少女と花嫁   作:吉月和玖

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124.姉妹喧嘩

「そっかぁ…和彦さん、ことりさんともしてたんだ…」

 

キスをした後、ことりとの関係も五月に伝えた。

今の五月は僕の肩に頭を乗せるように寄り添っている。

ことりとの関係を聞いた五月であったが、特に変化は見当たらなかった。

 

「自分で言うのもなんだけど、妹とそういう事してるのにあまり反応ないね」

「うーん…どちらかと言えば、和彦さんも今までよく我慢してきたなぁ、ていうのが一番に来たかなって…ことりさんとも最後までしてないんでしょ?」

「当たり前だろ。まあ、危ないところではあったんだが…」

 

ことりの誘い方には心が揺らいだのは本当である。あいつには男をろう絡する魔性の女の能力があるのではないかと思ってしまう程だ。そう考えると上杉もよく耐えている方である。

 

「ということは、ことりさんもどんどんアピールしてくるって訳だ。うーん…二乃たちもまだまだ攻めて来るだろうしなぁ…」

「そこは五月と結婚の約束までしたって言えば良いんじゃない?そりゃあ、二乃たちには悪いと思うけどさ」

「うーん…」

 

あれ?僕の考えには乗り気じゃないのか?すぐに、『そうだね』、て言うのかと思ってたけど。

 

「ちょっと考えがあるんだ。だから、しばらく私たちの関係は秘密にしてくれるかな?」

「え?そりゃあ、他の人には言えないかもだけど、一花達姉妹やことり達くらいには言っても良いんじゃないか?そうしないと、さっき五月が言ったように二乃達の誘惑は続くんだぞ?」

「……そこなんだけど…もし二乃たちから誘われたら今まで通り接してほしいの」

「は!?」

 

五月の言っている事が意味が分からず聞き返してしまった。

 

「五月!自分が言ってること分かってるのか?僕は君と結婚する。なのに他の女性との関係を続けろって言うのか?」

「うん。あ、もちろん最後まではしちゃダメだよ?」

 

本当に意味が分からない。五月は至って冷静な態度を取っているので何か考えがあるのかは分かるのだが…

 

「私を信じて?ね?大丈夫だよ。例えあなたが他の女性と色々していたとしても、あなたの心はここにあるって私は信じてるから」

 

五月が僕の右手を自分の胸にニッコリと笑顔で導いてきた。

 

「……………分かったよ。五月の言う通りにする。でも、本当に辛かったら言うんだぞ!僕は例え教職を辞めることになっても君と一緒にいるって思ってるから」

 

五月の胸に導いていた五月の左手を両手でギュッと握りそう伝えた。

 

「ふふっ…ありがとう。愛してるわ、和彦さん……んッ……ちゅっ……」

 

微笑みながら五月はキスをしてきたのでそれを受け入れた。

 

「さてと。もう時間も時間だし、私は一度帰るね」

「朝食くらい食べていっても良いんだぞ?」

 

すくッと立ち上がった五月に声をかけるも、五月は着替えを始めた。

 

「ちょっ…!いきなり脱ぐんじゃないよ!」

「え?私たちはもう夫婦なんだからこれくらい別に良いでしょ?」

 

慌てて顔を逸らす僕と違い、五月は至って冷静に返した。

 

「それに、もう二乃たちの裸を見てるんだし同じようなものでしょ?」

「いや、そうかもだけど。僕としては…その…好きな人と五つ子とは言え他の人とは比べようがないって言うか…」

 

なおも顔を逸らしている僕に対して五月はクスクスと笑っていた。

 

「和彦さん可愛い♡ねえ、こっち見て?」

 

五月に言われて渋々五月の方を見た。

五月は上下白のレースの下着姿で、後ろに手を回しニッコリと立っていた。

 

「どう…かな…?」

「……綺麗だ…」

「えへへ…やっぱりちょっと恥ずかしいかな…」

 

恥ずかしそうに頬をかいていた五月は、ベッドに座っている僕の元まで来ると、僕の顔を胸に挟むように抱きしめてきた。

 

「んむっ…五月っ!?」

「んっ……くすぐったいから喋らないで。私を私として見てくれてありがとう。やっぱり私の好きな和彦さんだよ。私だって、例え姉妹と縁を切られたとしてもあなたの傍にいるから...でも、そうならないために私頑張るね……んッ……ちゅっ……」

 

僕の顔を胸から離した五月はまた僕にキスをして着替えに戻った。

着替えを終えた五月は鞄を持ち部屋のドアに手をかけた。

 

「じゃあ帰るね。何かあったら連絡する。あなたも何かあったら連絡してね」

「ああ。じゃあ、また学校で」

「うん♪」

 

そしてドアを開けて五月は出ていった。

なんかちょっと寂しく感じるな…こんな気持ちを皆持ってたのか…

そう思っていると──

 

コンコン…

 

『お兄ちゃん?起きてる?』

 

ことりがドアを叩いてきた。

ヤバッ!一緒に寝てたことがばれるかも!

