少女と花嫁   作:吉月和玖

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皆様お久しぶりです!

あの後も体調不良が何度もありであまり執筆する事は出来ませんでしたが、とりあえず再開しようと思い投稿しました。

また、投稿間隔が開いたりするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。




169.転校生

「え?転入生ですか?」

 

空手の練習試合も終え、その後に行われた中間試験も無事に終え、後は修学旅行となったある日。僕と芹那は理事長室に呼ばれ、転入生が来ることを説明されたので、僕は驚きの声を上げた。

因みに、練習試合から帰ってからというもの芹那と小百合以外の女性陣との行為は行っていない。勿論、五月ともだ。

帰る度にウズウズした五月の相手をするのも苦労したものである。キスは許したが、その後を止めるのに苦労をした……

他の女子達にも同じ事を伝えたのだが、中間試験の結果次第では、当分行為を禁止すると。しかし、四葉や一花を含めて五つ子の全員が全員過去一の成績を。ことり達成績優秀組は成績を落とす事も無かったので、中間試験終わり後の週末は大変であった。

そんな僕にとってとんでもない週末を終えた今日月曜日にこうして理事長室に来てる訳なのだが。

 

「うむ。それでその転入生は君達のクラスにと思ってね」

「という事は三年生ですよね?えらく微妙な時期に転校して来られたんですね」

 

芹那の言葉は当然である。三年生ともなれば進路が既に決まっているかもしれないのだから、そこに転校ともなると生徒によっては大変である。

 

「ふむ…そこは問題ないようだよ。その子はこの辺りの大学進学を最初から考えていたみたいでね。今回の転校も親御さんの心配も何のその。すぐに了承されたそうだ」

「へぇぇぇ、それは偶然が重なって良かったですね」

「うむ。しかも、今回の転校は父親の所謂会社からの引き抜きでね。何でも今井財閥の目にかなったそうだよ。いやー、ご両親も、父親の大出世が叶って喜んでいたそうだよ。わっはっはっは…」

「い、今井財閥、ですか…」

 

薫さんが認めたのならかなりの優秀な方なのだろうけど、何か引っかかるような。

そんな思いで左隣にいる芹那を見ると、同じ様な考えをしていたのか、微妙に笑っているような表情であった。

 

コンコン…

 

『失礼します』

「おー、丁度良かった。入りたまえ」

 

そこに理事長室のドアをノックした女子生徒の声が聞こえてきたのだが、どこかで聞いた事がある様な気がしたが、入ってきたその女子生徒を見て、僕と芹那は驚くしか無かったのだった。

 

・・・・・

 

そして、本日最後のホームルームの時間。クラス中は明日からの修学旅行の話題で大盛り上がりであった。

 

「ほら!席に座った座った!とっくにチャイム鳴ってるよ」

「やべぇっ!」

「うっそ!いつの間に!?」

 

僕の声に生徒達はバタバタと自分達の席に着いていった。本当にチャイムに気づいていなかったようだ。

現に上杉もいつもの如く自習に励んでいたので、軽く出席簿で叩いて気づかせた。

 

「さて、今からのホームルームでは、上杉と四葉の二人で明日からの修学旅行の最終チェックを行ってもらう予定だったんだが──」

「な、なんすか!?まさかの抜き打ちテストとか言わないっすよね!?」

 

僕が話す途中でビビりながらも前田が聞いてきて、その前田の言葉にクラス中が騒ぎ始めた。

 

パンパンッ…!

