少女と花嫁   作:吉月和玖

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133.企み

~吉浦家~

 

和彦が三玖と四葉と芹菜の四人でホテルに行っている間、中野家で夕食を一花と二乃と五月と一緒に食べたことりと結愛は、家に帰ってしばらくリビングのソファーでのんびりしていた。

結愛がお風呂に向かったところで、ことりのスマホに着信が入った。

 

「はいはーい。飛鳥からなんて珍しいね」

『こんばんは。そうでもないでしょ?頻繁に連絡してるじゃない』

「うーん…まあ、そうなんだけど。大抵私からだったしさ」

 

ことりは観ていたテレビの音量を落としながら話を進めた。

 

『そういえば、そうだったわね。今日はちょっと聞きたい事があったから』

「んー?聞きたいこと?」

 

なんだろう、と考えていたことりだったが、飛鳥からの言葉に驚いてしまった。

 

『和彦さんが、二乃と三玖。それから四葉さんと結愛。この四人とエッチしたって本当?』

「ぶうぅぅぅー!ケホッ…ケホッ…な、なんで!?」

 

飛鳥から出た言葉に驚いたことりはその場で吹いてしまった。

 

(口に何も含んでなくて良かった……)

 

『和彦さんから聞いたの。ちょっと前にね。今日も三玖に四葉さん、それから立川先生とお泊まりなのでしょ?』

「お兄ちゃんが…?」

『ええ……ふぅ……かなり参ってるみたいだったわ…』

「そっか……飛鳥が近くにいれば良かったね…」

『和彦さんも同じこと言ってたわ。嬉しかったけど♪』

 

和彦の声から思い悩んでいる事が伝わってきたと飛鳥が話すと、ことりが飛鳥も一緒にいればと話した。

それを和彦からも言われたと飛鳥は嬉しそうに話した。

 

「…………ねえ、ことり。和彦さんがね、私に聞いてきたの…もし私と付き合う事になったら、今のように二乃達との関係を許せるか、て……」

「──っ!」

「これは、()()()()()()()()()()()()()()()()なのかしら?…………それとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のかしら?」

「そ……それはっ……」

 

涙声が混じったような声の飛鳥の問いに、ことりは言い淀んだ。だがそれは、もう飛鳥に答えを言っているようなものだった。

 

「そっか……っ…こうしゃ…っ……なのね……っ…」

「飛鳥……」

 

涙を流しながら話す飛鳥にことりはかける言葉が思い浮かばなかった。

 

「すんっ……私の…想い……届かなかったか……ふっ……うっ…うぅぅぅぅ……」

「飛鳥……きっとお兄ちゃんも、悩みに悩んで答えを出したと思うよ」

 

ことりは飛鳥に優しく声をかけた。

 

「わかってるっ……あの人のことならっ……なんでもっ……」

「うん……そうだよね……私たちはいつも一緒だったから……ほんとにっ……いつも……すんっ……いっしょっ……だったもんねっ……うっ……うっ……」

「すんっ……ことり……」

 

ことりも五月を認めたとはいえ…そして妹とはいえ、振られたショックは大きかったのだ。

和彦と五月の前ではいつも通りの姿を見せていたが、飛鳥の想いがことりの我慢を超えてしまった。

 

「すんっ……えへへ……飛鳥の貰い泣きしちゃった…でも大丈夫だよ。お義姉ちゃんの計画が成功すれば私たち皆きっと笑顔になるから♪」

「へ?お義姉ちゃん?計画?なんか色々とツッコミどころ満載なのだけど……」

 

泣き止んだことりは明るい声で大丈夫だよと話すのだが、飛鳥にとっては混乱するしかなかった。

 

「ああ、そっか。ごめんごめん、私素ではお兄ちゃんの相手の人をお義姉ちゃんって呼んでたからつい…あはは……えっと…まあ、飛鳥には言って良いか。お兄ちゃん相手の人と結婚するの」

「はっ!?結婚っ!?付き合うんじゃないの!?」

 

軽く話すことりの言葉に飛鳥はただただ驚くしかなかった。

 

