少女と花嫁   作:吉月和玖

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47.兄

二乃と五月の喧嘩。そして、四葉の陸上部問題と、二つの事件が無事に終わった。

あの後、五つ子とことりと上杉は今後の話をするために中野家に向かっていった。僕も呼ばれたのだが、ここからは家庭教師と生徒の時間だろうと思い、誘いには丁重に断りを入れた。なので今は一人で家にいるところである。

 

「はぁーー……怒涛のような一週間だったなぁ…」

 

ソファーに身を預けながら天井を見上げているとそんな言葉が口から出てしまった。とは言え仕方のない事だろう。

五月の家出の先としてこの家に来たことから始まった。すると、その日のうちに三玖までもうちに来たのだ。それから、五月の甘える場所を作ってあげて、二乃の話し相手も引き受けて毎晩電話で話もした。そして今日、二乃の断髪からの四葉の陸上部問題解決と…

端から見たら中々の濃い日常だったのではないだろうか。

普段は平気な顔で過ごしてたけど、やはり心のどこかで疲れが溜まっていたのかもしれない。あんな言葉が出てくるのもおかしくないだろう。

 

「そういえば、こうやって一人でうちにいるのも久しぶりだなぁ」

 

この一週間は、誰かしらがいたから一人でという時間を作れていないように感じる。

まあ、別に一人の時間が好きだという訳ではないんだが…

そんな風に浸っているとことりから連絡があった。

 

『無事に五人揃って勉強始めることが出来たよ。みんないい顔で勉強に取り組んでて、そんな光景を見て風太郎君も感無量って感じだったよ。もちろん私もね』

 

メッセージの文章からはことりの嬉しさが垣間見えてくる。

上杉とことりにとってはようやくって感じだからな。

──初めは四葉だけの勉強会だったらしい。そこに少しだけ自分に自身を持てるようになった三玖が参加するようになり、そして花火大会の後あたりから一花が参加するようになった。林間学校で上杉のことを認めた五月がその後参加するようになって、今回の件で二乃が参加ということになったのだ。

僕は見ることが出来ていないが、途中から参加したことりよりも上杉にとっては、その五人が嫌な顔をせず揃って勉強をしている姿は格別なものだろう。

 

「ま、今回の期末試験では五人揃っての赤点回避は難しいだろうけど、きっと次に繋がることが出来るでしょ」

 

スマホをポケットに仕舞い、うーんっと伸びをしながらソファーから立ち上がった。

 

「さてと…まだ昼過ぎだけど夕飯の買い物にでも行きますか」

 

部屋で上着を着て、そのまま買い物に向かうのだった。

 


 

「「お世話になりました」」

 

夕飯の買い物から帰ると、ことりと三玖と五月が荷物を取りに戻ってきた。

三玖と五月は自身の荷物を持って帰るのだが、ことりについては今日から中野家で行われる勉強合宿のために荷物を取りに帰ってきたそうだ。

そんな三人を送るため、僕は車を出し、中野家のマンションの前まで来たところである。

三玖と五月は、車から降りると僕に向かって挨拶をしてきた。

 

「あの、これ…この一週間お世話になりましたので。三玖と二人で出し合いました。受け取ってください」

 

僕も車から降りたところで、五月から封筒を渡された。恐らく食費などが入ってるのだろう。

 

「そんなのいいよ。気持ちだけ受け取っておくから」

「しかし…」

「受け取って。これはけじめでもあるから」

 

受け取りを拒否したところ、三玖と五月からじっと目で受け取るように訴えかけてきた。

これは二人が折れそうにないか…

 

「はぁぁ…分かったよ。じゃあ、受け取っておくよ」

 

結局、僕が根負けすることになり封筒を受け取った。

 

「まぁ、今回みたいな長期のお泊まりって訳にはいかないけど、また泊まりにきな。ことりと二人、いつでも歓迎するからさ」

「うん…!」「はい!」

 

僕の言葉に笑みを溢しながら三玖と五月は答えた。

 

「それじゃあ兄さん、行ってくるね」

「ああ。しっかり勉強するんだよ」

 

ことりに答えた僕は、三人がエントランスに入っていくのを見守った後、帰路に着いた。

 

・・・・・

 

