『カンパーイ!!』
カンッ...!!
週末のある居酒屋。
今夜は前から約束をしていた芹菜の友達二人の計四人で飲み会をしていた。
それぞれの飲み物が来たので乾杯をしたところである。
「んぐっ...んぐっ...んぐっ...んぐっ...ぷはあぁぁ~...!いやー、華金の酒は最高だねぇ!」
「貴女はいつも同じこと言ってるじゃない...ぐびっ...」
乾杯前にある程度自己紹介をしており、お互いに下の名前で呼ぶ事になった。
そして、今僕の向かいで中生ジョッキを一気に喉に通して呑んでいるのが静さん。この三人のメンバーでの盛り上げ担当の様である。
静さんはベリーショートヘアで髪色はベージュ。両耳に小さなピアスをしている。ボーイッシュな感じで、言動なども男よりなのかもしれない。けど、目もぱっちりしていてかなりの美人だと思う。芹菜と同じで別の高校で教師をしている。
そんな静さんの言葉に僕の左隣の芹菜がいつも同じことを言っているだろう、とツッコミを入れながら中生ジョッキを両手で持ってマイペースに呑んでいる。
しかし、いつもよりペースが遅いような...
「ふふっ...芹菜こそ、何でそんなにペースが遅いのよ。もしかして、和彦さんに遠慮してるの?」
「そ、そんな事ないわよ!ぐびっ...ぐびっ...ぐびっ...」
もう一人の芹菜の友達で、芹菜の向かいに座っていた小百合さんが芹菜のペースがいつもより遅いのは僕に遠慮しているからかとからかってきた。
小百合さんは、ウェーブのかかったセミロングヘアで髪色は茶色。性格はしっかり者らしく、よく静さんの暴走を止めているとか。目は少し細くたれ目になっており、芹菜さんに負けないくらいの美人で優しさを醸し出している。
そんな小百合さんのからかい言葉もあり、芹菜は少しペースを上げた。
因みに、小百合さんはお酒がそこまで強くないようで、カシスオレンジを頼んでおり、車の運転がある僕は烏龍茶を頼んでいる。
「あははは。芹菜のお酒好きは知ってるから自分のペースで呑んでて構わないよ。それに、今夜は酔ってても僕が介抱してあげれるからね」
「和彦さん...♡えへへ...♡ごぐっ...ごぐっ...ごぐっ...ごぐっ...ぷはあぁぁ~♪お姉さん、こっちに生中二つ追加でー!」
「はーい♪」
「うふふ...♡」
僕の言葉をきっかけに芹菜はいつものペースに戻って呑み始め、残りを一気に喉に通すとご機嫌な声で静さんと自分の分の生中の追加を頼むと、僕の左肩に自分の頬を擦り寄せてきた。
「おやおや、見せつけちゃってまぁ...あむっ...」
「ふふふ...本当よね。まさかあの芹菜がここまで男の人にすり寄る姿を見る事になるなんて夢にも思わなかったわ」
そんな芹菜の様子を見ながら、静さんは呆れ顔でお通しを食べ、小百合さんは微笑みながら芹菜を見ていた。
「はーい、追加の生中二つと唐揚げにハニーサラダでーす♪」
そこに追加の生中など来たのだが、芹菜は遠慮せずに僕に擦りよったままであった。
「あらあら♪お二人は仲が宜しいんですね♪では、ごゆっくりぃ~♪」
そう笑顔と言葉を残して女性店員さんは席を離れて行った。
「ほら、芹菜。生中来たよ」
「う~ん...もうちょっと♡」
「駄目だなこりゃ...んっく...」
「そ...そうね...」
芹菜に生中が来たから呑むように勧めるも、もうちょっとと離れようとしなかった。
そんな姿を見た静さんは早速生中を呑み始め、小百合さんも流石に引いてしまっている。
「しっかしあれだな。あむっ...最初に芹菜の現状を聞いた時はどうなる事やらって思ってたが、今のこいつを見てると幸せそうで良かったぜ」
「そうね。和彦さん。改めてありがとうございます。芹菜のこんな幸せそうな顔を見るのは初めてですので」
「いやいや、ただの優柔不断な男ってだけですよ!ただまぁ...芹菜の笑顔が守れているのであれば、それは良かったかなとは思ってます」
唐揚げを口にした静さんが、今の僕達の状況を聞いた時は大丈夫かと心配したが、芹菜の今の様子を見て微笑んでいた。
それに続くように、サラダを小皿に分けていた小百合さんが手を止めて僕に頭を下げてきたので、僕は慌てて自分の優柔不断が招いた事だと伝えた。その上で、空いている右手で芹菜の頭を撫でながら芹菜の笑顔を守れている事に嬉しさはあると伝えた。