「やっぱり驚くよねぇ…私も最初聞いた時は冗談かと思ったもん。明々後日には両家の親に報告するみたいだよ」

「ええええぇぇぇ!?じゃ、じゃあお父さんが言ってた()()としての仕事でおじさんとおばさんについて行くって言ってたのって、まさか……」

「ああ、多分それ結婚報告の事だね」

「嘘でしょ…お父さん何も言ってなかったわよ?」

「そりゃそうだよぉ。お父さんたちも何でこっちに呼ばれたかも知らないんだし。呼んだのも違う人だしね」

 

飛鳥の言葉にあはは、と笑いながら話すことりに飛鳥は頭が痛くなりため息をつくしかなかった。

 

「その計画っていうのの一因ってこと?」

「みたいだね。強力な助っ人がいるから。ちなみにその計画っていうのはね──」

 

そこでことりは飛鳥に五月の計画を伝えた。

 

「──っ!それ……本当なの!?」

「うん♪場所もばっちり確保できてるよ♪」

「じゃ……じゃあっ…!」

「ふふふ…飛鳥も協力してくれる?」

「勿論よ!その時は全面的に協力するわ!」

「えへへ、飛鳥ならそう言ってくれると思ったよ♪」

 

飛鳥の協力も取り付けたことりはご機嫌な声で答えた。

 

「ちなみにこの事を知ってるのは?」

「えっと……私たち二人以外だと…今井って人の話覚えてる?」

「ああ…昔、和彦さんにいきなりプロポーズして、今はあなたたちと同じ学校に通ってる令嬢さんでしょ?そうか!その人が……」

「そういうこと♪その今井さんの親御さんも全面的に協力してくれてるから、お父さんとお母さん。それから、飛鳥のお父さんも呼べたって訳」

「大したものねぇ…後は?」

「ううん。それだけ。後の皆は知らないよ。お兄ちゃんも知らない」

 

凄い規模で動いている事に飛鳥は感心をして、他に知っている人がいないか確認すると、ことりは和彦すら知らないと話した。

 

「はぁぁ……それは和彦さんも悩む訳だわ…ちなみに、相手が誰か聞いても良い?」

「え……うーん…」

「お願い…」

 

和彦の相手が誰か聞く飛鳥にことりは悩むも、飛鳥の懇願するような声にことりは観念して教えた。

 

「もぉ…飛鳥だから教えるんだからね。五月だよ…」

「五月…さん…?なるほど……やっぱり五月さんも和彦さんを好きだったのね…」

 

(ネクタイピンのプレゼントの辺りから少しは気にはなってたのだけど…)

 

──大好きで、尊敬していて、あなたに辛いことがあっても、支えられる存在になりたい

 

ネクタイピンのプレゼントの意味である。

 

「ことり?ネクタイピンのプレゼントの意味って知ってる?」

「ううん。気にしたことなかったなぁ…どんな意味なの?」

「……大好きで、尊敬していて、あなたに辛いことがあっても、支えられる存在になりたい。らしいわよ」

「──っ!じゃ、じゃあ…お義姉ちゃんは……」

「そうね。バレンタインの時にはすでに和彦さんと歩んでいく事を考えていたのかもしれないわね……」

「そっかぁ…お義姉ちゃんもやるなぁ…」

 

飛鳥からネクタイピンのプレゼントの意味を聞いたことりは、五月の事を感心した。

 

「もしかしたら、お兄ちゃんもその頃からお義姉ちゃんの事を気にしてたのかもね。あのネクタイピン、毎日つけてたし…」

「はぁぁ…敵わないわね…」

 

その後もことりと飛鳥は電話で盛り上がっていた。

 


 

翌日。

ホテルを出発し、途中で三玖と四葉を車から降ろし、学校の駐車場に着くと芹菜さんに先に職員室に行ってもらった。その時ににメッセージを送った僕は、芹菜さんに続いて職員室へと向かった。そして朝礼も終わり、僕はすぐに数学準備室に向かった。すると、数学準備室の前で五月が佇んでいた。

