「いぃ~やぁ~だあぁぁ~~っ...!私もこっちに住むのっ...!」
「「「はぁぁぁ......」」」
「「ふふふふ...」」
五月との婚姻届けを出したその日の夕方。
ゴールデンウィークも最終日で明日からは通常通りの日常に戻るので、父さん達の見送りの為に空港まで来たのだが、母さんが駄々をこね始めて僕を正面から抱きしめたまま動こうとしなかった。
そんな母さんの姿に、僕とことりとおじさんがため息をつく中、美海さんと葵さんがクスクスと笑っていた。
ゴールデンウィーク最終日ともあって、周りにはたくさんの人で賑わっている為に少し注目の的になっていて、正直恥ずかしい。
因みにこの場には薫さんは別件の用事でいない。まあ、流石にこんな場所にそう易々と来る訳にもいかないだろう。葵さんの護衛の人だけでもあちこちに潜み辺りを警戒しているくらいだ。
「はぁぁ...どっちが親なのかたまに分からなくなるわ」
「同感...」
そんな母さんの態度を見ていた二乃と三玖がため息混じりに語っており、他の皆も同意の念を込めた顔をしている。
「ほらお母さん。いい加減諦めなよ。飛行機行っちゃうよ?」
「ことりちゃんは良いじゃない!和彦の近くにいられるんだから!じゃあ、ことりちゃんが代わりに健介さん達と帰ってよ!」
「なんでそうなるのよ!」
ことりが母さんに諦めて帰るように優しく促すも、母さんは反発して、代わりにことりが父さん達と帰るように言い出した。
無茶苦茶な親である。
当たり前だが、先程までは優しい声をかけていたことりも流石に文句を言い返した。
因みにこういう時にはうるさい父さんではあるが、外面的な事もあり我慢をしてこめかみをピクピクさせながら笑みを浮かべている。
代えって怖いわ!
「はぁぁ......これでは本当に搭乗時間に間に合わないぞ」
「仕方ないわね。和彦君お願い♪」
「はっ...!?僕っ...!?」
これでは本当に飛行機に乗り遅れるとおじさんがため息混じりに眼鏡のブリッジを右中指であげると、隣の美海さんがウィンクをしながら僕に任せてきた。
なので驚きの声を上げてしまったが、あることが頭を過り美海さんの考えを理解し、心の中でため息をついた。
そして母さんにだけ聞こえるように、母さんの左耳に顔を近づけて話しかけた。
「父さんの手綱を握れるのは母さんだけだろ?だから父さんと一緒にいてあげて」
「でも......」
「じゃあ、父さんとこれからもずっと仲良くしてくれれば、今度会えた時にいっぱい可愛がってあげるよ
「~~~っ...!」
僕は囁いた後、母さんの耳から離してニッコリと笑顔を母さんに向けると顔を真っ赤にし、目を見開いた表情を向けられていた。すると、すぐにトロンとした目となったかと思うと、僕から離れ、父さんの左腕に両腕で組むと搭乗口に向かって歩き始めた。
「ごめんね健介さん♡ちょっと我が儘だったかも。反省するから許してくれる?」
「へ?お、おう!こんな事で怒ったりせんさ」
「ありがと♡今晩楽しみにしてる♡」
「───っ!?」
先程と打って変わった態度の母さんに、父さんは戸惑いながらも母さんに笑顔を向けた。そして、次の母さんの言葉に父さんは顔を赤くしてご機嫌な表情となり、母さんを連れて搭乗口を通っていった。
「はぁぁぁ......」
そんな二人を見た後に僕は盛大なため息をついていた。
「何を言ったかは分からんが助かったよ和彦君......」
「ふふっ。じゃ、私達も行くわね。今度は飛鳥の夏休み期間に来るから。結愛?和彦君やことりさんを困らせちゃ駄目よ?」
「分かってるよぉぉ...」
僕の盛大なため息に申し訳なさそうに声をかけてきたおじさんの左腕に、今度は美海さんが自身の腕を絡ませてご機嫌な顔で挨拶をして、結愛に一言僕達を困らせないように伝えてきた。
それに結愛は唇を尖らせながら文句を言いたげな顔で答えていた。
まあ、実際困らせてるのは貴女達でしょ、って言いたいんだろうけどね。
そんな結愛の言葉に満足そうな顔をしたおじさんと美海さんも搭乗口を通っていった。
ボスッ...!
