少女と花嫁   作:吉月和玖

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15.試験対策

「この間小テストをしてプリントも配ってるから分かってると思うけど、来週から中間試験が始まるからねぇ」

 

朝のホームルームの時、連絡事項を伝える場で中間試験が始まることを伝えた。予想通りと言えば予想通りであるが、あちこちから悲鳴があがっている。

 

「はいはい静かに。念のため伝えておくと今回も各教科30点にいかなかった人は赤点だからそのつもりで。各自しっかりと勉強しておくように。特に数学は補習プリントを出してあげたんだから赤点回避をするように」

 

『はぁ~い』

 

僕の言葉にクラスからは返事が返ってきたのだが、ここまで信用が出来ない返事もないな。

 

「じゃあ他に連絡事項はないから朝のホームルームはここまで。一限目の準備をしておくように」

 

そう言って教室から出ようとするとことりから声をかけられた。

 

「先生」

「どうした?」

「放課後はやっぱり数学準備室の立ち入りは禁止なのかな?」

「あー…」

 

公にはしていないが、試験が始まる一週間前から試験が終わるまでは基本的に数学準備室の出入りを禁止している。ことりにはこの時期には来ないように言っているから聞いてきたのだろう。もちろん、分からないところの質問であれば追い返したりしない。

 

「何か用事でもあった?」

「えっと…三玖たちの勉強会に使わせてほしくて。図書室は多くなると思うし」

 

なるほど。うーん、理事長からも協力してくれと言われてるし仕方ないか。

 

「分かったよ。だけど僕も仕事があるからあまり長居出来ないよ」

「ありがとう。早速みんなに伝えるね」

 

そう言って自分の席に戻ってから隣の三玖に話しかけている。

はてさて何人集まることやら。そんな考えをしながら教室を後にした。

 

・・・・・

 

昼休み明けは二年一組での授業だったのだが早めに着いて教壇にある椅子に座ってチャイムが鳴るのを待っていた。僕はこういう事が多いので生徒達は気にせずそれぞれ思い思いに行動をしている。

そういえば、一組は上杉と五月がいたっけ。上杉はまた休み時間も勉強しているのかと思って教室全体を見回すと、上杉が五月のところで何やら話しているようだ。

少しは和解をしたのかなと思って教科書に目を向けていると……

 

「この問題教えてもらってもいいですか?」

「おー、どこだ……って五月?」

 

何故かノートを持った五月が目の前にいたのだ。

 

「あれ?上杉は……」

 

五月の後ろを確認しながら聞くも不機嫌そうな顔で返された。

 

「あんな人に教わることなんてありません!……べー!」

 

極めつけは振り返って上杉に対してあっかんべーをしている。そんな五月の態度に上杉はとても悔しそうな顔をしている。

 

「はぁ…分かったよ。授業も始まるから、放課後数学準備室に来なさい」

「ありがとうございます、先生」

 

僕の言葉に笑顔で答える五月。その笑顔をどうか上杉に見せる日が来てほしいものだ。

 


 

そして放課後。

数学準備室には、勉強会を行うために集まった一花、三玖、四葉、上杉にことり。そして、僕に勉強を教えてもらうために来た五月の姿があった。

 

「むー…」

 

まさかここで勉強会が行われるとは知らず、五月は少し不機嫌そうな顔をしている。

 

「よし、何はともあれ二乃以外は集まったな」

「言っておきますが、私はあくまでも先生に分からないところを聞くためにここに来たのです。断じて勉強会には参加しません!それでは先生この問題をお願いします」

 

強情な子である。まあ、自主的に勉強をするのであれば問題ないだろう。

 

「それじゃあ、持ってきてもらったノートの場所を教えていくね。他に聞きたいことがあったら聞いていいから」

「はい!」

 

そして五月へのマンツーマン授業を開始するのだった。

 

・・・・・

 

「ま、まぁ…想定内だ…」

 

風太郎の存在を無視するかのように勉強を始めた五月。その光景を見た風太郎は腰に手を当て、乾いた笑みを作ってそう呟いた。

 

「それよりもフータロー君。頬大丈夫?」

 

一花が指摘している通り風太郎の頬には、誰かにぶたれたのか綺麗に手の跡がついているのだ。

 

「も…問題ない…」

「それ、誰にやられたの?もしかして二乃?」

「ま、まあな」

 

ことりの質問に風太郎が目線をそらしながら答えた。

 

「どうせフータロー君が失礼なこと言ったんでしょ」

「確かに。風太郎君ならありえるかも」

 

ふふふ、と一花とことりは風太郎が悪い前提で笑いながら話し出した。

 

