135.全員集合
~飛鳥side~
「うぅ~ん…やっぱり新幹線だと時間かかるわねぇ…」
キャリーバッグを手に新幹線から駅のホームに降り立った飛鳥は腕を上に伸ばしながら、座ったままだった体を
「さてと……さっきことりから駅には着いたって連絡もあったし、さっさと行きましょ」
(ふふふ…和彦に会うの楽しみね♪)
ことりからの連絡なので、きっと和彦も一緒にいると思った飛鳥は、ニコニコしながら改札口に向かった。
「こんにちは、飛鳥さん」
「え?」
飛鳥が改札口から出たところで声をかけられた。
「あら。五月さんではないですか。どうされたのですか?」
「飛鳥さんをお迎えに来ました」
意外な人物が立っていたので、飛鳥は驚きつつも笑顔で確認すると、五月から自分を迎えに来たと言われ更に驚いてしまった。
「え?ことりは……」
「ことりさんも来てますよ。こちらにどうぞ」
なおも混乱している飛鳥を先導するように歩きだした五月に、飛鳥はキャリーバッグを引いてついていった。
「えっと……五月さん。和彦さんと一緒に来られたのですか?」
「すみません。先生は別件で来ていないんです。迎えは知り合いの人に頼んで車を出してもらいました」
和彦が車で待っているのかと思い、飛鳥は五月に確認するも、五月からは申し訳ないように和彦は来ていないと答えた。
「別件ですか…」
「大丈夫ですよ。行き先は一緒ですから」
和彦がいないことに寂しさが声に表れた飛鳥に、五月は安心させるように声をかけた。
そして、しばらく歩くとロータリーに高級車が停まっていた。
(凄い高級車!あんなの早々見れないわ)
そんな風に考えていると、その高級車の扉の傍に立っていた黒のスーツに白の手袋をしている男によって車の扉が開かれ、そこからことりが降りてきた。
「やっほー!飛鳥、久しぶり!」
「こ、ことり!?え?なんでそんな車に乗ってるのよ!」
ことりの登場にびっくりした飛鳥は驚きの声をあげた。
「ふ♪ふ♪ふ♪……凄いでしょ?乗り心地も最高なんだから♪」
「はあぁっ!?」
「飛鳥様。お荷物お預かりいたします」
飛鳥の疑問の答えになっていないことりの言葉に混乱中の飛鳥に、先程車の扉を開けた男が飛鳥に荷物を預かると声をかけてきた。
「え?あ、ありがとうございます…」
驚きながらも荷物を渡した飛鳥の荷物を、男は預かると車に載せる為に運んだ。
「では、どうぞ飛鳥さん。こちらは今井さんの家の車で、先程の方は今井家に仕えている使用人とのことです」
「は……はぁ……」
何が何やらと混乱している中、飛鳥は五月に促されるまま車に乗り込んだ。それに続いて五月とことりの順番に車に乗った。
「では、出発いたします」
「お願いします」
使用人である運転手の男から出発すると言われ、五月がお願いすると車は出発した。
「えっと……どこに向かっているのかな?」
飛鳥は混乱しているのだろう…敬語が抜けた状態で五月に確認をした。
「今から向かう場所は今井家の別邸です。そこにみなさんが集まりますので、先生には私の姉妹や結愛ちゃん。そして、立川先生を車に乗せて行ってもらってます」
「な…なるほど……」
ようやく状況が見えてきた飛鳥は、冷静さを取り戻してきた。
「………五月さん」
「はい?」
そんな飛鳥は五月に真剣な表情で声をかけたので、五月は緊張した赴きで返事をした。
「和彦さんとのご婚約おめでとうございます」
「──っ!」
飛鳥が頭を下げながらお祝いの挨拶をしてきたので、五月は驚き、ことりを見た。
「あはは…ごめんね。飛鳥には伝えちゃった……その…計画の事も…」
「そう…ですか…」
ことりが申し訳なさそうに話すと、五月は驚きはしたもののいつもの調子に戻って飛鳥と向き合った。
「えっと……その……すみません…黙ったままにしてしまい……」
「ううん。あの事があれば仕方のない事だと思います。でも、本当に良いのですか?五月さんはそれで……」
五月が和彦との関係を黙っていた事に申し訳ないと謝ると、飛鳥は微笑みながら問題ないと返した。そして、五月にこのまま計画を進めて問題ないのかと聞き返した。
「はい……本音で言えば和彦さんと
「ふふっ…良かったです。私と同じ考えでいる人があの人のパートナーとなってくれて」
「え……?」
哀しみの表情で語る五月に対して、飛鳥が笑顔で話しかけたので、五月は驚きの表情で飛鳥を見た。
「私もそう思ってましたから…あの人は優しすぎますからね…」
「はい……」
「はぁぁ……二人ともどんだけお兄ちゃんの事好きなのよ…」
優しい表情で話す飛鳥と五月を見て、ことりはため息混じりに二人に伝えた。すると、五月と飛鳥はお互いの顔を見て微笑むと同じ言葉で返すのだった。
