少女と花嫁   作:吉月和玖

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61.帰省

三玖と玄関前で別れて自分の家に帰ると、思いもよらない出迎えを受けた。

 

「ただいまぁ」

「おかえり、兄さん」

「おかえりなさい、先生」

「あれ?五月こっちに来てたんだ。ことりに質問?」

 

リビングテーブル側にに座っている二人の前には、勉強道具が広げられていたので五月がことりに質問に来ていたのだろう。

 

「ええ。今日はことりさんは友人の方とお出掛けになっていたので。日中は一人で頑張っていたのですが、どうしてもわからないところがありましたので…」

「そっか。ことりは今日佐伯達と?」

「うん。今日は智子の家に三人で集まったんだ」

 

二人とも仲良くやれててなによりだ。

 

「五月だけが来てるってことは、他の姉妹はどっかに行ってるの?」

「はい。一花は今日はお仕事とのことで。二乃と四葉は買い物に。三玖はどこかに出掛けてました」

「ふーん…三玖ならさっき帰ってるよ。ここまで一緒に帰ってきたからね」

 

ネクタイをほどきながら伝えて、ダイニングテーブルに座った。

 

「え?兄さん、三玖と一緒だったの?」

「ああ。数学準備室まで来てたからね。五月と同じで勉強の質問に来てたよ」

「三玖は先生のところに行っていたのですね」

多分昨日のことを気にしてだろうけど、かなり行動的になってるなぁ

「どうした?ことり」

「う、ううん。なんでもない」

 

何かぶつぶつ言いながら考え込んでいたように見えたので、ことりに声をかけるもなんともないようである。

 

「そういえば、昨日の立川先生の家に行ってたことって、五つ子も知ってたの?三玖に聞かれてビックリしたよ」

「あー…目撃したのが二乃と四葉ですので、全員が知っています…」

 

目撃されたのは二乃と四葉だったのか。それは、ことりや三玖が知ってる訳だ。

 

「で、兄さんから聞いてた、立川先生と付き合っていないことは今さっきメッセージで送っといたよ。二乃から結局二人は付き合ってるのかってついさっき聞かれたから」

 

本当に恋愛について興味津々だこと。

 

「さてと、兄さんも帰ってきたし夕飯作らないと。五月、ここまででいいかな?」

「はい。大変助かりました。しばらくここで勉強しててもいいですか?家ではテーブルが一つしかないので」

「構わないよ。僕はお風呂にでも入ってよっかな」

「了解!お風呂は沸いてるから入っちゃって大丈夫だよ」

 

勉強道具の片付けをそこそこにして、キッチンに向かうことりにお風呂は沸いている事を言われたのでお風呂に向かうことにした。

お風呂から上がり、リビングに行くとまだ五月の姿があった。

 

「まだ勉強してたんだ。頑張ってるね」

「ええ。できる時にやっておこうかと。姉妹のみんなには連絡済みで、夕飯ができたら連絡くれることになってます」

「そうか。ん?やってるのは数学?」

 

五月の近くまで行き座り込んでから手元のノートを見ると数学の問題が解かれていた。

 

「え、ええ。元々そこまで得意ではない科目ですので、しっかりとやっておこうかと」

「?でも、この間の期末では五割は取れてたよね?まあ、他の科目がどれくらい取れてるのかは知らないけど」

「そ、それは…!お兄ちゃんが教えてくれる科目だもん。自然と頑張れちゃうよ

 

目線だけこちらに向けてそんなことを言ってくる五月。まったくことりと同じことを平気で言ってくるんだから…

頭を撫でてあげると、『えへへ』と嬉しそうに笑っていた。

その後は、こちらの夕飯が出来たこともあり、勉強道具を片付けて、五月は隣の部屋に帰っていった。

 

「そうだ。さっき三玖と立川先生と三人で帰ってた時に話題に出たんだけど、僕達が実家から戻った後に皆でどっかに参拝に行かないかって」

「へぇ~、いいんじゃないかな。なんだったら風太郎君やらいはちゃんも呼んでなんてどうかな」

 

夕飯を食べながら先程三玖と立川先生先生で話した、皆で参拝の話をことりにすると、すぐに賛成の声があがった。

 

