少女と花嫁   作:吉月和玖

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118.本当の気持ち

「ふぅー…日付が変わるまでに帰れたね」

 

デートが終わりマンションに帰ってきた時には11時を回ろうかという時間だった。

 

「別にあのまま泊まっても良かったのにぃ」

「まだ言うか」

 

車に乗ってからというもの、二乃はずっとこんな感じである。

 

「明日もお互いに学校行かなきゃなんだから泊まれる訳ないって言ってるだろ」

「じゃあ、次の日が休みだったら和彦と外泊できるのね♪」

「なぜそうなる…まあ、良いか」

 

もう何を言っても無駄だと悟った僕は中野家の玄関前で二乃に軽くキスをした。

 

「んッ……ちゅっ……♡」

「じゃあ、帰ったらゆっくり休みなよ。今日はちょっと無理させちゃったから」

「ええ。そうさせてもらうわ。最後にもう一回…んッ……ちゅっ……ちゅる……んンッ…ちゅっ……あむッ……ンちゅ…♡」

「ちゅっ……て、最後が長いわ!」

「うふふ…♡」

 

僕のツッコミに笑顔を向けた二乃は僕の胸に飛び込んできた。

そしてそのまま僕を抱きしめた。

 

「あの時言った言葉は本気だから。またシましょうね。今日は素敵な時間をありがとう。ちゅっ…♡」

 

最後は僕の頬にキスをして玄関から中に入っていった。

 

「はぁぁ…さて、僕も帰ったらすぐに寝るかな」

 

うーんと伸びをした僕はそのまま隣の我が家へと帰るのだった。

 


 

~中野家~

 

「ただいまぁ」

 

玄関を抜けるとリビングにまだ明かりがあったので二乃は帰ってきた挨拶をした。

 

「おやおや、不良娘のご帰宅だ」

「……おかえり…」

「おかえり二乃!」

「おかえりなさい。まったく何時だと思っているのですかっ!」

 

ニマニマと笑みを浮かべている一花を皮切りに姉妹全員から迎えを受けた。

 

「あー、もう…はいはい、すみませんでした」

 

五月の追及に適当に答えながら、ジャケットを脱いでテーブルを囲んでいる姉妹の中に混ざった。

 

「で?どうだったの、先生とのデートは?」

「んー?そりゃあ、もう最高だったわよ!やっぱ大人の男って感じでさぁ。どんな時もリードしてくれるのがたまらなかったわね」

 

一花の質問に、二乃はうっとりするようにデートの感想を伝えた。

 

「夕食なんて夜景の見えるレストランでさぁ、和彦のワインを飲む姿なんてたまらなかったわぁ♪」

「ん?和彦?二乃、いつの間に呼び捨てに...」

 

うっとり話す二乃の言葉の異変に気付いた三玖はすぐに確認した。

 

「まあ、和にぃでも良いんだけどね。それだとやっぱりお兄ちゃん感が抜けなかったから、夜景をバックにキスしてから呼び方変えたのよ。あー♪あのキスは今でも鮮明に頭を過るわぁ♪」

 

もう今の二乃は乙女そのものであった。

 

「へ…へぇ~…二乃、先生とキスできたんだ」

「もちろんよ。そのためのデートだったんだから」

 

四葉の問いかけにニッコリと笑みを浮かべながら二乃は答えた。

 

そっか...

 

二乃の答えに下を向いた四葉のちょっとした行動も二乃は見過ごさなかった。

 

(ふーん…和彦が言ってた通りみたいね。疑心暗鬼だったけど、これで証明できたわね)

 

「ううぅぅ…まさか本当にしてしまうなんてぇ…」

 

そんな中、五月は哀しみの表情でいた。

 

「別に良いでしょ。好きな人とのキスなんて女の子の憧れじゃない。五月、あんたはいないのそんな人」

「い、いいい、いる訳ないじゃないですか!」

 

二乃の問いかけに五月は過剰に反応した。

 

「その反応だとどっちか本当に分からないわね。でもキスって良いわよぉ。それも好きな人となんてなおさらね。一花、あんたも攻めてみたらどう?」

「うぇ!?いやー、どうなんだろうね。相手はフータロー君だしなぁ。逆にキスして嫌われたくないし」

「あの勉強馬鹿ならあり得そうね。ホントあいつは人生損してるわよ。一花とキスできるかもしれないのに」

 