 

「あ、先生。おはようございます」

「おはよう。悪いね、朝から呼び出して」

 

数学準備室の鍵を開けながら五月に声をかけた。

 

「いえ。何かありましたか?」

「いや……その……特に何かあった訳じゃないんだけどね……」

「?」

 

僕の歯切れの悪い話し方に、五月は首を傾げて僕に続いて数学準備室に入ってきた。

僕は扉の鍵を閉めて五月を抱きしめていた。

 

「か…和彦さんっ…!?」

「……会いたかった…」

 

僕が感情込めて伝えると、最初は驚いていたものの、五月からも抱き返してくれた。

 

「お疲れ様……和彦さん…ねえ、私不良になって良いかな?」

「え?んむっ…」

「んッ…ちゅっ……はぁ…♡ふふふ…学校でしちゃったね♪」

 

僕の唇を奪った五月は、キスをした後に微笑みを向けてきた。

 

「ははは…そうだね…ねえ五月…?五月は僕の為に今動いてくれてるんだよね?」

 

僕はまた五月を抱きしめて尋ねた。

 

「え?う…うん……」

「……それで五月は良いの?僕なら大丈夫だから…五月は五月が本当に望むことをして良いんだよ?」

「私が望むこと…?それはね……あなたとずっと一緒にいることだよ。あなたが傍にいてくれれば、それで良いの…♡ふふっ…で…も♡奥さんの座は譲るつもりはないよ♪」

 

五月は優しい声で僕の胸に顔を埋めて答えてきた。

五月の意思は固いか……

敵わないな。本当に僕の支えとなってくれてる。

 

「大好きだよ、五月……」

「うん♡私も……愛してる…♡んッ…ちゅっ…♡」

 

お互いに愛の言葉を伝えた僕と五月はキスをした。

ただのフレンチキス。なのにどんなキスよりも愛おしく思う、そんなキスだった。

 


 

~三年一組~

 

和彦と五月が愛を確かめ合っている頃。三年一組の教室では大盛り上がりが起きていた。

 

「ねえねえ。武道場で部員の前で上杉君にキスしたって本当?」

「う…うん…♡えへへ...風太郎君から嬉しい言葉貰っちゃって我慢できなかったんだぁ…♡」

『きゃああぁぁーー♪』

 

ことりは女子に囲まれ、昨日の出来事を聞かれていた。

その一方では──

 

「ねえねえ、一花さん!彼女の吉浦さんの前で上杉君の唇を奪って告白したって本当?」

「えっと……うん…目の前でキスされて我慢できなかったから…♡」

『きゃああぁぁーー♪』

 

一花もまた女子に囲まれて昨日の出来事を聞かれていた。

 

「やっぱこうなったか…」

「あはは…多分榊原さんとかだよね…」

「一花も動き出したね…四葉?大丈夫なの?」

「うーん…今後のことは考え中かな」

 

そんな女子に囲まれていることりと一花を遠目で二乃と三玖と四葉の三人が見守っていた。

そんな中、四葉は今後の事を考えていると腕を組んで目を瞑っていた。

 

「四葉はそれどころじゃなかったでしょ。で?実際昨日はどうだったのよ?」

 

そんな四葉の態度に二乃がニヤリと笑みを浮かべながら、昨日の体験を三玖と四葉に聞いてきた。

 

「えへへ...♡すっごくよかったよ♪」

「うん…♡大満足…♡二乃、アドバイスありがとう。先生とっても気持ち良さそうだったよ」

 

二乃の質問に三玖と四葉は笑顔で答えた。

 

「それは良かったんだけど……まさか本気でやるとは思わなかったわ…」

 

三玖のお礼に二乃は、少し引きずった笑みを浮かべていた。

 

「二乃も今度やってあげれば良いよ。先生喜ぶと思うよ」

「………一応、頭の片隅には入れておくわ…」

 

四葉の提案に二乃は少し考えながら答えた。

 