そう思って、急いで床の布団に入り寝ているふりをした。

 

ガチャ…

 

「て、まだ寝てたの?五月帰っちゃったよ?」

「うーん…そうなのか?ふわぁ~…」

 

今まさに起きたように演じてことりに接した。

 

「もう、五月に何かしたんじゃないでしょうね?」

「は?何もしてないが?」

「ホントにぃ~?さっきの五月ちょっと怒ってたよ?」

「え?」

 

ことりの言葉に驚きの顔で返した。

いや、本当に驚いているので演技ではない。

 

「欲求不満で五月に迫ったんじゃないよねぇ?」

「んな訳あるか!お前じゃあるまいし」

 

あれぇ?さっきまであんなに良い感じだと思ってたんだけど、本当は怒ってるとか?あー!もう!訳分からん!

五月の事が分からず混乱していると、四つん這いにしたことりが迫ってキスをしてきた。

 

「んッ……ちゅっ……欲求不満ならいつでも言って良いんだよ?」

 

さわさわとことりは僕の股間辺りを布団越しに触ってきた。

そんなことりの頭を軽くチョップした。

 

「あいたっ…!」

「欲求不満なのはお前だろ。ったく……起きて準備するから退いてくれ」

「ちぇっ…ツレないんだから。結構ヤバい時間なんだから急いでね」

 

そう言ったことりは部屋から出ていった。

ヤバい時間なら誘ってくるなっつーの……はぁぁ…学校行くか…

布団から出た僕は床の布団を片付けて、洗面台で朝の準備をしてからリビングに向かった。そして、いつも通りに朝食を食べてから着替えて学校に向かうのだった。

 


 

~屋上~

 

朝のホームルームが始まる前の時間。五月は、二乃と三玖と四葉を屋上に呼んでいた。

 

「何よ朝から?教室では話せないことなの?」

「そうですね。とてもではないですが、教室では話せませんね」

 

二乃が話を切り出したところ五月は感情がこもっていないような言葉を発した。

 

「?五月…何か怒ってる…?」

「ええ。心底あなたたちには呆れてしまいました」

 

五月の様子がおかしい事に気づいた三玖が質問をすると怒気を込めて口を開いた。

 

「えぇ!?私たち何かしたかな……」

 

(このメンツで五月が怒ることって……和彦とのキスの話は終わってるようなもの…じゃあ………まさか!?)

 

四葉が五月をここまで怒らせることをしただろうかと話しているところで、二乃は五月の用件を察した。

 

「何かしたか、ですか。四葉には何も覚えがないと?」

「えっと……ごめん…昨日まで普通だったのに、いきなり怒られるんだもん。わかんないよぉ…」

 

四葉は本当に五月の怒りの原因が分からないようで、ビクビクしながら答えた。

 

「そうだよ。昨日五月はカズヒコさんのところに行ってた。なら、私たち…は……ッ!」

 

そこで三玖も気づいたようで、話の途中で息を飲んだ。

 

「?三玖、どうしたの?」

「まずい…私たちとカズヒコさんが()()()()が五月にバレたかも…」

「え!?」

 

四葉は三玖の表情が変わった事に気づきどうしたのか聞くと、三玖は自分達が和彦とした事が五月にバレたのではないかもしれないと四葉に話した。すると四葉は驚きの表情となり五月を見た。

すると五月はニッコリ笑って話を進めた。

 

「ようやくわかったようですね」

「あんた、和彦に問い詰めたんじゃないでしょうね」

「それは問い詰めますよ。何せ二乃にキスをした人なのですから。そしたらどうでしょう…まさか三玖に四葉。果ては立川先生とまでキスをしていると言うじゃないですか」

 

ニッコリとした笑顔を崩すことなく話す五月に二乃と三玖と四葉はたじろいでしまった。

 

「まさか…昨日カズヒコさんのところに勉強に行ったのはそれを聞くため…?」

「ええ。そうです」

 

三玖の質問に動揺を見せることなく普通に五月は答えた。

 

「そしたら驚きました。まさかあなたたち三人が先生とキス以上の関係を持っていると言うじゃないですか」

「そ…それは……」

 

反論の余地もなく四葉は言い淀んでしまった。

 

