「ふぅ~、いいお湯だねぇ。景色も良いし最高だね」
「ですね。明日からの林間学校に合流したくないくらいです」
「あー…確かに」
自由行動の後、夕飯までまだ時間があることからお風呂に先に入ることにした。そして、僕と上杉は今二人並んで露天風呂に入っている。
「ことり達も老舗の旅館的なところに泊まったらしいから向こうも温泉とかあったかもね」
「へぇ~。まあでも人が多いしでここまでゆっくり出来ないでしょうね」
「あー…時間とか区切るだろうね。人の量が量だし」
今頃他の先生達は大変なんだろうなぁ。こっちは運転とか大変だけど気兼ねないメンバーだからか楽に過ごせてるかな。
「ところで旅館を探検して何か見つけた?」
「えっと…小さなゲームセンターがありました。後、卓球台も」
「旅館ならではだねぇ」
「ええ。それもあって卓球はしてきましたよ。四葉が相手してくれましたが、だいぶ手加減をしてくれましたね」
「へぇ~、上杉が進んで運動を。本当にテンション高くなってるね」
「まあ、楽しまなきゃ損かなって」
バシャッと顔にお湯をかけながら上杉は答えた。
「良いことなんじゃないかな。人生で一度きりの林間学校。楽しんでなんぼだよ」
「ですよね」
「あ、そういえば上杉が林間学校を休むことになるきっかけだったらいはさん。体調大丈夫なの?」
「ええ。今朝になって急に起き上がれるほどに回復して。それに
「そっかぁ…少しは安心したかな」
「気にかけていただきありがとうございます」
そこで上杉はこちらに向き頭を下げた。
「別にそこまで畏まらなくても良いよ。花火大会を一緒に過ごした仲なんだしさ」
「そうですか。そうだ、らいはと言えばあいつお守りってことでミサンガをいつの間にか作ってて、しかもいつの間にか鞄に入れてたんです」
「へぇ~、手作りのミサンガなんて凄いじゃん」
「ですよね!しかも、お土産を期待してるっていうメモまで残してたんですよ。だから、この旅館での出来事やここまで来る道中での事とかを土産話として持って帰ろうって思ってます」
まっすぐ外の景色を見ながらそんな言葉を口にする上杉。今の上杉はとても良い顔をしている。本当にらいはさんの事になると雰囲気も変わるんだな。らいはさんもたしか上杉の話をする時はいきいきとしていたし、兄妹仲良く出来てるようだ。
「土産話をもっと増やすためにも、林間学校楽しまないとね」
「はい」
その後もしばらく温泉に浸かりながら景色を見て、上杉と二人のんびり過ごすのだった。
~女湯~
ところ変わってこちらは女湯。女湯でも、中野姉妹と芹菜が露天風呂に入っていた。
「ふぃ~…」
「あー、気持ちぃー」
「みんなで一緒にお風呂に入るなんて何年ぶりでしょうか」
「三玖のおっぱい大きくなったんじゃない?」
「みんな同じだから」
「ふふっ、みんなアクセサリーとかを取ってるからこうやって見るとますます見分けがつかないわね」
お風呂に入ることもあり、二乃と四葉のリボン、三玖のヘッドフォン、五月の髪飾りなどが取れている状態なのだ。唯一、一花だけがピアスをそのままつけているが、それでも家族以外は見分けがつかないかもしれない。まあ、髪の長さなど判断材料は様々とあるのだが。
「それを言ったら先生だって驚きでしたよ。服を脱いだら胸がそんなに大きいなんて」
「え!?」
二乃の指摘に芹菜は自身の胸を隠すような仕草を取った。
「ホントビックリ。先生って相当着痩せするタイプなんですね。胸の大きさは私たちと変わらないかも」
「う~~…たしかに友達にも良く言われますが…」
一花の質問にどこか遠いところを見ながら答える芹菜。
中野姉妹は五人全員が大きな胸を持っている。それは制服を着ている段階でも分かるほどだ。
一方の芹菜は普段からスラッとした体型に皆から見えているが、いざ服を脱ぐと中野姉妹とほとんど変わらないほどの大きさの胸の持ち主だったのだ。
「このこと吉浦先生は知ってるんですか?」
「し、知ってるはずないじゃない!私着痩せするタイプなんです、なんて同僚に言うはずないでしょ!」
「え~、勿体ないなぁ…」
一花の質問に吃りながらも答える芹菜に両手を頭に持っていきながら二乃は答えた。
「先生って吉浦先生とは付き合ってないんですよね?」
「つっ…つき…」
二乃の何気ない質問に芹菜は顔を赤くして言葉を詰まらせてしまったが、それを二乃は見逃さなかった。
「へぇ~、先生って吉浦先生に気があるんですねぇ」
「~~っ……!」
「ちょっと二乃」
「いいじゃない一花。こうやって旅行先で恋ばなするなんて普通だと思うわ。でも、あんた達とじゃそんなことできないでしょ?」
「それは二乃も一緒」
「あはは…」
「う~…が、学生の間に交際だなんて不純です!」