 

「はい、静かに!前田の提案も面白いがそうじゃない。まあ、皆がどうしてもテストをしたいんならしてやっても良いんだが…」

「絶対いやーッ!」

「それは前田だけにお願いします!」

「なんで俺だけなんだよ!!」

 

テストをやっても良いと僕が呟くとあちこちから悲鳴が上がり、更には前田だけにやらせてやってくれという意見まで出ていた。流石の前田もそれにはツッコミを入れていた。

 

「君は今回の中間試験で、全教科赤点ギリギリだったじゃないか。そして、クラスで紛うことなき最下位の成績だ。少しは勉強してもいいんじゃないかい?」

「ぐうぅ……」

 

今回の中間試験試験では、我がクラスから赤点の生徒は一人も出なかった。ただまあ、武田の言う通り、前田の成績は良いものでは無かったのだ。

それに引き換え四葉の成績は急速に成長していた。二乃達が僕のところに来ていた時も上杉やことりに何度も質問しては勉強に励み、小百合と知り合いになるや芹那と小百合にも勉強を見てもらったらしい。

その結果、三玖にはまだ及ばないものの、五つ子の中でも以前の全国模試同様、成績は上から五月、三玖、四葉、二乃、一花であったのだ。

四葉曰く──

 

──師匠同様の文武両道を目指します!

 

だそうだ。僕は特に文武両道では無いんだが…

まあ本人にやる気があるなら何も問題は無い。

 

「そうかぁ〜。前田はそんなに勉強がしたいのかぁ〜」

「え!ちょっ…!」

「まあ、空手場の隅にでも小さな机を用意するから、正座しながら励むんだね」

「ちょっと、待ってくださいよォ!それって、ただの羞恥プレイに拷問じゃないっすかぁ〜〜!」

 

前田の嘆き声にクラス中からドッと笑いが沸いた。

 

「ま、そんな冗談はさておき」

「じょ、冗談……ふぅ〜…」

 

僕の冗談という言葉に前田は右腕で額を拭きながら、本当に安堵したように息を吐いた。その姿に周りの生徒はまだクスクスと笑っていた。

 

「修学旅行の最終調整はこの後、上杉と四葉の学級委員に教壇に立ってもらって行うんだけど、その前に皆に転校生を紹介する」

 

そして、次の僕の言葉にクラス中が今度はざわつき始めた。

 

「え?この時期にですか?」

「まあ、私たちも時期はおかしかったけど、三年生の一学期中旬ってのもおかしな話だね」

 

ことりが疑問を投げかけてきたところに、一花が自分達もおかしな時期に転校してきたが、更におかしな時期だとことりに肯定する様に話を続けた。

 

「ま、そうなんだけど。家庭の事情ってやつだよ。悪い、待たせたね。入って」

『はい。失礼します』

 

ガラッ…

 

待たせた事を謝りながら転校生に向かって入室を促すと、綺麗な声で返事があり、戸を開けて転校生が入ってきた。

 

「おい!」

「ああ!すげぇぇ、美人だよな!」

「吉浦さんや五つ子以上じゃね?」

『──っ!!』

 

その転校生は女子で、背筋を伸ばし綺麗な立ち振る舞いで、両手で鞄を前に持った状態で僕の左横に止まり、正面を向いた。

若干近いような…

その女子生徒は男子達が騒ぐ程確かに美人で、()()()()()()と違ってロングストレートの髪を可愛らしい髪留めで留めて綺麗に纏めており、若干薄いメイクもしている。

はぁぁ……ますます美海さんに似てきて困るんだよなぁ…

この転校生を知っている五つ子やことりは驚きの表情をしており、五月に至っては僕と彼女の距離の近さにこめかみをピクピクさせながら笑顔を向けている。

僕は悪くないんだが…

 

「じゃ、自己紹介をお願い出来るかな?」

「はい♪静岡より参りました、阿部美優と申します。転校前にも空手をしておりましたので、この学校でも空手部に入部し、尊敬している吉浦先生のご指導の元精進したく思っております」

 

にっこりとした笑顔を教室全体に向けて、彼女阿部はしっかりと自己紹介をした。

 

「へぇぇぇ、やっぱ先生って空手強かったんだね」

「だよねぇ。言ったら悪いけど、いつもの先生って全然強そうに見えないんだもん。ま、他の先生よりは優しいからポイント高いけどね♪……試験問題がもう少し簡単にしてくれるともっと嬉しいかな…」

「だよなぁ〜。先生って、俺らの事によく耳を傾けてくれて嬉しいんだけど…数学の試験問題だけがなぁ…」

『はぁぁ……』

 