「と......どうした、飛鳥?」
そして最後に福岡に帰る飛鳥が僕の胸に飛び込むように抱きしめてきたので、そのまま抱きしめ返した。
「二ヶ月以上離ればなれなのよ?これくらい良いでしょ?」
暫く僕の胸に顔を埋めていた飛鳥であったが、顔を上げてうるっとした目を向けてきた。
仕方ないな...
「んッ...ちゅっ...ちゅるッ...ちゅっ...れろッ...れろッ...ちゅるッ...ちゅっ...♡ふふふ...愛してるわ、和彦♡夏休みになったらすぐに飛んで来るから♡」
「ああ、指輪を持って待ってるよ」
「うん...♡ちゅっ...♡」
憂が発注した五月以外の指輪は流石に一日では出来ないので、僕が預かる事になった。
福岡に送っても良かったのだが、『私にも五月みたいに指に嵌めてほしいわ』、という一言で送らずに次に会った時に渡す事になったのだ。
そして、最後に軽く僕の唇にキスをした飛鳥は、右腕を振りながら搭乗口を通って行った。
「飛鳥さん人前で大胆でした」
「流石は師範ですね」
四葉と綾那は先程までの飛鳥と僕のキスに対して真っ赤な顔で感想を漏らしていた。
てか、師範関係ないからね綾那。
「じゃ、私たちも帰ろっか」
「ですわね。和彦さんのマンション以外の方は当家がお送りしますのでご安心を」
そんな中、ことりの帰る号令に葵さんは、五月とことりと結愛以外のメンバーは、今井家が責任持って送ると言ったので、駐車場で別れてそれぞれの家へと帰るのだった。
翌日。
「おはよう、皆。て、だらけきっているなぁ...」
朝のホームルームの為に教室の教壇に立って挨拶をすると、ゴールデンウィーク明けもあり、だらけきっている生徒達に呆れて話しかけた。
「だって、連休明けだよ?こうなっちゃうよぉ...」
「だよねぇ...もうちょっと休み欲しかったなぁ...」
僕の言葉にあちこちから連休明けだから仕方がないやもう少し休みが欲しかった等と話が出ていた。
因みに上杉は通常運転で自習をしていたので、名簿で軽く頭を叩いてそれを止めた。
それを見ていた一花とことりはクスクスと笑っている。
「ま、そんな言葉が出てるって事はゴールデンウィークを皆楽しめたってことかな?」
「うん!友達といっぱい遊んだよ♪」
僕のゴールデンウィークを楽しめたのかという問いに、一人の女子生徒を皮切りに次々とゴールデンウィークの過ごし方が出てきた。
「マジかよ!俺なんか親に短期講座行けって言われて散々だったぜ...」
「俺もぉ...なんか普通の平日の方が良かったかもしんねぇ...」
「ふふっ...良い学生生活を過ごしてるじゃないか、ね?」
ゴールデンウィークを楽しめた者もいれば、勉強漬けとなり大変だった者もいたようで、その者達は早くゴールデンウィークが終わってほしいと嘆いていたそうだ。
そんな彼等に、武田は学生としてのあるべき姿じゃないかと話している。それには同意するのか上杉もうんうんと納得している顔で頷いていて、そんな上杉を見て一花とことりはまた笑っていた。
「そう言う先生はどっだったの?」
「空手部は普通に活動してたからそっちじゃね」
ある程度自分達の話で盛り上がったところで、話が僕に振られた。
「そうだね。さっきも言われた通り勿論部活にも顔を出したけど、僕にとっては濃厚で生涯忘れられないゴールデンウィークになったかな」
僕の言葉に教室中でどよめきが起こった。
事情知っている五つ子誕生日パーティー参加者はいつも通り落ち着いた表情でいる。
「そうだ。この機会に皆に共有事項があったんだった。五月。ちょっと前に来てくれる?」
「は、はい!」
僕に呼ばれた五月は緊張した声で返事をすると、席を立ち僕の左側に立って皆の方向を向いて、両手を前で握り少し顔を赤くしてうつむき加減でいる。
そんな五月の姿を見て、一花はニコニコし、二乃はニヤニヤと笑みを浮かべ、三玖は嬉しそうな顔をして、四葉は満天の笑顔でいた。
そして、僕はそんな五月の右肩に手を置いて発表した。
「ここにいる中野五月だけど、昨日僕と籍を置くことになった。まあ、つまり結婚だね。だから、今日から彼女は吉浦五月なので、皆も認識しておくように」
『は......?』
僕がいつも通りに話したからか、教室全体の時間が止まったかのように、この事を知らない生徒は全員が固まっている。そして次の瞬間──
『はああぁぁぁ~~......っ!!』
怒号のような声が生徒達から返ってきた。
「ちょいちょい!先生何当たり前の様に話してんの!?」
「いや、普通に役所に提出してるし」
「えぇぇっ...!!提出って婚姻届っ...!」
「ああ、そうだよ」
『はああぁぁぁ~~......っ!!』
婚姻届を役所に提出している事をさも当たり前の様に伝えたので、また怒号のような声が生徒達から返ってきた。
「いやいや!!待って待って!!え!?何!?先生ってば教え子に手出したの!?」
「手を出したとは心外な。ちゃんと両家の親の了承は得てるんだから」
まあ、五月以外にも体を交えた者がいるから何とも返しにくいが...