「和彦さん......♡だから好きぃ~...♡んー...♡」
「だから!どこでもキスを求めてくるものじゃないってあれだけ言ってるでしょ!二人が見てるんだよ!」
そんな僕の行動に感激したのか、芹菜はキスを求めるように顔を近づけてきたのでいつも通り、芹菜の額と肩を抑えて何とか阻止した。
「おいおい。いつもって...」
「まさか......」
「え...ええ。校内でもほぼ毎日キスを求めてくるので大変でして!この間なんかは校内で、口でしてあげる、て言われた時は流石に止めましたが!だあっ...!この後ちゃんと愛してあげるから今は我慢して!」
「「ぶふっ......!」」
「むうぅぅ~...絶対ですからね♡んっぐッ...んっぐッ...んっぐッ...」
校内での芹菜の現状に驚いたのか、静さんと小百合さんはそこで同時に吹いてしまったのだが、芹菜は気にする様子も見せずグビグビと中生ジョッキを両手で掴んで呑み始めた。
「ゲホッ...ゲホッ...芹菜!あんた校内でそんな事してるの!?」
「しかも毎日で口でしてあげるって!」
「ん?小百合から借りてる薄い本ではそんな描写があったわよ?日常的ではないの?」
あーー...なるほど、それで気にせずあんな感じなのか。まあ、七割以上は自身の欲求だろうけど。
二人の怒涛の質問責めに、芹菜は気にする様子もなくポワンとした顔で答えた。今日は少し酔いが早いのかもしれない。
「あ、あれは...!想像上のお話であって、あんな事が日常茶飯事に起きる訳ないでしょ!」
小百合さんが薄い本の説明を上半身を芹菜の方に乗り出して小声で説明をした。
「そうなの?うふふ...でも、キスをしたくなっちゃうのは仕方ないじゃない...♡それに...キスしたらちゃんと和彦さんは反応してくれちゃうんだもの♡あれに触れてたらお口でも良いから欲しくなっちゃうわよ♡静もじゃないの?」
「うぇっ!?」
やっぱり芹菜の欲求不満だったか...
チビチビと烏龍茶を飲みながら、唐揚げを食べてそう考えていたら、静さんもそうじゃないのかと芹菜が質問をした為に、当の静さんは驚いて固まってしまった。
芹菜が言うには静さんの今の彼氏も学校の同僚らしい。だからそんな質問をしたのだろう。
「わ、私でもそこまで発情せんわ!はぁぁ...だから普段真面目な奴が覚えちまうとこうなっちまうんだよなぁ...すまん、和彦さん。迷惑かけてんな」
「いえいえ。まあ、求められるのは男冥利につきますが、時と場所は覚えてほしいですね。あははは...」
芹菜の質問に当たり前だが反発した静さんであったが、その後ため息をついて僕に謝ってきた。
なので、求められる事自体は嬉しいが、時と場所は考えてほしいと素直に僕は答えた。
「ええぇぇぇ~~...でも、静が私たちに言ってたんだよ?あんなに気持ち良い行為を経験した事が無いなんて人生損してるって。んっぐっ...んっぐっ...んっぐっ...ぷはーっ...お姉さーん!中生二つ追加で♪」
「はーい♪」
ぺ、ペースが上がってる...
チラッと小百合さんを見ると、ふるふると首を振っている。
これが二人の普段のペースなのか。よくお酒がそこまで飲めない小百合さんは付き合えるものだ。
いや、小百合さんがいないと大変な事になってるのか。
落ち着いて自分のペースで微笑みながら二人を見てお酒を呑みながらサラダを食べる小百合さんの姿を見て、そう一人考えに至った僕は追加で来ていた刺身を口にして烏龍茶で流した。
「だから!和彦さんも言ってただろ!時と場所を考えろって!校内で咥えるなんて馬鹿な事してんじゃねぇよ!」
「だってえぇ~~...♡あんなに逞しいんだもの♡はぁぁ...♡この後が楽しみ♡ね?和彦さん♡」
「へ?あ...ああ。楽しみだね。でも、足をすりすりしながら股間に手を近づけようとしないでもらおうかな...」
そこに静さんと言い争うというか、意見の言い合いか。を終えた芹菜がこの後の事を考えてなのか、妖艶な笑みを浮かべながらこの後が楽しみだと言ってきたので、とりあえず同意しながらも芹菜の両手首を掴んで、芹菜の太ももの上に乗せた。
それに芹菜はぷくぅっと頬を膨らませて抗議の目を向けている。
やれやれ...