「ほらね?」
三玖と四葉と五月の反応に二乃はどうだ、といった感じで一花を見た。
かく言う一花も別に恋ばなが嫌いという訳ではない。しかも若い先生の恋ばななどそうそう聞くことはないだろう。しかし相手、もしくは場所が悪い。
(まだあの子もそこまで自覚がある訳じゃないけど…)
「それでそれで、どうなんです?」
一花の心配をよそに二乃はぐいぐいと芹菜に迫っている。
「うー……私ってそんなに分かりやすいかな?」
「うーん、普段の学校生活からはわかんなかったかな。仲は良さそうに見えたからもしかして付き合ってんの、て感じ。そこは吉浦先生に否定されちゃったけど。でも、ここに来るまでの先生を見てたのと今の反応でなんとなく感じました」
「そっかぁ……お願い!吉浦先生には絶対に言わないでほしいの」
二乃の説明に観念した芹菜は五つ子達に自分の気持ちを内緒にしてほしいと頼んだ。
「そこはまあ、勝手に言ったりはしませんよ。それで、どんなところを好きになったんですか?」
「うーん…まずは頼りになるとこかな。一緒に仕事をしていて、困っている時とかいつも助けてくれて。そういう気配りとか優しさもあって。後はやっぱり一緒にいて安心と言うか、そんな感じがするからかな」
芹菜は両手を頬に持ってきながら恥ずかしそうに話した。自分の気持ちを知られれば止まることもないようである。
「立川先生のおっしゃっていることはわかるように思います」
芹菜の言葉に同調したのは五月であった。五月も中間試験の時に色々とお世話になったからかもしれない。
「じゃあ、この林間学校は少しでも距離を縮める絶好の行事よね!」
「おー、二乃が自分のことのようにやる気になってる」
四葉の言う通り、自分の恋のように二乃はやる気に満ちていた。
「あはは…そういう二乃さんはどうなの?まだ転校してきてあまり時間は経ってないけど、気になる子とかいないの?」
「私はいませんよ」
(上杉の学生証に入ってた写真。あんな男の子に出会えたらなぁ)
二乃が思っている人物とは、以前ことりが五つ子の子どもの頃の写真を見た日に遡る。
その日はある事件が勃発していたのだ。その事件というのは、風太郎が連絡先交換を行うために二乃に預けていた学生証を取り返すために、あろうことか寝ている二乃の部屋に忍び込んだのだ。
もちろんこれには二乃は大激怒。風太郎はリビングで正座をさせられたのだった。ことりはこの時にはまだ来ていなかったのでこの事件の事を知らないでいる。
そんなところにピアスをあける道具を持った一花が現れたことで、学生証を返す条件としてピアスをあける手伝いをするように二乃は風太郎に提案をした。渋々その提案に乗った風太郎であったが、ピアスをあける作業をしている
その写真には金髪でピアスをつけている小学生の男の子が写っていたのだが、その男の子が二乃にとってタイプの男の子だったのだ。それが風太郎の小学校時代の写真と露知らず。
そして二乃は今、その男の子が自分の前に現れないかと考えていたのだ。
「私だけじゃありません。ここにいる五人にいないんじゃないですかね。いたら、そっちで盛り上がってますよ」
「え…でも…」
二乃の言葉に芹菜はある子を見た。
「……」
その子はただぼーっと肩まで湯に浸かり二乃が話しているのを聞いていた。
(確信があるわけじゃないし、
「そっか。じゃあ仕方ないわね。でも、誰か好きな人ができたら教えてね。私だけ教えたのってなんかフェアじゃないから」
「「えーーー!?」」
芹菜の言葉に四葉と五月が驚きの声をあげた。その反応に芹菜は笑顔をこぼしていた。
入浴後、部屋に夕飯の用意がされた。中々豪勢でどれも美味しそうである。
ちなみに席順としては、僕の左に立川先生と二乃が並んでおり、僕の向かいには三玖と一花と上杉が並んでいる。四葉と五月はそれぞれテーブルの側面に座っており、僕と三玖の斜め前に五月が。二乃と上杉の斜め前に四葉が座っている。
「それにしても凄い料理だな!タッパーに入れて持ち帰りたいぜ!」
「やめてください...」
「でも、こんな豪華な料理を食べてたら、明日のカレーが見劣りしそうだよ」
「まあ、四葉の言いたいことは分からんでもないが、学校からの配慮だから気にせず食べな」
「三玖、あんたの班のカレー楽しみにしてるわ?」
「うるさい。この前練習したし、ことりも同じ班だから問題ない」
四葉や二乃、三玖が言っているように明日は飯盒炊飯によるカレー作りがあるのだ。班毎に作っていくが、ことりと三玖は同じ班である。
それにしても…
「ビールがありますが、立川先生が頼まれたんですか?」
「は、はい。やっぱりまずかったですかね」