ことりもいないので久しぶりの一人での夕飯である。中野姉妹が転校してきてから結構増えたように感じる。

 

「うーん…本当は鍋にしようと思ったんだけど…ま、いいか。一人暮らしの時に使ってた一人用の鍋が確かここに……」

 

キッチンの棚の中を漁っていると小さな鍋を見つけたので、それをコンロの上に置く。

具材とかは食べる分だけ切って残りは明日以降に使えばいいだろ。

 

「そうだ。折角一人なんだから久しぶりにキムチ鍋ってのもいいかもな」

 

嫌いという訳ではないが、ことりはキムチ鍋を好んで食べないので、食卓にはあまり並ばない食事でもある。

一人暮らしの時は結構お世話になっていた食事でもあるので懐かしさも感じる。

 

「確か、手軽に作れる鍋の素もあったような…」

 

その場の勢いで買っていた一人前ごとに小分けされた鍋の素を見つけたので後は食材を切り分けるだけだ。

食材を切り分けたところで、鍋の素と水を鍋に入れ火に入れる。後は切った食材達を鍋に入れて煮込み、火が通ったら出来上がりだ。

うん。これぞ一人暮らしって感じの料理だ。さてと…今日は夕飯時から飲みますか。

テーブルに鍋を置いた僕は、小さな瓶に入ったお酒とお猪口を用意して席に着いた。

 

「ではでは、いただきます」

 

白菜や長ネギといった野菜と豚肉を取り皿に取り、野菜から口にする。

 

「はふ…はふ…うーーん、久しぶりに食べると旨いなぁ」

 

鍋を食べているところに、お猪口のお酒をくいっと飲んだ。

 

「くぅ~~、たまにはやっぱりこういうのもいいねぇ!」

 

そんな感じで一人鍋を楽しんでいるとスマホに着信が入った。

気さくな相手だったので、スピーカーにして電話に出ることにした。

 

「どうした?もう家出も終わって家に帰ったんだろ?」

『あんたが独り寂しくしてるんじゃないかと思って連絡してあげたのよ』

「それはそれは、心優しいですなぁ」

『全然心込もってないわよ』

 

そこで僕と二乃はお互いクスクスと笑ってしまった。

 

『で?何してたのよ』

「ああ。夕飯食べてたところだよ。だからスピーカーにしてるけど勘弁してね」

『ふ~ん。そういえば、あんた料理作れるんだったわね』

「まあね。実家でも両親が共働きだったし、一人暮らしもしてたしで、それなりには作れるかな。ま、一人暮らしが長かったから簡単なもので済まそうってたまに思うけどね。今日も一人だから簡単に済ませてるし」

 

次の食材を鍋から取り皿に移しながら話す。

今度は豆腐にいってみよう。

 

『ちなみに今日は何食べてんの?』

「んー?鍋だけど。キムチ鍋」

『え!?一人で鍋食べてんの?』

 

まあ鍋と言えば、普通複数人で囲んで食べるようなものだからな。二乃が驚くのも無理ないか。

 

「別に驚くこともないだろ。一人鍋用のお店だって今じゃあるんだし。一人焼き肉出来るお店もあったねそういえば」

『そりゃあ、そうかもだけど……虚しくならない?』

「大丈夫だよ。一人鍋も中々乙だよ。今度試してみたら?……て、そもそも二乃の場合、一人でご飯を食べることがないか」

『ふふっ、そうね。あの子たちがいれば一人はありえないわね』

 

姉妹と一緒にいることを嬉しそうに話す二乃。本当に良かった、また仲良く出来ているようで。

 

『そこまで言うならどこか連れていきなさいよ。鍋専門店に』

「は?二乃を?」

『他に誰がいるのよ。一人じゃ私もまだ勇気ないけど、二人だったら行けそうだし』

「はぁ、まあいいけど…」

『ふふん、言質取ったんだから覚悟しときなさい。もちろん先生の奢りなんだからね』

 

楽しそうに話す二乃の声を聞いていると、それくらい良いかと思えてきてしまう。

そこでお猪口のお酒をくいっと飲みながら感慨に浸ってしまった。

 

『………ありがとね』

 

すると急に二乃から感謝の言葉が伝えられた。

 

「どした?急に」

『ほ、ほら!一応家出中、私のこと気にかけてくれてた訳だし。そのお礼よ』

「へぇーー」

『な、何よ!』

「いや。ちゃんとお礼が言えるって、出来そうで出来ないものだからね。うん。二乃はいい女性にきっと成長するね」

『恥ずかしいこと言ってんじゃないわよ、まったく……それより、あの言葉はまだ有効よね?』

「あの言葉?」

 

はて?何か言ったっけ?

