少女と花嫁   作:吉月和玖

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119.それぞれの想い

「ん……」

 

目を開けるとカーテンから日が射し込んでいた。どうやら朝までぐっすりだったようだ。

 

「あ♪おはよ、お兄ちゃん♪んッ……ちゅっ…♡」

 

先に起きていたのか、僕が起きたのに気づいたことりはご機嫌な状態で挨拶とキスをしてきた。

 

「おはよ。ことりの方が早かったんだ」

「うん。でも、私もついさっき起きたとこだよ。ふふっ…朝からお兄ちゃんの寝顔が見れてラッキー♪それに……んッ……ちゅっ……あむッ……ちゅるッ……はぁ……♡もう我慢しなくて良いもんね♪」

「それは良いが、時と場所は考えてな」

「わかってるよ♪」

 

僕の注意もなんのその、嬉しそうにことりは笑っている。

 

「じゃ、朝御飯とお弁当の準備するから先行くね。ちゅっ…♡」

 

軽くキスをしたことりは足取り良く部屋から出ていった。

 

「はぁぁ~~…!」

 

今日からまた一週間学校かぁー。

ベッドに大の字になって天井をじっと見ていた。

 

「なんかこの土日に色々ありすぎて全然休んだ気が起きんのだが…」

 

このままだとまた寝ちゃいそうだな。

そう思いベッドから降りて、洗顔などをするために部屋を出るのだった。

 

朝食も済み、身支度を整えた僕は先に出ることにした。

結愛はまだテーブルでご飯を食べている。

 

「じゃあ、先に行くよ。二人とも遅刻しないようにね」

「はい!いってらっしゃい、和彦さん」

「ああ、待って…」

 

キッチンとダイニングにいる二人に声をかけると結愛から見送られたのだが、ことりから呼び止められた。

 

「ん?どうした?」

「ふふっ…忘れ物……んッ……ちゅっ…♡」

 

僕の傍まで来たことりは微笑みながらキスをしてきた。

 

「おい…」

「えへへ……いってらっしゃい♡」

「はぁぁ…いってきます。結愛が後ろで固まってるからちゃんとフォローしときなよ」

「はーい」

 

ことりのキスで送り出された僕は玄関を出た。

 

「あ……」

「ん?おー、おはよう五月」

「おはようございます、先生」

 

玄関を出ると、五つ子が借りている部屋の前で五月が佇んでいたので挨拶をすると笑顔で返された。

 

「早いな。まだ、他に誰か来るの?」

「いいえ。先生を待っていました。良かったら一緒に登校しませんか?」

 

他の姉妹を待っているのかと思ったら、どうやら僕を待っていたようだ。

 

「ああ、良いよ。じゃあ行こうか」

「はい」

 

そして五月を連れ添って学校に向かうことにした。

朝も早いこともあり、他に登校する生徒は見られなかった。

 

「こんな朝早くからどうした?僕に用事でもあるの?」

「うん……ちょっとお兄ちゃんとお話ししたくて…」

 

歩きながら隣の五月に声をかけたのだが、少し表情が沈んでいるように見えた。

 

「何か悩みごと?」

「……お兄ちゃん。昨日のデートで二乃とキスしたんだよね?」

 

あぁ、その事か。二乃のことだ、姉妹にデートの内容を伝えたんだろうな。

 

「幻滅した?」

「え?」

「教師が生徒にキスをしたことに」

「………」

 

真面目な五月の事だろう。教師と生徒でのそういった行為を許すはずがない。そう思って問いかけたのだが返事はなかった。

やっぱ幻滅されたか。

赤信号で立ち止まったところで五月から言葉が出た。

 

「……わかんないの。お兄ちゃんと私たちは教師と生徒。一線を越えた関係は良くないって思う自分がいるのは確かだよ」

「まあ、その考えが普通だと思うよ。ただ、僕の事は良いけど、姉妹の事は許してあげてくれ。全て僕の責任だから」

「……うん…でもね、私だってお兄ちゃんのこと先生じゃなく一人の男性として接してる時もあるから、二乃や三玖の気持ちもわからなくもないんだ」

 

信号が青に変わったのでまた歩きだしたのだが、五月からは気持ちの整理が出来ていないように伺われた。

 

「教師と生徒。難しい関係性なのかもしれないね。端から見たら、今の僕たちもどんな風に見られてるやら」

「そう…だよね…」

 

隣を歩く五月をチラッと見ると、若干下を向いて浮かない顔をしているようだ。

 

「まあ、難しいかもだけど今は切り替えていこう。なんだったら、バイト先の下田さんの方が経験豊富そうだし、こういった事のアドバイスをしてくれるかもよ」

「うん…そうしてみる。あ、一つだけは言っとくね」

「ん?」

「私、お兄ちゃんのこと別に嫌いになった訳じゃないから。これからも甘えたい時は甘えさせてね」

 

