味と聞いた途端に味を吟味しだした。もしかしたら今度作ってくれるのかもしれないな。
もうキスまでした仲でもあるので、あーんくらいは慣れたものだ。本当は付き合っていないというところが申し訳なく思ってしまう。
「それじゃあ、今度は趣向を変えて……」
笑みを浮かべながら、芹菜さんはミートボールを箸で摘み唇で挟んだ。そしてこちらに顔を近づけてきたのだ。
「ん……」
そう来ましたか。
いつまでもこの状態にしておく訳にもいかないので、観念してミートボールを口で受け取った。
「ん……ちゅっ……はぁ……ぺろ、えへへ…ちょっと恥ずかしいですね」
芹菜さんは唇に付いたミートボールのソースを舌で舐めとりながら笑っている。
しかし、芹菜さんは一つ一つの動作が妖艶過ぎる。今の舌で自分の唇を舐めるだけの動作でも気が持っていかれそうだ。
「ねぇ~?和彦さん?普通にキスしても良いですか?」
そんなところに少し感情を込めて聞いてくるものだから抗いようがなかった。
僕は返事の変わりに、芹菜さんの唇にキスをしていた。
「ん……ちゅっ……はぁ、ちゅっ……ん……ちゅっ……はぁ……ふふふ…私、和彦さんとのキス大好きです。もっと上手くなって和彦さんを虜にしてみせますね。ん……ちゅっ……」
コンコン…
そんなところに扉を叩く音がしたので二人ともビクッとなってしまったが、慌てて平常心を取り戻してノックに対して返事をした。
「はい、どうぞ」
ガラッ…
「「失礼します」」「失礼いたします」
入ってきたのは結愛を先頭に、結愛のクラスの女子生徒二人の三人だ。
「!」
「あ、お食事中だったのですね。申し訳ありません」
結愛は僕の横の芹菜さんの存在に気づくと驚きの顔を見せた。そんな結愛に気づくことなく、女子生徒の一人が申し訳なさそうに話した。
「いや、別に構わないよ。どうした?」
「えっと…今日の授業でわからなかったところがあったので...」
僕が用事を確認すると二人目の女子生徒がここに来た理由を説明した。
「そっか。食べながらで良かったら、こっちにどうぞ」
僕がソファーの向かいに促すと二人の女子生徒が笑顔でこちらに来た。結愛もそれに続く。
二人の女子生徒のうち一人は
もう一人が
この三人は席も近くすぐに仲良くなったとか。
ソファーに座った結愛以外の二人は、僕の横で食事をしている芹菜さんに興味津々のようだ。
「あー、三人は面識ないかもだけど、彼女は立川先生で僕の同期なんだよ。僕の受け持ってるクラスの副担任でもあるんだ」
「立川先生…聞いたことあります。ものすごい美人な先生がいらっしゃるとか」
「うんうん。最初はデマかと思ったけど本当だったんだぁ」
二人は芹菜さんの美しさに呆けているようだ。
「ふふふ、美人なんてそんなことないわよ。三人もそれぞれ個性があって可愛いわ。モテるんじゃない?」
「あー、結愛ちゃん早速告白されてたね」
「もぉー、澪ちゃん!」
芹菜さんの言葉に軽い気持ちで結愛が告白されていた事をばらす伊達。そうか、結愛のやつもう告白されてるのか。
「結愛さんは成績が良いのにも関わらず人当たりも良く、どこか守ってあげたいという気持ちになってしまうのですよ」
「うんうん。それで男受けに良いんだよ」
今井の説明に胸の前で腕を組ながら、うんうんと頷きながら伊達が説明した。
「うーー…」
当の結愛は何かを訴えかけるように僕をじっと見つめている。
「あら、良かったじゃない。その人とはお付き合いしないの?」
そこに畳み掛けるようにニッコリと笑顔で芹菜さんが言葉を続けた。
「むっ…!しません!私には好きな人がいますので。その人から見たらどんな男子だって子供にしか見えませんから」
「あはは…そうなんだよねぇ。男子たちが可哀想だよ」
「あら。でも結愛さんのお気持ちも分かりますわ。
ふふふ、と今井がこちらを見ながら笑っている。
結愛のやつ自分が僕を好きなのこの二人に言ってるなぁ。
「え?ちょっと憂ちゃん。まさか憂ちゃんも好きになったりしないよね?」
「さあ?人の恋とは突然訪れるもの。
焦る結愛に対して軽く躱す今井。さすがは格式の高い名家のお嬢様だこと。
「そ、それよりお二人は仲が良いんですね。こうやって二人っきりでお昼食べてるなんて」
話を逸らそうと伊達がこちらに振ってきた。
「まあ、同期で同い年だからね。職員室の席だって隣だし」
「あら、私は和彦さんとご一緒したくてここにいるのですけど」
「ゴホッ…ゴホッ…た、立川先生!?」
いつものように軽く流そうかと思っていたら、芹菜さんが僕を名前で呼び、更には一緒にいたいと言い出したので驚いてしまった。
