少女と花嫁   作:吉月和玖

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138.決戦前の朝食

翌朝。

ことりと四葉、綾那を連れて朝のジョギングを終わらせた後、軽くトレーニングを道場で行い、迫り来ることり達の誘惑のあったシャワーをなんとかすり抜けた僕は、朝食の準備が出来ている大広間に来ていた。

そこには側面に三人が座れるようなテーブルが二つ並べられていた。

 

「あら、おはよ。もう準備も終わるから五月の隣に座ってなさい」

 

配膳をして、また部屋から出ようとしていた二乃に挨拶されたのでそれに返した。

 

「おはよう二乃。二乃達が朝食を?」

「ええ。昨日憂に話したんだけど、食事は自分たちで用意するってことになったのよ。その方が私たちの料理を和彦に食べてもらえるでしょ?」

 

ウィンクしてをしながら二乃は食事を自分達で作る理由を説明してきた。

 

「後、このテーブルの配置の方が和彦の周りにみんなが座れると思って用意してもらったわ。とは言え、さすがにやっぱりこの部屋は広すぎね。もう少し狭い部屋の方が落ち着きそう」

「たしかに」

 

テーブルが配置されているとはいえ、それ以外の空間が妙に多いのが気にはなる。

 

「ま、それは追い追い考えていきましょ。それに結局今日の話し合い次第な訳だし。そうだ!」

「ん?」

 

何かを思い出したかのように二乃が僕に近づいてきた。

 

「おはようのキスがまだだったわ♡んッ…ちゅっ♡じゃ、用意に戻るわね♪」

 

軽くキスをしてきた二乃は笑顔でキッチンに向かっていった。

ちゃっかりしていることで。

ため息混じりに二乃に言われた通りに五月の横に座った。

 

「おはようございます。和彦さん」

「ああ、おはよう五月」

 

五月の隣に座って笑顔で挨拶をしたのだが、何故かじっと五月に見られていた。

 

「えっと……何かな?」

「……二乃にはして、私にはなしですか?」

 

やっぱ見られてたか…

 

「いや、五月はそういうの人前ではやりたくないのかなって思ってさ」

 

そう言ってチラッと、一番遠い位置に座っている一花に目線を向けた。

 

「いやいや。お姉さんのことはいないと思ってイチャイチャしてくれて良いんだよ、先生♪」

 

そんな一花はニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

「そうですね。(わたくし)達の事など気にせずに。何せお二人は夫婦となるのですから」

 

更に一花の横に座っている憂も手で口元を隠しながら、微笑みを向けていた。

 

「それは……私も人前では…と思いますが…目の前でされた後であれば話は別です」

 

そう言った五月は目を瞑って唇を差し出してきた。

仕方ない…

 

「んッ…ちゅっ…♡」

 

五月の頬に手を添えて軽くキスをした。

 

「えへへ…♡やはり少々恥ずかしいところがありますね……」

 

そんな事を言っている五月だが、嬉しさの方が強いのか、両手で頬を触りながらにやけた顔を見せてくれている。

 

「あらあら。五月ちゃんも女の子だねぇ」

「うふふ…羨ましいですわ」

 

そんな五月の事を見てからかう様に一花と憂は五月に話しかけた。

 

「はあぁぁ~♪サッパリしたあぁぁ~♪」

「ですね!あ、先生!もう来てたんですね。せっかく背中を流してあげようと思ったのに逃げるんですもん!」

「憂様。もう来られてたんですね」

 

シャワーで汗を流してご機嫌なことりを先頭に四葉と綾那も大広間に入ってきた。

そんな中、四葉は僕が三人から逃げたことを文句言いながら僕の左斜め前に座った。

綾那はすぐに憂の隣に座っている。

忠誠心の高い事だ。

 

「?別に背中を流すくらいなら逃げなくても良かったのでは?」

「いや、ことりと四葉の事だから背中流すだけじゃ終わらないから!」

 

不思議そうな顔の五月に逃げた理由を伝えた。

 

「もおぉぉッ!妹にそんな言い方ないんじゃない?」

 

僕の左斜め後ろに座ったことりからはそんな風に頬を膨らませながら文句を言ってきた。

 

「はいはい、お待たせえぇ~♪何盛り上がってるのよ?」

 

そこに最後の朝食のおかずをお盆に乗せた二乃を先頭に、三玖と芹菜さんに飛鳥と結愛も広間に入ってきた。

 

「酷いんだよ二乃!お兄ちゃんが私と四葉を変態呼ばわりしてくるんだから!」

「あながち間違っていない…」

「酷いよ三玖!」

 

二乃の質問にことりが僕の文句を言ったのだが、三玖が冷静に僕の方の言い分が間違っていないと言いながら配膳をした。そんな三玖に四葉は酷いと伝えた。

 

「それで?和彦様はどちらでシャワーを?」

「綾那に頼み込んで使用人さん達が使ってる浴場を使わせてもらったよ」

 

