少女と花嫁   作:吉月和玖

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167.温泉での語らい

〜温泉宿・女子風呂〜

 

「ふぅぅ〜〜、気持ちいい〜〜♪」

「試合の後に温泉なんて贅沢ですねぇ〜」

 

駿府学園との交流試合が終えた旭高校空手部一行は、温泉宿に戻るなり全員で温泉に入っていた。

この宿には露天風呂もあり中々の景色である。

そんな温泉にことりがうっとりする様に声を出すと、直華が贅沢だと言うものの、温泉の気持ち良さには敵わない様で、肩まで浸かって寛いでいた。

 

「あははっ!それを言ったら私たちなんて試合を見てただけなんだから、これじゃあただの温泉旅行だよ」

「だねぇ〜…んっ…んっ…う〜ん♪温泉で飲むお酒も最高ねぇ♪」

「貴女は寛ぎ過ぎでしょうに…全く…」

「本当よ!生徒の前ではしたない!」

 

そんな直華に一花は自分達は観客の為に来た様なものなので、笑いながら温泉旅行に着たようなものだと直華に伝えた。

そんな一花の言葉に同意する様に、芹菜は女将が用意してくれたお盆に徳利とおちょこが乗ったものを前に、自らおちょこに徳利から清酒を注ぎ満足そうに呑んでいた。

そんな姿を見て、小百合は呆れるように右手を額に当て、紬は芹菜を諌めていた。

 

「まあ、良いではないですか。多少羽目を外されても」

「葵さんが仰るなら…」

 

芹菜を咎める小百合と紬の言葉に、葵が多少くらいは羽目を外しても良いではないか、と伝えてきたので、紬もまた用意されたお酒をおちょこで飲み始めた。

他にも葵の元にも用意されていたが、お酒の弱い小百合の元には用意されていない。

 

「それにしても。あの立川先生がお酒好きだったなんて。それに……」

 

そこに康恵が芹菜のお酒好きに驚きつつも、視線はそのままお湯に浮いている大きな胸に向いていた。直華ともう1人。同じく2年生ので今回団体メンバーに選ばれなかった高坂昌代(こうさかまさよ)もまた、芹菜の胸に注目していた。

昌代は、背中まである茶髪のストレートロング。そして直華より背も胸も大きいが、少し幼さを感じる顔をしている。

今回の大会では、昌代は組手には参加せず型の部門で挑む予定である。そこは昌代も了承していて、良い成績を残したいと意気込んでいるが、先日の茂の特訓を経て更に自信に満ち溢れた様で、ことりや四葉の個人・団体全国出場に感化され、昌代もまた型にて個人全国へと密かに思っていた。

しかし、温厚な性格からか自らの口にした事はない。が、自己訓練の昌代の熱から、和彦はある程度理解していた。なので、昌代には徐々に訓練内容のレベルを和彦は上げており、そこから自分の気持ちに気づいてくれている和彦への信頼と尊敬は上がっていった。

そもそも昌代は空手を高校から始めている初心者でもあった。直華とは小学校からの仲で、直華の情報収集の手伝いなどもしていた事もあり、ルールなどはある程度理解はしていた。

そして、高校入学を機に部員の少なさから昌代も高校から型から始めていった。

昌代の真面目さもあり、この一年少しで型も綺麗に纏める事が出来たが、組手まではまだまだだったので、ことり達の入学で直華の団体戦出場が出来た事を、昌代も心から喜んでいた。

 

「先生はそこまで胸が大きかったんですね。普段のスーツ姿では全く分かりませんでした」

「私は立川先生のお母さんである紬さんの大きさにも驚いてるけどね…」

 

直華はそこまで芹菜と接点がある訳では無いのだが、集会であったり職員室で見たり、今日の試合であったりとスーツ姿を見ているので疑問に思った事を口にしたのだ。

そして、昌代は芹菜の隣で温泉に浸かっている紬の胸の大きさに驚いていた。

 

「わかるわぁ〜。私たちも初めて見た時も大きさに驚いたもん」

「そう言う二乃さん達だって十分大きいけどね。後、綾那も」

「ふえぇっ…!?」

 

昌代の驚きに対して、二乃も初めて紬の胸を見た時は驚いたと話すも、康恵が二乃達五つ子や綾那も十分大きいと話し、そこにまさか自分までもとは思わなかった綾那は驚くように、自分の胸を両腕で隠していた。

 

「……立川先生…この間より大きくなった?」

「え…?」

「言われてみればそうよね。何?その歳にもなっても成長してるの?」

「うぅぅ…わ…ワンカップだけ上がった…」

『…………』

 