「後、立川先生とってもセクシーだった…やっぱり大人って感じで、声も色っぽかったよ…カズヒコさんにもうメロメロだったけど…」

「ふーん…経験なくてもそこは大人って感じね…そこにテクニックがついたら凄そうだわ…」

 

世間話のように話しながら、二乃はもう一つの集まりに目が行っていた。

 

「あいつ大丈夫なの?」

「うーん…助けてあげたいけど…」

「これはフータローの試練。仕方ない…」

 

そうなのだ。もう一つの集まりというのは風太郎の席に集まる男子達。全員が気が立っている状態である。

 

「上杉!お前、吉浦さんという可愛い彼女を持ちながら、今度は一花さんだと!?」

「知らん!俺にはどうしようも出来ん事だ」

 

前田の言葉に風太郎は一蹴した。

 

「くっそおぉぉー!なんでこんな奴にお二人があぁぁぁ!!」

「マジだよおぉぉ!」

「吉浦さんだけではなく一花さんの唇を奪うなんてえぇぇ!!」

「そこは違う!奪われたのは俺だ!」

『どっちも同じだろおぉぉがあぁぁ!!』

「!!」

 

さすがの風太郎も男子達に圧倒されていた。

 

「こぉら!私の彼氏に変なことしないでよ」

 

そんなところにことりが歩いてきて、風太郎を立たせると腕を組んでどこかに行こうとしていた。

 

「風太郎君。二人っきりの場所に行こうか?♡」

「は!?」

 

しかし、それを許さない者がおり、その者はもう片方の腕を取り風太郎に寄り添っていた。

 

「フータロー君はお姉さんと一緒が良いんだよね?」

「おまっ…!」

 

一花である。もう一花も人前だろうがお構いなしに風太郎にアピールしていた。

 

「ちょっと!彼女の前で止めてよね!」

「ええ…もしかしたら、嫌々付き合ってるかもじゃない?」

「「むうううぅぅぅ……」」

 

そしてまた風太郎の胸の前で二人の睨み合いが始まった。若干ではあるが、ことりは殺気立っており、それを感じた男子達が後退り始めた。ただ、一花には効果がないようではあるが。

 

「あれが...ことりの殺気…」

「そ。あれでもほんの一部よ。凄いでしょ?昨日はマジでビビったんだから…」

 

そんな二人の姿を見ていた三玖が、ことりの殺気に若干気づき驚いていた。

 

「あはは…そこに闘気まで混ぜてくるんだもんね。私はことりさんと試合したくはないかなぁ…」

 

二乃と四葉はことりの実際の試合を観ていたので、その時の恐怖が今でも甦ってきていた。

とはいえ、だからことりを恐がるという事もなく、今まで通り接している。

そんなところに五月を連れた和彦が教室に来たところで、また一花とことりは和彦に説教を喰らう羽目になるのだった。

 


 

今日の最後の授業。この間行われた全国統一模試の結果を返却することになっている。

 

「それじゃあ、この間あった全国模試の結果を配っていくね」

 

僕の言葉に、『ぐわぁー』や『いやぁー』など絶叫が教室中に響き渡っていた。

 

「はいはい。騒がない騒がない。じゃ、出席番号順に。上杉」

「はい」

 

一番前の上杉が返事をして僕の前まで来た。

 

「良くやったな」

「え?」

 

僕の言葉に驚きながら結果が書かれたプリントを受け取り席に戻った。席に戻った上杉は結果を見て固まっているようだ。

僕はそんな上杉を目の端で見ながら次々と配っていった。

 

「フータロー君、どうだったの?」

「ん…」

 

興味津々な一花が上杉に声をかけていたが、上杉は無表情で結果のプリントを一花に渡した。

そこに五つ子のメンバーとことりが集まっている。

 

「え!三位!?」

「はあぁぁー!?」

「す…凄い…」

「さすが上杉さんですね!」

「この結果には誇っても良いと思いますよ」

「全国三位…やっぱりいるんだね、世の中には」

 

上杉の結果を見た五つ子とことりはそれぞれ感想を口にしている。

 