「別に良いでしょ!私の意思でそうしたんだから!五月にどうこう言われる筋合いはないわ!」

「私にとって大事な姉妹です。その姉妹たちが男に誑かされていれば言いたくもなりますよ」

「……っ!誑かされてなんかない!私は本気でカズヒコさんが好きだから体を許したの…!」

「そ、そうだよ!私も二乃も三玖も、先生を好きだからキスもしたし、それ以上の事だって!」

 

五月の誑かされているという言葉に三玖と四葉はすぐに反論した。

そんな反論に対して五月はクスクスと笑っていた。

 

「な、何笑ってるのよ?」

「では、聞きますが。あなたたちは先生から一度でも好きと言われましたか?」

「「「!!」」」

 

五月の言葉に二乃と三玖と四葉は目を見開いて固まってしまった。

確かに、三人は可愛いなど言われたが好きだとは言われていないからだ。

 

「でも、それは…カズヒコさんが好きって気持ちが分からないからで…」

「もしそれが嘘だとしたら?」

「え?」

 

三玖の言葉に、和彦が嘘をついているとすれば、と五月が返すと四葉は言葉を失った。

 

「そう言えば女性たちは自分に近づいてくる。そして、近づいてきた女性たちと一人ずつ関係を持つ。好きという気持ちが分からないと言ったままずるずると関係を続けていく。そうは思いませんか?」

「五月……どうしちゃったの?五月だってあんなに先生のこと慕ってたのに…」

 

五月の豹変振りに四葉は混乱してしまった。

 

「私は先生の本性に気づいただけです。危ないところでした」

 

四葉の質問にホッとするように五月は答えた。

 

「やはり男の人など信用できるものではありませんね」

 

そして吐き捨てるようにそんな言葉を口にした。

 

パチンッ!

 

そんなところに頬を叩く音が響いた。

 

「三玖…あんた…」

 

三玖が五月の頬を叩いたのだ。

その三玖は涙を流している。

 

「私たちのことは何を言っても構わない…!でも、カズヒコさんのことをそんな風に言うんだったら、五月でも許さないから...!」

 

頬を叩かれた五月は叩き返すこともなく、どこか冷めた目で三玖を見返していた。

 

「………先生は言ってました。三玖たちの想いを利用して自分の快楽を得ていたと。自分の中の男の欲望がそうさせていたのだと。それでも三玖たちの先生への愛は変わりませんか?」

「変わらない…!例えカズヒコさんが自分の快楽のために私を抱いていたとしても、私の愛は変わらない…!それだけ愛してるから...!」

 

感情の込もっていない五月の言葉に三玖は涙を流しながらも、自分は和彦を愛していると伝えた。

 

「そうね。確かに私たちは和彦の術中に嵌まってるのかもね。でも、それが何よ。なら見返してやれば良いじゃない。私のことを好きだって言わせてやるわよ!」

「うん!私は今までの先生の優しさが嘘だと思わないよ!先生が向けてくれる笑顔に陰りなんてなかった。だから私は先生を信じて好きでい続けるよ!」

 

三玖の言葉に続くように二乃と四葉が自分の想いは変わらないと伝えた。

そんな言葉に五月は三人に気づかれないように笑みを作っていた。

 

「そうですか。あなたたちの気持ちはわかりました。もう予鈴が鳴りますね。では、私は行きますね」

 

五月は静かにその場を去ろうとした。

 

「この事パパに言うつもり!?」

 

そんな五月の背中に二乃が問いかけた。

 

「言いませんよ。私だって先生には恩を感じてる部分もありますから、ご迷惑をおかけするつもりはありません」

 

そう言い残した五月は扉を開いて去って行った。

そんな五月の姿を三人は黙って見ることしか出来なかった。

 

「ど…どうするの二人とも…今日のこと…」

 

口火を切ったのは四葉であった。四葉が言っているのは、昨日二乃とことりが言っていたことである。

 

「もちろん実行するわよ!あんな脅しに屈するものですか!」

「うん...!例えカズヒコさんが私たちに好きって感情をまだ持ってなくても、あの時私たちを気持ち良くさせようとする気持ちや心配りはきっと本物だから…!」

 

四葉の言葉に二乃と三玖は躊躇もなく答えた。

 

「そうだよね!うん!わたしも同じ気持ちだよ!」

 

そんな二人の言葉に四葉は笑って答えた。

 

「言っとくけど、あんたたちはライバルだってことには変わりないんだからね?」

「わかってる…私が一番カズヒコさんを気持ち良くさせる…!」

「負けないよ!」

 

二乃の言葉に笑顔で答える三玖と四葉。

そうして三人は、今日の計画を話しながら教室に戻るのだった。

 