「「世界中の誰よりも」」
「ねえぇ…和彦ぉ…」
「何?二乃」
「まだ着かないわけ?」
「それ…僕も今思ってることだから」
今井家別邸に五月以外の五つ子と結愛と芹菜さんを乗せて車を走らせること一時間。ようやく今井家の私有地に着き、身分証明書を見せると大きな門が開かれ、そこから出発すること三十分。まだ屋敷は見えてこなかった。
それもあってか、後ろの席から二乃のぼやきが聞こえたので、自分も同じ気持ちだと伝えた。
「ずっと平地が続いてるね」
「そうね。でも見て。所々に畑や田んぼがあるわ」
窓の外を見ていた結愛の感想に芹菜さんが畑や田んぼもあると答えた。
「ここ…本当に日本…?」
「ははは…ちなみに左側に見えてる丘って言うか山?あれも今井家の所有らしいよ。あの向こう側が本邸らしいからね」
助手席に座る三玖からの質問に乾いた笑いしか出ず、更には左に見えている山も今井家の所有だと説明した。
「嘘でしょ!?どんな凄いところに私たち来たんだろ…」
「あはは…お父さんも凄いと思ってたけど、上には上がいるんだね…」
僕の説明に一花が驚き、四葉に至ってはもう言葉にもならないほど驚いている。
「あ…!見えてきた……て、え…!?」
助手席だからか、真っ先に屋敷が見えた三玖であったが、驚きの声をあげている。
「ここ…なわけ…?」
「もう、立派な旅館以上ね…」
「ふわあぁぁ……」
真ん中の席に座っていた二乃と芹菜さんと結愛が座席から立ち上がり前を覗き込むように見て、感嘆の声をあげていた。
それもそのはず。芹菜さんの言う通り、老舗旅館並みの立派な平屋のお屋敷がドドンと建っているのだ。
これで別邸かよ……本邸はどうなってんだ?
とりあえず、広い駐車場があったのでそこに車を停めて皆で車から降り、屋敷の入口に向かって歩き始めた。
すると、入口から憂とその後ろに控えるように綾那と初老の男性が出てきた。
「ようこそ皆様。本日は歓迎いたします」
着物姿の憂は、前に両手を持ってきて綺麗なお辞儀をしながら歓迎の言葉を綴った。すると、初老の男性が一歩前に来て、片腕を胸の前辺りで曲げて頭を下げながら挨拶をしてきた。
「
「木下……では、綾那の…?」
木下さんの挨拶に疑問が出たので聞いてみた。
「はい。ここに控える綾那の祖父にございます。この度は、我が孫を和彦様の弟子にしていただきありがとうございます。未熟な部分も多々ありましょうが、どうか末長くご指導の程よろしくお願いいたします」
そう言った木下さんは、更に頭を下げてきた。
「顔を上げてください。綾那には光る実力があります。きっと素晴らしい武道家になりますよ」
なるべく優しく話しかけたのだが、それに感動したのか、綾那が片膝をついて頭を下げてきた。
「不詳、この綾那。きっと和彦様のご期待に応えてみせます!」
「あはは…まあ、気楽にいこう。ね?」
「はい!」
「かったいわねぇ…」
本人的には真剣なのだろうが、どうもこういう雰囲気には慣れないところがあるので、気楽にいこうと伝えるも固い表情で綾那は答えたので、二乃がボソッとツッコミを入れた。
「さ、さ。ご案内いたしますので、どうぞ中へ」
そこに憂が先導する形で僕達は屋敷の中に入った。
「うわあぁぁ…立派なお庭…」
「うん…♪テレビで観る日本庭園みたい…♪」
廊下を歩いていると、ガラス越しに庭園が広がっていたので、それを見た結愛と三玖がテンション上げて見とれていた。
「これは我が家自慢の庭師が毎日丁寧に世話をしている自慢の庭です。この屋敷は更に同じような庭園を囲むように建てられておりますので、どの部屋からもその庭園を見ることが出来るようになっております」
「凄いわね」
憂の説明に芹菜さんが感嘆の声を漏らした。
そしてしばらく歩いていると、一つの部屋の引戸を木下さんが開け、その部屋に憂が入っていった為僕達も続いた。
「広っ…!」
「ふわあぁぁ……」
そこは旅館の大広間と言ってもいいくらいの広さで畳が広がっており、テーブルが並べられていた。
その広さに二乃と四葉が驚きの声をあげていた。
「それでは、皆様。名札を置いておりますので、それぞれの座布団にお座りください」
憂の案内のもと、皆がそれぞれ指定された場所に座っていく。
しかし、たった数人分の席しか用意されていないからか、奥の余っている部分が勿体無く感じる。
「あれ?僕の席は?」
「和彦様はあちらに…」
僕の名札が見当たらなかったので聞いてみると、端の方に座布団が置かれており、そこを憂に指定された。
あれ?僕って蚊帳の外なの?