「いいかもしれないな。せっかくだから、ちょっと遠めの場所に行くのもいいかもだし、立川先生に車出せないか相談してみるよ」

「そっか…私にお兄ちゃん、それに三玖達五人と、上杉兄妹に立川先生ともなるとかなりの大所帯になるね」

「そういうこと。さすがに全員を乗せるのは無理だからね」

 

そんな話をしながらスマホを取り出し、立川先生にさっそくメッセージを送った。すると、すぐに返事が返ってきた。

 

『実家の車を借りるので大丈夫ですよ』

 

「立川先生、車出してくれるってさ」

「早いね。もう返事返ってきたんだ」

「僕達と同じように夕飯食べながらゆっくりしてたのかもね」

「そっか…ねえ、後二人くらい増えてもいいかな?」

「二人って、森下と佐伯のことか?」

「うん!この機会に五人とも仲良くなってもらおうかなって。風太郎君とはお昼に何度か話したし」

 

そういえば、上杉が昼休みの避難場所として数学準備室を使ってた時に、ことりも森下と佐伯を連れてきてたっけ。それで、ことりの友達ってことでお互いにある程度話すようになったんだよな。連絡先までは交換してなかったけど。

 

「まあ、いいんじゃないかな」

「ありがと。二人にも連絡しておくね」

「さて、こっちは追々話していくとして、僕達の帰省の準備をしないとね」

「うん。そうだ、後で五人にお土産何がいいか聞いとかないと」

「またバラバラで返ってくるんじゃないの」

「あはは、確かに!」

 

そうして、残りの夕飯の時間も雑談を交えながら過ぎていった。

 


 

夕飯とお風呂も終え、自分の部屋でのんびりしているとスマホに着信が入った。

 

「どうした?電話なんて珍しい」

『ちょっと話したかったのよ』

 

電話の相手は二乃。五人の中では電話の相手として珍しい部類に入るだろう。

 

「へぇ~…何?また何かあった?」

『別に何かあった時だけ電話しちゃいけないことはないでしょ。本当にただ話をしたかっただけよ。何?迷惑だった?』

「まさか。好きな時にメッセージでもいいし連絡してきな」

『さっすが和にぃ、わかってるじゃない』

 

和にぃ……そういやぁ、そんな呼び方を許可したっけ。二乃とは二人っきりになることもなかったし、呼び方とか忘れてたわ。

 

「ああ、そういえば二乃と四葉だったんだね。僕と立川先生が一緒にいるとこを目撃したのって」

『ええそうよ。厳密には、四葉が和にぃを見付けて、そこに立川先生が合流したのを発見したのよ』

「うちのマンションから結構距離があるスーパーだったと思うんだけどなぁ」

『あの時は色々なスーパーを見て回るってことでたまたま行ってたとこだったのよ』

 

なるほど。本当に偶然の出来事だったのか。家から遠かったからちょっと油断してたかもな…ま、あの時はまさか芹菜さんから想いを伝えられるとは思ってなかったから、見つかったところでどうとは思ってなかったし。

 

『それより、こっちも聞いたわよ。結局、立川先生とは付き合ってないんだって?』

「ああ。まあね…」

『なぁーんだ。家に誘うくらいだから告白くらいしてると思ったわ』

「なんでそう思うのさ」

『立川先生が一人暮らしだってことは、この前の林間学校初日に聞いたわ。そんなところに、なんとも想わない男を家に招く訳ないでしょ』

 

なるほど。女性視点から見えるものもあるのか。

 

『でも、そうよねぇ。立川先生が告ってそれを和にぃが振るってこともありえるわよねぇ』

 

本当にこの子は鋭いところを。三玖にはその辺りバレてなかったんだけどなぁ。

 

『ね?実際はどうなのよ』

「ノーコメント。立川先生のプライバシーに関わってくるしね」

『ま、そりゃそうよね。最初から聞けるって思ってなかったから大丈夫よ。そうだ。今日の買い物でね──』

 

言葉の通り、二乃はすんなりと立川先生の話題から別の話題に切り替えた。その後も、二乃が話すことに相槌を打つといった時間が過ぎていった。

そんな時間も苦痛とは感じず、また二乃も終始楽しそうに話していたからいい時間を過ごせたのかもしれない。時間もあっという間で、そろそろ寝ないといけない時間になってしまった。

