~五月side~
和彦達が学校の部活に励んでいる頃、五月は飛鳥と芹菜と一緒に家具やインテリア用品の売っているお店に来ていた。
和彦と二人で住むにあたって、五つ子達で利用していた家具等はそのまま使うとして、二人で寝るベッド等の家具や細々とした物を買いに来たのだ。
「これなんてどう?サイズ的にも良いし、素敵なデザインだと思うわ」
「ちょっと待ってください。長さを測ってきたので...」
飛鳥が良さげなダブルベッドを見つけたので五月に勧めると、部屋の間取りというよりも床の長さを測りメモを取っていたスマホを五月は確認した。
「ふふふ...五月さんってマメね。でも、そういうところは良いと思うわ」
「ありがとうございます。えっと......はい!大きさ的にも問題ないかと。窓際に置いたら良いかもです」
スマホで確認する五月の姿に微笑みを向ける芹菜に五月はお礼を伝えると、このベッドにすると決めたようであった。
「そう。ふーん...これからはこのベッドで和彦と愛し合うのよね」
「え......」
五月がこのベッドにすると伝えると、飛鳥は笑みを浮かべながらそのベッドに腰をかけ、マットを撫でながら今後の和彦と五月の事を話した。
それを聞いた五月は驚きの表情で固まってしまった。
「そうね。毎日一緒に寝るベッドだもの。そしてお互いは夫婦。何も心配する事もないものね」
「あ......あの.........」
飛鳥の言葉に続くように芹菜もベッドに腰かけながら話すものだから、五月の顔はどんどんと赤くなっていった。
「ぷっ...あははは!五月、顔真っ赤!」
「ふふふ...本当ね。可愛いわ」
「うぅぅ~...からかわないでください!」
顔を赤くして恥ずかしそうにしている五月を見た飛鳥と芹菜はからかうように笑った。
「あ~...あら?あれって......」
ひとしきりに笑った飛鳥はある物を見つけて、ベッドから立ち上がるとそこに向かった。五月と芹菜もそれに続いた。
「何かあったのですか?」
「ふふっ...じゃん!これ買っといた方が良いんじゃない?」
五月が質問をすると、飛鳥は一つのクッションを持って五月と芹菜に見せた。
「?何それ。YES?」
飛鳥が見せたクッションには芹菜が言うようにYESという文字が刺繍されていた。
「で、こっちが...」
「.........NO、ですか......何かの合図なのですか?」
飛鳥が持っているクッションをひっくり返すと、そこには五月の言う通りNOと刺繍されていた。
「あれ?二人とも知らない?これはねぇ~...今夜の私はこうですよって伝えるものよ」
「?今夜?」
「──っ!それって......」
五月と芹菜の反応に驚いた飛鳥が説明するも、いまいちピンとこない五月とようやく気づいた芹菜の姿があった。
「?芹菜さんは分かるのですか?」
「そ......それは......」
五月の質問に芹菜は顔を赤くして縮こまってしまった。
「ふふっ...♪つまり、今夜は私を抱いても良いかの合図よ♪」
「~~~~~っ...!!」
ウインクをしながら捕捉する飛鳥の言葉に、五月の顔は一気に赤くなっていった。
「いくら和彦の事を好きでも女の子には色々あるでしょ?私だったら毎日でも良いくらいだけど、あの日は流石に無理じゃない?」
「ま...毎日......」
飛鳥の言葉に、芹菜はこの間の情事を思い出したのか、両手で頬を押さえながら思いにふけていた。
「そ、そんな!ま、ままま...毎日するものなのですか!?」
芹菜とは正反対に五月は驚きの表情で飛鳥に聞いた。
「さあ?でも、五月だって和彦とキスだったら毎日したいでしょ?」
「そ......それは......」
飛鳥の答えに五月は顔を赤くしながらも小さく頷いた。
「でしょっ♪そういえば、今夜は和彦と五月が一緒に暮らす事になる初めての夜だけど......五月はどするの?」
「え......」
ニヤリと笑みを浮かべながらクッションを五月に渡しながら飛鳥は質問した。それに、五月はクッションを受け取るもそのクッションを持ったまま固まってしまった。
「五月としては......和彦とシたい?」
「~~~~~っ...!!」
飛鳥の質問にボンッとまた顔を赤くした五月は受け取ったクッションをじっと見た後、クッションに顔を隠しながら飛鳥と芹菜に答えを見せた。
『YES』
「あらあら。五月さんも女の子ね」
「ふふっ...なら、五月からちゃんと伝えないとね。どうせ和彦さんの事だから五月を大事にしたいって思って行動を起こさないだろうし」
「そうね。でも、一度ついた和彦さんは凄いわよ♡そんな中でも優しさはあってで......やだっ...♡」
五月の答えに飛鳥と芹菜はお互いに顔を見て微笑み、五月から行動を起こすように促した。
そんな中、この中で唯一の経験者である芹菜は和彦との情事を思い出してときめいていた。
「あらあら、芹菜さんったら......あら?」