今までとは打って変わって、五月から明るい声でそう言われるのだった。

 


 

~一花・ことりside~

 

「ふわぁあぁ~~…」

「大きな欠伸。寝不足?」

「うーん…昨日は二乃の帰りを待ってから寝たからそうかも…」

 

ことりの隣を歩く一花からは眠そうな声で返ってきた。

ちなみに、二乃と三玖と四葉は二人の少し先を並んで楽しそうに話しながら歩いている。

 

「へぇ~…私はてっきり兄さんみたいに風太郎君と夜までお楽しみかと思ったよ」

「──っ!そ、そんなんじゃないよ!フ、フータロー君とは夕方には別れたし……て、なんで私が昨日フータロー君と一緒だって知ってるの?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながらからかうように話すことりに、一花は慌てて答えたのだが、昨日自分が風太郎と一緒にいることを何故知っているのか問いかけた。

 

「私が風太郎君にデートのお誘いしたら、『悪い一花と買い物行くから』、て返答があったからだよ。お陰で寂しい休日でした。それで?キスまではいったの?」

「~~っ……!」

 

口元を手で押さえながらことりが笑いながら伝えると、一花は一気に顔を赤くした。

 

「おやおや、その反応は……もしかして…」

「ち、違うよ!フータロー君とキスなんてしてないってば!」

 

なおもからかいが続くことりに、一花は(もてあそ)ばれていた。

 

「えー?折角のチャンス無駄にしたの?」

「むぅー…私だってそう思ってるよ。でも、実際にフータロー君とお買い物してたら楽しくって、そんな考え出てこなかったのかも…」

 

顔を赤くして話す一花にことりはニヤリと笑いながら話した。

 

「いやぁー、恋する一花は可愛いですなぁ」

「もぉー、からかわないで!」

 

さすがの一花でもことりの前では歯が立たないようである。

 

「ふふふ…私が先に風太郎君とキスしても恨まないでね?」

「ふんだ!そうやって暴走し過ぎて嫌われないといいね!」

 

ニッコリと笑顔で話すことりに頬を膨らませて一花はプイッと顔を逸らした。

 

「ふふっ…そういえばあの三人やけに楽しく話してるね。昨日の事があったから険悪ムードになってるかと思ったよ」

 

そこでことりは話を変えて、少し前を歩く二乃と三玖と四葉について一花に聞いてみた。

 

「それ私も思ってたんだ。朝起きたら妙に仲良くなってて。昨日は特に何もなかったんだけどなぁ」

 

二乃を中心に歩く三人は笑いながら話している。一花とことりにはその話の内容までは聞こえていないようだ。

 

「うーん…兄さんへの告白やデートに成功してる二乃や三玖から、四葉がアドバイスを聞いてるとか?」

「うっ!あり得るかも…でも、二乃と三玖が仲良くなってるのが気になるんだよねぇ」

 

(あれ?そういえば、昨日の二乃のデートの話を聞いてる時の三玖、思ってたより落ち着いてたような…)

 

いつもの三玖であれば、二乃の自慢話を聞きたくないであろうと思った一花は少し疑問に思っていた。

 

「それに、今日の三玖と四葉化粧してない?普段しないよね?」

「そこなの!今日、朝早くに起きて二人が二乃に教わってたみたいでさぁ。これもフータロー君へのアピールの一環なのかなぁ」

 

化粧関連に興味を持たないであろう三玖と四葉。その二人が今日はナチュラルメイクをしているのだ。気づかない人は気づかないレベルである。

 

(そういえば、以前三玖にお兄ちゃんの好みのメイクを教えたっけ。てことは、あれは三玖のお兄ちゃんへのアピール…それに四葉が乗っかったとか?でも、風太郎君に化粧してるの気づかれなかったってお兄ちゃんに愚痴を言ったこともあるからなぁ…てことは、やっぱり()()はそういうことってことだよねぇ…)

 

ことりは一つの確信を得られた。

とはいえ、謎が多き三人に悩まされる一花とことりであった。

 


 

~二乃・三玖・四葉side~

 

一花とことりから少し前を歩く二乃と三玖と四葉。

三玖と四葉は、今日は朝早くから二乃にメイクの仕方を教えてもらい、今はバッチリと決まっている。

 

「カズヒコさん気づいてくれるかな…」

「どうだろうね。私たち席だと後ろの方だし」

「ま、後は和彦次第ね。それよりも心配なことがあるのよねぇ」

 

自分達のメイク姿に和彦に気づいてくれるか、ワクワクしながら話す三玖と四葉。そんな二人に二乃はある心配事があることを話した。

 