ことりと上杉と武田以外の生徒が揃って、僕の作る試験問題に何か問題がある様でため息を吐いていた。

 

「そんなに難しくしてるかなぁ?試験前にプリントだって渡してるだろ?試験前対策の補習もしてるんだし」

「そりゃそうなんだけどさぁ…」

「あの段々と先に行けば行くほど難しくなるの何とかならないんすか!最後の問題とか解けた記憶無いっすよ!」

「と、言っても……実際解けてる生徒はいるし…」

 

僕の作る試験問題は、基本的に最初は計算問題なのでミスしなければ全問正解している生徒も少なくは無い。ただ、途中から難易度を上げていき、グラフや図形、証明問題と出していく傾向なのだ。先程の嘆く男子生徒が言うように、最後の問題は過去の大学入試レベルの問題から抜粋したりしているが、ことりは勿論、上杉に武田は問題なく解けている、と目線をそれぞれ三人に向けた。

 

「そりゃ、その三人は次元が違うじゃん!ほら、五月さんからも言ってあげなよ。あなた、ちょっと問題難しいんじゃない?ってさ」

「えぇぇ!?わ、私ですか!?」

 

するとそこに五月の隣の女子が、五月に試験問題をもう少し簡単にする様お願いしてみてと頼んだので、頼まれた五月は驚きで返した。

 

「お、それいいじゃん!先生も愛しの奥さんのお願いだったら聞いてくれるんじゃね?」

 

驚きを解けずにいる五月を気にしない様に他の男子が声をあげると、そうだよね、と教室中が騒ぎ始めた。

 

パンッ…!

 

そこに僕は両手で手を叩いて騒ぎを収めた。

 

「阿呆言ってんじゃないの。言ったろ?公私混同はしないって。試験問題は今まで通り。君たちを思っての問題なんだからね。さて、話はそれたけど、こんなうるさいクラスだけどやっていけそ、阿部?」

「ふふふ…先生も含めて皆さんの仲がよろしい事が感じられてこれから楽しみにしてます」

 

阿呆な事でクラス中が騒ぎ始めたので、いくら五月からのお願いであっても試験問題の難易度を変える事は無いと伝えた。

すると、クラス中から不満気な表情で注目を浴びる事になった。

はぁぁ……全くこいつらときたら…

そんな思いで心の中でため息をついて、左隣の阿部にこのクラスでやっていけそうかと尋ねると、笑みを零しながらこれからが楽しみだと返事が返ってきたので少し安心した。

 

「さてと……阿部の席は四葉の後ろでいいかな?」

「はい。知り合いでもありますから」

「て訳で、四葉。学級委員としても阿部の事頼むよ」

「はい!お任せください!」

 

阿部の机を運びながら、四葉の後ろの席に設置しながら阿部と四葉の二人に声をかけると、二人からは良い返事が返ってきたので、阿部が席に着くのを確認した僕はまた教壇に戻った。

 

「さてと……ことり、森下、佐伯。三人にお願いがあるんだが」

「はい。なんでしょう?」

 

教壇に戻った僕は直ぐさまことりと森下と佐伯にお願いがあると話しかけた。

すると、不思議そうな表情でこちらを見てきてくると、ことりが代表して質問してきた。

 

「今から話し合うのは明日からの修学旅行の事なんだけど。生憎と阿部が急遽転校してきたから、初日の班が決まってないんだよ」

「なるほどですね。それで私たちの班に阿部さんを?」

 

僕の言葉にことりは直ぐに察してくれて、自分達の班に阿部を入れられないかと確認してきた。

 

「さっきの阿部の言葉通りことりと同じ空手部でもあるし、ことりとは仲が知れた間柄でもあるだろ?それに、森下と佐伯だったらきっと問題なく仲良くなれるさ」

「まあ…先生が言うなら、私たちは問題ないですけど…」

「ただ……」

 

僕のお願いに森下も佐伯もグループに入れる事は問題無いという気持ちの様である。ただ、と佐伯が隣の五月達五つ子に目を向けた。恐らく当日に五つ子の班と上杉の班の二つの班合流する事になるから気にしてるのだろう。

