少女と花嫁   作:吉月和玖

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大変に申し訳ありませんでしたm(。≧Д≦。)m

結局、投稿予定日に間に合わず、こんなに時間がかかってしまいました(;>_<;)
待ってた方もいらっしゃったかと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

今回の事を受け、次回以降は暫くは投稿日は未定とさせていただきますm(_ _)m
プライベート時間に余裕が出てきましたら、また投稿予定日など設けられたらとも考えております。
何卒ご容赦いただければ幸いです。

出来れば、1週間から10日前後で次回投稿出来れば良いなぁ...(^∀^;)




170.コーチ就任

「えーー……あー……」

 

武道場に来た僕は、部員達を集めて一人の人物を紹介しようとしているのだが、僕も混乱している為に何と言ったらといった感じでいた。

部員達は部員達で、ヒソヒソと話しながらも、僕の右隣でニコニコと笑顔でいる人物に注目していた。その人物とは()()()()であり、自分の紹介を待つように両手を後ろにして立っている。

 

・・・・・

 

時は戻り。

明日の修学旅行のミーティングが終え、部活にいざ行こうとしたところで理事長室に来るようにと言われた為に、一人理事長室に向かった。

なんだろう……嫌な気配がびんびん理事長室から来るんだが…

そんな気持ちの中理事長室の扉をノックして名乗りを上げた。

 

コンコンッ…

 

「理事長。吉浦です」

『お…おお…おう。は、入りたまえ』

 

すると理事長室の中から緊張した赴きで、理事長からの入室の許可が下りたので、僕は理事長室の扉を開き、中のソファーに座っている三人の姿を見て、直ぐさま出ていこうと考えた。

 

「失礼しました。お取り込み中の様で。私は出直しますね」

「何を言っている。お前さんが来るのを俺達は待っていたのだぞ」

「そうですよぉ。久しぶりにお会いするのに冷たいじゃないですかぁ」

「はははは。吉浦さんの感が自分はここに居てはいけないと警鐘を鳴らしたのでしょうな」

 

理事長室を出ていこうとする僕を、ソファーの上で堂々とした態度で両腕を組んだ薫さんと、こちらも凛とした佇まいで薫さんの隣に座る葵さんが許すまいと話しかけてきた。

葵さんに至っては僕にしか分からないように、本当に寂しそうな顔を向けていた。

あの練習試合の日から相手はおろか、本当に会ってなかったからなぁ、葵さんとは…

二人に呼び止められて、がっくしと肩を落とすと、もう一人の人物。太原雪斗さんが薫さんの前で座って笑いながら、僕の気持ちを代弁してくれた。

僕は振り返り理事長の方を見ると、助けて欲し言わんばかりの顔だったので、仕方なくソファーの近くまで向かった。

 

「薫様、葵様。ご無沙汰しております」

 

そして、父さんによく連れられた会合などで使う、身上の人に対する挨拶をするかのように、頭を下げながら薫さんと葵さんに挨拶をした。

 

「お二方に関しましては、先日の我が空手部の練習試合の遠征に多大な援助をいただき。大いに感謝の念を感じております」

 

僕は頭を下げながら、先日の練習試合の遠征についてのお礼も一緒に伝えた。

 

「ほぉぉ。吉浦さんは堂に入っておりますな。社交界も経験がある様ですな」

 

そんな僕の態度に太原さんからは関心の声がかけられた。

 

「頭をお上げくださいな。あれは(わたくし)が好きで行なった事。今後も和彦さんの練習試合相手の為の移動などに付き添いますから。また、(わたくし)を楽しませてくださいね」

 

葵さんから頭を上げるように言われたので、素直に頭を上げて葵さんの方に目を向けると、扇子で口元を隠しているものの目元からは妖艶さが伺える。

絶対に試合以外の事を考えてる!