 

「時間も時間だし、そろそろ寝ようか」

『あら、もうそんな時間なのね。和にぃは明日も仕事なんだっけ?』

「ああ。休みまでもう少しってところかな」

『その休みも実家に帰るんでしょ?慌ただしいこと』

「ははは…自分でもそう思ってるよ。じゃあ、おやすみ二乃」

『ええ。おやすみなさい和にぃ』

 

そこで電話が終わったので、スマホを持っていた手を下ろした。そのままベッドに寝転がり天井をぼーっと見ていた。

 

「やっぱ、二乃って変わったよね……」

 

強気な態度は変わらないけど、何て言うか、噛みついてこないって言うか…やっぱ、全体的に優しくなった?

以前、四葉に聞いたら変わってないって言ってたけど、そりゃあ姉妹に対しての態度は変わらないよねぇ。じゃあ、姉妹に対する態度に少しは近づいたのだろうか。なら、それだけ信頼されてるってことだよね。

そこで、ベッドから立ち上がり、部屋の窓から外の景色を眺めた。

 

「その信頼にちゃんと応えないとな」

 

一人、そんな決意をするのだった。

 


 

「じゃあ、そろそろ出ようか」

「そうだね。ガス栓よし!戸締まりよし!うん、問題なし!」

 

年内の仕事も終わり、大晦日を明日に控えた今日、実家に帰るために荷物を持って部屋を出た。するとそこには、五つ子達が玄関の前で立っていた。

 

「おっはー」

「おはよう……て、どうしたのみんな?」

 

いつもの調子の一花の挨拶にいつも通り挨拶を返したことりであったが、五人がいることに疑問の声をあげた。

 

「見送り…」

「です!お二人が長い時間いないのはこちらに来てから初めてですので」

 

確かに四葉が言うように、五つ子達が旭高校に来てからはだいたい僕かことりが一緒だったからな。

 

「そっか。ありがとね、みんな。そうだ、お土産期待しててね。福岡の美味しいお菓子たくさん買ってくるから」

「美味しいお菓子!楽しみにしています!」 

 

美味しいお菓子の言葉に五月が目をキラキラしている。

 

「あんまり無理しなくていいからね。量が多いと帰りに荷物になるでしょ」

「大丈夫だよ。見ての通り実家に行くための荷物は少ないからね」

 

ポンポンと僕の肩からかけているボストンバッグをことりは叩いて荷物が少ないことをアピールした。

 

「それで二人分な訳!?三泊四日よね?」

「少ない…」

 

二乃と三玖の指摘も分からんでもないんだが。

 

「実家に帰る訳だし、二人の着替えを入れたらこんなもんだよ」

「だね。家に帰ればある程度は揃ってるしね」

「二人の着替えを一緒に入れてるの?」

「?そうだよ」

 

一花の質問に疑問に思いながらことりは答えた。

 

「……と、そろそろ行かないとかな」

 

腕時計で時間を確認するとそろそろゆっくりできないくらいになっていた。

 

「あ、もうそんな時間だったんだ。じゃあねみんな。お見送りありがとう」

「良いお年を」

「「「「「いってらっしゃい」」」」」

 

五人の声を背にエレベーターに乗った。

 

「そうだ。今日は手繋いで過ごそうよ」

「何が、そうだ、だよ。繋ぎません」

「ちぇっ…今日はいけると思ってメイクも頑張ったのに」

 

いつも通りの掛け合いであったがことりもいつも通り本気だったようだ。ことりの言うように今日のメイクは気合いが入っているように見える。薄い自然な中に綺麗さが際立っているのだ。リップもしているので唇もプルンとしている。

あの唇と僕はキスを……て、いかんいかん。何妹にドキドキしてるんだ。

邪念を追い出すかの如く頭をぶんぶんと振った。

 

「どうしたの、お兄ちゃん?」

 

ちょうどエレベーターから降りたところで、ことりから疑問を投げかけられた。

 

「あーー……今日のことりは大人ぽくて綺麗だなと思っただけだよ」

「ふふふ…それで平静を取り戻すために、て行動な訳か。見惚れてくれたならメイク頑張った甲斐があったよ!」

 