そんな綾那の行動に(みな)が笑っている中、三玖がじっと芹菜の胸を見ながら、前より胸が大きくなってないかいつもの単調な口調で聞くと、芹菜は驚きでお酒を飲んでいたおちょこを止めてしまった。

そして三玖の言葉に同調する様に小百合も冗談交じりに芹菜に聞いた。

すると、芹菜からワンカップ上がったと緊張気味に話すとその場の空気が固まった。

 

「成長は止まったと思ったのよ!ただ、最近になって急に大きくなって…私だって困惑してるんだから!」

 

そんな空気に耐えられず、芹菜は自分だって困惑していると興奮するように話した。

 

(男の人に揉んでもらうと大きくなるってホントなんだ)

(和彦か…)

(カズヒコさんだね…)

(流石お兄ちゃんだなぁ…)

(和彦さんに揉まれれば私だって!)

(ふふふ…慌てる芹菜さん可愛らしいですわね)

(むぅぅ…私も和彦さんに揉んでもらえればこの歳でも大きくなるかなぁ…)

「「「「「???」」」」」

 

芹菜の胸が大きくなった理由をある程度理解した一花に二乃に三玖にことりに結愛に憂に小百合は、頭の中で和彦に胸を揉まれているところを想像してしまった。

とは言え、ここには康恵と直華と昌代がいるので迂闊な事も言えない。

そんな中、結愛と小百合は自身の胸を軽く揉んでおり、そんな光景に、そういった知識がほぼ無い芹菜と綾那。そして、状況を知らない康恵と直華と昌代は不思議そうに見るしかなかった。

そんな光景を、暖かい目で葵と紬は見ているのだった。

 

「あれ?そういえば四葉先輩はどうされたんですか?」

 

そんな時、直華がここに四葉の姿がない事に気づいた。

 

「そういえばそうね。五月先輩は先生の奥さんで、確か部屋に内風呂があるからそっちに一緒に入るって仰られてましたもんね」

 

それに続くように昌代から、五月がいない理由を口にしながら直華に同調した。

 

「ああぁぁ〜…四葉はセンセのところに行ってるんだ」

「「え!?」」

「何でも。今日の試合についてのおさらいを先にしたかったみたいよ」

 

(ま、理由は()()あるんだけどね…)

 

四葉がいない理由について、申し訳なさそうに一花が話すと、それに二乃が続いた。

 

「四葉は他校との試合は初めて。だから、色々聞きたいって…」

 

そこに三玖が助け舟を出す様に、四葉が和彦の所に行っている理由を付け加えた。

 

「そうなんですね。むぅぅ…私も色々聞きたかったのになぁ…」

「まあ、今回の四葉さんは本当に凄かったからですね。色々と常識外れな部分もありましたが」

 

三玖の言葉に納得したのか、直華は自分も和彦に色々聞きたかったと願いを口にした。

するとそこに、綾那から今日の四葉の凄さが口に出た。

 

「そうですわね。先生の申しつけ通り技を一切使わず、徐々に手加減を覚えていきました。それもあっての、本日の四葉さんの試合全て、取られたポイント零での完封勝利でしたからね」

「ま、相手も何も情報が無い初心者だって決めつけてたし、後からヤバい選手だって思っても、いくら情報交換しても攻略の糸口が相手にとっては無いからね」

 

綾那の言葉に続くように、憂とことりも今日の四葉の凄さを口にした。

 

「ねね。今のところ、四葉からポイントを取った事あるのって、ことり以外だと直華ちゃんだけなんだよね?」

「そう言えばそうだね。直華は、ことりさんと四葉さんにはめっぽう強いもんね」

「ぐっ…」

 

一花から、四葉からポイントを今までに取ったことがあるのは直華だけだという事を確かめに入ると、康恵が右人差し指を顎に当てながら、そういえばと口にすると、ことりから悔しそうな声が漏れていた。

 

「あはは……あれは、先生からのお二人の性格や攻撃パターンを聞けている事。それから、先生のお母様にあたる文香さんの指導あってのものですよ」

「要は。二人の性格や攻撃パターンが単純って事でしょ?」

「えっと…………まあ……」

「はうっ…!ぶくぶく…」

 

直華が四葉とことりの二人に勝てているのは、あくまでも和彦からのアドバイスと、短期間ではあったが、文香の指導のお陰であると直華は伝えるも、二乃からバッサリと二人の性格や攻撃パターンが単純だと聞かれると、直華は言い淀むように肯定した。

それを聞いたことりは、ショックを受けて顔を温泉にバシャンと潜らせてしまった。

 