 

『言ったじゃない!頼る大人がいなければ頼ればいいって』

「あー、その事ね。僕の中では当たり前になってたから、すっかり忘れてたよ。もちろんまだまだ先まで有効だよ」

『そ。ならこれからも頼りにさせてもらうわね、()()()

「ああ。期待に応えられるように頑張るよ………ん?」

 

今、二乃は僕をなんて呼んだ?和にぃって聞こえたような気がしたが空耳か?

 

「ねえ、二乃?今、和にぃって……」

『ええ、呼んだわね。何て言うか、頼る人って親しみを込めてね。大丈夫よ、人前では今まで通り先生って呼ぶから……と、そろそろお風呂の順番ね。じゃあね、おやすみ和にぃ』

 

そこで一方的に切られてしまった。

 

「……また一人妹が増えてしまった…」

 

まあ、頼りになる意味を込めてであれば喜ぶべきことなのだろうか。気にしないようにしておこう。

残りの鍋の中の具材を取り皿に取り、また食事を再開した。すると、また着信が入る。そこで、またスピーカーで電話に出ることにした。

 

「はいはい、どうしたの?」

『こんばんはお兄ちゃん。やっと繋がったけど、誰かと電話してたの?』

「あーー…まあ、ちょっとね。五月は今勉強中じゃないんだね」

『うん。さっきまで勉強して夕飯食べてで、今は順番にお風呂に入ってるよ。だから自由時間。まあ、上杉君はリビングで一人勉強してるんだけどね』

 

なるほど。それで二乃はさっき電話してきたのか。最後にお風呂の順番だとか言ってたな。

 

「それで?どうしたの、わざわざ電話なんかしてきて」

『えー、いいじゃない。声が聞きたかったの』

 

ことりとおんなじ事言ってるな。本当にことりが二人になった気分だ。

 

「さっき、そっちのマンションの前で話したでしょ」

『…迷惑だった…?』

 

五月の声は、ちょっと涙声ように聞こえてきた。

 

「別に迷惑って訳じゃないよ。折角久しぶりに五人揃ったんだから、姉妹で話すこともあるでしょ」

『そこは大丈夫だよ。夕飯の時にたくさん話したから。だから、お礼も兼ねてのお話なの。こうやって、またみんなでいられるのもお兄ちゃんのおかげ。ありがとう』

「何言ってんの。僕は何もしてないよ。家出の場所を提供して、姉妹の話を聞いただけ」

 

最後の具材を食べなから答えた。

言った通りで、今回僕は何もしていない。頑張ったのは、毎日のように二乃や四葉に声をかけに行っていた上杉だったり、説得をした姉妹の皆だ。僕は話を聞いてあげただけ。

 

『それでもだよ。それでもお兄ちゃんは私たちを突き放したりしなかった。一緒にいて話を聞いてくれた。それだけで私はとても心が安らかになったんだから。だから、ありがとう』

「そうか…」

 

そこで、コンコンとノックの音が聞こえた。どうやら五月の部屋に来客が来たようである。

 

『………はーい、すぐ行きまーす!ごめんね、本当はもう少し話したかったけど、そろそろお風呂の順番みたいだから…』

「また別の日に話せばいいさ。ゆっくり入っておいで」

『うん。じゃあ、おやすみお兄ちゃん』

「ああ。おやすみ」

 

五月からの電話も終えたところで、夕飯の後片付けを始めた。

そっか、僕のしたことは多少なりとも彼女達の心に響いていたのか。

その事が分かっただけでも、年甲斐もなく嬉しくなってしまった。

鍋や食器を洗い終わり、少しゆっくりするためにソファーに座りテレビをつけた。観たい番組があるわけでもないので流し観ている状況である。

 

ヴー…ヴー…

 

今日は電話がよく鳴ることで。

 

「はい」

『こんばんは…』

「こんばんは三玖。珍しいね、三玖から電話なんて」

 