「生徒の手前あまりよろしくなかったかもですが、まあこのメンバーですし良いかもしれませんね。では、どうぞ…」
そう言って立川先生のコップにビールを注いだ。
「ありがとうございます。では、吉浦先生も…」
自分のが注ぎ終わったの待った立川先生が今度は僕のコップに注いでくれた。
「ありがとうございます。では、今日は運転お疲れ様でした、乾杯」
「か…乾杯」
チンッと小さな音を鳴らしてお互いのコップを当てた。
「んっ…んっ…はぁぁ…美味しいです…」
なんだろう。お風呂上がりでもあるからか、ビールを飲んでいるだけで妙に色っぽく見えてしまう。てか、いつもより胸が大きく見えるのだが気のせいだろうか。
「む…先生、立川先生見すぎ」
「は?そ、そんなに見てないでしょ」
「……っ」
「むー…」
少しだけ見ていただけなのだが向かいの三玖に指摘をされた。自分で思ってたよりも見ていたのだろうか。
立川先生は少し恥ずかしそうにビールを飲んでいる。
僕も気分を紛らわすようにぐいっとビールを飲んだ。
「へぇ~、吉浦先生ってばお酒飲めるんだ。立川先生も」
そんな僕の飲みっぷりを見ていた一花からそんな風に声をかけられた。
「まあ付き合い程度にはね。普段家ではあんま飲んでないかな。立川先生は結構好きだったりするんですか?」
「え…ええ…普段家でも晩酌を…」
「へぇ~、意外です。立川先生はそんなにお飲みにならないと思ってました」
「だね。なら地酒とかお好きなんじゃないです?良かったら頼みます?」
「い、いいんですか!?」
僕の質問に目をキラキラさせている立川先生。そんなにお酒が好きだったとは。
「構いませんよ。みんなはジュースとか飲む?」
「いいの?じゃあコーラで」
「私はジンジャーエールがいいわ」
「ウーロン茶」
「オレンジジュースがいいです!」
「カルピスをお願いします」
「ホントにバラバラだね。上杉は?」
「俺は水でいいですよ」
「遠慮しない。じゃあウーロン茶を頼んどくね」
「ありがとうございます」
全員の希望を聞いた僕は電話で注文をとった。そして自分の席に戻ると向かいの三玖がビール瓶を持って注ぐ体勢をとった。
「こういうのちょっと興味があったんだ。いいかな?」
「ああ。じゃあ、お願いしようかな」
そして三玖に向かってコップを差し出した。
「むー…あまり上手く注げない。泡がない」
「ははは、何気にビールを注ぐのって難しいからね。僕はその辺気にしないから大丈夫だよ。ありがとね」
「…うん」
自分が注いだビールにほぼ泡がないことに残念な顔をしていた三玖だが、僕の言葉に少しは安心したようだ。
「それにしても、こうやってると本当に旅行に来ただけだって感じちゃうよねぇ。実際は林間学校なのにさ。そういえば林間学校のスケジュールよく読んでなかったかも」
「2日目の主なイベントは、オリエンテーリング、飯盒炊飯に肝試しだ。3日目は自由参加の登山にスキー、川釣りが開催される。そして夜はキャンプファイヤーだ」
「何でフータロー君暗記してるの…?」
上杉がスラスラとスケジュールを伝えた事に一花は驚きの声をあげた。かくいう僕も驚いている。
「凄い。もしかしてしおりをしっかりと読んできたの?」
「ま…まあ…」
立川先生の問いに恥ずかしそうに上杉は答えた。
「上杉さん流石です!あと、キャンプファイヤーの伝説の詳細が分かったんだけど…」
「伝説?」
一花は伝説について知らないようで、四葉に聞き返した。
「関係ないわよ。そんな話したってしょうがないでしょ。どうせこの子達に相手なんていないでしょ」
「あはは...」
「……」
そういえば、一花と踊ることになってたけど当の一花とは何も話せてなかったなぁ。一花は僕と踊ることを知ってるみたいだから乾いた笑いが出ている。
なぜかその横の上杉も神妙な顔つきになっているようだが。
「ま、伝説なんてくだらないことどうでもいいけど」
二乃は四葉と違って伝説には興味がないようだ。ま、こちらからは何も言わない方が良いだろう。
その後も美味しい料理を食べながら色々な話で盛り上がるのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回はお風呂での語らいと夕飯の風景を書かせていただきました。
原作と違ってお風呂と夕飯を逆で今回は書いてみました。理由としては、和彦と芹菜がお酒を飲むのと芹菜のお風呂上がりの雰囲気に和彦が少しでもたじろぐ姿を書きたかったというのもあります。
この旅館でのお話は次回でも書かせていただきますのでよろしくお願いいたします。
では、次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。