 

「二人が懸念してるところは問題ないよ。阿部さんはこの間の練習試合の相手だったから」

「え!?そうなの!?なら、問題ないか」

「そうね」

 

今のことりの言葉で、阿部と五つ子との間にも接点があるのだろうと感ずいた様である。

 

「うん。じゃあ、阿部には相談しないで申し訳ないんだけど、明日からの班行動は僕の妹のことり達としてくれ」

「はい。問題ありません。先生の妹さんとは仲良くしたいと思っておりましたので」

 

森下と佐伯も納得した様なので、すまない気持ちを込めて阿部に確認すると、すんなりと了承してくれた。しかも屈託のない笑顔で。

 

「よし!じゃあ、上杉と四葉。後の進行は任せた」

「はい」「はい!」

 

上杉は仕方ない様に。四葉は元気に返事をすると、二人は教壇に立って進行を始めたので、僕は窓際に移動して後の進行を見守るのだった。

 

・・・・・

 

「じゃ、明日は遅刻しないように」

『はーーい!』

 

その後の話し合いも終わり、明日の修学旅行に遅刻しないよう生徒達に伝えると、元気な返事があり、生徒達はそのまま明日の話で盛り上がっていたり、阿部の周りに集まって質問をしていたりしていた。

さってと、この後は明日のミーティングに出てから部活に顔を出すか。

そんな風に考えながら右手に持ったクラス名簿で右肩をトントンと叩きながら教室から出るところで、ある事を思い出した。

 

「あ、ことりー!」

「はい。どうされたました?」

 

そのことりも阿部のところに森下と佐伯を連れて向かうところだったようだ。恐らく明日の事もあり、二人を紹介するつもりなのだろう。

そんなことりは、僕に呼ばれると優等生モードの真面目な生徒よろしく、にこやかに笑みを浮かべて近づいてきた。

 

「いや、この後僕はミーティングが入ってるからさ。武道場には阿部も一緒に連れて行ってやってくれないか?後、軽く皆に紹介もしといてよ」

「そういう事でしたらわかりました。加奈と智子を紹介してなので、私も遅れるかもしれませんが」

「構わないよ。どうせ阿部も一時動けないだろ?」

 

質問責めにあっている阿部を見ながらことりに遅れるのは構わないと伝えると、ことりも阿部の方を見て微笑んだ。

 

「ですね。では」

 

微笑んで返事をしたことりは森下と佐伯を伴って、阿部の周りに出来ている輪に入って行った。

 

「先生」

 

そこに五月から声がかけられた。

 

「あの、今日の放課後なのですが…」

「ああ。大丈夫だよ。部活も三年生の事もあるから早めに切り上げるから、塾で待ってて」

「はい!」

 

五月から今日の放課後の用事を覚えてるか聞かれたので、問題ない旨を伝えると、五月からは笑顔が返ってきた。

 

「何よ。修学旅行前に二人でデートな訳?」

「むぅぅ…」

 

そこに二乃と三玖が恨めしそうな目で見てきた。

 

「違うよ。五月の塾での三者面談みたいなものだよ。本当は中野さんが行くのが良いんだろうけど、君は五月君の夫だろ。君が行くのが妥当ではないかね、て言われちゃってね」

「あはは、お父さんなら言いそう」

 

僕の説明に一花が面白おかしく口にした。

 

「じゃあ先生!先に行ってますけど、すぐに来てくださいね!」

「ああ。そう出来る様にするよ」

 

四葉の言葉に返事をした僕は教室を後にして、職員室に向かうのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回のお話から修学旅行編がスタートです。
和彦は中間試験後の週末は大変だったと言っていましたが、羨ましいのやら同情の念が出るやらで微妙な心境です。
そして、スタート直前になってからの美優の転入。これ以上登場人物を増やすと、書いてる僕も混乱してきそうだったのですが、登場させることにしました。

さて、次回はもう一人再登場の人物が出てくるお話と、五月の塾での保護者面談のようなものを書かせていただきます。

次回の投稿は10月20日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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