今度の電話の相手は三玖とであった。今度は、スピーカーにせず耳に当てて電話に応対している。

 

『そういえば、そうかも…』

「それで?何かあった?」

『ううん。一週間先生がいる生活が続いたから、なんとなく話したいなって思っただけだよ』

「そっか…どう?一週間ぶりの我が家は。落ち着くんじゃない?」

『そうだね。落ち着くっていうのもあるけど、やっぱり五人揃ってるのが嬉しかったかな』

 

よほど嬉しいのだろう。三玖の声から嬉しさが滲み出ていた。

 

「そいつは良かった。君達はやっぱり五人揃ってないと、なんとなく活気がないって言うか、落ち着かないって言うか。うまく言えないけど、五人揃ってる方が生き生きとしてるよ」

『うん。先生の言いたいこと、なんとなく分かるよ。今回の件で改めて実感できた』

「なら、今回のことは起きて良かったのかもしれないな。ま、また起きて巻き込まれるのは勘弁だけど」

『ふふっ…そう言って、また何かあったら助けてくれるんでしょ。あの時みたいに

「最後の方はよく聞こえなかったけど、そんな事が起きたらその時の僕がまた考えるさ。ほら、そろそろ勉強に戻んな」

『はーい。先生…おやすみ…』

「ああ。おやすみ」

 

やれやれ。次から次によくもまあ電話をしてくることで。さて、風呂にでも入りますか。

お風呂に入りしばらくゆっくりしていると、またスマホに着信が入った。

 

「はい」

『こんばんはー、先生!』

「こんばんは。四葉は夜でも元気だねぇ」

 

夜とは思えないテンションで四葉が挨拶をしてきたので、あきれ気味に答えた。

 

『あははは…これが取り柄みたいなものなので…』

「もしかして、まだ勉強会中?」

『はい!今は休憩に入ったのですがみんな頑張ってますよ』

「そっか。それで?どうしたのさ、こんな時間に」

『いえ。今回の件では先生にも多大なご迷惑をおかけしたのでお詫びをと』

「なんだ、そんなこと。別に気にしなくてもいいのに。てか、僕に何かあったっけ?」

 

特に四葉から迷惑をかけられた事は思いつかないのだが。

 

『それは…上杉さんの問題集の採点や解説を作ってくれたり。後、今日も私と陸上部の件で駅まで来ていただいたりしましたので』

「うーん…上杉の問題の件は僕の勉強になったし、今日は成り行きで現場に行くことになったで、別に迷惑とは思ってないよ」

『先生…』

「ま、これからは一人で抱え込まないで、何かあれば相談するんだね。四葉の近くには相談相手として最適な四人がいるんだから」

『はい!……あの…先生にも…』

「ん?」

『何かあったら、先生にも相談していいですか?』

 

まさか僕の選択肢が出てくるとはね。まあ、答えは決まってるんだけど。

 

「ああ。姉妹に相談しにくいことがあればいつでも来るといい」

『…っ!はい!ししし、さすが私たちのお兄ちゃんですね!』

「いつお兄ちゃんになったんだ」

『あははは、それだけ頼りにしてるってことですよ!では、おやすみなさい』

「ああ。おやすみ」

 

終始元気な四葉であった。やはり四葉はこれくらい元気がないとだね。

うーーん、さてそろそろ寝ますか。

 

ヴー…ヴー…

 

「………」

 

二乃、五月、三玖、四葉と来たからもしかしてとは思ってたけど。

スマホのディスプレイを確認すると予想していた人物の名前が表記されていた。

 

『ヤッホー、先生』

「こんばんは一花。もしかしたらと思ってたけど本当に電話してくるなんてね」

『あれ?電話するなんて言ってたっけ?もしかして、私の電話を待ち望んでいたのかなぁ?』

 

こちらも四葉に負けず劣らずテンションが高い。

 

「何でだよ。一花の電話の前に他の姉妹四人から電話があったんだよ」

『ありゃりゃ。みんな考えることは同じってことか』

「そうみたいだね……今回の件は一花にとっても応えたんじゃない?」

『まぁねぇ。ここまでの事に発展することは今までになかったからね。そう考えると先生が三玖と五月ちゃんを預かってくれたのは助かったかなぁ』

「ま、それくらいはね」

『ふふっ、それに聞いたよ。二乃のことも気にかけてくれてたんだよね?』

「よくご存知で。まあ、気にかけるっていうか、ただ話し相手になってあげただけなんだけどね」

 

