少女と花嫁   作:吉月和玖

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131.みんな一緒に

放課後。

練習前の四葉とバイト前の三玖を数学準備室に呼び出していた。

 

「何?今日の事やっぱりなしは駄目だよ…」

 

ソファーに座った三玖からいきなり抑止された。

 

「分かってるよ。ただまあ…今日の事でちょっと相談があるって言うか……」

「?先生にしては歯切れが悪いですね。あ!泊まりなしとかですか!?」

 

中々本題に入らない僕に対して四葉が心配そうに聞いてきた。その四葉の言葉と一緒に頬を膨らませた三玖がじっと見てきた。

 

「いや、それもちゃんとするから大丈夫なんだけど…」

「じゃあ、何…?」

「うん……その…今日のお泊まりに一人増えても良いかなって……」

「「え?」」

 

僕の言葉に驚きの顔で三玖と四葉は見てきた。

 

「二乃が言ってきたの?」

「いや、二乃じゃないよ」

「え?でもぉ……それ以外に誰かいますか?あ、結愛ちゃんとか?」

「それも違うなぁ……」

 

三玖と四葉がそれぞれ予想した人物の名前を挙げるも、全て違うため僕は乾いた笑い声で答えた。

 

「………他にいるとすれば……まさかっ…!」

「ん?三玖は分かったの?」

「……むぅ…カズヒコさん…本気…?」

 

三玖が顎に手をやりながら誰がいるか考えていると、心当たりがあったようだ。四葉は全然分かっていないようで、三玖に聞くも、その三玖は四葉の言葉をスルーして真剣な顔で僕に聞いてきた。

 

「はぁぁ…本人たってのお願いなんだよ…」

「え?え?結局誰なんですか!?」

「…………後一人、近くにカズヒコさんとキスまで進んでいる人がいる…」

「え?うーん………飛鳥さんは福岡だし……後は………はっ…!」

 

四葉もようやく気づいたようで、目を見開いて僕を見ていた。

 

「えっと……立川先生ですか?」

「ああ…」

「えええぇぇぇっ!!」

 

衝撃的なのか四葉は立ち上がりながら驚いている。

 

「何で立川先生が私たちのことを知ってるの?カズヒコさん、話したの…?」

「ああ……なんか今の芹菜さんを見ていると、僕の近くにいちゃいけないと思ってね。さっきも校内でキスを求めてきたし…だから、僕は生徒に手を出すような男だって嫌われる覚悟で言ったんだけど……」

「諦めなかったんだ…」

 

僕の言葉に三玖が続いたので、僕は首を縦に振って答えた。

 

「僕が君達の想いを利用して快楽を楽しむような男じゃないってさ…ははは…自分でも分からないのに、あんなにハッキリと言われるなんてね…」

「カズヒコさん…」「先生…」

 

自暴自棄するように話していると、三玖と四葉が心配そうな顔でこちらを見てきた。

 

「はぁぁ…後こんなことも言ってたなぁ。自分が僕の彼女になっても三玖や四葉達が求めれば許してしまうだろう、て…」

「「!!」」

 

僕の言葉に三玖と四葉は驚きの顔になっていた。

そりゃ、驚くよね。普通は考えないことだし…

 

「ははは…やっぱり驚くよね。何で芹菜さんはあんな事を…」

「あー……いえ、私たちが驚いている事はそこではありません」

「え?」

 

芹菜さんの言葉に驚いた理由が違うと四葉が伝えてきたので、思わず聞き返してしまった。

すると、四葉と三玖はお互いを見て頷くと話し始めた。

 

「実は私と四葉も立川先生と同じこと話してたの…」

「え……?」

「お互いに選ばれても多分今と変わらないねぇ、みたいな感じですね」

「私がカズヒコさんと付き合っても、多分四葉や二乃との関係を許しちゃうと思う…もちろん、立川先生や飛鳥たちも...」

「私もです!」

「な、何で…!?」

 

笑顔で話す三玖と四葉が理解出来ず聞き返してしまった。

 

「何でって言われても……」

「私たちって一緒にいるのが当たり前みたいな感じじゃないですか。そうじゃなかったら、今回だって三玖と一緒に、なんて言いませんよ」

「…っ!」

 