憂の質問に答えると、憂はチラッと綾那を見た。

 

「も、申し訳ありません!和彦様がどうしてもと頼み込んできましたので!」

「別に綾那が謝ることじゃないよ。僕は気にしてないんだから。てか、使用人さん達が使ってる浴場も広いんだね。何人かいたけどビックリしたよ」

 

憂に頭を下げている綾那をフォローしつつ、使用人さん達が使ってる浴場も広かったと感想を伝えた。

 

「使用人さん達が利用されている浴場は男女別でしたっけ?」

 

配膳を済ませた飛鳥が僕の真後ろに座りながら憂に問いかけた。

 

「ええ。さすがにあの人の量で男女共有にするわけにはいきませんからね。しかし和彦様!この家の主は貴方様なのです!もう少し威厳を持っていただかないと!使用人と一緒に風呂に入る主がどこにいますか!」

「いや、そう言われても……」

 

そういうところはちゃんとしてるんだよね憂って…

 

「だよねえぇ~♪てことで、今度は逃がさないよ♪」

「はいはい!その時は私も呼んでね!」

 

憂の言葉に肯定したことりはご機嫌な声でそう伝えてきた。すると、飛鳥の左に座った結愛からその時は自分も呼んでほしいと手を挙げながらことりに伝えた。

 

「ふふふ…和彦さんも大変ですね。これからは毎日がこんな風になるのですから」

「そうよねえぇ~♪なんせ、五月だけじゃなくてみんなの事も愛さなきゃなんだから♡」

 

最後の配膳を終わらせた芹菜さんが五月の向かいに、そして二乃が僕の向かいに笑いながら座った。

 

「今さらなしは駄目だからね…?」

 

そして、僕の左に三玖が座りながら伝えてきた。

 

「ああぁぁ…はいはい。とりあえず食べますか」

『いただきまーす!』

 

僕の合図に全員が手を合わせて食事を始めた。

 

「今日は和食か」

「芹菜と飛鳥が中心に作ったからね。二人の得意分野なんだって」

 

味噌汁を飲みながら今日の朝食が和食であることを口にした。

なるほどね。逆に言えば、二乃と結女はどちらかと言えば洋食が得意だもんな。三玖はまだまだ勉強中で、ことりはオールマイティーだもんなぁ…

 

「うん。相変わらず美味しいですよ、芹菜さんの味噌汁」

「ふふふ…♡そう言っていただけて嬉しいです♡」

 

味噌汁の感想を伝えると、芹菜さんが嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「なんでセリナの味噌汁だってわかったの?」

 

すると左からじっと見てきた三玖から疑問を投げかけられた。

 

「以前、ご馳走してもらったんだよ。三玖も知ってるだろ?去年のクリスマス。その時は豚汁だったけど、味が似てるし、飛鳥の味とはちょっと違ったからね」

「ふうぅぅん…」

 

納得したのか三玖も味噌汁を飲み始めた。

 

「憂さんと綾那さんはお口に合いますか?」

 

そこに飛鳥から憂と綾那に味の感想を聞いた。

 

「ええ。とても美味しいですよ」

「はい。特にこの筑前煮など絶品です!」

 

飛鳥の問いに憂は微笑めながら、綾那は笑顔で美味しいと答えた。

 

「それは良かったです。その筑前煮は和彦さんの好物なんですよ。ね、和彦さん?」

「ん?あ…ああ……」

 

ちょうどその筑前煮に箸を伸ばしてたところだったので、少し間が抜けたような返答になってしまった。

 

「和食って難しいんだよねぇ…特に煮物だとお姉ちゃんに敵わないんだもん」

「あら。結愛の料理の腕もだいぶ上がってると思うわよ」

 

そこに結愛が和食は苦手だと呟いたのだが、飛鳥はしっかりとフォローを入れた。

 

「ま、飛鳥の料理も美味しいけど、私には敵わないかなぁ~♪」

 

ピシッ…

 

『!!』

 

美味しそうにご飯を食べながらことりが漏らした言葉にその場の空気が変わった。

僕の前の四葉と二乃と芹菜さんは箸を咥えたまま固まっており、左右の五月と三玖は僕の服を掴むように近づいてきた。

 

「あらあら♪面白い事言うのねことりは♪」

 

この空気を作っている張本人である飛鳥からは機嫌が良さそうな声が聞こえるが、絶体に心から笑っていない事は見なくとも分かっている。

そんな飛鳥の状態など気にせずことりは言葉を返した。

 

「別に飛鳥の料理が私より美味しくないとは言ってないよ♪ただ、お兄ちゃんの舌に合う料理を作れるのは私の方だって言ってるだけだよ♪」

 

ゴゴゴゴ……

 

そんな音が聞こえてきそうな空気が背中にビシビシと感じる。

 

「あ……あのっ…!か、和彦さんっ!止めていただけませんかっ…!」

「う……うん……さすがに…もう……無理っ…!」

 

両サイドの五月と三玖から助けを求められたのでため息をつきながら二人に声をかけながら振り返った。

 

「ったく……朝からお前らは何やってんだ?」

「だって飛鳥が!」「だってことりが!」

 

するとお互いに指をさしながら同じ言葉を返された。

仲が良いのか悪いのか...