電話をしながら戸締まりなどの確認をして部屋に移動をした。そして、部屋のベッドに腰掛け上半身だけベッドに寝転んだ。

 

『ううん。それだけでも助かってるよ。本来であれば、姉である私がしなきゃいけないことだったんだから。でも、私も仕事とかで忙しかったし…』

「ま、適材適所ってことだね。二乃が僕と話したのは、姉妹ではない第三者だったからで、後はことりの兄だったことも大きかったかな」

『そっかそっか。はぁー、これで試験さえなければ万々歳なんだけどなぁ~』

「こらこら。教師に向かって言う言葉じゃないでしょ」

『ふふっ、そうだった。先生は先生でした』

「言葉がおかしくなってるよ」

『だって、こんだけ色々と接してるんだもん。先生って感じしないよぉ。私たちにとって頼れるお兄さんだね』

 

一花、君もですか…

 

「はぁぁ…」

『どしたの?』

「いや。気にしないでくれ。それよりも、そろそろ上杉が勉強始めるって言ってるんじゃないの?」

『あははは…実はさっきからフータロー君の声が聞こえてたりして…じゃあ、勉強に戻るよ。これからも私たち姉妹のことよろしくね。おやすみ』

「おやすみ」

 

そこで電話が切れたのでスマホを持っていた腕を下ろした。

 

「これからも姉妹のことをよろしく、か…」

 

本来であればここまで介入するべきではなかった。けど──

不意に、まだ髪が長かった頃の二乃に頼んでリボンをほどいてもらった時の事を思い出していた。

あれで、あの時の女の子が五つ子の誰かだって感づいたけど、もしかしたら会った瞬間に心のどこかで思ったのかもしれない。また会えたって。

 

ヴー…ヴー…

 

そんな時、本日の夕飯から六度目の着信が入った。

 

「はいよ」

『あ、お兄ちゃんもしかして寝てた?』

「いや、ベッドに寝転がってたけどボーッとしてただけだよ」

『ふーん』

「そっちこそ勉強会中だろ。いいの?電話なんかしてて」

『うん。風太郎君にも許可もらったしね。やっぱり一日の最後にはお兄ちゃんの声聞いとかないと。て言うか、ずっと電話が繋がらなかったんだけど、そんなに長電話してたの?』

「あーー…五つ子から順番に電話が鳴ってたんだよ。それで、ずっと相手してた」

『え!?五人とってこと?』

「そういうことになるね」

 

僕の言葉にことりもさすがに驚きを隠せなかったようだ。

 

「皆、今回の家出騒動と四葉の部活問題の件で助けてくれてありがとうだってさ。何もしてないんだけどね」

『きっと話を聞いてくれただけでも嬉しかったんだよ。ずっと五人で頑張ってきて、愚痴とかそういうことを聞いてくれる大人がいなかったんじゃないかな。私、今日もみんなの親御さんに会えてないし』

「そうかもな」

『うん…だから、みんなが求める限りは色々と聞いてあげて。きっと、私や風太郎君では出来ないこともあると思うから』

「分かってるよ」

『うん。お兄ちゃんならそう言ってくれると思ってた。じゃあ、そろそろ戻るね』

「ああ。あんまり無理しないようにね」

『はーい。おやすみお兄ちゃん!』

「おやすみ」

 

ことりにあそこまで言われるとはな。

何度も家庭教師として中野家に行ってるからか、中野家の複雑な家庭環境に察してきてるのかもしれない。

ま、僕も詳しくを知っている訳ではないんだけどね。さて、そろそろ寝ますか。

心の中で皆の勉強している姿を思い浮かべて応援しながら眠りに就くのだった。

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。

今回は、五つ子全員から和彦への電話によるお話を書かせていただきました。なので、いつもより少し多めで書かせていただいております。
そしてなんと言っても二乃の和彦に対する呼び方ですね。自分で書いてて違和感バリバリだったのですが、他の『兄さん』や『お兄ちゃん』などよりもちょっと特別感を出したかったので、『和にぃ』とさせていただきました。

では、また次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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