「それにしても、酔っているとは言えあの芹菜がここまで大胆な行動を取るなんて、そんなに良いものなのね、男女の交わりって」
「?あれ、失礼ですが小百合さんは......」
芹菜の変わり様に驚きでポロッと出た小百合さんの言葉に、僕は疑問が出て通じるように途中で言葉を止めながらも確認をした。
「ええ。私は未経験者ですよ」
「そうなんですか?意外という言葉が失礼かもしれませんが、小百合さん程の綺麗な女性であればお付き合いとかされてるのかと思ってました」
「ま、和彦さんが言う様に実際学生の頃からモテてたからな...ただ......」
「?」
小百合さんは僕の言葉に察すると自身は未経験であると微笑みながら答えた。それに僕は驚きながら、既に何人か付き合った人がいるのではないかと素直な気持ちを伝えたのだが、静さんがホッケの身を箸で器用に解して口に運びながら小百合さんはモテていたと口にした。だが、その後何故か神妙な顔で目を逸らしてしまった。
それに不思議に思った僕だが、芹菜の方も見ると何とも言えない様な顔でサラダを口に運んでいた。
え?何かあるの?
そんな風に考えていると、小百合さんから話が始まっていた。
「ありがとうございます。でも、私には
「あ、そうなんですね。しかし、その方は小百合さんの事を大事になさっている方なんですね。ずっとお付き合いされてるのにそういった行動に移されないなんて。僕も見習わないとですよ」
ずっとお付き合いしてるのに彼女に手を出さないなんて。はぁぁ...その人の爪の垢でも飲んどきたいよ...
「あーー...和彦さん?多分かんちが──」
「そうなんですよ!もう、彼ったらすっごく紳士的なんです!しかも周りの人への気配りなんかもしっかりしていて。本当に最高の
付き合う前から二乃や三玖達に手を出してしまった僕とは大違いな人だと思い、反省するような言葉で話すと静さんが何か言いたげな顔でこちらを見てきたが、それを興奮した小百合さんによって遮られた。
「写真もありますよ。見られます?」
「本当ですか?是非お願いしたいです」
写真があるので見てみたいと僕が答えると、ニコニコしながら小百合さんは自身のスマホを操作し始めた。
すると、横から芹菜が僕の服をぐいぐいと引っ張ってきた。
「ん?どうかした?」
「あの、どうか引かないであげてくださいね」
「?」
「あ、これが一番のお気に入りなんですよ!どうぞ!」
芹菜の言葉に訳が分からないままいると、小百合さんからスマホを差し出された。そこには──
「あれ?これって、プリレインの輝じゃないですか」
「「え!?」」
そう、プリンスレインボーことプリレインの輝の姿があったのだ。
そんな普通の反応の僕に対して、静さんと芹菜が驚きの表情をこちらに見せてきた。
え?何?
「へえぇぇ~~...小百合さんも輝推しだったんですね。それは、告白は断らないとですね」
「──っ!輝をご存知なんですか!?」
「ええ。うちの部活にも輝推しの子がいましてね。その子にいつも輝の凄さを聞かされてますよ。アニメも今季は五期目の途中でしたよね。生憎と僕は三期の六話までしか観てないのでそこまで詳しくは話せないんですけどね」
「芹菜!席交代!」
「「へ!?」」
そこまで詳しくはないのでそこまでプリレインについては話せないと笑いながら小百合さんに伝えると、先程の冷静な態度とは裏腹に芹菜に席を交代するように大きめな声で言ってきたので、僕と芹菜は驚きの表情で小百合さんを見返した。
「ぶうぅぅ~~...私の和彦さんなのに......」
「細かく言えば五月さんの旦那さんであってあんたのでは無いだろ。ま、ちょっとは小百合に貸してやんな。あんなに目をキラキラして話してる小百合も久しぶりに見るんだしさ」
最初は渋った芹菜であったが、小百合の勢いに負け、和彦の隣を小百合に譲った芹菜は、文句を言いながら、追加で頼んだボトルの焼酎を静とおつまみを交えながら呑んでいた。
そんな悪態をつく芹菜に対して、静は少しくらい小百合に貸してやりな、とこちらもおつまみを交えながら焼酎を呑んでいた。
今の小百合は静の言う通り、キラキラした目でスマホの画面を見せながら話しており、それに和彦も本当に面白そうに答えているのだ。
因み、話の内容は芹菜と静の二人に聞こえているが、芹菜と静の二人には全くついていけないので、和彦と小百合の二人だけの世界が自然と出来ていた。
「......小百合が男の人と
「だな。あいつは付き合い方は上手いが、本当に心許してるのはあたし達くらいだからさ」
「うん...」