「心配?二乃、何かあったの?」

「和彦とエッチして初めての授業じゃない?和彦の声とか聞いて濡れないか心配で…」

「二乃…朝から盛ってる…?」

 

心配とは何なのか四葉が聞くと、二乃は頬に手を当てながら心配事を話した。内容が内容のため、三玖は少し引きながら二乃に質問した。

 

「しっつれいね!盛ってないわよ!」

「あはは…私もちょっと引いちゃった…」

 

三玖の質問に二乃は反論するも、四葉ですら引く内容なので仕方ないのかもしれない。

 

「あんた達だって同じようなもんでしょ。和彦の空手姿に疼いて部屋に駆け込んだんだし」

「「うっ…」」

 

二乃の言葉には三玖も四葉も反論出来なかった。

今朝のメイク中に三人は情報交換といった形でこれまでの和彦の馴れ初めを話していた。なので、二人が動画を観て疼き、和彦とエッチをしたことも二乃は知っているのだ。

 

「それにしても、いくら疼きが収まらないからってよくもまあ三人でなんて考えになったものよ」

「あれは仕方がない。緊急事態だったから…」

「あはは…最初は恥ずかしかったけど、最終的には三玖に色々教われたから良かったかな。先生も喜んでくれたし」

 

今度は逆に二乃が二人の行動に引くと、三玖は仕方のないことと冷静に答え、四葉は笑顔で答えた。

 

「……ねえ?三人でって具体的にどうしたの?」

 

経緯は聞いていたものの、エッチの内容までは聞いてなかったので、興味を持った二乃は二人に聞いてみた。

 

「……最初はカズヒコさんと私、カズヒコさんと四葉みたいに一人一人とキスをしてたんだけど、四葉のスイッチが入って、三人で舌を出しあってキスした…」

「マジ!?え、てことはあんたたち二人でもキスしてるの?」

 

二乃の質問に三玖と四葉はコクンと頷いた。

 

「四葉はスイッチが入ると止められない。とんでもないキス魔…」

「えー、三玖だってノリノリだったよ。積極的だったじゃん」

「むぅー…そこは否定できない…でもそのお陰でことりと結愛ちゃんに気づかれなかった...」

「どういうこと?」

 

三玖と四葉がお互いにキスした事で、エッチしていることがことりと結愛にバレなかったと言う三玖に二乃は疑問を投げかけた。

 

「……二乃?カズヒコさんのテクニックが上手すぎてエッチの間、声出なかった?」

「えーっと…ま、まあ出たわね。ふ、普通でしょ」

 

和彦との行為の際に声が出なかったかと聞く三玖に少し恥ずかしがりながら二乃は答えた。

 

「そう…普通は声が出る。二乃はホテルの一室でだから気にしなかったかもだけど、私たちは違った…」

「え?ああ、なるほどね…声でことりと結愛ちゃんにバレちゃうってことか…」

 

二乃の場合は、ホテルという個室だから誰かが聞いているということはなかった。だが、三玖と四葉は声でことりと結愛にバレてしまうというちょっとした綱渡りの状態だったのだ。

 

「あの時は大変だったよ…お互いに必死に相手の声を抑えるためにキスしてたもんね」

「私がイッて倒れてる間もカズヒコさんは容赦なく四葉を攻めてたからあの時は焦った…」

 

あの時は間一髪で三玖が起き上がり四葉の口をキスで塞いだのでなんとかなったと続けて三玖は語った。

 

「和彦ってエッチの時、妙に積極的になるのよねぇ。まあ、そこも良いんだけど♡」

「うん…!それでいてあのテクニック。もう私はカズヒコさんの虜♡」

「そうだよねぇ。あんなの覚えちゃったら、次を期待しちゃうよね」

 

二乃と三玖はうっとりとした顔で語り、四葉はニコニコしながら語った。

 

「……なんか二乃の気持ちわかってきたかも…カズヒコさんを見ただけで思い出しちゃいそう…」

「でしょ!まあ、私はすでにヤバいんだけどね…」

「あはは…実は私も…どうしよっか。まだ朝だよ?」

 

三人はお互いに見合って近くのコンビニに目が行った。

 

「ごめん。私たち用事思い出したから先行ってて!」

「「え?」」

 

二乃は後ろを歩く二人にそう伝えるとコンビニに向かって走りだした。それに三玖と四葉も続いた。

そんな三人の後ろ姿をポカーンと一花とことりは見ることしか出来なかった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、和彦と二乃のデート。そして、和彦のことりへの想いを知ったことり。その後のそれぞれの日常の変化を書かせていただきました。
二乃と三玖と四葉に至ってはちょっとやり過ぎた感がありますが、僕の妄想にお付き合いいただければ幸いです。

次回はそんな日常の続きを書ければなと思っております。

次回の投稿は1月25日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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