 

「どっちも美味しいじゃ駄目な訳?」

「「駄目っ!」」

 

やっぱ仲良いじゃんか。

 

「はぁぁ...じゃあ、筑前煮に関しては飛鳥の方が旨いよ。これは本当だから」

「うふっ...♪」

「ええええぇぇぇぇ...なんで!?」

 

筑前煮はことりより飛鳥の作る方が美味しいと伝えると、飛鳥は上機嫌にことりは不満気にと対象的な反応が返ってきた。

 

「それは......憂?」

「はい」

「憂の舌なら分かるだろ?飛鳥の筑前煮の凄さが」

「ええ...食べて驚きました。まさにプロ顔負けの味かと」

 

僕の質問に憂はハッキリと答えた。今までに何度も美味しい料理を食べてきた憂であれば分かると思って振ったのだが正解だったようだ。

 

「筑前煮とは、一つ一つの素材によって煮込み時間が変わってくると言われております。家庭で作られる物であればそこまで拘る必要はございませんが、この筑前煮は違いますね。どれも同じ柔らかさで仕上がっております。ただ少々気になるところが...」

「何?」

 

憂が飛鳥の筑前煮を称賛するも気になるところがあると伝えた。それに飛鳥が反応する。

 

「いえ。一般的な筑前煮よりも若干甘めかと思いまして...」

「むっ...!」

 

憂の感想にいち早くことりが反応した。

一方の飛鳥は憂の質問にニッコリと笑顔で答えた。

 

「それはそうでしょう?だって、私が作ったのは()()()()()()()()()なのだから。甘めに設定するのに決まってるわ」

「なるほど...納得です」

 

飛鳥の答えに憂は納得して食事を続けた。

 

「そういえば、以前和彦さんから頂いたことりさんや結愛さんの作った卵焼きも少し甘めだったような...」

「まあ、別に甘いものが好きって訳ではないんですけどね。昔から食べていたので、そういう味の好みになっただけですよ」

 

芹菜さんが以前食べた結愛お手製の卵焼きも甘かったという感想に、僕は笑いながら答えた。

 

「て訳で。筑前煮に関して言えば飛鳥の方が旨い。てか、お前は筑前煮は滅多に作らないだろう」

「むうぅぅ...だってええぇぇ、あれ手間がかかって面倒なんだもん!」

 

納得いったような納得いっていないような感情でことりは答えた。

 

「しかし、あれよね。そういう和彦の好みについてだったら、断然ことりはもちろんだけど、飛鳥や結愛ちゃんが有利よね」

「別に隠したりしないから、今度作り方教えるわよ」

「じゃあ、私も...!」

 

二乃の言う通り、僕の好みの話となればこのメンバーで言えば断然地元組が有利である。

しかし、その有利なところも今後は教えていくと飛鳥が微笑みながら伝えるので、三玖も教えてほしいと手を挙げた。

 

「もちろんよ。料理をされる芹菜さんにも教えますよ」

「ありがとう」

 

三玖のお願いにも飛鳥は肯定し、更には芹菜にも教えると伝え、芹菜さんは感謝の気持ちを伝えた。

 

「あら。そういえば五月は料理しないの?」

「ええぇぇっ!?私ですか!?」

 

そこで飛鳥の矛先が五月に向かった。

 

「具材を切ったりなどの基本的なものであればできますが...」

「この子の場合、自分の食べる量で作るから作らせてないのよ。以前作らせようと思ったけど、一人何合食べるのかとか聞かれた時にはもう作らせないと決意したものよ」

「ううぅぅ...」

「あはは...まあ、今後頑張っていけば良いからさ。何と言っても料理の先生は何人もいるんだから」

「和彦さん...♡」

 

自分の過去の出来事を話された五月は恥ずかしそうに下を向いてしまった。そんな五月の頭を撫でながらフォローすると、うるっとした目で見てきたので自然と見つめ合ってしまった。

 

「はいはい。この場で二人の世界は作らないでちょうだい」

「ぐっ...すまん」

「す...すみません」

 

そんな僕と五月に対して二乃がツッコミを入れたので、僕と五月は二人で謝ったのだが全員に笑われてしまった。

そんな感じで、この後の両家の親との対面の当日の朝食は楽しい時間を過ごすこととなった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、親御さん達との集会前の朝の一時を書かせていただきました。
こんな穏やかな時間を書くのも良いのかもしれませんね。
ことりと飛鳥の殺気のぶつかり合いがたまにあるのは、他のメンバーとして堪らないかと思いますが(^_^;)

さて、次回ではいよいよここにいるメンバーの親御さんが勢揃いする事になります。
和彦達の気持ちは届くのでしょうか。

次回の投稿は4月20日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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