 

「むぅぅ…俺にも時間さえあれば同行するんだがな。この間の練習試合の映像を観せてもらったが、あんな試合なら現地で観たかったものだ。達郎の奴め、次々と仕事を持ってきおって!」

「まあまあ。それだけ今井財閥が発展している証拠かと」

 

葵さんの言葉に薫さんは、試合を楽しんで観ている葵さんを羨ましく思ってか、ソファーに預ける背を更に沈める様に座りながら達郎さんが仕事をたくさん持ってくる事に文句を言い始めた。

それに対して僕は、両手で抑える仕草を見せながらも落ち着くように伝えた。

 

「そうですよ。流石は(わたくし)が認めた御方。ここまで発展なさるなんて凄い事ですわ♪」

「そ…そうか…?」

「勿論ですわ。それに。今忙しいのは、貴方様が和彦さんや旭高校の皆さんの試合を観戦する為の、言わば皺寄せですわね。達郎もよく調整出来ております」

「ぐっ…!ま…まあ、そうなんだが……」

 

僕の言葉に同意するように、ご機嫌そうに葵さんに褒められた薫さんは、嬉しそうに照れた顔で上機嫌な表情になった。

しかし、その後の葵さんの言葉には反論出来ず、がっくしと薫さんは肩を落とすのだった。

葵さん、しっかりと飴と鞭をもって夫婦生活してるなぁ…

 

「ふふっ…相変わらず仲がよろしいですね。お二人の様に僕も妻といつまでも仲良くいたいものです」

 

薫さんと葵さんに向かって微笑みかけながら、僕はとりあえず太原さんの隣に座った。

 

「ほぉー…早速惚気ですか。いやはや、吉浦さんは羨ましいかぎりですな。あんなに可愛らしい奥様を娶られるとは」

「何を言ってるんですか。太原さんこそファンが多く選り取り見取りではないですか。そろそろご家庭を持っても良いのでは」

 

太原さんの皮肉に対して、僕も皮肉で返しながら、笑顔で右手を差し出すと、それに太原さんは応じ握手を交わした。

 

「お久しぶりです。まさかこんなに早く再会出来るとは思ってもみなかったですよ」

「ははは。ちょっと訳ありでしてな!」

「訳あり…ですか…」

 

握手していた手を離しながら、太原さんは笑いながら離したので不思議に思い、チラッと今井夫妻に視線を向けた。

 

「あの練習試合の後に太原殿からお願いされましてね。(わたくし)達に自分の後ろ楯になってほしい、と」

 

僕の視線を感じたのか、葵さんが経緯を話し始めた。

 

「今度の全日本空手選手権。私が出場すると言えば、あれは絶対に反対しますからね」

「あの豚ならそうするでしょうね」

 

葵さんはまだ根に持ってる様で、今川先生の話になると不機嫌そうな表情で扇子を扇ぎ始めた。

しかし、太原さんもあれ呼びとは……相当溜まってたんだな…

 

「そこで、今井夫人にお願いをしたという訳ですよ。すると二つ返事で受けて頂けましたので、駿府学園の空手部コーチを辞めてきました。あははは」

「あの場で朽ちていくのは惜しい人物でもあるからな。俺は葵の考えにはすぐに賛同した」

 

なるほど。今川先生は県内に太いパイプを持っている。太原さんを引き止めるのも容易だろう。

だけど、そこに外部から。しかも、今井という大きな力が介入してくれば話は別だ。

しかし──

 

「なるほど。経緯は分かりました。しかし、何故太原さんがお二方とこの旭高校に?」

 

太原さんは今井家が後ろ楯になってくれたお陰で言わば自由の身。わざわざこのような場所まで報告に来る事もないだろう。薫さんや葵さんを通じて共有をもらえば良いのだから。

 

「ふむ。太原殿がコーチの任を解いたところで彼のこれからの生活もあるからな。そこで、一つの就職先を紹介しに来たのだ」

「へ?」

「和彦さんは明日から修学旅行で学校にはご不在の身。それに、これからも何かと学校を離れなければならない時。また、職員としてのお仕事で忙しい時もあるかもしれませんし丁度良いかと」

 

薫さんと葵さんの話でだいたいの状況が読めた僕は、バッと理事長を見た。

その理事長は冷や汗をかきながらもニッコリと笑顔をキープしていた。

駄目だ。完全に今井夫妻の貫禄に飲まれてる。

 