芹菜の表情を羨ましそうに見ていた飛鳥であったが、スマホに着信があるのに気づいた。五月と芹菜も同様のようである。
「「こ、これはっ...!」」
「まったく、あの
三人の元に届いたのは一つの画像データ。
そこには和彦に頭を撫でられて嬉しそうなことりと顎を撫でられて嬉しそうな文香の姿があった。
「本当にさっさと行動移さないと、ことりはともかくおばさまに取られちゃうわよ。和彦の初めて」
「うぅぅ~...」
呆れ気味に話す飛鳥ではあったが、五月にはただ事ではないという気持ちからか飛鳥の言葉は聞こえていないようだった。
「あ、あのね五月さん!」
そこに意を決したように緊張した赴きで芹菜が五月に声をかけた。
「はい?どうされました?」
そんな芹菜の様子に、いつもの様子に戻った五月はキョトンとした顔で芹菜を見た。
「そ...その。こんな所で言う事じゃないと思うのだけれど......和彦さんの初めては勿論五月さんだとは思ってるし、奪うつもりもない。だけど......」
「「?」」
途中で言葉が詰まった芹菜の様子に不思議そうに五月は勿論、飛鳥も芹菜を見ていた。
「......っ!その、和彦さんとの子どもを産むのは、私が先でも良いかなっ?」
「え...?」
芹菜の提案に五月は驚きの表情で返した。
「ど、どうしたの芹菜さん?芹菜さんにしては大胆って言うか、そういうのは譲るタイプだと思ってました」
「......理由を聞いても?」
驚きの表情で芹菜に話しかける飛鳥に対して、五月は真剣な表情でいる芹菜を見て、真剣に質問をした。
「理由は年齢よ」
「年齢......なるほど」
「......」
芹菜の和彦との子どもを五月よりも先に産みたいという理由に年齢をあげると、飛鳥は納得した。それでも五月は真剣な瞳を芹菜に向けていた。
「私も子どもを産むのも勿論五月さんが先だと思ってる。でも、五月さん......ううん。五月さん以外の皆もそう。皆まだ学生だから」
「和彦さんの事だから私達の卒業まではなしと言いそうね」
芹菜の言葉に補足するように話す飛鳥に芹菜はコクンとと頷いた。
「それに和彦さんは、もしかしたら大学卒業までとも言いかねない...もしそうなってしまうと私は......三十過ぎちゃうから...」
悲痛な声で五月より先に子どもを産みたい理由を話した。
芹菜の話を聞き終えた五月は目を瞑り暫く考えると、ふっと笑みを浮かべた。
「心配いりませんよ。芹菜さんは私たちグループの中では歳上ですから元々私もそこは考えていました」
目を開けた五月はニッコリと笑顔を返しながら自身もそこは考えていたと伝えた。
「じゃ、じゃあっ...!」
「ええ。和彦さんさえ許されたら私からは反対しません。何でしたら、私からそれとなく和彦さんにお伝えしておきます。和彦さんのことですから、芹菜さんからお願いをしても渋りそうですからね」
「──っ!ありがとう五月さん!」
五月の言葉に嬉しさから芹菜はその場で五月を抱きしめた。
「ちょっ...!芹菜さん!?」
芹菜の行動に驚きつつも、嬉しそうな顔をしている芹菜を見て、五月は笑みを浮かべながら芹菜のされるがまま暫く抱きしめられたのだった。
~一花side~
一花は一人、五つ子の引っ越しの為に部屋に残っていた。
「一花様。今ので荷物は全てでしょうか?」
「はい。ありがとうございます、手伝っていただいて」
とは言え、実際に引っ越し作業をしているのは、今井家が派遣した者達なので一花はどの荷物を運ぶのか指示を出しただけだった。
「いいえ。これが私達の仕事ですので。後、本日この部屋にいる者達は、来年より別邸にて使用人として働く者達です。一花様は主となられる和彦様の義理の御姉様にあたります。私達に対して敬語など不要にございます」
「あはは...うん。わかったよ」
「では、細々とした仕事に戻らせていただきます」
「よろしくね~...」
今回の作業の責任者と思われる使用人の女性。名は
が、本人にはそのようなものに興味がないようで、主である今井家の使用人として恥じぬように清潔でいるが化粧も薄く、申し訳なさ程度である。また、黒淵眼鏡をして少しつり目の為か、周りからは若干怖がられている模様である。
そんな彩里など現在部屋で作業をしている女性達は
彩里が部屋から出ていくと一花はため息をついた。
「はぁぁ...やっぱ慣れないなぁ...それにしても...」
歳上の人達に指示を出し、更には敬語を使わない。こればかりは一花にも慣れずため息しか出なかったのだ。
そんな一花が部屋を見渡すと、そこにはここで使われていた布団と五月の制服などがクロゼットにかかっており、下には五月の服などが収納されたボックスが置かれていた。
ちなみに、和彦の荷物はもう一つの部屋に置かれている。別々の部屋で寝るという訳ではないのだが、教師の仕事を家でする時用にと別の部屋に置いているのだ。まあ、ベッドは結愛が使うと我が儘を言われたので、それ以外という訳ではあるのだが...