「おーい、一花。取りに来て」

「え、あ…はい」

 

そこに一花の順番が来たので、声をかけた。そして、一花を皮切りに五つ子全員に結果を渡していく。

五つ子はそれぞれの結果を見せ合っているようだ。

 

「どうだった?」

「私的に悪くなかったんだけど…」

「むうぅー…」

「おおぉー!私、過去一の結果かも!」

「~~~~っ……!」

 

そこには喜んでいる者、悔しがっている者様々であった。

 

「んで、最後に吉浦ね」

「はい」

 

最後のことりにプリントを渡した。

 

「よく頑張ったな」

「え?───っ!」

 

僕が微笑みながらプリントを渡すと、ことりは戸惑っていたが、結果を見て驚き、そして笑顔を見せていた。

 

「よし!本当は個人の結果を伝えるのは良くないんだけど、職員全体で三人だけは伝えようってことになった」

 

僕の言葉に教室中がどよめいていた。

 

「武田」

「はい」

 

武田は返事をするとすっと席を立った。

 

「全国八位おめでとう」

「ありがとうございます」

「うそおぉー!」

「マジかよ!!」

 

僕の言葉に教室中が騒ぎ始める。

 

「次、吉浦」

「はい」

 

次に呼ばれたことりが笑顔で立ち上がった。

 

「全国七位おめでとう」

「ありがとうございます♪」

「ええぇぇー!」

「全国一桁が二人もいるのかよ!!」

「ちょっと待って、先生三人の結果を伝えるって言ってたよね?」

 

教室中が更にざわつき始めたところで次の者を呼んだ。

 

「上杉」

「はい」

「全国三位おめでとう。大したもんだ」

「あ…ありがとうございます…」

 

上杉は僕の言葉に照れながら返事をした。

 

「はあぁぁー!三位ぃー!?」

「え?え?だって、上杉君って途中寝てなかった?」

「え?じゃあ、それがなかったら……」

「コホン。ま、全国一桁がまさかこのクラスから三人も出るとは思わなかったよ。良くやった。職員一同この快挙に喜んでるよ。他の皆も三人にほどとは言わないが、上を目指す為、今回の模試の結果を見て、弱点を克服していくように!」

『はい!』

 

僕の言葉にクラス全員がしっかりと返事をしたので、僕はそれに満足して、他の連絡事項などを伝えていった。

 

・・・・・

 

そして放課後。数学準備室には五つ子にことり、結愛と憂に綾那、そして芹菜さんが集まっていた。

 

「あーあ、まさか四葉にも負けるなんてね」

「えへへ...今回は頑張ったもんね!」

「いやぁー、前回が姉妹で一番だったけど、今回はお姉さんが姉妹ビリだったとは…」

「一花以外はカズヒコさんのご褒美目当てだったから仕方ない…私も負けたけど…」

 

一花が頭をかきながら姉妹でビリだったことに残念がっていると三玖がフォローした。

姉妹だけの結果を見ると、下から一花、二乃、四葉、三玖。そして、五月がトップだったのだ。

 

「…………」

 

その五月は先程から何やら考え込んでいるのか、目を閉じてじっとしている。

 

「で?一花達五つ子とことりがここにいるのは分かるけど、他の四人はなんでいるのかな?」

「私たちは五月さんに呼ばれたの」

「私もです」

 

僕の質問に結愛と芹菜さんが困惑しながら答えた。

憂と綾那はどこか落ち着いたように立っている。

 

「で?何する訳?」

 

そこで、二乃が五月に声をかけた。

すると五月は目を開き、言葉を綴った。

 

「今回の全国模試。姉妹で一番だった場合は、先生にご褒美と言いますか、お願いを聞いてくれることになっていましたので、ここでそれを伝えたいと思ってます」

「え?そんな事があってたんですか?」

 

五月の言葉に、芹菜さんが驚きの表情で僕を見てきた。

 

「えっと……まあ、それでやる気が上がるならと思いまして…」

 

芹菜さんの言葉には、乾いた笑いで答えた。

 