「いや、まあ…太原さんがそれで良いなら…」

「私は構いません。それと、私の事は雪斗とお呼びください。私も良ければ和彦さんと呼ばせていただきたいので」

「分かりました、雪斗さん。これからどうぞよろしくお願いします」

 

僕としては反対する理由も無いので、太原さん改め雪斗さんと握手を交わし、雪斗さんの今後の空手部コーチ就任の話が纏まった。

それを面白く笑顔で見てくる薫さんと葵さん。そして、石像の様に笑顔で固まったままの理事長がそこにいるのだった。

 

・・・・・

 

「ま、そういう訳だから。雪斗さんには僕の補佐役として君達を指導する事になる。外部顧問扱いではあるが、皆失礼の無い様に」

『はい!』

 

理事長室で話を聞いた通りに皆に伝えると元気に返事も返ってきた。特に問題ないようだ。

 

「あくまでも私は和彦さんの補佐をさせていただく存在ですので、主な指導内容については今まで通り和彦さんに委ねていますので悪しからず。また、明日より修学旅行で和彦さんがいらっしゃらない時などの補助と思っていただいて構いませんので」

「後は、主に型の方に指導を入ってもらおうと思ってるから。僕より雪斗さんの方が型に関しては綺麗だしね」

 

雪斗さんが自分の立ち位置について説明したのに追加して、僕から雪斗さんには型の指導を中心になることを伝えた。

 

「勿論、僕がほったらかしにして組み手ばかりに入るって訳じゃないから。何かあれば遠慮なく声をかけてもらって良いから。そこんとこもよろしく」

『はい!』

 

僕の説明に型のメンバーからはホッとするような、安心する返事が返ってきた。信頼されてて何よりである。

 

「あ、後。今日、空手の大会についての告示が届いたんだけど、今年の全国大会開催地はこの愛知県になっている」

 

僕の言葉に、部員達からは様々な反応があった。

移動が楽だ、とか。他の県に行ってみたかった、とかである。

 

「で、これは僕も知らなかったんだけど、全国大会開催地については、特例として、個人の部は五名から六名に増えるそうだ」

「え!じゃあ、女子は型に集中する昌代ちゃん以外全員で全国行けるって事ですか!?」

 

僕の言葉に興奮したことりが尋ねてきた。

 

「全員行く想定で話すなよ。まあ、組み合わせによってはそうなるね。阿部が加入した事で激戦になるかと心配したけど問題なさそうだ。あー、後。団体のメンバーに変更はない。阿部はあくまでも控えに入ってもらう。そこは良いかな?」

「はい、構いません。私の実力ではまだまだ皆さんに勝てそうにありませんので」

 

団体メンバーに変更がない事を阿部に伝えると、阿部はすんなりと了承した。

 

「なーに。大会まではまだ時間はあるんだし、これからこれから。それに、全く出場しないって事もしないから。主力メンバーの体力温存で途中出場してもらう事もあるだろうから補欠メンバーとして登録はしておく。しっかりと準備はしとくんだよ」

「は、はい♪今後ともご指導の程よろしくお願いします♪」

 

了承は得たものの、元々は駿府での団体メンバー。出場機会がなくなるのを若干気にはしていたようなので、僕からフォローする形で声をかけた。

すると、阿部からは満天の笑みで返事が返されるのだった。

あれは、ただただ尊敬の念を持っているだけって訳じゃないよな…はぁぁ…どうしたものか…

そんな考えをしながらマネージャー陣。今日は全員参加しているが。憂以外の全員からジト目で見られており、憂は口元を開いた扇子で隠しながらクスクスと笑っていた。

 

「コホン!じゃ、続きを始めようか。酒井。全員はそれぞれのウォーミングアップ終えてる?」

「はい!阿部さんに関しては、吉浦さんが、私と同じで良いよ、と言ったのでその様にしています」

 

なるほど。それで阿部からは疲れも見えるのか。

 

「分かった。で、今日は早めに練習を切り上げるから、僕の準備が出来次第、組み手組は流し組み手を始める。時間も無いし、今日はさっさと終わらせるよ」

「あれ?先生はこの後用事でもあるんですか?」

 

早めに切り上げる説明をした僕に、榊原が当然の如く聞いてきた。

 