「本当に五月ちゃん、先生と結婚してここで二人で暮らすんだ。凄いな。お姉さんには真似出来ないよ。それにしても...ぷっ...」
五月の行動力に関心しながらも、五つの布団が積まれた場所を見て一花は吹き出してしまった。
和彦と五月の二人暮らしであれば、布団を五つも置いておく必要がない。なのだが...
──たまには泊まりに来てもいいでしょ?
──うん...!私たちにもその権利があるはず...!
二乃と三玖の後押しもあり、泊まりに来た時用にと置いてあるのだ。
「あの時の先生の困った顔、今でも思い出すと笑いが出ちゃうよ♪」
和彦は反対したのだが、他の女性陣からの猛プッシュに、五月の『仕方がありませんね』の一言で二乃と三玖の提案は通ったのだ。
一花はそんな光景を外から見ていたのだが、その時の和彦の肩を落とす姿を思い出して笑いが出てきたのだ。
そこに──
「失礼いたします」
「ん?どうしたの?」
両腕をおへその前で組み軽く頭を下げた彩里が部屋に戻って来た。
「一花様にお客様でございます。上杉風太郎様ですが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
「フータロー君!?う、うん!通しちゃって」
「かしこまりました」
風太郎の名前を聞いた一花は、驚きつつも喜びの声で答えると、彩里は特に表情を変えずまた一礼をして玄関に向かった。
すると、暫くしたら風太郎が一花のいる部屋までやって来た。
「よぉ。なんだ、一花一人なのか?」
「う、うん。二乃と三玖と四葉は空手部に行ってて、五月ちゃんは飛鳥と芹菜さんと買い物だよ」
「そっか...しっかし、マジでマンションに戻るんだな」
風太郎は部屋のドアから廊下を覗き込むと、メイド服の使用人達がテキパキと作業をしている様子を見て一花に質問した。
「うん。よく知ってたね」
「まあ、さっきまでお前達の親父さんと会ってたからな」
「お父さんと!?」
風太郎の言葉に一花は驚きの声をあげた。
「ああ。さっきまで武田と会っててな。ここまで送ってくれたのもお前達の親父さんだ」
「そ、そうなんだ...」
(そういえば、フータロー君に直接家庭教師継続の話をするってこの間言ってたっけ)
風太郎の言葉に先日の和彦と五月の婚姻による話し合いの場で、和彦がマルオに風太郎の家庭教師継続のお願いをしていた時に、マルオが風太郎に直接継続の話はするという事を一花は思い出していた。
「てか、お前!」
「ん?」
そこで風太郎が一花に対して右手人差し指で指しながら風太郎は何か言いたげな顔を一花に向けた。
「何か余計な事を言ってないだろうな!親父さんの警戒心バリバリだったぞ!」
「あ~......あはは、私がフータロー君を好きだってお父さんに言っちゃった」
「はあぁ~っ...!?」
風太郎の質問に目線を逸らしながら一花は白状すると、風太郎は驚きの顔になってしまった。
「だって、しょうがないじゃん!そういう雰囲気になっちゃったんだしさ!聞いてるでしょ?この間の私たちの事?」
驚く風太郎に対して、一花は頬を膨らませながら腕を胸の前で組み、顔を風太郎から逸らしながら説明した。
「あ...ああ。武田がいなくなってからな。俺には話しておこうって事になって。五月と先生の結婚にも驚いたが、まさか他の姉妹や立川先生に立花姉妹。今井に木下とことりまで来年から一緒に住むことになるとはな...」
一花の言葉にため息を一つついた風太郎は呆れ顔になってしまった。
「そういう事。そこで、お父さんから五月ちゃん以外のみんなの気持ちを聞かれたから、私はフータロー君が好きだって言ったの。先生はどっちかって言うとお兄ちゃんって感じなんだけどねぇ。まあ、戸籍上は私が姉なんだけど...あはは...」
「そうか...」
「ああ。ちなみに、二乃と三玖ははっきり先生が好きだって答えたけど、四葉はまだ答えてないからね」
「え?そうなのか?」
何か悩んでいそうな風太郎に、他の姉妹の気持ちを一花は伝えた。
「うん。まだよくわかんないんだって」
(ま、本当はフータロー君と先生の間で揺れ動いてるんだけどね...さすがに本人抜きでこれは伝えられないでしょ)
「とりあえず、先生への気持ちがどうであれ、姉妹一緒に暮らす事になったんだよ。あっ...!」
「な...なんだよ...」
和彦への想いがどうであれ、姉妹は一緒に和彦と五月の家に厄介になる事を伝えた一花はあることを思い出した。