四葉の屈託のない笑みに僕は衝撃を受けた。

 

「でも、驚いた…」

「だねぇ~。まさか、立川先生も同じ考えだなんてね!みんなも同じだったら良いのにって三玖と話してたもんね!」

「でも、それじゃあ...選ばれなかった人達は、ただキスや体を重ねる関係になってしまう。それじゃあ、幸せになれないよ…」

 

笑いながら話す三玖と四葉に僕は自分の考えを伝えた。

 

「確かにそう感じるのも無理はない…けど…」

「私と三玖は先生と一緒にいられるだけで幸せですよ♪」

 

僕の考えを聞いてもなお笑顔を絶やさない二人に衝撃を受けていた。

 

「うーん…なら一層みんな一緒に住んじゃえば良いのではないでしょうか」

「え!?」

「四葉、それ良い考え…」

 

四葉の言葉に三玖は微笑みながら賛同した。

 

「実は以前今井さんが言ってた言葉がずっと頭に残ってまして…」

「憂?」

「はい!初めて今井さんに会った時に、えっと…側女?でしたってけ?そんな言葉を使っていたので」

「側女…つまり昔で言う側室の事…なるほど今井さんらしいね」

 

四葉と三玖が笑顔で話しているが、僕は四葉の言葉でその時の憂の言葉を思い出していた。

 

──むしろ……(わたくし)の伴侶となっていただき、和彦様をお慕いしている方々を側女として和彦様の近くに置いておくのも構いませんわよ

 

待てよ。確かあの時四葉と一緒に五月もいなかったか?

そして、五月は夫婦は二人の愛で成り立っているみたいな感じで反論したはず。でも──

 

──では、結ばれなかった女性には愛がなかったと?

 

憂はそんな五月の言葉に対してそう質問をしていたな。

あの時五月は反論してたっけ?いや、待てよ。五月って確か自分の計画に憂を相談相手として選んでたよな。

 

「でも、四葉の案だと場所がない…」

「そうだよねぇ…先生ってモテモテだもんねぇ」

「ははは…」

 

四葉のモテモテという言葉には乾いた笑いしか返せなかった。

あれ?この会話もどこかで……

 

──でもさぁ、その計画を達成するには場所がないんじゃない?

──いえ。そこもある方の協力を得て確保が出来る予定です。

 

そうだ!ことりに僕達の関係を伝えた時に、ことりが五月から計画の内容を聞いた時と同じだ。

え?なら、五月の計画って……

 

「先生?」

「え?」

「何かずっと考えごとしてる…」

 

五月の計画について考えていたら深く思考の中にいたようだ。

 

「ごめんごめん。いや、そういうのは二乃は賛成しないんじゃないかなぁ、て思ってさ」

 

とりあえず、当たり障りのない話題で誤魔化す事にした。

 

「うーん…どうでしょう…」

「え?」

 

二乃なら三玖や四葉、芹菜さんの考えには賛同しないのではと伝えたのだが、四葉からは『そうですよねぇ』という言葉が返ってこなかった。

 

「むしろ二乃も似たような考えだと思う…」

「だよね!そうじゃなきゃ、あんなに簡単に今日の事許さないよね!」

「え?簡単に?」

「はい。最初はたしかに反対しそうな空気でしたが、五月が賛成するとあっさり許してくれましたよ」

 

あの二乃があっさり?

 

「まあ、今度カズヒコさんを誘うとも言ってたけど…カズヒコさん後はよろしく」

「よろしくって言われてもね……」

 

ニッコリ笑顔で三玖にそう言われても困るのだが…

 

「さてと…じゃあ、私はそろそろバイト行かなきゃだから…ああ、立川先生のことはさっきも言った通り問題ないよ。むしろ立川先生が私たちと一緒でも良いのか考えちゃうけど…初めてなんでしょ?」

「ああ…そこも一応確認はしたんだけど、問題ないんだって」

「なら問題なし。じゃあ、カズヒコさん。後でこむぎやまで迎えに来てね」

 

そう言った三玖はいつも通りに部屋から出ていった。

 

「先生!私たちもそろそろ行きませんか?練習時間がもったいないです!」

「え?あ、ああ…そうだな。じゃあ、行くか」

「はい!今日もよろしくお願いします!」

 