「奥さんとのデートだもんね♪そりゃー、早く行きたいわよ」

『はあぁぁぁーーーー!?』

 

榊原の質問に対して、僕ではなく二乃がニヤニヤした顔で答えたので、事を知らない部員からは反発な様な声が上がった。

 

「俺たちの練習より奥さんとのデートっすか!」

「ずるいずるい!私だって先生とアニメショップとか行きたいのに!」

「直華。論点がずれてるし、そんなことしたら先生が五月先輩に怒られちゃうでしょ」

 

真っ先に反応した馬場が、ズイッと前に出てきて反論してきた。それに続くように本音駄々漏れ伊井の言葉に、高坂が冷静にツッコミを入れた。

ありがたい存在である。

 

「だあぁぁ!!二乃!誤解を招くような事を言わない!デートじゃなくて、五月の通ってる塾に呼び出されてるの。この間、塾でも試験があったから、その五月の成績を見ながら今後の進路の話し合い。学校でもあるだろ?三者面談が。それと同じ」

 

僕の言葉に、何だ、とかいう肩透かしをくらった男子部員達は各々準備に取りかかっていった。

空手部の女子部員は、マネージャーを含めて見た目の可愛さや美女などが多いが、如何せん男子部員達にとっては高嶺の花過ぎて、そういうネタには飢えているようだったりする。

なので、酒井と榊原がこの間の練習試合の後からキスをするまでの仲になっている事は、僕と女子部員しか知らない。

もし知られたら、酒井がどうなるか…

あの二人は前々から仲も良いから、下手にバレたりしないだろう…

仲も順調の様で、毎朝酒井が榊原の家まで迎えに行き、放課後も家まで送っているようだ。

キスもあれから何度も重ねていてディープキスまで進んでいるそうである。ただ、この間の試験勉強もお互いの部屋で行ったそうだが、そこでお互いに一歩進めずまだその先は未経験だとか。

酒井と榊原からそれぞれ相談を受けるも、試験中だから仕方ないと。うちも同じだから、と一応フォローしておいた。

二人は夫婦でも行為に至っていないならいっか、と考えてるようである。

そこにあせる必要もないし、お互いに想いが重なった時に一歩進めれば良いとも伝えておいた。

二人は三年生で空手の試合や受験もある事。それに、二人の真面目さもあって、そこは焦らずいくようである。

まったく…うちの女性陣にも見習ってもらいたいものだ。

ちなみに明日からの修学旅行の初日も、クラスメイトの計らいで、二人でデートをするらしい。

青春してるねぇ…うちも、五月との二人っきりの時間がもっと増えれば、と思うのは贅沢な悩みなのだろうか…

心の中でため息つきつつも次の指示に移った。

 

「よし!じゃあ、話も纏まった事だし早速僕は着替えてくるよ。酒井。それまでに、ストレッチとか指示よろしく」

「はい!よし、じゃあ始めるぞ!」

「しゃーー!!今日こそやるぜ!」

「あんま気負い過ぎんなよ」

 

僕の指示に酒井が部員にいつも通りの指示出しをすると、一際忠義が気合いを入れるように声を出したのに対して、山県が忠義の背中を右手でポンポン叩きながら落ち着かせていた。

 

「雪斗さんはどうします?着替えなら男子更衣室使っても構いませんよ」

「いえ。私は今日1日皆さんの動きを見ておこうかと。和彦さん相手であれば、流石に皆さんの本気も見れますからね。後は型の部員も見ておきますよ」

「ありがとうございます。何か必要なものがあれば言ってくださいね。雪斗さんの思いのままに指導してもらって良いので」

「ふふふ、分かりました。そうさせてもらいます」

 

雪斗さんの返事を受けた僕は、そのまま着替えのために男子更衣室に向かうのだった。

 




今回の投稿も読んでいただきまして、誠にありがとうございます!

今回は、五月の三者面談まで書く予定ではありましたが、雪斗の旭高校空手部コーチ就任までとさせていただきました。
こう考えると、旭高校もそうそうたるメンバーになってきましたね。

次回は、今回書けなかった五月の塾での三者面談を書かせていただければと思っております。

次回の投稿も読んでいただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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