「その話は観て胸打たれましたね。今までのが報われたって」
「ですよね!その時の輝ときたらですね──」
和彦と小百合の二人の話は盛り上がっており、入る隙も無い事から、自然と芹菜と静の二人酒になってしまい、それもそれで楽しく過ごしていたのだが、やはり芹菜は和彦が気になるようで、その和彦と話す小百合の笑顔が自然体である事に少し驚いていた。
「ま、あんたが好きになった男なだけはあるって事さ。ふむ...ありゃ落ちたな」
「え?」
そんな芹菜の表情を見て、静は微笑みながら小百合の心境を口にしたところで芹菜は静を見返した。
「落ちたって......」
「......なあ芹菜。真面目な話、他の女性陣や五月さんにお願い出来ないかい?」
「そ、それってっ...!?」
ある程度理解した芹菜が聞き返すと、静は優しい顔で微笑み返した。
「芹菜の事も結構心配してたんだけど、実際小百合もヤバいだろ。このままじゃ二次元から出てこれない」
「それは......」
「そんな時にあんな顔を見せられる相手が見つかったんだ。後一人増えても良くないか?」
「......聞くだけ聞いてみるけど...あてにしないでよ...?」
「分かってるって...」
スマホを片手に芹菜が聞くと、静は何かを悟った様に焼酎の入ったグラスを傾けるのだった。
「それでは今日は彼女に付き合っていただきありがとうございました」
「いえ。お迎えご苦労様です。また」
静さんの彼氏でもある同僚で後輩の先生が静さんを迎えに来ると、眠ってしまった静さんを助手席に乗せて車を発車させた。
「全く...寝るまで呑むなんて...静の彼氏の優しさを少しは汲み取ってあげれば良いんだわ」
発車して離れていく車を見ながら小百合さんは文句を口にしていた。
「さて、小百合さんのマンションに送って芹菜のマンションに向かう形で良いのかな?」
「はい、よろし──」
「ちょっと待って!」
この後は小百合さんを送った後に芹菜の部屋に泊まる予定だったので、それでいこうと小百合さんと話していると、芹菜から待ってほしいと間が入った。
「どしたの?」
「ううん。あのね、小百合さえ良ければなんだけど、この後は小百合の部屋で三人で飲み直さない?」
「え!?今から!?しかも私の家!?」
芹菜の提案に小百合さんは驚きの表情で芹菜を見た。かくいう僕も驚いている。
「飲み直すなら、芹菜の家で二人ですれば良いでしょ?その......その後は...お楽しみなのだし...」
芹菜の提案に対して小百合さんは、飲み直すなら二人ですれば良いと反対の意見を出した。その後、顔を赤らめうつむき加減に言葉を続けた。
「まだ時間的にも大丈夫だし。ほら!和彦さんとのお話もまだまだ足りないでしょ?それに、小百合のコレクションだって見てほしくない?」
「それは......そうかもだけど......」
芹菜の後押しがあり、小百合さんの意見が変わろうとしていた。
「という訳で、先に私のマンションに向かってくれませんか?明日の準備は出来てるのですが、荷物だけでも車に乗せておこうかと思ってますので」
「え?それこそ後でも良いかと......」
「良いから良いから。ほら、盛り上がってそのままお泊まりになっちゃうかもしれないじゃないですか」
「そうなると......その......貴女は大丈夫なの?流石に私の部屋で始められると私が困るんだけど...」
芹菜の提案に小百合さんは、芹菜の欲求が大丈夫なのか心配しているようで、人の部屋で始めないでほしいと念を押してきた。
「それは......あれだよ。うん。大丈夫だと思うから!」
「「?」」
終始不思議な態度を取る芹菜に疑問を小百合さんと持ちながらも、芹菜の提案に従い、芹菜のマンションで荷物を車に乗せ、そのままお酒やおつまみを買い出し、小百合さんのマンションに向かうのであった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回は芹菜の親友でもある、静と小百合を含めた四人での飲み会のお話を書かせていただきました。
いやー、もう芹菜は和彦の虜ですね。人前だろうと和彦に寄り添い、更にはお酒が入ると勢いも増すという、ある意味最初よりもキャラが変わった人物の一人かもしれません。
そして、気になるのが小百合の存在です。
このまま小百合も和彦のハーレム集団に入るのでしょうか。
次回は、そんな中練習試合への出発のお話を書かせていただきます。
次回の投稿は7月10日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。