「二人の稽古を毎日見てたらわかる。私たちには、速くて何してるかわからないけど、だいたい同じような攻撃してる…」

「しかし、それでもあのパワーとスピードには驚かされます。攻撃パターンが分かるだけで、お二方の攻撃を掻い潜る事は可能なのでしょうか?私もある程度は理解しているつもりではありますが、たまに攻撃パターンも変えられますので、上手くポイントを取れないのですが…」

 

追い討ちをかけるように三玖も言葉を続けると、ことりはずっと温泉の中に顔を潜らせたまま消沈していた。

しかし、綾那の言葉にことりはまたバシャッと顔を温泉から出して綾那の事をキラキラした目で見ていた。

 

「それは、綾那さんが攻撃パターンを変えるからです。四葉先輩にことり先輩は、言わば感覚派の武術者です。綾那さんの攻撃パターンが変わることで、お二人の感覚が変わります。例えば、今攻撃の仕方が変わったからこっちが良いかも、みたいな感じでしょうか。恐らく先生もそうだと思いますが、先生の場合はある程度相手の情報は頭に入れていますので、感覚と情報の二つを合わせることで明鏡止水に繋がると私は思います」

「ふふふ…素晴らしい慧眼ですわね。そう言えば、確か井伊さんも多少の失点が個人戦ではありましたが全勝でしたわね。それも最小失点で」

「そうそう!凄かったよね!相手にポイントを取られた後も冷静に動いていたし!」

 

綾那の質問に、直華は冷静に返し、また和彦の明鏡止水への繋がりまでも説明したので、葵は直華を褒め讃えた。そして、今日の直華の試合結果についても褒めると、小百合が興奮する様に直華を褒めた。

 

「あれは直華がわざとポイントを取られたんです」

『は!?』

 

小百合の褒め言葉に、一人冷静に昌代が直華の失点について説明すると、直華以外の全員から驚きの表情を向けられた。

 

「あはは……今日は練習試合でしたから。団体戦の相手の情報は、事前に対戦者を先生に予想してもらいましたので、十分に頭に入っていました。しかし、他の部員。団体戦に出場しない方たちの情報までは無かったので、試合をしながら相手を研究していました。例えば、ここで相手がポイントを取れば次はどういった行動に移るのか等ですね。で、同じ様な行動パターンの方だった場合は、ある程度展開を頭に入れ、その通りに動く。そのように個人戦は行ってました」

「ひえぇぇ〜…そんな事が可能なんですね…」

 

苦笑いの表情で話す直華ではあったが、そんな事が可能なのかと紬から驚きの声が漏れていた。

 

「まあ、不可能ですわね。一人を覗いては…」

「それが、あちらのコーチをされていた、太原雪斗さんですか…」

 

紬の言葉に葵はある人物を除いては不可能だと説明すると、芹菜から雪斗の名前が出たので、葵はコクリと頷いた。

 

「その証拠に。ことりさんと綾那の二人についてはかなり研究をされてましたからね。あのまま二人が自身の殻を破らなければ負けていた。もしくは、ことりさんの殺気が発動して相手の不戦敗が起きていたでしょう」

「ホント、嫌なところばかり攻めてきてやりにくかったよねぇ」

「ええ。相手の力量が更に上であれば早くに決着がついていたでしょう」

 

葵の言葉に、ことりと綾那が悔しそうに当時の事を思い出していた。個人戦でも、同じ様にことりと綾那を研究されたように攻められ。二人は負けた試合もあったのだ。

そこは、和彦から闘気や無我の境地の利用を止められていたから、という理由もあるのだが。

すると、そこでことりが殺気立ち、言葉を発した。

 

「ふふふ…馬場君。内藤君。そこから一ミリでも前に進んだら……わかるよね?」

「「ひぃぃ!!」」

 

バシャーーンッ…

 

「何やってんだか…」

 

恐らく覗きを企んだ信彦と昌臣の気配に気づいたことりが、殺気を立てて二人に警告したのだろう。ことりの殺気に怖がった二人は一目散に逃げて温泉に飛び込んだようである。

それを二乃が呆れるように口にした。

 

「そういえば康恵」

「ん?何?」

「酒井とはどこまでいってのよ」

「ぶうぅぅっ…!!ケホッ、ケホッ!な、ななな、何で!?」

 

そこにピンとある事を思い出した二乃が笑みを浮かべて、康恵と忠之の進展を聞き始めた。

それには、康恵は驚き、どもる他無かった。

 

「何でって…」

「二人って付き合ってるんでしょ?」

「え、ええぇぇっ!!何で!?」

 