「吉浦さん、本当!?」
「うん。本当だよ。昨日まで私の両親がこっちに来てたんだけどね。五月......て言うか
「うっそおぉぉっ...!!」
ことりが五月を
「とは言え。妻だろうが、僕の生徒に変わりはない。公私混同はしないからいつも通りに接するから。皆もそのつもりでいてくれ」
僕がそう伝えるも全員の耳に入っていない様であちこちで話が始まってしまった。
まあ、良いか。
「五月。悪かったね。席に戻って良いよ」
「はい」
そんな中五月に一言声をかけて、五月を自分の席に戻した。
パンパンッ...
そして手を叩いて話を終わらせこちらを見るように促した。
「さて、自分から話を脱線させちゃった訳だけど、本題に戻ろうかと思う。ゴールデンウィーク明けてすぐではあるが皆の待ちに待った行事が開催される訳だが──」
「そうだぜ!修学旅行が待ってるぜぇ!」
『うおぉぉーーー!!』
僕の話の途中で前田がはしゃぎながら声を上げたので、クラスメイトがそれに続いた。
「え、てことは先生と五月さんにとって新婚旅行って事だよね♪」
「おお♪じゃあ、五月さんも楽しみだよね?」
「ええぇぇっ...!?そ...それは......」
「はいはい。五月をからかわないの。それに、これは学校行事なんだから新婚旅行は他にする予定だよ」
そして、先程の僕と五月の婚姻の話があったからか、女子を中心に五月にとって新婚旅行になるから楽しみにしてるんじゃないかと盛り上がったので、僕はそれを止めて新婚旅行は別にすると伝えた。
「へえぇぇ~...先生ってばそこはちゃんと考えてるんだ」
「当たり前でしょ」
そんな僕の言葉にニヤニヤした顔で一花が聞いてきたので当たり前だと伝えた。
ただ、どうせ二人っきりで行けないんだろうな...と心の中でがっかりしているのは内緒である。
「後、前田嬉しそうに音頭してるところ悪いけど、それ以外にも何かある事忘れてないよね?」
「はい?何かありましたっけ?」
本気で分かっていないのか不思議そうに前田は固まっている。
はぁぁ......こいつも五つ子と変わらんな。いや、五月や三玖はちゃんと考えて勉強してるが。
「前田君。忘れてはいけないよ。修学旅行の前にあるじゃないか、中間試験が、ね」
「───っ!!」
そこに前田の後ろの席の武田から中間試験の名前が出ると、前田は本当に忘れていた様で驚きの表情で固まってしまった。
「武田の言う通り。修学旅行もそうだけど、その前に中間試験があるからね。こんな時期に赤点なんて取らないように」
『は...はい......』
自信のない者がいるのか、元気の無い返事が生徒達から返ってくるのだった。
~三年一組~
その日のお昼休みの時間。
五月などの五つ子がいつもの教室から戻ってくると、五月が席に座るやクラスメイトが集まってきた。
「ねえねえ。指輪とか貰ったの?」
「え...は......はい...♡」
クラスの女子が質問をすると五月は恥ずかしそうに左手を皆に見せた。
「すごぉ~い♪本当に左薬指に嵌まってる♪」
「そういえば、先生の左手でも指輪光ってたもんね」
「すげぇぇっ...!やっぱ本物なんだな」
ガヤガヤと騒いでいるクラスメイトに囲まれて、五月は恥ずかしそうに縮こまってしまっていた。
「あらら。これは一時はこうなりそうね」
「五月大変そう...」
「助けが必要だったらすぐに駆けつけよう!」
「そだね。ま、今のところ大丈夫でしょ」
「だね。ん?」
「どしたの、ことり?」
「何か気になる事でもあった?」
そんな五月を少し離れたところから見ていた二乃は仕方ないとぼやいていた。二乃のぼやきに三玖は五月が大変そうだと心配したので、いつでも駆けつけるように準備している、と四葉が答えた。
だが、今のところ大丈夫そうだと一花が語ると、それに同意したことりが何かに気づいたようだ。
それに加奈と智子がことりに話しかけた。
「えっと、あの男子の集団なんだけど......」