テーブルに肘をついて手の上に顔を置いた二乃は、唇を尖らせながら風太郎の悪口を言った。

 

「あはは…ありがとね二乃。まあ、今日はフータロー君との時間をたくさん作れたし良いんだ。私の方も結構良い感じなデートだったよ」

 

幸せいっぱいな笑顔でいる一花に二乃は満足した。

 

「はぁぁ…なんだか今なら上杉君の言葉に同意しそうです…」

「ああ…恋は学業から最もかけ離れた愚かな行為ってやつ…?」

 

五月の言葉に三玖は風太郎の言葉を思い出しながら聞くと、五月はコクンと頷いた。

 

「私たちは無事に三年生になりましたが、まだまだ油断はできません。そんな時に恋愛など…」

「うーん...でも、その恋愛のおかげでみんな頑張れたと思うよ。上杉さんや先生に良いところを見せようって」

「それは…そうかもしれませんが…」

 

四葉の言葉に五月は言い淀んだ。

 

「そうね。この間の全国模試だって和彦からのご褒美のために頑張ったものだしね」

「そういえば、二乃はもう願い叶ったんだよね?もし、姉妹で一番だったら何をお願いするの?」

 

二乃のご褒美の内容はキス。それは今日済ませたと報告を受けたので、一花は疑問を二乃に振ってみた。

 

「そうねぇ…」

 

だが、今の二乃はキス以上の事も経験している。またする約束も。

 

「今は思いつかないわ。その時に考えるわよ」

「そっか...」

 

なので今の二乃にとってはご褒美は思いつかない。

 

(強いて言えば初めてを貰ってほしいけど…今日あれだけしたのに、本当に本番はしないんだもの。多分意思は固いだろうし、断られるわよねぇ…)

 

そんな風に考えていたら、先ほどまでの和彦との情事が頭を過り、じわっと濡れてきたのを二乃は感じた。

 

「さ、話はここまでにしてもう寝ましょ!明日から学校なんだし」

「それもそうだね。ふわぁ~~あ、なんだか眠くなってきたかも」

「一花。布団まで我慢してください」

 

すでにパジャマに着替えている二乃以外の四人は寝室に向かって歩きだした。逆に二乃は着替えのために洋服部屋に向かっていた。

 

(はぁぁ…どうしよう…和彦の事を思い出すだけで濡れてくるなんて…授業とか大丈夫かしら…)

 

今後の心配をしながら洋服部屋に入ると後ろから声をかけられた。

 

「二乃…」

「何よ。着替え覗きたいの?」

 

声で三玖と分かった二乃は振り返ることなく着替えを続けた。

 

「二乃にお願いがある」

「お願い?」

 

ワンピースを脱ぎ、下着姿になった二乃は振り返った。

 

「て、何よ。四葉もいたの?」

「あはは…ごめんね二乃、着替え中に」

「別に構わないわよ」

 

着替えの邪魔になったか心配になった四葉は謝るも二乃は気にしていないと答えながらパジャマを収納ボックスから出した。

 

「?二乃、そんな下着持ってたっけ?」

「え?ああ……」

 

二乃が今日デートに履いていった下着は履ける状態にまでならなかったので、結局和彦に新しいものを買ってもらったのだ。

その下着を履いていたのだが、三玖には見たことない下着だったのだ。

 

「ふぅ~…あんたたち二人になら言っても良いか。私、さっきまで和彦とエッチしてたの」

「「───っ!」」

 

パジャマに着替えながら世間話のように二乃は二人に話した。

 

「で、そのせいで朝履いてたパンツが使い物にならなくなったから和彦が新しいのを買ってくれたのよ。あんたたちも経験あるでしょ?」

「な…なんで…あっ…!」

「………っ!」

 

二乃の言葉に三玖はすぐに否定出来ず、逆になんで知っているのかと聞き返してしまった。四葉に至っては目を見開いて固まっている。

 

「和彦から聞いたのよ。あ~あ、まさかあんたたちに先越されるなんてね。で?お願いって何よ?」

 

そこまで怒ってはいないが二乃の言葉には少しドスが効いていたので、二人は躊躇した。

 

「はぁぁ…別に怒ってないから、さっさとお願い言いなさいよ」

 

中々話さない二人に怒ってないからお願いを言うように急かした。

 

「こんなこと二乃にお願いするのは気が引けるんだけど…」

「私たちにメイク教えてほしい」

「は……?」

 