康恵の質問に三玖は不思議な顔で一花を見て、その一花から忠之と康恵が付き合ってるのだろうと確認が入った。

それには康恵も驚き、何で分かったのかと一花達に聞き返した。

 

「え?お二人は内緒でお付き合いされていたのですか? 」

「直華!?」

 

そこに一花達とは反対側にいる直華から不思議そうな表情で質問されたので、それには康恵も驚き直華の方に振り返った。

 

「え?部長と副部長はお付き合いされていたのですか!?」

 

そこに色恋沙汰には無頓着な綾那から驚きの声が上がった。

 

「部員の皆さん全員知っていますよ。ああ、今の反応の様に綾那は勿論。恐らく先生も知らないかと。あの方も、色恋沙汰に関してはめっぽうですから」

「よく五月先輩と結婚出来ましたね…」

「ま。そこは、兄さんと義姉さんとの間で色々あったからねぇ〜…」

 

忠之と康恵の二人が付き合っている事実は、綾那と和彦を除いた部員全員が知っていると憂が説明すると、昌代から、和彦が色恋沙汰に疎いなら、よく和彦と五月が結婚出来た、と疑問の声が上がるも、ことりがやんわりとその話は流した。

 

「で?で?どうなのよ?キスはしたのよね?」

「───っ!!ま、まだだよ!付き合い始めたのだって最近だし!」

「え?そうだったんだ」

 

そこに色恋話大好きな二乃からの質問に康恵は、素直に付き合い始めたのも最近だからキスもまだだと伝えた。

すると、一花が少し驚きの表情で返した。

 

「うぅぅ…前から仲は良かったんだけど、その……付き合うまではいかなくって。で、そんな時にことりと一花が上杉君に皆の前でキスなんてしちゃったから、それで……」

「付き合う事にしたと。良いわねぇ♪青春って感じで」

 

忠之と康恵の二人が付き合う事になった経緯を話した康恵に対して、小百合が面白そうに反応した。

 

「何だったら、兄さんにお願いして夕飯の後とかに二人の時間を作ってあげようか?キスって良いよぉ️‪♡最高に気持ちいいんだから‪♡」

「立川先生…キスくらいいいでしょ…?」

 

そこにことりから、忠之と康恵の二人の時間が作れるように和彦に取りなすと提案すると、三玖から芹菜に了承を求める声がかけられた。

 

「う…う〜ん…ま、まあキスまでなら…」

「ほら!立川先生の了承も取れたんだし、ファーストキスとしては最高の思い出になると思うわよ」

「そ…そうかなぁ……」

 

芹菜の了承も取れた事で二乃のボルテージは上がり、康恵に更に催促した。

催促される康恵は口まで温泉に浸かって考え始めた。

 

「とは言え。後は酒井殿の気持ち次第かと。まあ、お付き合いされてるのであれば、男性はまずキス。あるいはその先を望んでいるでしょうが」

「その……先……」

 

康恵にキスをしたい気持ちがあっても、忠之にあるかどうかと葵は話すも、男などだいたいはそういった行動を望むものと話すと、康恵は顔を真っ赤にしてしまった。

 

「でも、そうよねぇ。いつかは私たちにもそんな相手が出来るのよねぇ」

「貴女の場合は、まず輝を諦める事から始めないとね」

「そんなの無理だよ!輝様を諦めるなんて!あ〜あ、先生がフリーだったら攻めてたのになぁ」

「ふ〜〜ん…」

 

康恵の事もそうだが、自分達にもいつかは恋人が出来て、キスなどもするのか、と口にする直華であったが、昌代から、それならまずは輝を諦めないと、と言われたので、直華はそれを即否定した。

そして、和彦がフリーだったら直華は和彦にアタックしていたと呟くと、葵がニヤリと笑みを浮かべていた。それに気づいた憂は頭を抱えるしか無かった。

 

「分かる!分かるわぁ、直華ちゃん!輝を諦める事は出来ないものよね!」

「ですよね、小百合さん!」

 

そこからは、小百合と直華のオタク話が盛り上がったので、他のメンバーは、それぞれの相手と話しながら温泉を楽しむのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、練習試合後の温泉宿での女湯の方での女性達のお話を書かせていただきました。
胸の話を更に持っていくと、18禁になりますし、空手の話だけをするのもつまらないかなという思いで、忠之と康恵のお付き合いの話も混ぜさせていただきました。
二人の付き合いについては、いつか書こうと思っていたので丁度良かったです。

次回まで、この練習試合編のお話を書かせていただこうかと思います。

次回の投稿は9月20日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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