「俺は悪くねぇ。勉強に誘っているだけなのに二乃の奴がいきなりぶってきたんだ」

「本当かなぁ」

「じゃあ一花お姉さんにその時の通りに言ってみなよ」

 

一花は胸に手を当てウィンクする仕草で風太郎に促した。

 

「お、おう………祭りの日一度は付き合ってくれただろ!考え直してはくれないか」

「「え?」」

「なんならお前の家でもいいぞ。あと一回だけ!一回だけでいいから!」

「「ちょ、ちょっ……」」

「お前の知らないことをたくさん教えてやるよ!」

「「ストーップ!」」

 

同時に一花とことりが風太郎に向かって手のひらを向けて風太郎の言葉を止めた。

 

「なんだ?そういえば、同じところで二乃にぶたれたな」

 

一花とことりの行動に疑問を持ちながら風太郎は答えた。

 

「はぁぁ…まさかここまでだったなんて」

「風太郎君。もしかして二乃の近くに二乃の友達いなかった?」

「いたぞ。それが何か関係あるのか?」

「「はぁぁ……」」

 

一花とことりはそこで盛大にため息を溢すのだった。

 

「まあいい。そんなことよりもだ、お前たち勉強を…」

「上杉さんっ」

 

勉強を始めようと声をかけようとする風太郎に四葉が遮った。

 

「問題です。今日の私はいつもとどこが違うでしょーか?」

 

そしてその場でクルッと回る四葉。その様子を冷めた目で風太郎は見ている。

 

「お前らもうすぐ何があるのかもちろん知ってるよな?」

「無視!!」

 

四葉のツッコミの通り風太郎は四葉の問いを無視して一花と三玖に問いただしている。

 

「ヒントは首から上です」

 

そんな風太郎の態度に四葉はめげずに問題を続けている。

 

「あ、そっか林間学校だ」

「うわぁー、もうそんな時期か楽しみぃ」

「楽しみ」

 

女子三人の答えは風太郎が望んでいたものとは違っていた。

 

「ことりはともかく、試験は眼中にないってか?頼もしい限りだな」

「あはは、わかってるってー」

 

ものすごい形相で語りかけてくる風太郎に圧されて、一花は笑いながら答えた。

 

「本当かよ…」

 

そんな一花をあまり信用出来ていない風太郎は頭を抱えている。

 

「上杉さんには難しすぎたかなー」

 

誰も見ていない中一人考えるように呟く四葉。諦めていないようだ。そして、ニコッと笑って頭のリボンを両手で覆うように強調して正解を伝える。

 

「正解は『リボンの柄がいつもと違う』でした。今はチェックがトレンドだと教えてもらいました!」

 

ガシッ

 

「お前の答案用紙もチェックが流行中だ。よかったな」

「わ~~~~最先端~~~~」

 

四葉のリボンをガシッと掴み、チェックだらけの四葉の答案用紙を見せつけている風太郎。そんな四葉は乾いた笑顔で冗談を口にする。

 

「おーい、もう少し静かにね」

 

少し騒がしくし過ぎたため和彦から注意を受けてしまった。注意をする和彦の横で五月は集中して勉強をしているようだ。

 

「あはは、ごめんねぇ先生」

 

笑いながら手をあげて答える一花。そんな態度に和彦も咎めることはなかった。

 

「ったく。お前らも笑ってる場合じゃねえんだぞ。四葉はやる気があるだけましな方だ」

 

自分で崩してしまった四葉のリボンを綺麗に戻しながら意見を言う風太郎。そんな風太郎の意見に四葉は若干照れている。

 

「このままではとてもじゃないが中間試験を乗りきれない!その先の林間学校だって夢のまた夢だ!中間試験は国数英社理の五科目。これから一週間徹底的に対策していくぞ!」

「みんな頑張ろー!」

「「え~~~」」

 

風太郎の強い意気込みに対してことりが片腕をあげて応えるも、一花と四葉からはげんなりとした声が漏れている。

 

「数学はこの間小テストに補習までしてくれたからな。その内容を中心に復習していくつもりだ。だから三玖も日本史以外も……っ!」

 

一人黙々と勉強をしていた三玖に風太郎は近づきながら話しかけると、三玖は日本史ではなく英語を勉強していた。

 

「三玖が自ら苦手な英語を勉強をしている…熱でもあるのか?勉強なんていいから休め?」

 

そんな三玖の行動に風太郎は驚きを隠せずにいた。

 

「平気。少し頑張ろうと思っただけ」

 

そう言ってチラッとある方向を見たかと思うと、またすぐに勉強を続けた。

そんな三玖の気持ちに胸を打たれた風太郎は満足そうな顔をしている。

 

「よーし、みんな頑張ろー!」

「おー!」

 