そこでとびっきりの笑顔を返された。不覚にもドキッとしてしまうような笑顔だ。

はぁぁ…こうやって人は成長していくんだな。こんな考えが出るなんて僕も歳かな。

 

「ねえねえ、少しくらい腕を組んでもいいでしょ?ね?お願い!」

「はぁ……分かったよ。少しだけね」

「──っ!もう、だからお兄ちゃん大好き!」

 

そう言うとボストンバッグを持っていない方の腕にことりはしがみついてきた。そんな状態で実家の福岡に向かうため、駅に向かうのだった。

 


 

~五つ子side~

 

時は少しだけ戻り。和彦とことりがエレベーターに乗り込んだのを確認した五つ子はしばらくその場でじっとエレベーターの方を見ていた。

 

「行ってしまいましたね」

「うん……」

 

五月の言葉にどこか寂しさが含まれたような声で三玖は答えた。

 

「じゃっ、私たちもそろそろ部屋に入ろうか」

「だね!ちょっと寒くなってきたかも」

「こたつで暖まりましょ」

 

一花の言葉をきっかけにぞろぞろと部屋に入っていく。そんな中、まだその場から動かない者もいた。

 

「三玖?早く入りましょう。風邪をひきますよ」

「うん…すぐ行く」

 

最後までじっとエレベーターの方を見ていた三玖が五月の言葉に答えて部屋に入った。

 

「いやー、二人がいなくなると寂しくなりますなぁ」

「そうね。何気に転校してきてからほとんど一緒にいたものね」

 

リビングに向かう廊下で一花と二乃が寂しさを口にした。

 

「上杉さんも年内会えないって言ってたもんね」

「たしか、バイトをたくさん入れていたようなことを言っていましたね」

「かきいれ時だとも言ってた」

 

リビングに備えられたこたつに入りながら、風太郎も年内はここに来ないことを四葉と五月と三玖が話した。

全員がこたつに入ると蕩けそうな顔になってしまった。

 

「やっぱ冬はこたつよねぇ~」

「わかるぅ、このまま寝ちゃいそうだよ…ふわぁ~…」

「一花。寝るなら布団で寝てくださいね」

 

今にも寝そうな一花に五月が注意をした。そんな五月の言葉に一花は顔をテーブルの上に乗せたまま返事をした。

 

「は~い。そういえば、結局五人での年越しになったね」

「そうね。いつも通りね」

「今年は上杉さんやことりさんが一緒だと思ってたよ」

「うん…後は先生…」

「こればかりは致し方ないかと」

 

とはいえ、五人とも四葉が言ったように思っていたので、若干の寂しさはあった。

 

「でもさ。先生はちゃんと計画してくれたじゃん。みんなでのお参り」

「うん!楽しみだなぁー!上杉さんやらいはちゃんも来るんだもんね」

「そういえば、ことりの友達も来るんだったわね」

「ええ。お二人来られるとか。去年からの友達らしいですよ」

「どんな人なんだろうー」

 

五人の話題は和彦が計画した年始のお参りに変わった。全員が楽しみにしているようである。

 

「私は少しだけ話したことある。森下さんと佐伯さん。ことりのところに話しに来るし、一人はクラスメイト」

 

四葉の疑問に三玖が少しだけ話したことがあると答えた。

 

「多分、みんなともすぐ打ち解けると思うよ」

「ふーん、三玖が言うなら確かだろうね。当日が楽しみだ」

 

その後も五人で和気あいあいと時間を過ごした。

 

「……さてと。そろそろお昼の準備しなくっちゃ。お昼の後は全員で買い物行かない?おせちとか年末年始の食材買っときたいし荷物が多くなりそうなのよ」

「りょ~か~い」

 

そうして二乃の提案もあり、午後の五つ子達の予定が決まったのだった。

 

 




今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。

今回は、前回の続きとなる和彦の帰宅からのお話と、いよいよ和彦とことりの帰省するお話を書かせていただきました。
五つ子が和彦の家の隣に住んでいるので、和彦とことりの帰省には五つ子が全員でお見送りをすることにしました。

さて、今日はいよいよ五等分の花嫁の横浜アリーナイベントですね。しっかりと楽しみたいと思います。

次回の投稿は5月2日を予定しております。
次回の投稿も読んでいたたければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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