 

~五月side~

 

昼休み。

五月は一年一組の教室に来ていた。

 

「あれ?五月さん。どうかしました?」

「ええ。今井さんはいらっしゃいますか?」

「憂ちゃん?憂ちゃんなら──」

(わたくし)に何かご用でしょうか?」

 

結愛が五月を出迎えた後、五月は憂の居場所を聞いた。

結愛が答えようとしたところに、五月の後ろから憂が声をかけた。傍には綾那が控えている。

 

「今井さん。あなたに折り入ってご相談があります」

(わたくし)に?」

「ええ。その……二人で話せたらと…」

 

チラッと五月は結愛と綾那を見て憂にお願いをした。

 

「ふむ…わかりました。綾那、あなたは自分の教室に戻っていなさい」

「しかし!」

「大丈夫ですよ。では、行きましょうか五月先輩」

「はい」

 

綾那の言葉を無視するように憂は五月を連れ人気のない踊り場に来た。

 

「ここでよろしいでしょうか?」

「はい」

「それで?(わたくし)にお話とは?」

 

踊り場から外の風景を背筋を真っ直ぐにして見ながら、憂は五月に話を進めさせた。

その姿は美しく、同性でもある五月でさえ見惚れてしまう程であった。

 

(改めて見ると憂さんってこんなにも美人だったんだ。この事を進めていくともしかしたら和彦さんの気持ちが私から他の人…憂さんに移っちゃうかも……ううん、大丈夫!和彦さんの気持ちはここにあるから!)

 

憂に見惚れていた五月は自分に奮い立てながら話を進めた。

 

「実は今井さんにご相談したいことがあります」

 

そうして五月はある計画を憂に伝えた。

 

「そう……ですか…和彦様は五月さんを……」

「はい」

 

今朝の事を憂に伝えると、憂はどこか悲しげな表情を見せていた。しかしそれも一瞬。すぐにいつもの表情となり、話を続けた。

 

「ふむ…あの言葉を覚えておいでだったとは……(わたくし)には五月さんは乗り気ではないように見えましたが…」

「それは……」

 

五月の計画の全てを聞いた憂は扇子を出して広げ口元に持っていき五月に確認をした。そんな五月は言葉を濁す事しか出来なかった。

それを気にせず憂は話を続けた。

 

「本当によろしいのですか?(わたくし)が言うのも何ですが、あなたには何もメリットがありませんよ?」

「そんなことないですよ」

「?」

 

しかし、憂の言葉に今度は五月が笑顔で答えたので憂は疑問の顔となった。

 

「だって、私の愛する旦那様が傍にいる。それだけで幸せですから♪」

「…っ!ふふっ…ふふふ…確かにそうですわね。それが何よりも幸せな事かもしれません」

 

そこで憂は扇子を閉じた。

 

「良いでしょう。今井の力を持ってしてあなたの計画を進めていきましょう!」

「ありがとうございます!」

 

憂の言葉に五月はパァーッと笑顔になりお礼を伝えながら頭を下げた。

 

「何を言っているのですか。お礼を言うのは(わたくし)の方ですわ。(わたくし)達にチャンスをくれるのですから」

 

そんな五月に憂は微笑みながら答えるのだった。

 

「では、(わたくし)はさっそくお父様に相談してみましょう。五月さんは教室に戻っていただいてよろしいですよ」

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

憂の言葉に五月は頭を下げて憂から離れていった。

そんな五月の背中を見ながら、憂の目からは涙が流れていた。

 

「運命…というものは…残酷…なもの…ですね…すんっ…(わたくし)の想い……届き…ませんでしたか……」

 

そして閉じた扇子を握りしめながら憂はうつむき、涙を流していた。

 

「すんっ…いけませんね。五月さん……いえ、五月様は(わたくし)にチャンスを頂けた。ならば、それに応えなければなりません!」

 

流した涙をハンカチで拭き、憂は改めて自分に奮起を立てた。

 

「この計画。何としてでも成功させなければ!」

 

それから憂は今後の行動を頭の中で纏めながら自分の教室に戻るのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、五月がある計画の為に孤軍奮闘するお話を書かせていただきました。
姉妹と喧嘩するまでも行うもの。
憂の言葉を聞けばたぶん皆さんは予想出来てると思いますが……

次回はちょっとした新しいキャラを登場させる予定です。
自分で書いててなんですが、キャラが多すぎてたまに誰が誰だか分からない時があります。
思いつきで書いていくのはやっぱり駄目ですね。進路はあるのですが、寄り道が多くなってしまいます…

次回の投稿は2月15日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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