「ふむ……(わたくし)達も呼ばれているとなると…和彦様に関連するお願い、ということでしょうか?」

 

憂の言葉に綾那以外の全員が五月に注目した。

 

「あんた、そういうのには興味なかったんじゃないの?」

「別に二乃のようにデートにお誘いするという訳ではありません。もちろん、それ以上のことも…」

 

二乃の言葉に五月は冷静に返していた。そして、五月は僕をまっすぐと見ると口を開いた。

 

「先生」

「な…何かな?」

 

真剣な表情で見つめてきたので、緊張しながら返事をした。

 

「私のお願いは一つです。ここにいる人達と飛鳥さんの事を先生はどう想っておられるのですか?それを聞かせてください」

『──っ!』

 

五月の言葉にその場全員が息を飲んだ。いや、憂と綾那はいつも通りなので恐らくこの事を知っていたのだろう。

 

「い…五月…ここでカズヒコさんの気持ちを聞くの?」

「はい。そろそろはっきりした方が良いと思いまして」

 

三玖の緊張した赴きに五月は真剣な表情で答えた。

 

「さ、さすがにそれは強行過ぎるんじゃない?兄さんだってまだ悩んでるだろうし…」

 

僕の気持ちを知っていることりはいきなりここで五月との関係を発表するのは早いのでは、と焦った顔で五月に話しかけた。

 

「こうでもしないと、いつまでも今のような関係が続いてしまいます。しかし、ことりさんの言葉にも一理あります。では、質問を変えます。先生は、付き合う付き合わないを考えなければ、私たちの事をどう想っておられるのですか?」

「!!」

 

五月の変えた質問に僕は驚きの表情へとなってしまった。

 

「そ…それは……」

 

どう答えれば良い?僕は五月が好きだ。じゃあ、他の皆は?

そう自問自答していると、全員から心配そうな表情を向けられた。そんな中、五月だけは誰にも気づかれないように口元をあげて笑みを作っていた。

そうか……僕は……

 

「僕は…………ッ…!」

 

意を決して今の気持ちを皆に伝えた。

 

「僕は皆の事が好きだよ。もちろん一人の女性として」

『──っ!』

 

なるべく優しい声で自分の気持ちを伝えた。

 

「か…和彦…?」

「本当なの…?カズヒコさん…」

 

僕の言葉に皆が驚きの顔になっていた。五月を除いて。

五月はどちらかと言えば、何かを得たような嬉しそうな笑みをしている。

そんな皆を代表するかのように、二乃と三玖が声に出した。

 

「ああ……本当だよ。飛鳥を含めてここにいる皆の事を一人の女性として好きだ。強欲だって言われるかもしれないけど、皆の笑顔を守っていきたい。このままの関係でいられたら……て願ってもいる」

「「和彦さん……」」

「ふっ…」

 

僕の願いを伝えると、芹菜さんと結愛は口を両手で隠しながら涙を流しており、憂は笑みを浮かべていた。その隣の綾那に至っては泣き崩れているくらいだ。

 

「それだけ聞ければ満足です。ありがとうございます」

 

そこで五月がお礼を伝えて頭を下げた。

そして、頭を上げた五月は皆へ振り返った。

 

「皆さんにご相談したいことがあります。前もってお話ししていましたが、明日お時間をください」

「場所は我が今井家の別邸。皆様をご招待いたしますわ」

 

五月が皆にお願いすると、五月の横に並んだ憂が扇子を広げ口元に持っていきそう伝えた。

 

「何企んでるのよ…」

 

皆を代表するように緊張した赴きで二乃が五月に質問した。

 

「楽しいことです♪」

 

そんな二乃の質問に満面の笑みで五月は答えるのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回のお話では、色々な場面を書かせていただきました。
飛鳥の失恋、和彦と五月の密会、一花とことりと風太郎の騒動、全国模試の結果発表、そして和彦の想い──

ゴールデンウィークを迎える今、物語は次のステージへと進もうとしております。

次回のお話でこの章のラストとさせていただきます。

次回の投稿は3月30日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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