加奈と智子に話しかけられたことりは、教室の隅で話している男子のグループを右人差し指で指した。
そのグループからは少しではあるが、何やら話しているのが聞こえる。
「なあ?吉浦先生が結婚したって事はよ!?」
「ああ。立川先生は傷心中って事だよな!そんな先生に優しい声をかければ俺にもチャンスが!」
「でもよ。今日の立川先生の授業って、いつもと変わんなくなかったか?もっと落ち込んでると思ったぜ」
「いやいや。実は内心ショックでかくてお昼も泣きながら食べてたかもしれないぜ」
「くっそぉ~っ...!学食にもいなかったし、立川先生どこいんだよ!」
その男子のグループは所謂芹菜ファンクラブのメンバーであり、その芹菜が和彦を好きなのは承知していたので、和彦が結婚した事で傷心しているところを狙おうと模索しているようだった。
「はぁぁ...考えることがどいつも一緒ね」
「あはは...先生の結婚話はもう学校中に回ってるからか、だいたいの男子はみんな同じ話してたよね」
そんな男子達の話が聞こえた二乃がため息をつくと、四葉が乾いた笑い声を出して答えた。
「でも、実際立川先生ってことりのお兄さん好きじゃない?大丈夫かなぁ...」
「だよね?でも、この間の中野さん達の誕生日パーティーでも、立川先生は笑顔で吉浦先生と話してたし不思議なのよねぇ...」
和彦と五月の結婚以外。つまり、二乃達の和彦を愛する者が実際には和彦とこれからも愛し続ける事が出来る事。そして、既に初めてを捧げた者までもいる事を当事者以外にはまだ話していないので、加奈と智子は立川先生の態度を不思議そうに思っていたようである。
「あはは...まあ、振られた訳だけど。兄さんは今まで通りに接してくれて良いって立川先生に言ってたしね。義姉さんもそこは許してるみたいだよ」
「そうなの!?」
「でも、それだと最悪五月さんから立川先生が吉浦先生の心を奪っちゃうかも!?」
ことりの言葉に、智子と加奈は驚くも昼ドラの世界の様になるのではないか、と心配するよりも楽しそうに話していた。
「まさか、和彦の子ども作りに励んでて芹菜は上機嫌だとは、絶対に誰も思わないわよねぇ...」
「多分ない。と言うか、今もどうせカズヒコさんとイチャついてるだろうし...」
「あはは...あり得るね。今日の集まりにも来なかったし」
「流石にこれは誰にも言えないよ。この教室だけでも本番ありなしで
盛り上がってる加奈と智子の二人の相手をしていることりの横で、五月以外の五つ子四人が小さく語っていた。
因みに、一花もとうとう欲求の我慢が出来なくなって、和彦に気持ち良くさせてもらってたりする。ただ、ディープキスは和彦から避けられてはいたりと、少しは風太郎との事も和彦なりに考えてはいるようではあった。
そんな感じで、今日のお昼休みも過ぎていくのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回は、福岡組の帰省からゴールデンウィーク明けの教室での和彦と五月の婚姻発表という流れで書かせていただきました。
普通は婚姻の事を隠すと思いますが、今回は校内にお知らせする形とさせていただきました。
まあ、言わなくても和彦と五月の左薬指にはキラリと指輪が嵌まっているのですぐにバレる事を考えての発表だったのでしょう。
そうなってくると、芹菜を始めとする和彦へ想いを寄せていると気づかれている女性達が次々と告白されてくるかもしれませんね。
まだまだ大変な日常が続きそうです。
そして、他の女性達の初体験の話も書かなければならないので、(裏)の方も頑張って書いていこうかと思っておりますが、何分時間がないので、少々お待ちいただければと思います。
次回では、和彦を想っている女性代表の芹菜のちょっと大変なお話を少しは書かせていただこうかと思います。
次回の投稿は6月25日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。