少女と花嫁   作:吉月和玖

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83.二年生最後の試験

~定期試験当日~

 

一花。

 

(いよいよ本番。定期試験で赤点回避して姉妹の中で一番の成績を取ったら告白。三玖が言った言葉だけど、もし姉妹で一番を取ったら私は──ううん。余計なこと考えちゃダメ。今は赤点を回避することだけに集中しよう)

 

二乃。

 

(とうとうこの日が来たわね。赤点取って和にぃとさよならなんてごめんだわ!逆に赤点回避して和にぃに褒めてもらうんだから。まあ、本当は姉妹で一番と言いたいところだけど、さすがに本気で勉強を始めるのが遅すぎたわね。三玖に五月。この二人には勝てないか…)

 

三玖。

 

(この試験で目指すのは赤点回避だけじゃない。他の姉妹にも負けない。勉強も料理も頑張るって決めたんだ。今までの試験でも姉妹の中で一番取ってきたけど、今度も絶対に勝ってみせる…!)

 

四葉。

 

(今まで失敗続きの私だけど、勉強の神様どうか今だけは私に力を貸してください。だって、あんなにみんなで頑張ったんだから。風太郎君への想いを伝えないまま転校なんて絶対に嫌だ!)

 

五月。

 

(お父さんとの約束のこともありますが、私の夢のため、まずはこの試験を通って進級しないことには話になりません。見ていてくださいお母さん!それにお兄ちゃんにも良いとこ見せなきゃっ。他の姉妹には負けてられないっ…!)

 

風太郎。

 

(やれるだけの事はやった。後はあいつらを信じるだけだ。みんな頼むぞ!)

 

ことり。

 

(三玖たちならきっと大丈夫。この日まであんなに勉強してきたんだもん。それにしても……お兄ちゃんは手加減ないなぁ…少しは解きやすい問題とか作るのかと思ったらいつも通りなんだもん。ま、それでこそお兄ちゃんか…)

 

それぞれがそれぞれの思いを胸に学年最後の試験の時間が流れるのだった。

 


 

定期試験当日。

今日も試験監督として試験中の皆を見て回っている。

今は二組を担当していて、教室内を練り歩いていた。

 

「ほら前田。寝ないで見直ししな」

「うっす…」

 

机に突っ伏して寝ていた前田を起こして見回りを続けた。

 

「…………」

 

授業での居眠り常習犯でもある一花の傍に来たのだが、集中して問題を解いているようで僕には気づいていないようだ。

うん。いい集中力だ。解答欄もだいたい埋めれてるみたいだし問題ないのかもしれないな。

自然と口角が上がりながらも見回りを続けるのだった。

 


 

~REVIVAL~

 

ある日の放課後。今日は試験結果が返されることになっていた。

五つ子と風太郎、そしてことりは放課後にこのREVIVALへ集合することにしていた。

 

「そろそろみんな来るかな」

「うん…」

 

先に到着していた三玖とことりは他のメンバーが揃うのを、店の入口から入ってすぐのところにある待ち合いスペースで待っていた。

 

「お待たせー!」

「よう」

 

そこに四葉と風太郎が合流した。

 

「あれ、二人一緒だったんだ」

「ああ。一番の心配どころだったからなこいつは。放課後真っ先に結果を聞きに行ったんだ」

「いやー、ご心配をおかけして……」

 

ことりの質問に親指で四葉を指差しながら風太郎は答えた。

 

「そ…それで…どうだったの…四葉…?」

 

いつも通りの四葉と風太郎の様子に大丈夫だとは思っているが、本人から聞かないと安心も出来ず三玖は四葉に問いかけた。

すると、ニコッと笑みを浮かべた四葉が成績表の紙を広げた。

 

「じゃーん!見事赤点回避できたよ!」

 

中野 四葉

国語 51点、数学 43点、社会 36点、理科 32点、英語 32点、合計 194点

 

「やったー!」

「おめでとう…っ!」

 

四葉の成績表を見たことりは喜びのあまり三玖の両手を握ってぶんぶんと振った。それに驚いた三玖ではあったが、嬉しいのは同じためすぐに笑顔となった。

 

「ふっ……それで?三玖はどうだったんだ?まあ、お前のことはそこまで心配していないが」

「…私の結果はこれ…」

 

風太郎に促された三玖は口元が隠れるように成績表を広げた。

 

中野 三玖

国語 43点、数学 58点、社会 79点、理科 46点、英語 34点、合計 260点

 