四葉の言葉でとりあえず今考えていることは置いておき、今は道場での稽古に頭を切り替えることにして、四葉と二人で道場に向かうのだった。

 

・・・・・

 

『せい!せい!』

 

今日も今日とて空手部の皆は気合いを入れて型の稽古をしている。まあ、男子部員がいつも以上に気合いが入ってはいるのだが……

結愛という可愛い女子がまたマネージャーとして増えたことはもちろんなのだが、もう一つの理由が──

 

「相変わらず綺麗な型ですね」

「そう?ブランクがあるからちょっと軸がずれてるんだよねぇ。後で指摘しとかないと」

「そもそも、あの子が空手の経験者ってだけでも驚きよ。普通に綺麗だと私は思うけど、どこがどう違うわけ?」

「あはは…私もそこまではわかんないかな…」

 

型の稽古を見てそれぞれが感想を言っているのだが、四人で注目しているのは、今日から入部したことりである。

ことりの胴着姿に男子部員達が興奮しており、気合いがいつも以上に入っているのだ。

ちなみに本多は三玖がいないからか、あまり元気がないように見える。

同じ顔の二乃や四葉だっているのに、本当に三玖が好きなんだな。そこは感心するところだ。

型の稽古も終わり、今日も試合形式を行う。

 

「じゃあ、今日もこれから試合形式を行う。ただし、本多と四葉は別メニューがあるから今日はなしね」

「オッス!」「はい!」

 

僕の指示に何も反対がないようで、二人は素直に返事をした。

 

「で、今日はことりの今の実力を測りたいから……木下、相手してくれる?」

「は、はい!」

 

僕の言葉に緊張した声で木下は返事をした。

 

「ふふふ…三年振りかな?よろしくね、木下さん♪」

「……次は、負けません!」

 

木下に対して挑発的な笑みを浮かべることりに対して、木下は闘志を燃やしている。

 

「何?あの二人、前に闘ったことでもあるの?」

 

そんな二人の姿を見て二乃が問いかけてきた。

 

「……三年前。(わたくし)達が中学一年の時でした。当時の綾那は正に負けなしだったのですが、全国中学校個人の部決勝で、ことり先輩に綾那は惨敗したのです」

「へぇ~…そりゃあ、負けられないわよね」

 

憂の説明に、二乃は改めて二人を見た。

 

「………ちょっと気になることもあるから、すまないが他の人は僕の後ろで座って観ててくれ」

 

そう指示を出した部員は不思議そうに僕の指示にしたがった。

そんな中、僕の隣に来た憂が問いかけてきた。

 

()()を警戒してでしょうか?」

「ああ。ことりの悪いクセが出なきゃ良いけどね…」

 

憂の問いかけに僕は肯定した。

 

「よし!じゃあ、本多と四葉だけど、とりあえず今から腕立て伏せ百回と校庭二十周を行ってもらう」

 

四葉と本多にそう指示を出した僕に対して、二人は不思議そうな目で見てきた。

 

「師匠。さすがにそれだけなら別メニューとしてやらなくても良いのでは?」

 

本多の言葉に四葉も頷いた。

 

「ふっ…もちろんただの腕立て伏せじゃないさ」

 

本多の言葉に僕は笑みを浮かべながら答えた。

 

「あ!あれをやるんですね?」

 

そんな僕の言葉に結愛は笑顔で聞いてきた。

 

「ああ。じゃあ、二人は腕立て伏せの状態になってくれ」

 

結愛の言葉に答えた僕は二人に指示を出すと、四葉と本多は腕立て伏せを始める状態になった。

 

「二乃」

「ん?何?」

 

何かスマホを打っていた二乃に声をかけると、二乃はスマホをしまい僕に近づいてきた。

 

「悪いんだけど、本多の背中の上に乗ってくれない?」

「「は!?」」

 

僕の言葉に二乃だけでなく、本多も反応した。

 

「ただ座ってるだけで良いから」

「むぅ……まあ、先生がそう言うなら…」

「ちょっ…!ちょっと待ってください師匠!」

 

渋々といった形で承諾する二乃とは反対に本多がもの申してきたが、もちろん無視をする。

 