鼓舞するような四葉の言葉にことりが腕を挙げて応え、全員勉強モードに入るのだった。

 

・・・・・

 

ソファーとテーブルが置いてある一角で上杉とことりによる勉強会が行われたいるが、そちらに参加せず五月は僕の横で勉強をしている。たまにチラッとそちらの様子を見ながら。

 

「楽しそうだね。気になるなら五月もあっちに参加したら?」

「き…気になると言うわけでは……ちょっとうるさいと思っただけです」

 

そう言って五月は勉強の続きを始めた。本当に素直じゃないんだから。

 

「言っておくけど僕は数学しか教えられない。後は日本史の、しかも戦国時代が得意なだけ。となると、否が応でも他の誰かの助けが必要になってくると思うよ」

 

僕の言葉にピタッと五月のペンが止まった。

 

「その時は自分の力で頑張ります…後はことりさんにお願いするとか…」

「でも、ことりに聞くなら勉強会や家庭教師の時間に参加しないと」

「それは…」

 

ペンを握っている力にさらに込められている。

 

「ま、追々気にしていけばいいさ」

「はい…」

 

ポンポンと頭を撫でてあげながらそう伝えるのだった。

 

勉強会は一時間ほどで終わったので今は静かになった数学準備室で試験の作成に取り組んでいる。そんな時に備え付けの内線電話に着信が入った。

 

「はい吉浦です」

『あ、吉浦先生。立川です。先ほど理事長室に来るようにと伝言をお預かりしまして』

「分かりました。連絡ありがとうございます。すぐに向かいます」

 

そこで受話器を置く。理事長室に、と言うことは五つ子関連だろう。

 

「はぁぁ、中間試験の作成で忙しいって時に」

 

そうぼやきながら理事長室に向かうことにした。

 

コンコン

 

「吉浦です。お呼びされたとのことでお伺いいたしました」

『うむ。入りなさい』

「失礼します」

 

理事長からの許可を得たので理事長室に入室する。

 

「いやー、忙しいところすまないね。早速だが中野さんのご息女たちはどうだい?君の妹さんと上杉君の二人はうまくやれているのかね?」

「どうでしょう。一朝一夕ではいかないようではありますよ。この間の数学の小テストでも結果は芳しくなかったですし」

「そうか…」

「それでも絆を深め合っているので、いずれその成果が見れると思いますよ」

「ふむ…では、君から見て今度の中間試験はどう見る?赤点の回避は出来そうかい?」

「なぜ急にそのような質問を?」

 

理事長からしてみれば生徒の成績まで気にする必要がないはず。そこまで大事な相手なのか、あの五つ子の親は。

 

「私としても特に成績までは気にはしていなかったんだが、親御さんがね……どうしても知りたいようなんだよ」

 

やれやれと肩をすくめて話す理事長。そしておもむろに電話をかけだした。

 

「先ほどはお電話いただきありがとうございます……ええ、今しがた呼び出したところです……はいすぐに」

 

そこで保留ボタンを押し受話器をこちらに渡してきた。

 

「中野さんが君と話したいそうだ。くれぐれも失礼のないように」

 

中野さんって五つ子の親?僕なんかに何の話を。

疑問に思いながらも受話器を受け取り保留ボタンを押す。

 

「お電話変わりました。旭高校で教師を行っております、吉浦と申します」

『君が吉浦先生かい?理事長から聞いているよ。若いながら優秀な教師だと』

 

相手側は男性。どうやら父親のようだ。

 

「優秀などと。まだまだ若輩者ですよ」

『ふふっ、謙遜も出来るとは人なりは良いみたいだね』

 

笑い声は聞こえるがあまり笑ってるようには聞こえないのは僕の耳がおかしいからだろうか。

 

「それで。私にご用があるとの事ですがどういった?」

『すまないね。君の妹君にも家庭教師をお願いしている手前、先ほど上杉君に伝えた内容を共有しておこうと思ってね』

「上杉にですか?」

『ああ。来週には中間試験が始まるそうだね』

「ええ。今日もその試験対策の勉強をしていましたよ」

『それは何よりだね。僕が上杉君に伝えたことはその中間試験についてだよ』

 

なんだろう。嫌な予感がしてならないのだが。

 

『次の中間試験、五人のうち一人でも赤点を取ったら上杉君には家庭教師を辞めてもらう』

「なっ……!」

 

中野さんからの一言は衝撃的なものだった。

 

 

 

 

 




いよいよ中間試験が迫ってきました。
今回のように、数学準備室での勉強もこれからちょくちょく入れていこうと思ってます。

さて、和彦とマルオが初めての対話です。理事長も目の前にいるので怒鳴ることはないと思いますが、果たして問題なく終わるのでしょうか。

ではまた次回も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。


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