どんな事をお願いされるかと考えていた二乃であったが、予想していなかった言葉に気が抜けてしまった。

 

「二乃の言った通り、私たちは先生とエッチした…でもそれだけだとまだ足りない。だからメイク教えてほしいの」

「私たち、メイクなんてしたことなくって…だからお願い!」

 

四葉は手を合わせるようにお願いを二乃にした。

 

「ぷっ……あははは…何?そんなこと?な~んだ変に構えて損したわ。別に良いわよそれくらい」

「本当に!?」

 

二人のお願いが純粋なものであったので、気が抜けた二乃は笑って二人のお願いを承諾した。それに四葉が反応した。

 

「だけどメイクを甘く見ないことね。明日は早起きしてもらうからね」

「うん…!ありがとう二乃…」

「ありがとう二乃!」

 

笑みを浮かべながら早起きするように伝えた二乃に釣られて、三玖と四葉も笑顔でお礼を伝えるのだった。

 


 

二乃と別れて自分の家の玄関をくぐると真っ暗だった。どうやらことりも結愛も寝てしまったようだ。

僕も今日は疲れたからさっさと寝よう。

まっすぐ自分の部屋に向かって電気をつけた。

 

「ん?」

 

するとベッドの布団が何故か大きく膨らんでいた。

 

「んん……まぶしいよぉ…」

 

その布団がもぞもぞ動くとそんな声が聞こえてきた。

 

「ことり…お前は何してるんだよ」

 

その正体はことりで布団の中で寝ていたようである。

 

「ん~?あぁ、お兄ちゃん…おかえりぃ~♪」

「ただいま。たく、なんで僕のベッドで寝てるんだよ。自分のがあるだろ?」

 

上半身を起こしたことりに文句を言いつつ着替えに取りかかった。

 

「うーん…なんかお兄ちゃんと急に寝たくなっちゃって。ここで待ってたんだけど眠気に勝てなかったよ…」

 

あはは、と笑いながらことりは説明した。

 

「なんだそれ?」

 

上を脱いだ僕は次にズボンに手をかけた。ことりには着替えはよく見られてるので特に気にせず続ける。

 

「ふふふ…あれ?お兄ちゃんちょっと筋肉付いてきた?」

 

ニコニコと僕の着替えを見ていたことりからそんな言葉がかけられた。

 

「んー?そうかなあ?まあ、最近はジョギングに筋トレと頑張ってるからね」

「へぇ~…何?本気でまた空手始めるの?」

「うーん、まだ検討中。体力つける分には特に問題はないだろ?それに、この間の旅行でことりと飛鳥に呆れられたしね」

「ふふっ…気にしてたんだ」

 

寝間着に着替え終わった僕は振り返りベッドに近づいた。

 

「で?いつ部屋に戻るんだよ。僕は今日疲れてるんだけど…」

 

ふわぁ~、と欠伸をしながらことりに問いかけた。

 

「だから今日は一緒に寝たいんだって。良いでしょ?もう寝るだけなんだし。お願い」

 

顔の前で手を合わせてお願いしてくることり。

はぁぁ…もう押し問答をする体力もないよ。

 

「分かったよ。ほらそっち詰めて」

「えへへ、ありがとお兄ちゃん!」

「電気消すよ?」

「うん」

 

電気を消した僕は端に移動したことりの横に寝るように布団に入った。するとことりは体全体で覆い被るように抱きしめてきた。

 

「どうした?」

「うーん…お兄ちゃん成分を取っとこうと思って…ん?くんくん…」

 

するとことりは首もとを匂いだした。

 

「何?」

「お兄ちゃん、石鹸の匂いがする。でも、ついさっきそこで着替えてたよね?それに……」

 

なおも匂いを嗅ぐことり。

 

「微かにだけど二乃の香水の匂いがする…」

「!」

 

お前は犬か!どんだけ匂い嗅ぎ分けてるんだよ。

 

「お兄ちゃん、二乃と付き合うの?」

 

どこか(かな)しみを帯びた声でことりが聞いてきた。

そんなことりの頭を撫でながら僕は答えた。

 

「付き合わないよ。二乃とは付き合ってない」

「ならなんで二乃の香水が?それに石鹸ってことはお風呂入ってきたんだよね?それってホテル行ってきたって言ってるようなもんだよ!」

 

僕の答えには納得せず、ことりは僕の胸に顔を埋めた。

反論できるところがなかったので、僕は黙ってしまった。

 