「大丈夫だって。二乃って軽いから問題なし」

「あら♪先生ってわかってるじゃない♪ほら、師匠が言ってるんだから、つべこべ言わない。ほら、乗るわよ」

 

僕の言葉に上機嫌になった二乃はさっさと本多の背中の上に足を組んで乗りかかった。

 

「お……おも──」

「重いとか言ったら、張ったき倒すわよ」

「オ……オッス…!」

 

本多が重いと言いそうになったところで、二乃のドスの効いた言葉で本多は何も言わなくなった。

 

「やれやれ。で、四葉には結愛が乗ってくれ」

「はーい。じゃあ、四葉さん。乗るね?」

「はい!どうぞ!おー、結愛ちゃんは軽いですねぇ」

「ホントに?ふふっ…ありがと♪」

 

まあ、実際に結愛って軽いからな。背も低いし胸も……これは本人には言えないか…

 

「じゃ、その体勢で百回ね。あ、上の人を落としたら始めからだから、そのつもりで。後、一定のリズムでやること。途中まで速くしたり、途中から遅くならないようにね。これ重要だから」

「懐かしいなぁ…昔は先生の上にことりさんとお姉ちゃんと私の三人で乗ってたっけ♪」

 

僕の説明が終わると、結愛がそんな言葉を口にした。

 

「は!?三人!?さすが師匠だぜ!負けてられねぇ!」

 

結愛の言葉にやる気が出た本多。

まあ、昔って言えば三人とも小学生か中学生だったしなぁ…そうだ!

 

「本多。頑張れば、今度三玖にお願いするかもだからしっかりね」

「え!三玖さんに!?」

 

僕の言葉に本多は見上げてきた。

それを見た二乃はニヤリと笑みを浮かべて更に追い討ちをかけた。

 

「私と三玖って同じ体重なのよねぇ…もしかしたら、お尻の感触とかも一緒だったりして…」

「はっ!!では、これは三玖さんが乗っていると言うことでもあるのでは!?よっしゃー!やってやるぜ!」

 

単純な奴。

 

「単純ね」「単純なお人」

 

やる気マックスになった本多を見て考えた言葉を、二乃と憂はハッキリと口にした。

 

ガラッ…!

 

するとそこに道場の扉が勢いよく開かれた。

 

「間に合った?」

「みたいだな。はぁぁ…疲れたぜ…」

「このくらいでだらしないですよ」

 

開かれた扉から一花と五月と上杉の三人が入ってきた。

 

「ん?どうした、三人とも」

「二乃からことりが試合するって連絡があってね。急いで来たんだ」

 

僕の質問に一花はスマホを見せながらウィンクして答えた。

なるほど、さっきの二乃は一花に連絡してたのか。

 

「うおっ…!二乃…お前…やっぱりそういう事する奴だったんだな…」

 

上杉が本多の背中の上で足を組んで乗っている光景を見て、そんな感想を口にした。

 

「失礼ね!これは先生の指示でしてるのよ!私の趣味じゃないわよ!」

「普通に似合ってますよ」

 

キッ…!

 

上杉の言葉に反論した二乃であったが、五月が可笑しく口にしたものなので、二乃は睨み返した。

それに五月は目を逸らしながら背筋を伸ばした。

 

「よっしゃー!四葉先輩やるぜ!」

「はい!では、一!」

 

そして、四葉と本多の腕立て伏せが始まったので僕は相対している、ことりと木下の真ん中辺りに立った。

 

「ちょっと遠いけど僕がここから審判をする。二人とも準備は良いかい?」

「「いつでも良いです」」

 

二人がそう答えたので試合開の合図を出した。

 

「はじめ!」

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、前回のお話で最後に芹菜が和彦にお願いした内容が判明しました。それが、三玖と四葉と一緒に和彦と一夜を共にする事です。
そして、それに関して三玖と四葉に話した和彦でしたが、三玖と四葉があっさり受け入れたことや二人の考えを聞き、五月の計画内容を和彦は徐々に気づき始めました。

次回の投稿では、今回の投稿で始まったことりと綾那の試合の内容を書かせていただきます。

次回の投稿は3月20日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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