「!すごいよ三玖!」

「ああ。平均を50点越えてくるとはな恐れ入った」

「私も教室で聞いた時は嬉しくって抱きしめるの我慢したんだから。今は我慢しなくていいよね。えいっ!」

 

そう言うや否やことりは三玖を抱きしめて、頬擦りをしている。

 

「ことり……苦しいよ…」

「えへへ」

 

苦しいと言う三玖のではあるが、その顔にはずっと笑みがこぼれていた。

 

「お待たせしました……なぜことりさんは三玖を抱きしめているのですか?」

 

少し遅れて五月が到着したのだが、目の前に広がっている光景に若干混乱していた。

 

「あはは…ちょっと訳ありでね」

「っ!四葉!どうだったのですか!?」

 

苦笑いを浮かべながら五月をお出迎えた四葉に対して、五月はすごい勢いで詰めよった。

 

「わわっ…五月落ち着いて。えへへ、私の合計点数は194点。ギリギリだったけど、赤点回避できたよ!」

 

次の瞬間、笑顔で自身の赤点回避を報告した四葉を五月は抱きしめていた。

 

「四葉、やりましたね!」

「えへへ、私至上一番の得点だったよ」

「……ふっ…さっきの五月の疑問は、今のお前の行動を見ればわかるだろ?」

「あ……」

 

四葉を抱きしめている五月に向かって風太郎が伝えた言葉で、五月はことりの行動の真意を理解した。

 

「ということは、三玖も赤点回避を?」

「うん…」

「そういうお前はどうだったんだ?」

「まったく。あなたは同じクラスではないですか。私の結果を聞かずにすぐにどこかに行ってしまわれて……」

 

やれやれと言わんばかりに五月は風太郎に愚痴をこぼした。そうしながら自身の成績表を広げて(みな)に見せた。

 

中野 五月

国語 50点、数学 60点、社会 35点、理科 74点、英語 43点、合計 262点

 

「!」

「すごーい!今のところ五月が一番だね」

「え?」

「僅差だがな。しかし、お前がそこまでの点数を取るとはな」

「いつもうちに勉強に来てた成果だね」

 

まだ二人が残っているが、それでも三玖より上であったことに五月は喜びを感じていた。

 

「あら、もうだいぶ集まってるみたいね」

 

そんな時、二乃が店に入ってきた。

 

「おつかれ二乃!」

「あら四葉。いい顔してるじゃないの。その様子だとここにいるメンバーは赤点回避できてるみたいね」

「そういう二乃だって機嫌よさそうだよ」

「ふふっ、そう?」

 

ことりの指摘に二乃は笑みを隠せずにいた。

 

「その様子だと、お前も回避できたんだな」

「まぁ~ねぇ」

 

風太郎の言葉に二乃は皆に見えるように成績表を広げた。

 

中野 二乃

国語 32点、数学 43点、社会 48点、理科 40点、英語 56点、合計 219点

 

「うん。よくやった!」

「実際もうちょいいけると思ったんだけどね。ちなみに今のところ姉妹で一番って誰?」

「五月…ちょっと下に私…」

「ふ~ん…ちなみに点数は?」

「262点です」

「そう…すごいじゃない。三玖に勝つなんて」

 

(はぁぁ……やっぱ敵わないわね…そんなに点数が離れてるなんて)

 

二乃は笑顔で五月の点数を称えるも、やはり悔しい気持ちがあるのには違いなかった。

 

「ごめーん。お待たせー!」

 

二乃の点数発表の後すぐに一花が店に駆け込んできた。

 

「おつかれ一花。みんなも今集まったところだから大丈夫だよ」

「ちなみに今のところ全員赤点回避できてるわ。一花も問題ないんでしょうね?」

「うん。今回はお姉さん頑張ったからね」

 

二乃の言葉に一花は笑顔で成績表を皆に見せた。

 

中野 一花

国語 40点、数学 78点、社会 42点、理科 54点、英語 52点、合計 266点

 

「「!」」

「あんた…この点数って……」

「すごーい!一花が一番だー!」

「こいつっ!やりやがったな」

「ふふっ…やったね一花」

「あ……そう…なんだ……やった」

 

誰よりも一花の頑張りを知っていることりは称えるように一花に言葉を送った。

一方の一花は放心状態ではあったものの、姉妹の中で一番が取れたことに嬉しさを噛み締めていた。

 

「試験突破おめでとう。吉浦先生から話は聞いている。彼が支払いを持つそうなので好きなものを頼むといい」

 

全員の赤点回避が分かったところで、REVIVALの店長さんが奥から出てきてそう(みな)に伝えた。

 