「もう立川先生なんて他人行儀で呼ばないでくださいよ。いつものように芹菜って呼んでください」
「えーーー!?」
「あら…」
「むーーー」
いつもは生徒の前で見せないような色っぽい表情でそんな事を芹菜さんは言うものだから、伊達は大声で驚き、今井は片手を口の前に持っていき驚きの表情をしている。そして、結愛はというと、凄い頬を膨らませて芹菜さんを睨んでいる。
それに芹菜さんは気づいており、ウフっと笑みで返していた。
「ちょっと、さすがに生徒の前で冗談は止めてくださいよ」
これが冗談であると持っていきたいのだが、火がついた芹菜さんには通じなかった。
「冗談だなんて。酷いじゃないですか和彦さん。私は貴方の事をこんなにも愛しているのに」
そう言いながら、芹菜さんは僕の腕に自身の腕を絡めるように近づいてきた。
「た、立川先生って、吉浦先生が好きなんですか?」
「ええ。結婚を前提としたお付き合いをしたいと思ってるわ」
伊達の驚きの顔から出た質問に対して、芹菜さんは臆することなく普通に答えた。
もしかして結愛に対する牽制のつもりなのだろうか。
すると──
「わ、私の方が和彦さんを好きだもん!和彦さんと結婚するのは私なの!」
これ以上は黙っていられなかったのか、結愛が立ち上がりそう宣言すると芹菜さんとは逆側の腕にしがみついてきた。
「ずっと隣の席にいて、女性として見られなかった立川先生には無理じゃないですか?」
「うっ…!」
あ~、芹菜さんが一番気にしてることをそんな堂々と。
「あなただって何年も妹としてしか見られなかったのでしょう?今でも変わらないんじゃないかしら?」
「うっ…!」
芹菜さんも言うなぁ。
「「むーーー!!」」
そして、二人は僕の胸の前辺りでにらみ合いを始めた。
「ふ、二人とも落ち着いて」
「「和彦さんはだまってて!」」
「はい…」
駄目だ。二人とも頭に血が上って聞く耳を持ってない。どうしたもんか。
「ねえねえ憂、ヤバイんじゃない?」
「ふむ…」
どうしようと伊達が今井に話しかけると、今井は落ち着いた表情で一つのメモ帳を取り出した。
「吉浦和彦。25歳。11月22日生まれのB型。生まれは福岡。中学から高校にかけての成績は中の上」
突然僕のプロフィールを話し出した今井に結愛と芹菜さんがにらみ合いを止め、今井に注目した。
「学力は普通ですが……空手にて中学から負けなしの全国六連覇を達成」
「うっ…」
「えーーー!?」
知られたくない過去が……
伊達なんて驚きの声を上げている。
「か、和彦さん?」
「あはは…」
芹菜さんも信じられないといった顔をこちらに向けている。
「それもあり、大学には推薦で進学。その後も大会を総なめ。彼に勝てる者は日本にいないとまで言われた。しかし、そんな彼は突如空手を止め教師としての道を選び、そして現在に至る」
誰にも話したことがない情報が今井の口からどんどんと出てくる。
そして、パタンとメモ帳を閉じた。
「ふふふ、本当に面白い殿方ですわ」
「憂?なんで?」
今井が僕の事を知っているのに伊達は驚きの声が漏れた。
「
とんだストーカーだよ!個人情報駄々漏れじゃないか!
そして、今井は今度は扇子を出して開き口元を隠しながら話し始めた。
「今では三年生の中野姉妹と仲がよろしいとか」
「中野姉妹?それって、あの有名な五つ子の?」
伊達の言葉にコクンと今井は頷いた。
「
この子滅茶苦茶鋭いな。
「そこに割って入る結愛さんと立川先生。ふふふ、なんて面白いのでしょう」
「憂ちゃん?」
今井の行動が読めず、どうしたのだろうと心配になり結愛が今井に声をかけた。
「ごめんなさい、結愛さん。その恋のレース
『えーーー!?』
にこやかに微笑む今井に対して、驚きの声を上げるしかない僕らであった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
遂に始まった全国統一模試。
その裏で行われている和彦争奪戦も遂に加速し始めました。三玖と四葉だけでなく、芹菜も和彦の心を落とさんと積極的に出てきております。
そして、そんな中のオリジナルキャラの登場です。
今井憂。彼女の登場が今後の展開どう関わってくるのか……絶賛考え中です!
次回は、今回で明らかになった和彦の実力が発揮されるお話です。
なんだか、話がどんどん違う方向に行っているような…
すみません!思いつきで書いているので、お付き合いいただければ幸いです。
次回の投稿は、年末ということで明日の12月31日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。