「それにね……今日お兄ちゃんの布団に入って、お兄ちゃんの匂いを堪能しようと思ったら、別の匂いも混ざってたの」

 

僕の匂いを堪能って…あえてツッコまないでおこう。

 

「これって…昨日、三玖と四葉が泊まったことと関係あるの?」

「それは……」

 

どう説明すれば良いか分からず良い淀んでしまった。

 

「なんで……?なんで私はお兄ちゃんの妹なんだろう……」

「ことり?」

 

涙声で何故自分は僕の妹なのかとことりは嘆いていた。

 

「妹だから付き合うことも出来ないし……ましてや結婚もできない……そればかりか、キスやそれ以上のことだって許されない……こんなのってないよ…!」

 

ことりの不満はもう限界のようだった。

 

「……ことり、こっち向いて」

「え?んッ……!?ちゅっ……んン、ちゅっ……はぁ……」

 

こちらを向いたことりの唇を問答なしに奪った。

 

「お…にい…ちゃん…?」

「我慢してるのがお前だけだと思ってたか?」

「え……だって...私が何言っても突き放してたから...」

「当たり前だろ。そうしないと、僕がお前を襲ってしまうって思ってたから。こんな風に…」

「んッ……ちゅっ……はぁ……ちゅっ……ンちゅ…♡はぁ……」

 

僕はことりの頭を押さえてキスを続けた。ことりはそれに素直に応じている。

 

「お前が成長していくうちに、綺麗になって段々と妹として見れなくなってた。なのにお前はどんどんアピールしてきて。大変だったんだぞ」

「そんな……じゃあ、急に家を出るって言い出したのも...」

「……あのまま家にいたら、気持ちを抑えられなかっただろうね。そんなことしたら、父さんと母さんを悲しませちゃうだろ…」

「お兄ちゃんッ!」

 

ことりは僕を抱きしめ、顔を僕の肩に乗せる形で頬と頬をくっつけた。

 

「僕とことりは兄妹だ。付き合うことも結婚もできない。それは変わらない。だけど、お前が望む限り傍にいていいから」

 

背中をポンポンと叩きながら僕の気持ちを伝えた。

 

「うん…うん…」

「僕が誰かと結婚することになっても、お前が望めば傍にいて良い」

「!でも、それじゃあ…」

「大丈夫。ことりを受け入れない人とは結婚しないから…その代わり、お前も今の上杉への恋もちゃんと頑張れよ。上杉になら、お前を任せられるから」

「わかったよ。きっと風太郎君のこと振り向かせてみせるから!だから…今だけはお兄ちゃんに甘えて良いかな…?」

 

両手をついて起き上がったことりは僕を見下ろす形で、上杉の心をゲットしてみせると宣言した。その後は、僕に顔を近づけながら懇願してきた。

 

「ああ。お前が望む限り」

「お兄ちゃん…大好きッ…♡んッ……ちゅっ……ちゅっ……んン、ちゅっ…♡」

 

僕の言葉を受け、ことりは啄むようにキスを続けた。僕はそれを黙って受け入れていた。

 

「ねえお兄ちゃん、舌出して…」

 

言われるがままに舌を出すと、ことりは自分の舌を絡めてきた。

 

「れろれろッ……ちゅるッ……はぁ…♡れろれろッ……んンッ…ちゅっ……はぁ……ふふふ…幸せ…♡」

「そいつは良かった。けど、悪い…僕はそろそろ限界かも…ね…眠い…」

「もうっ!ムードが台無しだよ!でも、まあ良いか。お兄ちゃんの気持ちが聞けたしね。お兄ちゃん?これからは我慢しないでね。私がしたいこと全部受け入れてくれて良いからね?ちゅっ…♡」

 

最後にキスしてきたことりはそのまま僕に覆い被さるように眠ってしまった。

重いんだが……はぁぁ…仕方ない。もう…文句を言う力もないや…

結局その状態のまま僕も眠りにつくのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回では、和彦と二乃がそれぞれデート後に家族と話す内容を書かせていただきました。
そして、和彦のことりに対する本当の気持ちも──
加速していく和彦争奪レース。和彦の心を掴むのは……

次回は、和彦と二乃とのデート。そして、和彦の気持ちを知ったことり。この二つが起こった事で変わりゆく日常の風景を書かせていただこうかと思っております。

次回の投稿は1月20日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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