「え、先生が?」

「じゃあ、先生も来るのかしら」

「一応、彼も来るそうだが、何やら人と会う約束があるそうだよ。遅くなりそうだったら先に帰るようにとのことだ」

「誰と会うんだろう…」

「うーん...ことりさんは何か聞いてますか?」

「ううん。何も聞いてないかな」

「先生も私たちの赤点回避について気にしてらしたので、こんな日に会う人となればよっぽどの人なのでしょうね」

 

和彦がこの場の支払いをする準備ができていることにも驚きではあったが、それよりもこの場に来るよりも会うことを優先した人物の方が五つ子とことりには気になってしまった。

 

「じゃあ、俺はこのままバイトに入るから。祝賀会はお前たちでやっててくれ」

 

そう言った風太郎はさっさと裏方の方に行ってしまった。

 

「じゃあ、せっかく兄さんが用意してくれたみたいだし、私たちは私たちで楽しもっか」

「だね。席に行こっか」

 

ことりと一花の言葉に六人でテーブル席に座った。

それぞれが頼んだジュースとケーキがテーブルに運ばれたことで改めて乾杯をすることになった。

 

「「「「「「試験突破!お疲れ様!かんぱ~~い!」」」」」」

 

カァン!

 

「本当に赤点回避できるとは思わなかった」

「うんうん。この答案用紙を額縁に入れて飾りたいよ」

「それはもうちょっといい点を取ってからにしよっか」

 

改めてこうやって祝賀会を開いている訳だが、三玖はまだ赤点回避をしたことに実感が湧かないようで、嬉しい反面、戸惑いのような声で話した。

そこに四葉は自分の五教科分の回答用紙を掲げながら、記念にと額縁に飾りたいと提案したが、一花によってそれは却下された。

 

「それにしても、いいのでしょうか。先生の奢りとはいえここまで贅沢をしても」

「いいんじゃない。兄さんはきっと始めからお祝いする気みたいだったし」

「そういえば、二学期の中間試験の後にパフェ奢ってくれた時に言ってたわね。次に奢るのは赤点回避した時だって。覚えてくれてたのね」

 

二学期の中間試験の後。風太郎が全員が一教科ずつとはいえ赤点回避をしたことでご褒美のパフェを提案した。その時に和彦がその場で奢ることになったのだが、次があるとしたら全教科赤点回避した時だ、と和彦が言っていたのだ。

それを覚えてくれていたことが嬉しかったのか、二乃は微笑みの顔でケーキを見ていた。

 

「それにしても見事にバラバラだよね、みんなの注文したケーキ」

「まぁ、これは平常運転ということで」

 

テーブルに並ぶケーキ。それらは見事に種類はバラバラだった。それを見たことりが感心したように感想をもらしたのだが、四葉が苦笑いを出しながら答えた。

そんな時、三玖が自身のケーキを一口大にフォークに刺すと、それを四葉の方に差し出してきた。

 

「はい、四葉」

「えっ、何これ」

「現文の問題。四葉の予想がドンピシャ」

「そうでしたね」

「あれは助かったわ」

「じゃあ私も」

「私も」

「えええ!」

 

三玖に続いて他の姉妹も、自身のケーキを一口大にフォークに刺して四葉に差し出した。それに四葉は驚きの表情になり、ことりはニコニコしながらそんな光景を眺めていた。

 

「……パク……ししし、おいしいね」

 

観念した四葉は一つずつ口に含んでいき、そして笑顔で美味しいと伝えた。

 

「あ、でも、私もみんなに助けてもらったからお返ししないと」

「それを言ったら私たちも…」

 

姉妹それぞれから勉強のお礼としてケーキを一口ずつ貰った四葉だったが、自分も姉妹みんなに助けてもらったと主張した。それに対して三玖がそれぞれ全員が助かっていると口にした。

 

「では、少しずつシェアしましょう。きっとこの試験もそうやって突破できたのですから」

 

そこに五月が全員のケーキをみんなでシェアすることを手を合わせながら提案した。全員でお互いを補い合って得た結果からすれば、ケーキをシェアすることは良い案かもしれない。ただ──

 

「しかも、いろんな味を楽しめてお得です!」

「本当はそれが目当てじゃ…」

 

次の言葉で少し残念さが出てしまったのかもしれない。

一花の言う通り、そちらが目当てだったのではと思えてしまう。

 

「はい、一花」

「え?」

 

そこに三玖が一口大のケーキを一花の口元に差し出してきた。

 