そんな疑問を持ちながら座布団に座ると、憂も自分の座布団に座った。
憂が座った場所は上座ではあるが、その中心のやや斜め後ろの席であった。綾那は更に憂の後ろに正座で控え、木下さんは部屋の入口に控えていた。
上座から見て、右側に芹菜さん、二乃、三玖、四葉が座っており、左側の三番目。つまり、三玖の向かいに結愛が座り、その奥に一花が座っていた。
「あれ?憂ちゃんが上座じゃないんだ」
「ええ。
「それって五月よね?」
「ふふふ…」
結愛の質問に憂は、自分は補助的な立場てもあるので上座には座らないと答えた。
すると二乃から、そのある方が五月ではないかと憂に聞くと、憂は微笑みながら流した。
「カズヒコさん…?」
三玖が僕に聞いてくるが、根本的な計画の内容を知らないので答えようがなかった。
「ごめん三玖。僕も今日の事は何も聞かされてないんだ」
「ええぇっ…!先生も知らないんですか!?」
僕の答えに四葉は驚きの声をあげた。ただ、結愛と一花はどこか落ち着いた状態でいるように見える。
「和彦さんまで知らないなんて……五月さんはいったい何をするつもりなのでしょうか…」
「五月は楽しいことって言ってたわね。一花は聞いてる?」
芹菜さんの言葉に二乃が笑みを浮かべながら、昨日五月が言っていた言葉を話し、そして一花に聞いていないか問いかけた。
「ごめんね。私も何も聞かされてないんだ。それに、どちらかと言えば私は部外者のような気がするんだけどね……」
「それはない…例え一花がフータローの事を好きであっても、カズヒコさんはあの場にいた人たちを全員好きだと言った。つまり、一花も含まれてる…」
「あはは…どうにも微妙な気持ちだね…」
二乃の問いに自分も知らないと、むしろ自分は和彦に告白した訳でもないから部外者ではないかと一花は答えた。
しかし、それを三玖は否定して、この場にいても良いと答えたのだ。
確かに、僕は一花の事も好きだと思う。けど、僕が好きと言ったからといって、上杉を諦めろと言う訳ではない。それは、四葉とことりにも当てはまるだろう。
「憂様。残りの方々が来られたようです」
「そうですか」
入口に控えていた木下さんが憂に五月達が着いたことを伝えると、その場に立ち上がり出迎えの準備をしていた。
すると──
「本当にすっごい庭だよねぇ~…あ、みんな!無事に着けたんだ」
テンションが高いことりを先頭に飛鳥と五月も部屋に入ってきた。
「みなさんお久しぶりですね」
「ふふっ…電話で何回か話してるから、あまり久しぶりって感じはしないけどね」
「お疲れ様…飛鳥」
飛鳥が久しぶりだと皆に声をかけると、春の旅行で特に仲良くなった二乃と三玖が笑顔で迎えた。
そんな風に迎えられた飛鳥は僕の方に手を振ってきたのでそれに手を上げて応えた。
「貴女様が立花飛鳥様ですね。初めまして。今井家当主が娘、今井憂と申します。以後お見知りおきを」
先程、屋敷の入口で僕達を迎えたようなお辞儀をして憂は自己紹介をした。
「はじめまして。立花飛鳥です。あなたの事もことりたちから聞いています。今後もよろしくお願いします」
そんな憂に飛鳥は頭を下げ、また頭を上げると名札の席に座った。それにことりも続く。結愛の横にことり、そして飛鳥の順番だ。
飛鳥の方が上座側なんだな。
そして残された五月はというと……
「では、
「はい」
憂の案内に従い、上座の席に五月は座った。それに続いて憂が座り、綾那も座った。
しかし、五月様か……向こうから見ると、憂が五月の横に控えているように見えるかもしれない。
そんな緊張した空気の中、五月は話を始めるのだった。
「改めまして。本日はお集まりいただきありがとうございます」
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回のお話はサブタイトルの通りでヒロイン全員集合です。
風太郎がいないところはご容赦頂ければと思います。
今回の飛鳥は自分で稼いだお金で来ているので、新幹線を利用しています。
さて、次回のお話にていよいよ五月の計画の発表です。
次回の投稿は4月5日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。