それに風太郎は嫌な予感を持ちながら一花に聞き返した。
「あはは...ことりも自分のお父さんにフータロー君が好きだって伝えてて...そしたらことりのお父さんがそいつを抹殺するって凄い怒ってたのを思い出しちゃって...」
「............」
笑いながらことりのお父さん、つまり健介が風太郎抹殺を考えている事を伝えると、風太郎は口を開けたまま固まってしまった。
「ことりのお父さんって凄いことりの事を溺愛してるみたいでさ。もう、その場から立ち上がってすぐにでもフータロー君のところに行く勢いだったよ。ああ、ことりのお父さんも空手してて、先生と同じくらい強いよ」
「......俺は生きていられるのか...?」
一花の笑いながら話す内容を聞いて、風太郎は自分の危機的状況に固まってしまった。
「あはは、そこは大丈夫だよ。きっと先生や先生のお母さんが抑止してくれてるみたいだしね♪それよりも...」
風太郎の反応に楽しそうな声で一花は答えると、いたずらっ子のような顔で風太郎ににじり寄った。
「な...なんだよ...」
それに対して風太郎は、一花から距離を取るように少しずつ後ずさっていた。しかし、それもすぐに出来なくなり、風太郎は壁際へと一花に追い込まれた。
そこで風太郎は横から抜け出そうとするも──
ダンッ...
「どうしたのフータロー君?何で逃げるのかな?」
笑顔の一花が両腕で壁を押さえつける事で、風太郎の逃げ場は無くなった。所謂壁ドン状態を一花がしている状態である。
「普通これ逆じゃね...?」
「そうだね♪」
恐る恐る聞く風太郎に一花は笑顔で答えた。
「で?何なんだ?」
「ふふふ...五月ちゃんと先生のラブラブなところ見てたら、私も我慢できなくなっちゃった♡ねえ...フータロー君...♡キス...していい...?♡」
そんな事を伝えた一花は徐々に風太郎の唇に自身の唇を近づけていった。
「あ、阿呆か!先生と五月は夫婦になるからいざ知らず。俺とお前は付き合ってもないだろ!」
そんな一花の行動を、風太郎は一花の両肩を手で押えて一花からのキスを拒んだ。
「ぶうぅ~...この間したんだから、いいじゃんキスくらい」
「したんじゃない。お前が勝手にしてきたんだ!」
風太郎の拒みに、一花は頬を膨らませて文句を言うも、風太郎は何とか理性を保ちながら一花からのアタックを躱し続けた。
「ふんだ!じゃあ、今回も私が勝手にしちゃうもんね。ちゅっ...♡」
そんな風太郎の抵抗をものともせず、一花は風太郎の左頬に軽くキスをした。
「おまっ──」
「隙あり♡んッ...ちゅっ...ちゅっ...♡」
突然の頬へのキスで、風太郎は驚き一花の肩を押える力が弱まったところに一花は風太郎の唇を奪った。
「ふふふ...♡やっぱりキスってドキドキするね...♡」
「~~~~っ...!」
「おやおや、フータロー君ってば顔がまっかだぞ?」
「......そう言うお前もな...」
顔を真っ赤にしている事を一花に指摘された風太郎ではあったが、一花の顔も赤くなっていると顔を逸らし前髪を弄りながら指摘返した。
「あはは...♡やっぱりまだ緊張しちゃうからね。これからお姉さんはどんどんアピールしていくんだから、覚悟するんだぞ?ちゅっ...♡」
そして最後に一花は、風太郎の左頬に軽くキスをして微笑むのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回のお話では、五月と飛鳥と芹菜の買い物組と、引っ越しの指揮の為に部屋に残っていた一花の所に風太郎が訪ねたお話を書かせていただきました。
あの「YES」「NO」クッションって普通にお店に売ってるんですかね?僕は見たこと無いのですが、今回のお話では棚に並んでいる体で書かせていただきました。
しかし、「YES」のクッションに顔を埋めて飛鳥と芹菜に見せる五月を想像するとニヤつきが止まりませんね( *´艸`)
また、一花の風太郎攻略への行動も着実に動いております。
和彦達に比べればほのぼのとしていますがね(*^ω^)
次回は、そんな初めての決心をしている五月を中心としたお話を書ければと思っております。
次回の投稿は5月30日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。