「ありがとう。それから、姉妹で一番おめでとう」

「三玖…」

「ふふっ…私もまだまだだったね」

「そうですね。私も全力で挑んだのですが及ばずでした。お仕事もあるのに凄いです」

「本当よ。意外…と言ったら失礼かもだけど、どこにそんな力を隠してたのよ」

「あはは…運が良かっただけだよ」

 

(本当は先生の夜の勉強会のおかげなんだけどね)

 

パク…

 

唯一、一花の秘密の勉強会の存在を知っていることりに、黙っているように目配(めくば)せをした一花は三玖の差し出したケーキを食べた。

 

「わっ、五月のケーキ凄いおいしい!」

「ええ、私のおすすめです。もう一度食べてみたかったんですよ」

 

四葉が五月の注文したケーキが美味しいのに驚いたのに対して、嬉しそうに五月は自分のおすすめであることを伝えた。

 

「もう一度って」

「このケーキ、先生のお裾分けにもなかったじゃない。いつの間に一人で来たのよ」

「えっと…その時もご馳走になりまして……」

 

三玖と二乃の疑問に五月は軽く答えた後、ここにいるメンバーにあることを報告する決断をした。

 

「みんなに話しておきたいことがあるのですが……私、学校の先生になりたいんです」

「え…」

「それって…」

 

五月の告白に姉妹全員が驚きの表情をし、三玖と一花も驚きの言葉が漏れてしまった。

 

「も、もちろん過ぎた夢ではありますが…」

 

そんな姉妹の反応に、恥ずかしそうに何か訂正をするかのように五月は言葉を捲し立てた。

そんな言葉を遮るかのようにことりが想いを伝えた。

 

「いいんじゃないかな」

「え?」

「目標があることは決して悪いことじゃないよ」

「うん!そうだよ!私はいいと思う!五月の授業わかりやすかったもん。ぴったりだよ!」

「ことりさん…四葉…」

 

四葉とことりの言葉に、五月はニコッと微笑んだ。

 

「当然、私たちも応援するよ」

「じゃあ、五月は大学受けるんだ」

「いよいよ三年生になるって感じね」

 

四葉の言葉に続いて、一花と三玖、二乃がそれぞれ口にする。二乃に至ってはげんなりとして話しているので、受験という言葉が頭を過ったのかもしれない。

 

「そういえば、このことは兄さんにも言ってるの?」

「ええ。話す機会がありましたので。応援すると言っていただきました」

「ま、先生としてなら当然よね」

「……来年も先生が担任だったらなぁ…」

 

ボソッとこぼした三玖の言葉に二乃と五月は、ハッとした顔になった。

 

(そうよ。クラス替えがあるじゃない。うまくいけば和にぃのクラスだってあり得るわ)

(お兄ちゃんのクラス。進路の相談とかはやっぱり担任の先生にだろうし、相談するならお兄ちゃんがいい!)

 

「そっかぁ、私も先生が担任がいいかな」

 

二乃と五月でそれぞれが和彦のクラスがいいと考えているところに、四葉がニコニコと和彦が担任がいいと話した。

 

(((え……?)))

 

「あー、私も四葉の気持ちわかるかも。先生が担任だったら気使わなくてもよさそうだもんね」

「前にも言ったけど、私は兄さんが担任で遠慮がいらないからやりやすいよ」

「初めてことりと会ったときかぁ。なんか、今だったらあの時のことりの気持ちわかるかも」

「ですね。私も先生が担任だったら緊張もしなくてすむかもって思っちゃいました」

 

一花と四葉とことりは、和彦が担任だといいところをそれぞれ口にしていた。

そんな三人の会話を聞いて、二乃と三玖と五月の三人は心の中でほっとするのだった。

 

 




今回の投稿も呼んでいただきありがとうございます。

今回の投稿では、いよいよ定期試験の発表まで書かせていただきました。お互いの試験結果を発表する場は、原作と同じくREVIVALにしました。原作と違うところで言えば、初めから二乃がいることと、ケーキ代は和彦持ちであることくらいでしょうか。
そして、試験結果も原作と変えさせていただきました。成績順はほとんど同じなのですが、五月を三玖より上にしています。今までよく和彦の家に勉強をしに来ていたので、そこを考慮させていただきました。

次回は、まだ同じ日の出来事が続きます。原作で言えば、ここで二乃が風太郎に告白するイベントが起きるのですが、二乃はすでに和彦に告白していますし…じゃあ誰か違う人が?
また、和彦がこの日に誰に会っていたかも書く予定ではあります。

次回の投稿は8月5日を予定しております。
次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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